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企業案件

 ZC-04Rバレットネイター。

 この機体はエルフェンフィールド軍が独自技術を使わず、使える物は可能な限り使用した逸品物だ。

 ベースとなっていたZC-04サラガンの操作性をそのままに機体全体を改修、及び改造を施した。更に俺の戦闘データもフィードバックされており、まさにシュウ・キサラギ専用機が爆誕した訳だ。

 まぁ、簡単に言えば技術者共と整備兵共が好き勝手に作った機体な訳だな。唯、あの短期間でここまでの機体を作り上げた腕前は本物だと認めざるを得ないだろう。


「それで?命からがら帰還して来て新しい機体を用意しろとは。社長、ちょっと無茶振り過ぎません?」

「何も儂は一から全部用意しろとは言っとらん。この中から選べと言っておるのだ」


 QA・ザハロフから無事に難を逃れた俺とネロちゃんとチュリー少尉はスマイルドッグに帰還する事が出来た。

 流石に色々あって疲れたので報告を纏めて直ぐに部屋に引き篭もった。勿論、ネロちゃんの極上アンドロイドボディに癒されながらだ。

 そして、数日程ゴロゴロしていたら社長から呼び出しを受けて現在に至る訳だ。


「選べも何も、バレットネイターの設計データは有るんですよ?つまり、この機体を作れる企業に依頼を出して終了。ね?簡単な事では有りませんか」

「事はそう単純な話では無い。貴様は地球連邦統一軍からどう見られているか知っておるか?」

「マザーシップ狩った傭兵でしょう?それ以外に何が有ると」

「何も知らんのか貴様は。いや、AW以外興味が無いのか。まぁ、良い」


 そう言うと社長は端末を操作して壁にあるモニターに情報を出す。

 すると色々は情報が出るわ出るわ。正直、見てるだけで胸焼けしたよ。何故かって?全部自分の内容ばかりだからだ。


「うわー、俺はいつから人気俳優になったんだ?ハリウッドスターじゃあるまいし。然も、俺がバレットネイター諸共戦死したかも知れない情報も出てるじゃん。パパラッチ共の行動力早過ぎんだろ」

「今や貴様は地球連邦統一政府より名誉市民権を与えられておる。これで、いつでも地球連邦統一軍に入隊出来るぞ。然も高待遇でな」

「代わりにルールやら何やらと言った無茶振りも有りそうですけどね。相手が生意気な奴や反抗的な奴でも、正規市民なら笑顔で対応せんといかんのかね?あー、嫌だ嫌だ」


 考えただけで蕁麻疹が出て来そうだ。大体、反抗的な奴は殴るかマグナムで脅すのが丁度良いんだよ。お前の代わりは隣に居るんだぞって言葉も添えてな。


「で?こっちの端末には企業案件ですか」

「そうだ。大体、貴様はサラガンばかり使っておるからな。お陰でウチの機体の方がより良い戦果を出ると言って来ておる」

「いや、サラガン使ってる理由はスマイルドッグがサラガン系しか使って無いからですよ?そこは俺の所為では無いです」

「エースが相手ならサラガン以外の機体でも許可を出すわい」

「えー?本当ですかぁ?社長のケチッぷりはこの広い銀河でもトップクラスですよ」

「減俸するぞ、貴様」

「サーセン」


 まぁ、スマイルドッグも企業だからね。一応、企業の様式に合わせていただけさ。そっちの方が色々都合が良いからね。

 確かに専用機を使ってた奴も居たが、いつの間にか消えていたからな。多分、周りがサラガンやギガントばかりで目立ってたのかも知れないけど。


「それにだ。儂もサラガン系の運用を止める予定だ」

「そうなんです?サラガンは良い機体ですよ。安価な癖にAWとしての性能は確かですからね。コストパフォーマンスは最高に良いと思いますが」

「マドックの強化パック仕様相手に勝てると思うか?」

「んー……俺なら勝てますよ?」

「もう少し協調性を持たんか。貴様は良くても他の者の事もだな」

「ハハ、冗談ですよ。冗談。真面目に言うなら、勝てません。強化パック仕様のマドックは三大国家の主力機以上の潜在能力があると思います。あの強化パックのお陰でマドックの拡張性が一気に上がりましたからね」


 表向きは近代化改修と銘打っているが、実際はマドックに外付けで拡張性を広げた代物だ。

 外付けする事によって機体自体は一回り大きくなり、被弾率は上がった。だが、それ以外の性能は全て通常のマドックの上を行っているのだ。

 多少の被弾率が上がる事は大して問題になら無いくらいにだ。


「唯一の懸念事項は価格が高いと言う所ですかな。マドックの半分の価格とか。工賃合わせると改修費用は安くなりそうになりませんな」

「それで戦力が増強されるなら安い物だ。全く、サラガンの強化パックが出てこればこんな出費なんぞ」


 社長が愚痴ってる間、俺はAWに関する企業案件を自身の端末に移す。


 地球連邦統一軍主力機のZX-07アストライ。

 サラガンの対抗馬として開発されたZM-05マドック、及び強化パック一式。

 ガルディア帝国軍の主力可変機のFA-14フォーナイト。

 全ての性能が高水準で纏められ、ステルス機能も兼ね備えているYZD-23スパイダー。


 他にも様々な企業から案件が来ている。中には試作機的な機体も提示している企業もある。


「いやはや、これは……時間が掛かりそうだ。社長、少し時間を頂きますよ」

「構わん。但し、相手を無闇に刺激はするなよ」

「ご安心を。AW関連なら真摯に対応するのでね。では、失礼します」


 社長に敬礼しながら部屋を退出する。そして端末に目を通すと自然と頬が緩んでしまう。


「俺も来る所まで来たな。へへへ、AWに関する企業案件なら大歓迎だからな」


 端末を見ながらどの機体にするか選別する。社長からは好きにして良いと許可も降りている。

 つまり、乗りたい機体に乗っても良いと言う訳だ。

 鼻歌混じりで歩いていると、目の前から見知った人物が現れた。


「あら?随分と機嫌が良さそうね。何かあったの?」

「何だ、チュリー少尉か。別に、人気者は辛いなと感じていただけさ」


 そこには虹色の毛並みで、狐耳とふわふわの尻尾を持つチュリー少尉が居た。

 何故、彼女が此処に居るのか。それは彼女が傭兵企業スマイルドッグの社員の一員となっているからだ。

 宇宙ステーションに戻った俺達はスマイルドッグの輸送艇を待っていた。しかし、来たのはスマイルドッグ艦隊だった。

 素晴らしいお迎えに感謝感激していると、チュリー少尉はそのまま社長へ直接連絡をして一気に入社したのだ。

 然も入社祝いも貰いやがってな。多分、社長はチュリー少尉の容姿とスタイルに(ほだ)されたに違いない。


「人気者?確かに今の貴方は時の人みたいなものよね。現に貴方が死んだかも知れない情報も流れてるわ。然も写真付きよ」


 チュリー少尉は自身の端末を見せて来る。

 画面には知らない奴がバレットネイターの頭部と一緒に写っていた。あのゴーストが大量に居る中にバレットネイターの頭部を取りに行った度胸だけは評価してやるよ。


「あの惑星にも物好きが居たもんだな。態々ご苦労なこって」

「それだけファンが居るって事じゃない。良かったわね」

「全く嬉しくないファンで涙が出そうだ」


 俺達は自然と一緒に移動する。

 正直に言うとチュリー少尉の事は嫌いでは無い。アーロン大尉の事は残念だし、同情する所は多少ある。

 しかし、彼女は悲壮感な雰囲気も出さず気丈に振る舞っている。それどころか、前に向いて歩いている。

 俺とは全く違い強い心を持つチュリー少尉。然も外見良し、性格良しと来ている。こんな良い女はそうそう出会う物では無いだろう。


 もしかしたら、本当に気にして無いのかも知れんがな。ほら、フリーランスとして女一人で活動してたし。


「そう言えば、他の連中とコミュニケーションは取ったか?」

「えぇ、皆良い人達ばかりね。全員、貴方には気を付けろって忠告してくれたわ」

「良し!近い内に実機での演習をやってやろう。アイツらが飯のオカズを泣きながら渡して来る姿が目に浮んで来るぜ」

「そう言う事ばっかりしてるから告げ口されるのよ。後、私より先に入社した連中が居るじゃない?結構横暴な態度取っててウザかったわ」

「何だ、いつもの事か」


 大体、この業界は自分勝手な自己中な奴と運良く生き残り調子に乗る奴が多い。それこそ量産型やられ役と言わんばかりに居る。

 そして自分の実力と依頼内容にズレが生じて良くて失敗。悪ければ戦死だ。


「一応貴方が此処のリーダーじゃないの?」

「リーダーだったら階級をもっと上げてるよ。それに、下っ端の面倒を見る気は無いし」

「ふぅん。まぁ、貴方の動きに着いて行ったら誰も帰還しなくなりそうね」

「喧しいわ。尻尾モフるぞ」


 そして行き着いた先は娯楽室だ。古き良きダーツやビリヤードの他、最新のVRやリラックス空間もある。飲食も可能なので、この場所で時間を潰す連中も多い。

 いつもは静かだが賑やかな雰囲気がある筈だ。しかし、今は二つの陣営に別れて一触即発な状況だ。


「アンタら生意気ッスよ。良い加減、態度を改めた方が身の為ッスよ」

「へぇ?なら掛かって来いよ。負けたらその体を好きにさせて貰うがな」

「ゲス野郎ッスね。先輩以下の存在とか生きる価値無いッスよ」

「その先輩様は未だに部屋に引き篭もってるじゃねえか。何がマザーシップを狩った英雄だ。自慢の機体も失った雑魚野郎じゃねえか」


 更に空気が悪くなる。最早何かの拍子に乱闘が起こっても可笑しくないだろう。


「何やろっかな〜?久々にボーリングでもやろうかな」

「今、貴方の名前が出てたんだけど。良いの?」

「俺は今機嫌が非常に良くて忙しいの。それにだ、企業からのオファーが一度も来た事が無い有象無象なんざに興味ねぇよ。あ、そうだ。ネロちゃん呼んどこ」


 端末からネロちゃんを呼び出す。すると直ぐにこちらに向かって来る。やっぱりアンドロイドボディを買って正解だったぜ。


「先輩!先輩!どう言う事ッスか!自分も有象無象なんスか!」

「よう、アズサ。お前は俺と組めるだけ腕前持ってるんだ。お前はエースになれる資格がある自覚を持っとけ」

「ふぇ?えと、今……何て言ったんスか?」

「だから、お前はエースなれる可能性があるんだから。自覚を持って、雑魚を相手にするなって言ってんの。分かった?」

「は、はいッス!うわぁ、先輩が褒めてくれたぁ。ウヘ、ウヘヘヘ」


 凄く嬉しそうな顔をするアズサ軍曹。なので、この際言いたい事を言っておく。


「後、そろそろ高機動型の機体に乗れよ。そうすれば正式にバディ組んでも良いからな」

「あ、それは無理ッス。自分弾幕張りまくりたいんで」

「前言撤回だよニャンコ娘が」


 俺は真顔で高機動型を拒否したニャンコ娘の耳を揉みまくったのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 過去編から一気読みしました! レイナが可愛いんじゃ...お互い歳をとって変わったかと思いましたがあの2人の本質はそのままなんですね。そこもまた尊いし尊敬します。流石タケル。 キサラギはあの日…
[良い点] シュウ・キサラギの「狐と猫どっちも飼ってると毎日たのしい」始まりますか?(笑)
[一言] > あ、それは無理ッス。自分弾幕張りまくりたんで 誤字かと思ったが、ひょっとして『弾幕張りまくりタン』という新しい属性か……?
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