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介入開始

 惑星ニュージェネス。他の周辺惑星に比べて経済の発達は非常に順調と言えていた。特にグンマー星系に位置する場所にも関わらず、良好な治安を誇っており観光地としても有名な惑星だ。

 惑星ニュージェネスの自治軍も強大な物で第一、第二、第三艦隊まで揃えており、惑星軌道上には防衛基地の宇宙ステーションも存在していた。更に地上の戦力も豊富で治安維持が出来ていた。


 そう、出来ていた。


 今やそれは過去の物だ。


 現在の惑星ニュージェネスは地方での散発的な戦闘が多発。その主な原因がゴーストによる武装組織の存在だ。

 ゴーストの武装組織は自分達の事を【コンフロンティア】と自称。自らを立ち上がる存在だと世に言い放ったのだ。

 対してニュージェネス自治軍は真っ向から武力による鎮圧に乗り出す。そして各地方で散発的な戦闘が多発。その結果、地方都市に集団デモが起き始める。

 集団デモには女、子供、老人など戦う事が出来無い者達が大勢参加していた。然も、その全てがゴーストだと言うのだ。

 幾ら自治軍の治安部隊が出動しようとも、武器を持たぬ者に武器を振り下ろす事は抵抗がある。また、この時代に情報統制する事は非常に困難だ。それこそ優秀な電子系ギフト保有者が複数必要な程に。

 この事に苛立ちを隠せ無いのはニュージェネス自治軍だ。自分達のテリトリーで好き勝手に暴れているテロリスト(反乱軍)。更に宇宙では宙賊が集まり始めて艦隊と睨み合いが始まっている。


 惑星ニュージェネスでの内戦は最早避けられない状況に陥っていたのだ。






 惑星ニュージェネスの周辺宙域にワープしたスマイルドッグ艦隊。そしてニュージェネス艦隊に向けて進路を取る。


「惑星ニュージェネスは随分と盛り上がってるわね。もう一触即発って感じよ」

「凄いッスね。ニュースとか見るとゴーストの女、子供もデモに参加してるッス」

「そうですね。しかし、惑星ニュージェネスは綺麗な場所が多いみたいです。治安も元々はかなり良かったみたいですね」


 チュリー少尉、アズサ軍曹、ナナイ軍曹の三人はホログラムに移る情報を見ながら惑星ニュージェネスの状況を確認する。

 確かにニュージェネス自治軍の目下の悩みの種はゴーストによるデモ隊だろう。何かを壊す訳でも無いし、捕まえても抵抗は一切しない。唯、誰もコンフロンティアの情報を知らない為空振りばかりだ。

 尤も、そんな状況も直に終わる。


「確かシュナイダー総統だったか。結構、頭は回る方だったよな」

「はい。幾つかの経済政策により惑星ニュージェネスの経済基盤は盤石な物となりました。特に他企業の誘致の為に徳政令を出した事は英断と判断します」


 そして俺とネロは窓から見える惑星ニュージェネスと艦隊を見ながら話す。

 そもそもだ。ゴーストがこんな知恵のある事は出来る筈が無い。十中八九、ヤン・ハオティエンが裏で手を引いているだろう。


 だが、それももう直ぐに終わる。


「大体、優秀な人物と言われてるシュナイダー総統とやらがゴーストの好き勝手を許すと思うか?俺は一切思わない」

「貴方ならどうするの?」

「そうだな。兎に角ゴーストは悪だと決め付けるよ。現にデモには女、子供しか居ないんだろ?」

「そうッスね」

「なら簡単だ。奴等は戦えない者も無理矢理戦わせてるってな」

「しかし、デモ隊での死者は出ておりません」

「だからこそだ。きっとデモに関しても別の形で対処される。何せ相手はゴーストだ。どうとでも好きな様に解釈出来るのからな」


 悲しい事にゴーストに人権は無い。強いて言うなら利用価値が有るか無いかの何方かだろう。


(馬鹿な連中だ。時代に(あがな)う事を選ぶなんてな。こう言う時は身を隠すのが賢い選択なんだが)


 力有る者に歯向かった代償は自分の命だ。尤も、それを理解出来無いのがゴーストの運命なのかも知れんがな。


「同情するよ。ま、精々俺のクレジットになってくれ」


 ゴーストが暴れれば暴れるだけ報酬は上がる筈だ。もしかしたら、シュナイダー総統はこれを機に不穏分子の排除も考えてるのかも知れない。

 様々な人々の思想が渦巻く惑星ニュージェネス。その先の未来を勝ち取るのは誰なのか。


 少なくともゴーストには勝ち取る権利が無いと言う事は分かる。




 スマイルドッグ艦隊は無事にニュージェネス第一艦隊に歓迎される。第一艦隊にはシルバーセレブラムの艦隊も居るので当然の流れだろう。


「さてと。ネロ、ジャンの所に挨拶しに行くぞ」

「了解しました。機体はサラガンにしますか?」

「いや、ヘルキャットで出る。どうせ地上戦になるからな」


 俺はネロを先に格納庫に向かわせる。その間に社長から手土産のお酒を分捕ってから格納庫に向かう。

 可変機のヘルキャットは空戦能力も高い。それこそ空戦仕様のノーマルAWより高い格闘能力がある。

 無論、空戦仕様のAWが悪い訳では無い。唯、出力を上げてる為ジェットエンジンの燃費が悪く、継戦能力が低い事が挙げられる。

 俺は用意されたFA-11ヘルキャットの複座仕様に乗り込む。勿論、後ろにはネロちゃんがサポートしてくれるぞ!


「こちらヴィラン1、出撃許可を求む」

『出撃許可出ました。社長からの伝言ですが、相手側に失礼の無い様に』

「分かってるって。ガキの使いじゃねえのは理解してるさ」

『そうですか。では、出撃どうぞ』

「ヴィラン1、出るぞ」

『行ってらっしゃいませ』


 オペ子とのやり取りを終えてシルバーセレブラムの旗艦ガーディに向かう。


「こちら、スマイルドッグ所属のシュウ・キサラギ少尉。IDナンバーN-67834。確認されたし」

『こちら戦艦ガーディ、IDナンバーを確認した。第一カタパルトに着艦せよ』

「ヴィラン1、了解。所でさ、お前達は宇宙で戦うのか?」

『ん?そうだな。地上の戦闘は大した事は無いからな。団長の考えでは小数は地上の支援に回すらしいが』

「そうなんだ。まぁ、地上の方は直ぐに片付くだろうからな。余程の事が無い限り」


 そして戦艦ガーディの第一カタパルトに丁寧に着艦する。


『エアーを注入した。ようこそ、戦艦ガーディへ』

「どうも。さて、アンドロイドボディでのAWの乗り心地はどうだ?」

「少々ラグが生じますが、戦闘では問題の無い誤差になります」

「そうか。なら良いんだがな」


 俺は手土産のお酒を持ちながらコクピットから出る。すると外には見た事の無い女傭兵が立っていた。


「アンタがキサラギ少尉だね。ギュール団長が呼んでるから着いて来て」


 愛想の無い女傭兵は先に歩いて行く。しかし、俺は女を無視して他のAWを見て行く。


「へぇ、早速マドックの強化パック仕様があるじゃん。こんな先の無いAWを使う奴の顔が見てみたいぜ」

「それ、私の機体何だけど。何、喧嘩売ってるの?」

「先を見る目が無いなと思ってな。随分とクレジット積んだだろ。細かい所を見れば分かる。特に関節部とスラスターの出力は強化してんだろ?」

「まぁね。お陰でサラガン相手なら圧勝よ。機体性能で押し潰せる」


 自慢気に言う女傭兵。そんな女傭兵に取っておきの情報を教える。


「因みにサラガンは後継機を出すからな。その場凌ぎで誤魔化す機体とは訳が違うぞ」

「ふん。そんな見え見えの嘘に引っ掛かるもんですか。ほら、団長が待ってるんだから。行くよ」

「やれやれ、現物を目にした時の表情が見物だな」


 そして今度こそ大人しく女傭兵に着いて行く。


「ねえ、アンタって強いの?」

「当たり前だろ。伊達にスーパーエースって自称してねえよ」

「マスターはクリムゾン・ウルフの通り名も有ります」

「そう言えば、そんな通り名もあったな」

「自分の通り名も満足に覚えられ無い訳?」

「通り名ってのは自称するモンじゃねえからな。他人か勝手に付けた名前に過ぎない」


 つまり愛着なんかは殆ど付かない。俺の場合はクリムゾン・ウルフって知ってから直ぐに撃墜されたからな。都合の良い時にしか使わないさ。


「アンタ、あんまりエースって雰囲気も無いしね。その点団長は指揮官、パイロット両方こなせる」

「でも、お前はどっちもこなせて無いじゃん。人を持ち上げる前に自分の腕を上げろよ。俺と対等に成りたかったらジャンを撃墜してから言え」

「ッ!言うじゃない。自機を撃墜された癖に」

「だが俺は生きている。そして、また戦場に来た。お前にその度胸が有るか?」


 この後、女傭兵からの睨みが有ったがガン無視してやった。

 だってー、雑魚に興味無いんだもーん。

 そして、ジャンが居るであろう応接間に案内される。中にはジャン・ギュール大佐と恋人のジェーン大尉が居た。


「よう!キサラギ!ようやく来やがったか。ほら座れよ」

「ほい、これ社長の秘蔵酒な」

「これ随分な年代物じゃない」

「そうなの?分捕って来たから分かんねえや」

「ハハハ!相変わらずブッ飛んでる野郎だぜ」


 俺はジャンと対面する形でソファに座る。そして周りを見渡すと結構スッキリした部屋だと感じた。


「あんまり物が置いて無いんだな。てっきり撃墜したエース機のパーツとか飾ってるかと思ってたよ」

「そんな面倒臭い事はしねえよ。それより、お前バレットネイターを破壊されたのか?」

「あぁ、QA・ザハロフ所属の機体にな」

「QA・ザハロフか。彼処は結構過激な企業だからな」

「その過激に巻き込まれた結果が今の俺なんだけどな」

「機体が破壊されたのは知ってるわ。だって、画像で坊やの機体の頭部が拡散されてたんだもの。流石の私も目を疑ったわ」


 因みに、バレットネイターの頭部はあの後誰かに盗まれたらしい。まぁ、取った奴も盗っ人同然だったから同情する気は無いけどな。


「しかし、お前程の腕を持つ奴が撃墜されたか。相手は……強いのか?」

「強いよ。マジモンの強さだ。動きはベテランの域に入ってたし、何より勘と腕が良い。お陰で一人仲間をやられたからな」

「誰がやられた?」

「アーロン・ラスカル大尉。近い内、恋人とパン屋に転職する予定だったよ。全く、変なフラグ建てるからこうなる」

「アーロン・ラスカル……確か、軽量機乗りだった奴だな」


 俺は静かに頷く。そして、いつの間にか用意されているお茶を一口飲む。


「これ誰が用意したの?」

「……私よ」

「お前、まだ居たの?もう出て行っても良いと思うよ」

「煩い!出るタイミングを逃しちゃったのよ」


 何か変な所で間が悪い女傭兵。この女、上手く行けば結構良いキャラになりそうだな。


「まぁ、何でも良いや。で、ジャン達は宇宙で戦うのか?」

「いや、地上にも部隊は派遣する予定だ。お前の所はどうだ?」

「地上がメインになる予定だよ。少なくとも俺は地上に行くよ」

「何だよ。宇宙に残らねえのか?宇宙の方が良い戦いが出来ると思うぞ」

「地上の有象無象を片付けた方が効率が良い。なるべく早目に片を付ける予定だ。それに、そっちの方が雇い主の覚えが良くなりそうだし」

「流石坊やね。抜け目ないわ」


 お茶を一口飲みながら茶菓子も食べる。うん、コレ美味いな。


「さてと、じゃあこの酒でも開けるか。このまま話が無くなると、お前さんは直ぐに帰るだろうしな」

「模擬戦程度なら付き合ってやっても良いぜ」

「なら後で付き合えよ。やっぱり歯応えのある奴が相手にならねえと腕が鈍っちまうからな」

「部下の中にも良い腕のパイロットは居るだろ?何なら育成してみろよ。もしかしたら掘り出し物が出るかも知れないし」

「嫌だね。助けが必要な奴なんて要らない。俺が求めるのは生粋の戦場で出来た原石だ。そう……お前みたいな奴が特にな」


 ジャンの強烈な獲物を狙う様な視線。更にジェーンからの強烈な嫉妬の視線。そして女傭兵のドン引きしてる空気。


「俺は野郎に興味はねえよ。ネロちゃんみたいな完璧な存在ならウェルカムなんだがな」


 俺はネロちゃんの膝に頭を乗せる。すると頭を優しく撫で始めるネロちゃん。はぁー、このクソみたいな空間でも癒される。


「ハハハ!相変わらずな奴だな。ほら、一杯飲めよ。ジェーン、あそこから良いツマミを持って来てくれ」

「仕方無いわね。ちょっと待っててね」


 こうしてスマイルドッグとシルバーセレブラムの基本方針は決まった。最終的には上が決める事だろうが、ジャンからの無理難題が来る事も無いだろう。

 何せ地上を早目に片付けると言っておいたからな。


(久々の勝ち戦か。反乱軍とやらがどう足掻く事やら)


 この時は他人事同然に考えていた。確実に勝てる戦いだと思っていたからだ。

 だが、この時には想定外の戦力が現れるとは思いもしなかったのだった。






 スマイルドッグとシルバーセレブラムとの話合いは直ぐに終わった。

 スマイルドッグは地上にAW部隊、MW部隊、随伴部隊を多めに降下させる。逆にシルバーセレブラムは宇宙をメインとして地上にはAW部隊と航空部隊を降下させる。

 スマイルドッグの役割は主に反乱軍のゲリラ部隊の殲滅。シルバーセレブラムの役割は拠点制圧に力を入れる形となった。

 無論、宇宙では反乱軍の艦隊が居るので対処出来るだけの戦力は持っておく必要がある。


「じゃあね社長。俺が居なくても死ぬなよ」

『良いからさっさと地上のゲリラを片付けて来い』

「あいよ。さて、じゃあ地上に行くか。曹長、操縦は任せたよ」

「了解しました」


 俺は社長と最後のやり取りをしてから通信を切る。まぁ、相手は民間船を含めた艦隊擬きだ。

 対してニュージェネス艦隊は全て軍用艦だ。質も量も全てこちらが優勢なのだ。まず負ける要素が見当たらない。

 俺は大人しく座席に座りシートベルトで体を固定させる。そして窓から見える惑星ニュージェネスを見る。


(今回はヘルキャットでの出撃だからな。下手な被弾は命取りになる)


 ヘルキャットは可変機故にノーマルAWに比べると繊細な分類に入る。更に空戦も想定されている為、装甲厚も薄くなっている。

 代わりに高い機動性と運動性があるので文句は無いのだが。


「まぁ、何とでもなるか」

「マスター、今回は私はこのままで宜しいのですか?」

「ん?あぁ、大丈夫だろ。一応ネロの球体ボディも持って来てるし。それに、もしかしたら歩兵に混ざって掃討作戦に参加するかも知れないし」

「成る程、分かりました。格闘戦、及び射撃プログラムの再試行を行っておきます」

「そうだな。異常が出た状態で戦闘に参加しても足手纏いになるかも知れんからな」


 そして再び窓の外を見ようとする。すると、今度は後ろから頭を突かれる。


「先輩、地上戦楽しみッスね」

「そうだな。尤も、今回の俺は空からの攻撃がメインになるかもだがな」

「とか言いながら、先輩なら普通に地上で格闘戦してる気がするッスよ」

「言ってろ。宇宙と違って空からの支援は重要だからな。下手な奴にやらせる訳には行かんのだよ」


 後ろを見ればナナイ軍曹、アズサ軍曹、チュリー少尉の女三銃士が並んで座っていた。

 最近、君達一緒に居る事が多いよね。仲良しなのかな?


「そうよね。フォーナイトに乗ってた時も地上からの援護要請が煩かったわ。貴方達もAWに乗ってるでしょう!て、何回思った事やら」

「今回は私がオペレーターとして皆さんをサポートします」

「オペ子のサポートは普通に嬉しいな。状況判断が上手いし、的確に物事を言ってくれるから助かるんだよな」

「……そうですか」

「何々?照れたの?オペ子照れちゃった?素直に褒められて照れちゃった?」

「オペ子では有りません。ナナイです」


 まるで修学旅行みたいな雰囲気を出しながら戦場に向かう。まぁ、勝ち戦確定みたいな戦闘だから気が緩むのは仕方無い事だろう。

 勿論、戦場では何が起こるか分からない。一人の歩兵が未来を変える事を行動をするかも知れない。


 そして、惑星ニュージェネスに降り立った俺達は直ぐに頭の中を切り替える。

 これから始まる戦いに集中する為に。

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― 新着の感想 ―
[良い点] フラグの満漢全席ですわ… 不穏なの好き過ぎでしょう(笑) [気になる点] 誤字かもしれない報告 >尤も、そんな状況も時期に終わる。 多分、時期→直に かなと。あんま自信無いっす。 [一言]…
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