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前哨基地防衛戦

 何もかも順調に進んでいた。基地の防衛部隊に配属され、MWにも乗れる事も出来た。更にレイナを恋人にしたし、タケルとも今以上に絆を強くする事も出来た。

 605部隊のメンバーも既に基地の警備に慣れて来た頃だろう。危険な前線とは離れた場所で安全に給料が貰える環境。

 強いて言うなら、アラン軍曹を失ってしまった事が残念でならなかった。仲間想いの優しかったアラン軍曹。もし、彼が生きていれば今以上に良かっただろう。


 だが、時代は平穏を求めてなんていない。


 戦争により経済の活性化。資源の利権を求めて過激な活動をする企業。

 正規市民を飢えや貧困から遠ざける為の犠牲が必要なのだ。


 そう、俺達(ゴースト)の運命は最初から決まっていたんだ。




 その日はいつもと同じだった。普通に起きて、シミュレーター訓練を行い、レイナとタケル達に会う。

 このルーチンを繰り返すだけで一日が終わる筈だった。


 だが、現実は違った。


 基地の上空を輸送機の編隊が飛んでいた。恐らく物資と補充の人員を乗せているだろう。


『こちらユンカース41、着陸許可を求む』

『こちら管制塔、二番滑走路に着陸せよ』

『ユンカース41、了解。ようやく物資を降ろせるからな。気が楽になるよ』

『ほう?何か良い物でも積んでるのか?』

『皆んな大好きな嗜好品の数々さ。それから、現場が欲している補充兵とAWさ』

『それは欲しい物ばかりだよ。最近、前線は落ち着いているが消耗し続けてるからな』


 そしてユンカース1の輸送機が着陸態勢を取る為に速度を落とす。

 その時だった。一瞬、レーダーに反応が有った。だが、その反応は直ぐに消えてしまう。しかしパイロットはレーダーの故障と思い込み速度を落とす。

 空は分厚い雲が空を覆っている。速度を落とし着陸態勢を取った瞬間だった。


【各機、オペレーション・デェフィナイトを開始せよ】


 ユンカース41を含む輸送機隊に、所属不明のステルス戦闘機の編隊が突如襲い掛かるのだった。




 強烈な爆発音と振動が基地全体を襲う。更に続けて何かが墜落する音と共に再び爆発音と衝撃波が辺りを揺らす。


『何事だ⁉︎報告せよ!』

『上空に待機していた輸送機隊が撃墜されてます!』

『対空監視は何をやっていた!直ちに迎撃機を出せ!』

『輸送機が墜落した一番、二番滑走路が共に使用不可。また火災が発生し火の手が広がってます』

『総員、第一種戦闘配備!繰り返す。総員、第一種戦闘配備!戦闘員は直ちに配置に付け!』

『ステルス機を確認!恐らくマッキヘッドのステルス仕様かと』


 気の緩みは無かった筈だ。だが、どこかで緩んでいたのかも知れない。前線ばかりが戦場になり、この前哨基地での戦闘は殆ど無かったのだ。


 もしくは……内通者の存在か。


 何にせよ、今や戦闘が始まっている状況。此処で立ち止まってる暇は無いのだ。


「うわー、滑走路が火の海だよ。あの辺りの倉庫って……弾薬とか無かったっけ?」


 格納庫に走って向かいながら外の状況を確認する。既に設置型の対空セントリーが空に向けて弾幕を展開していた。

 しかし相手は中々のテクニックを持つパイロット達なのか、逆に反撃されて破壊されてしまっている始末だ。

 だが、対空セントリーが稼いでる時間を無駄にするつもりは無い。他の部隊も徐々に迎撃に参加しようとしていた。


『こちら哨戒中のシャンパール1。敵機を確認した。これより迎撃を行う』

『シャンパール2、目標を視認。エンゲージ!』


 空では徐々に味方が集まり始め、戦闘機同士のドッグファイトが開始される。


「やっと着いた。ディフェンダーは出せますか!」

「来たか小僧!いつでも出せるぞ!」


 自分の乗機であるディフェンダーに乗り込みヘルメットを被る。そしてコクピットハッチを閉じてシステムを起動させる。


「油圧、プラズマバッテリーOK。各システムオンラインを確認。武装は30ミリガトリングガンと二連装120ミリで頼む!」


 武装を装着していると、格納庫にも敵弾が降って来た。凄まじい音と共に格納庫の屋根が穴だらけになり、整備兵達が慌てて逃げ惑う。

 それでも一部の整備兵達は自分の作業に集中して武装を換装し終える。


『良し!出せるぞ!奴等を蹴散らして来い!』

「了解。ギャンブル13、出るぞ!」


 格納庫の外にディフェンダーを出す。そして空で好き勝手に暴れている敵マッキヘッドに向けて30ミリガトリングガンで狙いを付ける。


「早速来やがったな。だが、不用意に近付いてくれて感謝するよ!」


 トリガーを引いて30ミリの弾幕を展開する。そしてギフトを使い敵機の回避機動を先読みして、そこに向けて弾幕を展開させる。

 すると、まるで吸い寄せられるかの様に敵機は30ミリの弾幕の中に突っ込み、火花を散らしながら爆散して行くのだ。


「先ずは一機。まだまだ来そうだな」


 ギャンブル隊が揃うまでは格納庫を死守しなくてはならない。でなければ次の行動も分からないし、基地の防衛も出来ない。

 俺に出来る事は決して多くは無い。だから出来る事をやるんだ。


『ギャンブル13、良くやった。お陰で俺達も無事に搭乗する事が出来た。これよりポイントAに向かう。そこで防衛線を張るぞ』


 無我夢中で戦ってたら、いつの間にかギャンブル隊が揃っていた。時間を確認したら5分も経っていなかったが。


(時間の流れが遅く感じるぜ。それだけ緊張していたのかな)


 ギャンブル隊と無事合流出来たが、依然として戦況は良くは無い。制空権も未だに確保出来ては無いし、消火活動も難航している状況だ。


『HQより各ユニットへ通達。所属不明の大部隊がこちらに向けて接近中。直ちに迎撃に移れ』

「無茶な事ばっかり言ってくれるぜ。だったら敵の正体か敵の詳細データをさっさと送って来いよ」


 遂、愚痴が溢れてしまったが誰も文句は言わなかった。

 余りにも雑な命令や不明瞭な内容に誰もが疲弊するのは必然だろう。


『まずは他の味方と合流を急ぐぞ。ギャンブル隊、行くぞ』


 ギャンブル1の指示に頷きながら機体を動かす。火災が起きてる場所から更に大きな爆発が発生する。恐らく弾薬庫に誘爆したのだろう。


「アイツら、無事かな?多分、基地内の防衛に回ってるから平気だと思うけど」


 605歩兵部隊は所詮は小火器しか使用出来ない歩兵部隊だ。つまり戦線に投入した所で意味は無い。ならば基地内で通路の防衛に回ってた方が充分役に立つだろう。

 ギャンブル隊がポイントAに到着すると他の部隊も続々と到着して来ていた。その中に一際大きな戦車が二機佇んでいた。


【TTB-660タイタン】


 多砲塔重多脚戦車として高い火力と防御力を保有している。更に前線の指揮所としての機能も兼ね備えている優れ物だ。

 そして、タイタンを護衛するかの様にMWのオーガや【TT-750A9ドーベン】が配備されていた。

 因みにドーベンはガルディア帝国の主力戦車で強力な175ミリ滑腔砲を持つ戦車だ。よく地球連邦統一軍の主力戦車ブルバウンドと比較される事が多い。


「スッゲェ、あんな物がこの基地にも配備されてたんだ」

『当たり前だ。あの中の一機に我らが指揮官様が居るんだからな。ケッ、最初からあの中で引き篭もっていれば良い物を』


 つまり、タイタンにはダルトン少尉が乗っているのか。しかし、ダルトン少尉は随分と無茶な事をしている。

 本来なら、もう少し後方に居て欲しい人物なんだがな。


『ギャンブル0より各機。敵の識別が分かった。AW24機とMW36機。後は戦車と装甲車だ』


 最悪な知らせと共にダルトン少尉の姿がモニターの端に現れた。

 しかし、これだけの戦力が何故この基地に?


「ギャンブル13よりギャンブル0。まさか、前線が落ちたんですか?」

『いや、前線の部隊は今も健在だ。だが、それだとあの戦力は何処から現れたのか』

『ギャンブル1よりギャンブル0、今は推理を楽しんでる時間はありませんよ。それより防衛戦力が心許ない。増援はどうなってます?』

『増援か……現在進行形で滑走路で燃えてるよ』

『F○CK!クソッタレが!ギャンブル1より各機!意地でも敵を迎撃しろ!死んでも敵を倒せ!』


 んな無茶なと思いながらレーダーとモニターを見る。

 戦況は依然として劣勢だが、こちらには砲台が幾つかある。それに前哨基地故に歩兵の数は豊富だ。

 つまり、歩兵を如何に生かすかで勝利する確率は上がる筈だ。対戦車ミサイルを持たせるのも良し。敵装甲車の相手をさせるのも良し。残りは俺達が対応すれば行けると思う。


「やってやるさ。此処まで来て死んで溜まるかよ!」


 自分の未来を守る為。共に戦う仲間と生き残る為。

 そして、愛するレイナを守る為。俺は敵を殺す事を躊躇ったりはしない。

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