デルタセイバーVSブラッドアーク
市街地に到着した時には、既に前線は混戦状態に突入していた。敵味方が激しい銃撃による応酬を繰り返しており、双方共に被害は増すばかり。
コンフロンティアがこれ程までの戦力を有していたのが意外だった。しかし、ヤン・ハオティエンは中々優れた人物なのか着実に戦力を増やしていたのだ。
「中々派手にやってんな。なら、俺も参戦させて貰おうかね!」
側面から一気に市街地に突入。そのまま目の前に居た敵MW部隊に向けて攻撃を仕掛ける。
【此処で引き退るな!大義は我らにグワッ⁉︎】
【何だ?新手か!】
【アレは、エース機だと?敵の傭兵が来たぞ!迎え撃て!】
敵MWはMC-30Bモールドだ。30ミリガトリングガンと四連装ミサイルで迎撃して来る。
「元気があって良いねぇ。やっぱり、真面目に戦ってくれないと戦い甲斐が無いからな!」
ブラッドアークを市街地上空から敵モールドに向けて一気に加速させる。そしてビームキャノン砲と試作プラズママシンガンを使い反撃。
ビームキャノン砲と試作プラズママシンガンの火力は圧倒的だ。安価なMWであるモールドがまともに出来る機体では無い。
【は、速い!照準が!】
【捕捉し切れない!回避する速度が速過ぎる!】
【あのAW飛んでるぞ!まさか新型なのか!】
【新型だろうが何だろうが関係無い。今、俺達が戦わなくて誰が戦ガッ⁉︎】
【も、もう駄目だああああ⁉︎うわあああああ⁉︎⁉︎】
1分も掛からずに目の前に居た敵モールド部隊を全滅。
「これだ……これこそ俺が求めていたモノ。善悪など関係無い。圧倒的な力で相手を捩じ伏せる力!」
更にブラッドアークを加速させて次の敵に向けて移動する。
コンフロンティアの中にはAWも何機か居る。だが、そんなのは関係無い。中身が並以下のパイロットが搭乗しているAWなど脅威にはならない。
ミサイルを発射する敵サラガンをビームキャノン砲で貫く。
45ミリアサルトライフルで攻撃して来る敵サラガンを試作プラズママシンガンで穴だらけにする。
シールドを構えながら肩部に装備している35ミリガトリングガンで弾幕を張る敵マドックの懐に入り、プラズマサーベルで35ミリガトリングガンを破壊する。
【わああああ⁉︎わ、わ、わああああああ⁉︎⁉︎】
味方が次々と撃破される中、遂に自分の番だと理解してしまった敵パイロット。咄嗟に45ミリサブマシンガン二挺を使い悲鳴に近い雄叫びを上げながら弾幕を展開する。
だが建物を使い射線を切り、瞬く間に距離を詰める。
「逝かせてやるよ!」
【ッ⁉︎】
そして敵サラガンのコクピットに向けてパイルバンカーを打ち込む。一瞬だけ声を出したが機体と共に動きを止める。
パイルバンカーを引き抜くと先端にオイルと別の何かが付着していた。だが、そんな物に興味は無い。
「さて、デルタセイバーが体勢を立て直す前に狩り尽くす。徹底的にな」
そして次の獲物を求める為に動く。最早、味方の動きには眼中には無かった。逆に俺の障害になる様なら…………。
「ハッ!関係ねえよな。そんな物!何せ、俺がこの戦場で一番なんだからな!」
そして再びレーダーに敵の反応を確認。ギフトを使いビームキャノン砲を展開。そして建物越しに照準を絞り、トリガーを引いた。
ビームキャノン砲から放たれた高出力ビームは建物を貫通。そのまま敵AWを破壊出来たと確信していた。
だが、世の中には勘の良い奴は居る。
【ほう、随分と派手に戦う奴が居るな】
【大丈夫ですか!ゲンさん!】
【ええ、大丈夫ですわ。この対艦バスターソードを貫くには少々火力不足ってやつでさぁ】
モニターに現れたのは対艦バスターソードを盾にして俺の攻撃を防いでいた旧式AWが居た。
「BR-Z5ミストか。その対艦バスターソードといい。あの時のオッさんか」
【ほう、お前さんはあの若い小僧か。どうやら新しい玩具を手に入れてはしゃいでるようだな】
不意の攻撃を対処した上、余裕のある反応。その反応を見た俺は若干だが興奮してしまう。
例え、相手が旧式のAWだとしても中身が一級品以上だからだ。
つまり、手加減無用な奴って訳だ。
「クククク……そうだよ。俺は新しい専用機を手に入れたんだ。丁度良い。オッさん……俺の糧になれよ」
一気に操縦レバーを前に出しブラッドアークを敵ミストに向けて突撃させる。それに対して敵ミストは対艦バスターソードを構え直し、同じ様に加速して来る。
【ゲンさん!無茶は行けません!】
【お嬢は下がって!この小僧は危険です!】
対艦バスターソードが振われるのと同時に35ミリガトリングガンを乱射。しかし、敵ミストは被弾を気にする事無く突喊して来る。
だが、そんな無謀な突進も俺には無意味だ。この間の動きは全て視えている。
対艦バスターソードが振り下ろされたのと同時に左腕の小型シールドで逸らす。そしてパイルバンカーで敵ミストのコクピットを貫く。
しかし、相手は相当の手練れだった。
僅かに未来が変わる。コクピットを貫く筈だったパイルバンカーは敵ミストの左手から左腕を貫いていた。然も、軌道をずらされ完全に擦れ違う形になってしまう。
そして、次に待っていたのは脚部が逆関節で腕部が二連装45ミリマシンガン装備の軽量AWだった。
【勝てる戦いだと思い気が緩んでいた結果です】
45ミリの弾幕がこちらに襲い掛かる。だが、このブラッドアークは俺専用の特別な機体だ。背部のブースターを一気に吹かすのと同時に、空高くに舞い上がる。
【ッ……成る程。中々、高性能な玩具の様ですね】
「ハッハッハッハッ!残念だったなぁ。今のは並以上のパイロットとAWだったら防げなかったぜ。だがなぁ、俺はスーパーエース様なんだよ!」
そして上空からビームキャノン砲、試作プラズママシンガン、35ミリガトリングガンのフルオープンアタックで反撃する。
慌てふためく様子で回避機動を取る二機の敵AW。しかし、やはりと言うべきか。中々良い腕を持つパイロットだ。上空からの攻撃は基本的にこちら側が優位だ。だが、それでもトリッキーな動きと建物を使い射線を切って来る。
「さてと。それじゃあ、もう一戦行こうか!」
再び接近しようとしたがチュリー少尉から通信が入って来た。
『ヴィラン1!デルタセイバーが来たわ!』
「ハッ!ようやく来たか。じゃあな、俺は色々と忙しい立場なもんだからな。ヴィラン2、キャット1、こいつらの相手を頼む。手強い相手になるぞ!』
『キャット1了解ッス!まとめて穴だらけにしてやるッス!』
『ヴィラン2了解。デルタセイバーは任せたわよ』
選手交代をしながらレーダーを確認しデルタセイバーの位置を把握。
「ヴィラン1より各機、デルタセイバーは俺がやる。お前達は俺とデルタセイバーに一機も近付けさせるな!」
『マジッスか。ヴィラン1は中々難しい注文をするッスね』
「ならキャット1、デルタセイバーと一対一やるか?」
『先輩!吉報を待ってるッス!』
「調子の良い奴だな。まぁ、良い。期待して待ってな!」
そしてエルフェンフィールド軍に対しニュージェネ自治軍と傭兵達が攻撃を開始する。
『スピアセイバーが何なのさ!私のマドックは改修済みの機体なのよ!』
味方のマドックが敵スピアセイバーと接近戦を繰り広げる。そして僅かな隙を突いてマドックがスピアセイバーのコクピットに近接用ランスを突き刺す。
「シルバーセレブラム所属のマドックか。中々やるな」
『アンタは……嘘、本当に新型じゃん』
「あれ?もしかして、あの時の女傭兵か」
名前は知らないがジャンの事を崇拝気味にしている女だった筈だ。
それにしても中々良い機動性をしているマドックだ。強化パック仕様+ブースター増設されているんだ。扱い易い分類のマドックであろうとも、結構ピーキーな仕様になっているだろう。
「中々良さげなカスタムしてんじゃん。敵に接近するまでの時間は短かったみたいだし」
『まぁね。一応ジェネレーターも弄ってるし。それより、アンタの機体ってサラガンの後継機なの?』
「そうだよ。まぁ、これからデルタセイバーと第二ラウンドをやるからな。お前らシルバーセレブラムも俺とデルタセイバーに雑魚を近付けんなよ」
『何でアンタの命令に従わないと行けないのよ。馬鹿みたい』
どうやら、こちらの指示に従う気が無いらしい。なら、一体誰がデルタセイバーを止める?少なくとも、その場凌ぎの延命処置をしたマドック程度では絶対に不可能だ。
「じゃあ、お前がデルタセイバーを相手にするか?出来もし無い癖に反論しても意味無いぜ」
『それは……』
「分かったらサッサと雑魚を片付けておけ。俺はお前達と違って暇じゃないんだよ」
反論を許す事は無く、そのまま前進する。そして再びレーダーとモニターにデルタセイバーを捕捉する。
「ビームキャノン砲の誤差修正完了しました。いつでもどうぞ」
ネロの言葉を聞いてトリガーを引く。そして高出力ビームがデルタセイバーに向けて飛んで行く。
しかし、デルタセイバーのエネルギーシールドにより防がれてしまう。まさにデルタセイバーの性能は圧倒的だ。
「さぁて、始めようぜ。第二ラウンドの開始ってな!」
そして試作プラズママシンガンの銃口をデルタセイバーに向けてトリガーを引く。
試作プラズママシンガンから放たれる弾幕をものともせず、一気に間合いを詰めて来るデルタセイバー。どうやら、ようやく状況を理解したらしい。
「良いね!良いね!これこそ戦場の戦いってやつだ!そうだろ思うだろ?デルタセイバー‼︎」
対艦ビームソードとプラズマサーベルがぶつかる。
しかし、このままビームとプラズマがぶつかり合えばプラズマの方が負ける。プラズマサーベルはビームサーベルに比べて出力は低い。しかし、AWの装甲を斬り裂く分には問題は無い出力だ。
だが、今の様な状況ではこちらが不利だ。その為、プラズマサーベルを引きながら体勢を入れ替える。
「背中がガラ空きだよ!」
試作プラズママシンガンで至近距離から撃つ。無論、デルタセイバーも反転しながら対艦ビームソードを振り抜いて来る。
対艦ビームソードの攻撃を回避する。しかし、デルタセイバーはビームガトリングとショットカノンで追撃して来る。
咄嗟に小型シールドを構えながら横に回避。しかし、ショットカノンの攻撃が小型シールドと装甲を傷付ける。
(やるじゃないか。いつまでも機体だけに頼ってる訳じゃないらしい)
一度地上に降りてブースターを落ち着かせる。ブラッドアークはデルタセイバーと違い長時間の飛行は出来無い。あくまでも短時間の飛行に過ぎない。
【クリス!無事かい!今援護を】
『ヴィラン1に敵を近付かせるな!クロウ隊!あのオレンジを集中攻撃!』
『クロウ隊に続け!フォーメーションCで行くぞ!』
此処でヘルキャット編成のクロウ隊、ロト隊がガイヤセイバーに向けて波状攻撃を仕掛ける。しかし、ガイヤセイバーの空中機動力は高く簡単には捉えられない。
【フン!そんなAWでガイヤセイバーに勝てると思っているのかい?傭兵風情が調子に乗るな!】
『回避!間合いは確実に開けろ!決して単機で突撃はするな!』
クリスティーナ少佐の援護をしようとするアーヴィント大尉のガイヤセイバー。しかし、数に囲まれて思う様に攻撃が出来ていない。その代わりクロウ隊、ロト隊は忠実に戦術を駆使しながら着実にガイヤセイバーに攻撃を当て続けていた。
周りが混戦状態になる中、俺は唯デルタセイバーのみに注力していた。
(追撃が無い……か。ハッ、どこまでも甘ちゃん。そして、気を許した奴には慈愛を持つか)
それはクリスティーナ少佐の性格が良いからだろう。きっと日常では優しい人物として人気が高い筈だ。
だが、戦場にそんな優しさは必要無い。
現にブラッドアークは再び飛行可能になっている。
「本当に良い女だよ。アンタは。本当に……良い女過ぎて殺すのが勿体無いくらいにな‼︎」
再びブラッドアークを飛行させ空中戦を挑む。それに対しビームガトリングガンとダブルビームライフルで牽制して来るデルタセイバー。
だが、甘い。甘過ぎる。そんな甘い弾幕なんて意味は無い。今までの戦場ではもっと苛烈で殺意を肌で感じる程の攻撃を受けて来た。そんな中、当てる気が薄い攻撃に意味何て……。
「無いんだよ‼︎」
デルタセイバーに向けてビームキャノン砲を発射。そして回避した先に目掛けて一気に加速。咄嗟に対艦ビームソードを構えるデルタセイバー。
「この攻撃は避けさせねえよ‼︎」
【ッ】
ショットカノンの攻撃を紙一重で回避。そしてギフトで先読みした振り下ろされる対艦ビームソードを肩のサイドブースターを使い左に一気に回避。
そしてパイルバンカーをセットする。
「終わりだ‼︎デルタセイバー‼︎」
狙うはコクピットのみ。この接近戦では最早回避は不可能。例えデルタセイバーとは言え出来無い事はある。
それに一流程度の腕しか無いクリスティーナ少佐では絶対に避けられ無い攻撃。
そして、パイルバンカーの先端がデルタセイバーのコクピット部分の射程に入るのだった。




