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主人公、転生者

 基地のAW部隊は最低限の防衛戦力として一個中隊。つまり十二機しか居ない。何故ここまで少ない防衛戦力なのか。理由は殆どが前線に配置されているからだ。

 対して敵AW部隊は二個中隊。更に一個大隊規模のMWの追加に戦車と装甲車だ。

 だが、こちらの戦力も馬鹿には出来無い。MWは勿論の事、タイタンの存在は敵にとって厄介極まり無い筈だ。そして、基地の防衛兵器を合わせれば容易く陥落される事は無いだろう。

 尤も、火災が消化出来ていれば航空戦力の要とも言える戦闘機も追加出来たのだが。今や攻撃ヘリを離陸させる事しか出来ていない状況だが。


(レイナ達は無事だよな?流石に墜落現場には居ない筈だし)


 歩兵部隊なのだから出来る事は限られている。精々敵の歩兵との戦闘か、基地内部での戦闘になる時だろう。

 無論、そうなる様に俺達が敵AW相手に善戦しなくてはならないのだがな。


「全く、風向きは良かったのに。こんな所で足踏みしてる暇は無いんだよ」


 上空では壮絶なドッグファイトが繰り広げられている。戦力的にはこちらが優勢だが、パイロットの技量は敵側が優れているらしい。お陰で撃墜されてるのは味方の戦闘機が多い。

 彼等はもっぱら上空偵察を主にしている連中だ。常に激戦区で戦い続けている奴等と比べる事自体が無意味なのかも知れない。


『ギャンブル0より各機。間も無く敵MWと接敵する。相手は高機動型に改修されているオーガだ。手強いぞ。迎撃用意!』


 120ミリ連装砲で狙いを付ける。その間にも火災は広がり消火活動は難航している。

 そしてレーダーに敵部隊を捕捉した瞬間だった。火災が弾薬庫に引火したのか、更なる大爆発が起こり基地全体に衝撃波が襲う。


『オーガが相手なのかよ。あの機体、無駄に頑丈なんだよな』

『こっちのオーガはノーマルタイプだし。パイロットも大したレベルじゃねえからな。やってられねぇぜ』

『無駄口を叩くな!迎撃開始!敵を絶対に通すなよ!』


 それでも戦わなければならない。戦わなければ死ぬのは自分自身なのだ。




 味方のAWはマドックで構成されている。対して敵側は【ZD-06ヘリオス】だ。

 ヘリオスは軍で扱うには微妙な機体だが、傭兵や企業が扱うには丁度良い機体だ。何故ならカスタムベース機として優秀で、見た目で判断出来無いAWの一つなのだ。


『敵AWはこちらで足止めをする!全機、エレメントを組みながら散開して敵を分散させろ!常に複数で敵に対処するんだ!』

『フレイム2了解。よし、此処が腕の見せ所だよ』

『こっちはタダ飯食いと伊達に言われてる訳じゃないんだよ!叩き潰してやる!』


 味方のフレイム中隊は敵ヘリオス相手と交戦を開始。味方のAW部隊を援護する為に攻撃ヘリも後に続く。


【敵のAWは味方のAW部隊に任せろ。全機、突撃!敵を蹂躙して基地を潰せ!基地さえ無くなれば、この地域は我々の物になる!】

【基地の防衛戦力にしては少ないな。想定通りだ】

【前線ばかりに夢中になってるからだ。無能な敵上層部に感謝するよ】

【企業の邪魔をする事は絶対に許されない。それが自治軍であろうとも。遠慮は要らない。徹底的に潰せ】


 高機動型オーガは凄まじいスピードでこちらに接近してくる。無論、簡単には近付けさせる訳には行かない。


(来るなら来いよ。先読みして墜としてやんよ)


 そして120ミリ連装砲の射程に入った瞬間にトリガーを引く。周りのディフェンダーや他のMWもミサイルや手持ちの武器を使い迎撃を始める。

 前衛はシールド持ちのオーガを筆頭に俺達のディフェンダーが間を埋める様になっている。後方にはモールドの様な大した戦力にならないMWが援護する形だ。

 つまり、俺達が抜かれれば基地が破壊されると言っても過言では無いだろう。


『敵MWに対して牽制射!30センチで確実に仕留めるんだ!戦車隊は敵を近付かせるな!』


 此処でタイタンの火力が敵オーガ部隊に向けられる。30センチだけで無く、多砲塔故に多数の弾幕が敵オーガ部隊に向けられる。

 だが、タイタンの攻撃の隙間を縫う様に回避機動を取りながら反撃する敵オーガ部隊。


「タイタンはやらせるか!食らえ!」


 機動を変える瞬間を狙って120ミリを撃つ。二連装砲から吐き出された砲弾は敵オーガの腕と脚に当たり武装と機動力を奪う。

 敵を破壊するのが一番だが、その間にも味方のオーガ部隊が一気に溶け始めていた。


『こいつら、動きが!うわあああ⁉︎』

『クソ!クソ!弾が当たらねえ⁉︎』

『接近戦をやるなんて聞いてッ』


 パイルバンガーに貫かれる味方オーガ。そして味方オーガを次々と破壊して行く敵オーガ部隊。


「こいつら、手練れかよ」


 どんな機体にもエキスパートな奴は居る。今回は偶々、敵のオーガ部隊の連中がそれに該当しただけに過ぎない。


「やらせるか。これ以上、やらせるかよ!」


 だからと言って引き下がる理由にはならない。ならばと思いこちらも動きながら攻撃をする。態々止まっていれば格好の的になる。


「この距離は30ミリの距離だ!」


 迂闊にもバズーカを構えながら接近してくる敵オーガ。ギフトを使い三秒先の未来を視る。放たれたバズーカをスライド移動で回避しながら30ミリガトリングガンで反撃する。

 高機動型故に多少装甲は削られている。その為、30ミリでも思った以上に穴だらけなるのだ。


「まだ来るのか!」


 次々と接近して来る敵オーガ。だが、こちらとて道を譲るつもりは無い。


『ギャンブル13!左に回避!』

「あいよ!」


 そして、こっちにも30ミリガトリングガン装備のディフェンダーはまだ残っているんだ。

 回避した瞬間、凄まじい30ミリの弾幕が敵オーガを襲う。30ミリの弾を多数被弾しながら反撃するが、敢えなく爆散する敵オーガ。


『ギャンブル13、貸し一つだぜ』

「そう?なら前衛を交代するかい?」

『いや、俺は命を大事にしたいんでね。貸しは勘弁してやるよ』

「話が早くて助かるよ。次来るよ!ギャンブル11、12、援護頼むよ!」


 そして再び敵オーガ部隊を相手に囮役をやる。敵オーガのバズーカの攻撃は確実に避ける様にする。マシンガンとかの攻撃ならディフェンダーの分厚い正面装甲が防いでくれる。


 戦いはまだ始まったばかり。それでも俺には数時間も経ってるとしか思えなかったんだ。




 敵の攻勢は激しさを増すばかりだ。敵の戦車と装甲車も攻撃に参加。しかし、こちらのドーベンやモールドも負けじと反撃に出る。


『戦車が硬い。やっぱりモールドで出たのは間違いだったな』

『無理に戦車を刺激すんなよ。装甲車相手なら丁度良いだろ?』

『いや、今月金を使い過ぎてな。戦車の一両でも破壊しないとヤバいんだよ』

『そうかよ。好きにしな。但し、テメェの尻拭いはしねぇけどな』

『言われなくても分かってッ!わ、わあああ⁉︎火が⁉︎』


 味方のモールドが一機爆散するが戦況は相変わらず不利なままだ。今やタイタンの火力と防御力だけが頼りと言っても良いのかも知れない。


「このままだと不味い!敵装甲車と戦車が抜けてっちまった!」

『それは無視しろ!基地の方で対処させれば良い!』

「対処って、今だに火災は収まらないし。何より制空権は完全に取られたんだぞ!」

『良いから敵オーガを倒せ!そうすれば基地に合流して掃討出来る!』


 しかし、戦況は悪化の一途を辿っていた。そして、更に悪い知らせが来る。


『味方AW部隊が壊滅した。敵AWが来るぞ!』

『増援はまだなのか!このままでは全滅するぞ!』

『今前線の部隊がこちらに接近中だ。何としてでも持ち堪えるんだ!』

『タイタン2、敵AW部隊を捕捉。砲撃開始します』

『戦車隊も援護するんだ!敵AWをタイタンに近付かせるな!』


 味方AW部隊が壊滅した事で敵AWがこちらに接近して来る。

 死のカウントダウンが刻一刻と迫る。


「お前で最後だ!くたばれクソオーガが!」


 しかし、こちらもやられっぱなしでは無い。最後まで足掻いていた敵オーガを穴だらけにして次の襲撃に備える。


「基地の様子はどうなってる!」

『安心しろ。まだ最後の防衛用にモールドが残ってる。多分、何とかなってる筈だ。HQから緊急通信も入って無いからな』

『それより敵AWが来るぞ。ギャンブル0、敵AWは何機来る?』

『不明だ。電波妨害もされていて詳細が分からない。それに攻撃ヘリも全て墜とされた』

『攻撃ヘリの援護は最初から期待してませんよ。味方AW部隊が壊滅したのを聞いてからね』


 タイタン1、2は敵AW部隊に攻撃を続ける。無論、俺達も直ぐにタイタンの援護に入る。此処が抜けられれば基地は蹂躙されるのは必須だ。だから、俺達が止めなくてはならないんだ。


(レイナは守る。絶対に……だから、お前らは死んでくれ)


 心の中で敵に恨み言を吐きながら、敵AWがレーダー内に入る。


「数は……畜生、14機も残ってやがる」


 絶望感が身体全体に押し寄せて来る。残弾を確認すれば決して多くは残っていない。


(AW一機、二機を倒せれば儲け物だな。尤も、儲ける前に殺されるだろうけどな)


 タイタンは絶えず砲撃を行なっているが、AW相手には殆ど牽制にしかなっていない。


『敵AWを視認!戦車隊!撃てえええ!』


 ドーベンも砲撃を開始するが、その直後に敵AW部隊からミサイルが大量に放たれる。


【諸君、ボーナスの時間だ。メインディッシュのタイタンを破壊した者は今晩奢る様に】

【仕方ねぇな。此処は皆の代わりに俺が奢らせて貰うぜ。だからタイタンに手を出すなよ】

【何言ってるのよ。要は早い者勝ちでしょう?それに、こう言う時はレディファーストよ】

【レディファースト?サード6、お前レディだったのか?】

【……アンタ、殺すわよ?】


 ミサイルは次々と味方戦車のドーベンに突き刺さり破壊されて行く。先程までレーダーに存在していた戦車隊の半数以上がLOSTの表示で埋め尽くされる。


『も、もう駄目だ。お終いだあああ‼︎』


 逃亡する味方のオーガとディフェンダー。その中にはギャンブル隊のメンバーも居た。

 敵AWのヘリオスは各個に散開しながらも味方との連携をしっかりと行い近付いて来る。タイタンを筆頭に迎撃しているが、瞬く間に距離を詰められる。


「速い!これがAWなのか!」


 シミュレーションと全く違う世界。モニター越しから迫り来る死の恐怖。

 それでも反射的にギフトを使い30ミリガトリングガンを撃つ。そして回避した先に120ミリの砲弾を撃ち込みまくる。


【うおわあ⁉︎チッ、脚部をやられた。脱出する】


 一機の敵ヘリオスを偶々行動不能にした。その間にも敵ヘリオスは45ミリアサルトライフルを撃ちながら距離を詰めて来る。


『こちらタイタン2!懐に入られた!誰か援護を!援護おおおお⁉︎』


 爆発音と共にタイタン2からの通信が途絶。そしてタイタン1にも敵ヘリオスが群がり次々と武装を破壊して行く。


『降伏する!僕は正規市民だ!だから見逃してくれ!IDも提示する!』

【……確認した。サード6、7はタイタンを持ち帰れ。売れば金になる。機体も人質もな】

【了解。隊長、分け前はちゃんとして下さいよ】

【了解です。ふん、運が良い奴。正規市民じゃ無かったら殺してたよ】


 だがギャブル0ことダルトン少尉は降伏した。まだ戦ってる仲間が居ると言うのにだ。


(あの根性無しが!所詮は親の七光りか!)


 状況は更に悪化して行く。そして二機の敵ヘリオスがこちらに迫る。


【逃げ遅れたディフェンダーか。いや、捨て駒にされたか】

【ハハ、可哀想にな。なら、一思いに殺してやるよ】


 トマホークを片手に迫る敵ヘリオス。俺は咄嗟に操縦レバーを前に出す。するとディフェンダーは急停止して一気に前進する。

 振り下ろされたトマホークは120ミリ連装砲を破壊し、ディフェンダーの後部部分を抉るだけに留まる。

 そして、懐に入った俺は敵ヘリオスのコクピットに向けて30ミリガトリングガンの銃口を向ける。


「俺は死なない!死なないんだよおおおお‼︎」


 転生者、そして辛い現在。それは将来美化されるべき過去になる。

 だって、そうだろ?ご都合主義があって、最終的にハッピーエンドになるじゃないか。





 だが、俺は勘違いしていたんだ。物語の主人公と現実の転生者の違いをな。

クライマァックス!

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― 新着の感想 ―
[一言] ご都合主義が発動しない異世界転生もあるんだぜ…泣
[良い点] 最高や! [気になる点] 終わらんでくれー それか続編をー [一言] 完結するって言われると悲しい
[良い点] 自分だけ助かりやがってクソ坊ちゃんがよぉ…。玉が無ぇからって、替わりに敵にケツ振るんじゃねえよ! そんなに好きなら捕虜になった先で散々に掘られちまいな! …ゴーストにはケツ振るチャンスす…
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