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知ってるさ

 ベルモットから補給を受けて三日が経つ。しかしセクタルは勿論の事、宙賊も現れる事は無かった。精々一般船かパトロール艦隊と擦れ違うくらいだ。


「平和だな〜。良いかネロこれが暇を持て余す俺の姿だ!」

「姿を確認しました。しかし回転を停止させて下さい」

「ほう、この回転に付いてこれるのか。中々やるな。ならこれならどうだ!」


 余りにも暇なので無重力空間の待合室でネロと名付けた黒い球体型の戦闘用AIを高速で回転させていた。しかしネロのセンサーが良いのか普通に追従して来る。

 因みに音声に関してはエルフの整備兵の方に相談したらやってくれた。代わりに結構怒られたけどね。

 え?何で怒られたかって?サラガンのリミッター外して戦闘したからだそうだ。無理矢理ぶん回したエンジンの焦げ臭さが半端なかったそうな。

 勿論謝ったがリミッター解除はこれからもすると胸張って言いました。そしたら高機動型の機体を買えと言われたけどね。


「だってさー、高機動型とか高いじゃーん。ぶっちゃけサラガンの何倍かするじゃーん。正規軍かよと俺は言いたい」

「ネロはマスターの戦闘能力を知りません。ですが整備兵の方々からお勧めされたのなら一考の価値はあるかと。それから回転を止めて下さい」

「クレジットが貯まったら考えとくわ。後回転は自分で止めてみせろ。この無重力空間でネロの力を見せてくれ」

「手も足も有りませんので不可能です」

「まさに手も足も出ないってやつだな」

「肯定です」

「今のは笑いどころだぞ?ハッハッハッ!」


 こんな感じにネロとの会話を楽しんでいた。今の所特にフリーズする予兆は無い。


「ネロは何処か壊れてるのか?」

「否定。自己診断プログラムでは正常」

「ふーん。まあ壊れてないなら良いけど。それならかなりお買得商品だった訳か」

「はい。赤字覚悟の出血大サービス中でした」

「そいつは良い。なら尚更ネロを買えて良かったぜ」


 それから暫くネロ相手に暇潰しをしていると俺達傭兵にブリーフィングルームへの呼び出しが掛かった。



 ブリーフィングルームには既に俺以外の傭兵とクリスティーナ大尉以下部下達が揃っていた。


「何だよ。また俺がビリッケツかよ。お前ら行動が早いな」

「貴方が遅いのよ。よくそれで今まで生きてこれたわね」

「そりゃあ俺は運が良いからな」

「はっ!運だけで生き残って来たとか嘘ぶっこいてんじゃねえよ。この前の戦いで良く分かったぜ。お前は軽量機に乗った方が良い」

「え?ジャンボとお揃いとかマジ萎えるんですが。それならフォーナイトに乗るし」

「このクソガキが。毎度毎度舐めた態度取りやがって」

「なら私と組む?」

「フォーナイト無いから無理ですやん」


 そんな俺達のやり取りを睨みながら見ているクリスティーナ大尉以下エルフ兵士達。


「ふん。随分と余裕ね。確かに貴方は実力がある。けどそれだけでこの先、生きていけると本気で思ってるの?」

「ほら言われてますよバーグス中尉。此処は俺達傭兵部隊を代表して一発かまして下さい」

「いや、今のは君に対して言ったんだと思うよ?」

「名指しされて無いからな。なら俺じゃ無いですよ。よしMr.仮面、君に決めた!」

「我関せずを貫かせて頂く」

「そう簡単には逃がさねえよ。逃げるならその仮面を引ん剝いてやらあ!」

「おいやめろクソガキ。マジで取ろうとすんな」

「本当にキサラギ軍曹は賑やかね」


 クリスティーナ大尉はガン無視された事が信じられないのかその場で固まっている。そして徐々に眉間に皺がより始めて目付きが鋭くなる。


「キサラギ軍曹!貴方に言ってるのよ!少しばかり腕が立つようだけど」

「諸君待たせたな。これよりブリーフィングを始める」


 ナイスタイミングでセシリア大佐がやって来た。セシリア大佐はクリスティーナ大尉を一瞥して直ぐに視線を全員に向ける。

 ブリーフィングルームが暗くなりモニターに作戦内容が表示される。


「これより我々はオペレーション・イーグルアローを開始する。目標はセクタルの宇宙基地の攻撃を行う。場所はかつては資源採掘用として活用されていたアステロイドベルトのあるマララカン宙域だ。奴等の幹部数名がこの場所に居ると思われる」

「思われるね。確実な情報が欲しい所だね」

「憶測を確実にする為の作戦だ。作戦は至極単純だ。先ずは戦艦アルビレオを中心とした艦隊による艦砲射撃を行う。その後AW部隊を両翼から突入。中央に関しては艦砲射撃を継続する」


 小惑星群とは言えそれを使った宇宙基地は頑強だろう。更に多数の石っころの上には幾つかのビーム砲台や対空砲も設置されてる筈だ。


「またこの作戦の目標は幹部の捕縛、もしくはリリアーナ様の情報の確保だ。その為陸戦部隊の突入も行う。その際には陸戦隊の護衛を第一優先とする」

「その時にもし艦隊に攻撃が向けられた場合は?」

「無視して構わん。我々よりも陸戦隊を守れ。艦隊よりもリリアーナ様の情報を優先させるんだ」


 この時セシリア大佐の表情には覚悟があった。まさに命を賭けてる表情だ。


「ほほぉ、中々良い顔するじゃねえか。気に入ったぜ。キャラじゃねえけど今まで以上に本気出すわ。勿論今日からな」

「残念だが私には婚約者が居る。この救出が終われば」

「だああああ!ダメダメダメだ!それ以上は言ってはいけない。死亡フラグを建てようとすんじゃねえ!」

「何だその死亡フラグとは?私はただ」

「分かったから。それ以上の台詞は全部終えてからにしろよ」


 周りから変な目で見られてたけど気にしない。寧ろ此処で止めれて良かったと思うくらいだ。


「作戦開始は十二時間後だ。それまでに各員準備を完了させろ。勿論お互いの連携もな」


 どうやらセシリア大佐は俺達傭兵部隊とエルフ部隊との連携を苦慮してる様だった。そしてセシリア大佐以下部下達が出て行き、残された俺達傭兵達とクリスティーナ大尉と部下達である。


「取り敢えずクソガキ。お前はどうすんだ。それによって俺達はお前を見捨てる」

「連携重視なんでしょう?任せてよ。本気出すけど個人プレイは自重するさ」

「あらそうなの?なら私と組む?」

「機体が違い過ぎて無理だな。出来るならミクニ少尉かバーグス中尉のどちらかだろうに」


 久々だから忘れてるかも知れないがミクニ少尉とはMr.仮面の事だ。安心しろ。俺も久々に名前で呼んだからな。


「致し方ない。不安しか無いが我慢しよう」

「僕は問題無いですよ。連携を取ると言ってくれるなら安心して狙撃に集中出来ますから」

「流石貴公子は言う事が違うね。Mr.仮面もバーグス中尉をしっかり見習えよ」

「正にブーメランである」

「喧しいわ」


 取り敢えず傭兵部隊は話は付いた。問題はクリスティーナ大尉以下の部下達だ。そう思い視線を向けると向こうも此方を睨んでいた。そして此方に近寄って来る。


「話は纏まったかしら。私達が貴方達傭兵に言う事は一つだけ。邪魔をしない事よ」

「あら?随分な言い草じゃない。確かデルタセイバーだったかしら。そんな高性能な機体を使っても量産機のサラガンより戦果は少なかったみたいだけど?」

「ふん。所詮は運に恵まれただけじゃない。それに私は貴方達傭兵を一切信用していないから」

「なら次は頑張ってね。たかが量産機に負ける高性能機なんて笑いの種にしかならないもの」

「貴様!傭兵の分際で調子に乗るなよ!」

「おいおい、その傭兵を雇ってるのはテメェらの上層部だろ?つまりテメェらだけだと戦力不足と認識されてんだよ。少しは考えろよ。その長い耳は飾りか?」

「図体がデカい割に小さい機体に乗ってるのはお笑いだな」

「んだとゴラァ!俺の機体にケチ付けようってか!」


 クリスティーナ大尉とチュリー少尉の言い合いに他のエルフやジャンボが加わり乱闘騒ぎになりつつある。俺はネロを取り出し奴等の風景を見せながら話し掛ける。


「良いかネロ。アレがドングリの背比べと言う奴だ。因みにドングリとは木の実の一つでな、どの木の実も大きさも殆ど同じなんだよ」

「理解しました。つまり彼等は同じ実力と言う事でしょうか?」

「その通りだ。そしてこの前の戦闘では俺が一番の撃墜スコアを叩き出したって訳よ」

「成る程。理解しました。流石マスターです」

「今日から俺の事はスーパーエースと呼んでも良いぜ?」

「スーパーエース」

「……やっぱりやめとこ」


 ネロと会話してると周りが随分と静かになってる。何となく周りを見ると全員が此方を睨んでいた。


「ネロ状況報告」

「現在マスターの言動により多数の敵を作りました。非常に危険です」

「つまり身から出た錆びな訳だな。こいつはかなり厳しそうだ」

「身体からは錆びは出ません。そして私のボディも内部の精密機器も全てコーティングをしてますので錆びとは無縁になります」

「知ってるさ」


 そんな会話をしてるとクリスティーナ大尉が此方に来て言い放つ。


「そんなポンコツAIを使ってるなら余計に貴方と組みたいとは思わないわ。精々次の戦闘で運を使い切らない様にして頂戴。ラッキーボーイが撃墜されたら縁起が悪いもの」


 そう言い放ちクリスティーナ大尉は部下達と共にブリーフィングルームから出て行く。


「何で貴方ってそんな言い方しか出来ないのよ。そんなんじゃあ周りは敵だらけよ」


 チュリー少尉は一言残し出て行く。


「全く。死にたけりゃ勝手に一人で死んでくれよ」


 アーロン大尉も呆れた風に言って出て行く。


「……」

「軍曹。僕は君の事をもう少し利口な奴だと思っていたよ」


 ミクニ少尉は無言でバーグス中尉は失望した風に言って出て行く。そして残された俺とネロだけ。


「……知ってるさ」


 そう言ってネロを人差し指の上で回転させるのだった。






 マララカン宙域 アステロイドベルト セクタル宇宙基地


 アステロイドベルトの一つの監視塔でセクタルの戦闘員が雑多と化してる宇宙を見ていた。


【ふぁあぁぁ……畜生ついてねえぜ。あの時に賭けなけりゃあな】

【馬鹿な奴だな。お前は昔から賭けには勝てねえくせによ】

【今回は勝てると思ってたんだがな。だが次は勝つぜ!】

【ワッハッハッ。前も同じ台詞言ってじゃねえか。そんなんじゃあまた負けるぜ】


 下っ端同士他愛のない話をする。そんな中センサーが異常を検知する。


【んあ?何だ。ワープホール反応?何処のマヌケだ?こんな場所ワープしてくるなんて】

【距離は?】

【大分離れてる場所だ。この距離なら警戒止まりだな】

【なら度胸試しか冷やかしで来ただけだろ。なあ、もしそれに女が乗ってたら捕まえねえか?】

【そいつは良いな。これでジョンとマイクの突き合いの話を暫く聞かなくて済みそうだ】


 そして次の瞬間膨大なエネルギーの塊のビームが多数宇宙を彩る。それと同時にアステロイドベルトの岩石や艦砲やミサイル発射台が爆散する。


【て、敵襲!正体不明の連中から攻撃を受けてる!距離は】


 最後まで言い切る前に青いビームが監視塔と中の人達を蒸発させたのだった。

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