表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/282

外人部隊第605歩兵小隊

 翌日。イリアお姉さんと子供達を火葬した後、穴を埋めていたら朝日が登り始めていた。パワーアシストのバッテリー残量を見れば残り半分と言った具合だった。

 意外と持つもんだなと思いながら最後に手を合わせる。そしてパワーアシストをリュックに仕舞い、待ち合わせの時間になるまで傭兵ギルドで待つ事にした。


「改めて思うと、これから宇宙に行くのか。出来る事なら楽しい旅行として行きたかったなぁ」


 それが今や孤児院での出来事を思い出すと一気に憂鬱な気分になる。だが仕方ない事だ。誰だって生まれ故郷で子供達が沢山死んでたなんて思わない。然も、実際に手を掛けたのは院長だったなんてな。


「院長、殺すくらいなら何で……孤児院なんてやってたんだよ」


 都市開発による廃棄場の撤去、ゴースト街の掃討。それに伴いゴースト達の居場所は完全にこの土地から無くなる。

 もし、掃討作戦が行われたら子供達はどうなるのか?


(ハッ……馬鹿らしい。考えるだけ無駄だ。結局、院長の言ってる事はある意味正しい)


 ゴーストに人権無し。増え続ける人口のツケがゴースト達に降り掛かってるに過ぎ無い。

 そんな事、既に分かっていた事だ。だけど、それでも無力な子供達が殺される事が許せなかった。許せなかった癖に院長の言ってる事は理解出来てしまったのだ。

 院長は金目的で子供達を売っていたのは間違い無いだろう。だが都市開発が始まれば何処かに移動しなくてはならない。その道のりは厳しく辛いものになるだろう。

 仮に子供達が自治軍に保護されればどうか?いや、そんな事は有り得ない。もし保護してくれるなら、もっと早くに行動している筈だ。


(……生き残ってやる。生き残って、何がなんでも正規市民になってやる。それしか道は無いんだ)


 心の中で決意する。その為なら戦う事もやらねば為らない。

 俺はMG-80軽機関銃を握り締めながら顔を上げる。気が付けば周りには他の傭兵達も居る。


「よう、目が覚めたか坊主。そろそろ来るぜ」

「こんな場所で寝るとは良い根性してる。地獄の片道切符は持ったか?イッヒヒヒ」

「さぁて、戦争と金が俺達を待ってるぜ!イヤッハー!」

「テメェ、うるせぇよ!静かにしやがれってんだ」


 そして頑丈そうな人員輸送車が数台やって来る。どうやら来た様だな。


「やってやる。此処まで来たんだ。意地でも正規市民になってやる。ついでに俺専用AWを手に入れてやる!」


 自分の沈んだ気分を切り替える為に声を出して立ち上がる。俺の言葉を聞いた他の傭兵達もデカい声を出して人員輸送車に入って行く。


 此処から本当の地獄が始まる。そして地獄の中で運命の女性と出会うとは。

 この時には微塵も思ってはいなかったのだった。






 惑星トミオーには豊富な資源が今でも地下に眠っている。特に艦船の装甲素材の一つが大量に存在しているのが発覚している。そのお陰か大企業から中小企業までもが挙って資源を求めてやって来ている。

 しかし企業同士の資源争いは、いつしか三つの陣営に分かれる事になった。

 地球連邦統一寄りの大企業ミカヅキ。片やガルディア帝国寄りの大企業ティーンマーティス。そして自由惑星共和国寄りのトミオー政権。

 惑星トミオーは既に三大国家による代理戦争の場として日夜激しい戦闘が繰り広げられていた。


「うわぁ……彼処、暗いのに砲火がスッゲェ見えるんだけど」


 惑星トミオー行きの中型輸送艇に乗り込んだ俺は、窓から見える惑星トミオーをお菓子を食べながら眺めていた。途中、駆逐艦三隻と合流したみたいだが無事に到着しそうで良かった。

 因みに、このお菓子は惑星ミョーギを出航する前に空港で買ったやつだ。金銀銅の三色クッキーなのだが、見た目も食べた後も金属みたいで少しビビったのは秘密だ。

 惑星トミオーの周辺には大量の兵器の残骸が漂っており、非常に危ない場所となっていた。そして惑星トミオーの半分は夜の時間なのにも関わらず元気にドンパチしてるのが見て取れる。

 因みに惑星トミオーはテラフォーミングをして住居可能な惑星となっている。その為、テラフォーミングを行なっている大規模な機械には絶対に手を出す事は許されない。もし誰かが近付けば全てを敵に回すと言っても過言では無い。

 その為、テラフォーミング装置の内部には惑星トミオーの高官が住み着いてると噂されている。


『間も無く、大気圏に突入します。着席をしてベルトを締めてお待ち下さい』


 機長のアナウンスを聞きながらベルトを締める。周りの傭兵達も大人しく言う事を聞いている。


(それにしても意外と軽装な連中が多いな。俺みたいにリュックにパワーアシストを入れてるかもだけど)


 銃は輸送艇に乗り込む際に預けている。俺は預ける際に兵士の袖の下にお札を数枚入れた。そして気付いた兵士は静かに頷いただけだった。


(取り敢えず銃が無くなる事は無いだろう。いきなり没収されて手ぶらで戦えと言われても無理だし)


 この中で一番年下なのは俺だ。なので、ある程度は金を使って守る物は守るしか無い。

 中型輸送艇は大気圏に突入して行く。結構揺れは激しかったが、暫くすると揺れは無くなった。


『これより前哨基地へ着陸します。もう暫くお待ち下さい』


 そして中型輸送艇は前哨基地へと着陸する。輸送艇から降りる前にパワーアシストを装備しておく。そうしないと銃を持ちながら歩くのが辛いからな。

 パワーアシストを装着してから輸送艇から降りると丁度、後部ハッチが開いて戦車や装甲車も降ろし始める。どうやら俺達はある意味運が良かったみたいだ。兵器を輸送していたなら途中で襲撃があっても可笑しくは無いだろうからな。


「ようこそ地獄の一丁目に!」

「歓迎するぜ!楽しんでくれよな!」

「今からハグしながらキスしてやろうか?」


 外に出るとトミオー正規軍の兵士達による歓迎の言葉が送られる。嬉しくて涙が出そうだ。


「おい、またガキが来やがったぜ」

「だな。どうせ使えないだろうから警備に回されるだろうよ」

「一丁前に装備だけは整えてるみたいだがな。ママに買って貰ったのかな?」


 俺以外に子供が居るのかと思い周りを見る。しかし周りは俺より年上しか居ない。一体誰の事だ?


「いや、お前以外居ねえから」

「あ、やっぱり?此処に来てやっと文句言われたわ」


 しかし警備に回されると言う事は戦地より少しはマシなのかも知れない。そして自分の銃を袖の下を渡した兵士から受け取り一応チェックをする。特に問題は無さそうなので大丈夫そうだ。

 銃を確認しながら少し楽観的な考えを思い浮かべていると、一人の将校が此方にやって来た。その将校はまだ若く、此方を値踏みする様な眼差しを送っていた。


「いやはや、ようやく来た様だな。君達が我がトミオー国防軍側に来た事は間違い無く英断だったと褒めておこう。では物資と人員リストを」

「此方になります!」

「ふむ……成る程、成る程。戦車よりMWを優先していた筈だが。まぁ、良い。君に文句を言っても何も始まらん。任務ご苦労だった」

「ハッ!では失礼致します。ヤッザム中佐殿」


 任務を終えた輸送艇のパイロットは敬礼をして立ち去って行く。そして残された俺達の前にヤッザム中佐が前に来た。


「さて、諸君初めまして。私は惑星トミオー国防軍、第68機械化機動師団所属のヤッザム・パイラール中佐だ。君達は金で雇われた傭兵ではあるが、我々トミオー国防軍の為にしっかりと働いて貰う。例え、それが少年兵だとしてもだ。現に我が軍では()()()()が精一杯任務を遂行しているからな」


 此方を一度見ながら態々少年兵と強調しながら言い放つ。だが安心して欲しい。此方も金を貰う為に来たんだ。報酬分の仕事はやらせて貰うさ。


(格好良く決め台詞っぽい事考えたけど、結局俺は歩兵になるんだろうけどね)


 それからヤッザム中佐は人員リストから次々と配属先を決めて行く。しかし決めている最中に少し顔を顰めながら呟く。


「ええい、AWを保有してる奴が居らんでは無いか。おい!AW、MW操縦可能者はこの場に残れ!他の者は先程端末に配属先を送った。今すぐ先の配属部隊に向かえ!」


 そして残ったのは僅か四名と言う少なさ。余りの少なさに俺は吃驚してしまう。


「え?こんだけなの?少なくね?」

「当たり前だろ。大抵の奴は考えなしのゴーストが無い知恵振り絞って死にに来たんだからな」

「クレジットに目が眩んだ連中が端金を使って傭兵やバウンティハンターになるんだ。笑えるよな」

「お前はAW乗れんのか?」

「いや、MWなら。然も昨日取り立てホヤホヤだぞ!」


 俺がギルドカードを見せると横から手が伸びて来て取られる。誰かと思い見ればヤッザム中佐が胡散臭そうな表情をしながら、俺のギルドカードを見ていた。


「ふん!然も一昨日傭兵になったばかりの新兵では無いか!いや、これでは新兵以下だな。貴様の持ち場は彼処で決まりだ」


 ヤッザム中佐は人員リスト表を弄ると俺のギルドカードを返しながら命令する。

 しかし、俺は嫌な予感がしたので慌てて自分をアピールする。


「待って下さい!自分は作業用MWの操縦経験は三年以上あります!なので」

「喧しい!新兵以下の奴に大事な軍のMWを預けられるものか!兎に角、しっかりと頼むぞシュウ二等兵。まぁ少年兵部隊に期待する程、我々国防軍は落ちぶれてはいないがな」


 俺のアピールをバッサリ切り捨てて、更に嫌味を言いながら残りの三名に視線を向けるヤッザム中佐。流石に俺もイラッとしたので反論が喉元まで出て来る。


(だったら傭兵雇う際に年齢制限でも付けておくんだな!)


 そんな言葉を飲み込みながら端末に表示された配属先へと向かう。

 え?文句言わないのかって?言って最前線送りにされたり、補給物資がケチられたら如何すんのさ!


「仕方ないか。えっと、トミオー国防軍外人部隊第605歩兵小隊か」


 小隊規模なら出来る事は限られてる。そう思うと尚更楽観的な思考が頭の中を過ぎる。

 暫く歩いて行くと少し離れた場所の兵舎に行き着く。如何やらこの辺りは根無草の傭兵達が寝泊りしている場所らしい。

 俺は戦車の上で話している傭兵達の元に行く。


「すみません。外人部隊第605歩兵小隊は何処か分かりますでしょうか?」

「あん?何だガキ、新入りか?」

「はい。一昨日傭兵ギルドに入りましたシュウ二等兵です!」

「おい、マジモンの新入りかよ。お前死んだな」

「あんまり弄ってやるなよ。まだゴーストの割に礼儀が出来てるだけ上等だ。第605歩兵小隊だったな。彼処の端っこのテントがそうだ」


 傭兵が指差す方を見ると、少し離れた場所に幾つかのテントが集まっていた。


「彼処はガキか使えない連中が集まってる場所だ。お前みたいな唯のガキ……いや、軍用パワーアシストを身に付けてる時点でまだマシか」


 そう言って傭兵は仲間達との談笑に戻る。俺はお礼と敬礼をしながらテントに向かう。

 そして外人部隊第605歩兵小隊のテントに着くと何人かの少年兵が此方を見て来た。何事も第一印象が大事なのだ。


「失礼します!外人部隊第605歩兵小隊に配属になりました!シュウ二等兵です!宜しくお願いします!」


 そう言うと多くの溜息や落胆と言った雰囲気と共に歓迎された。


(こ、これは……俗に言うアウェーと言う奴なのか?中々、精神的に効くぜ此奴は)


 頬が引き攣るのを感じながらも姿勢は崩さない様にした。暫く突っ立ってると此方にやって来る少年と後ろに隠れる様に着いて来るボブカットの少女がやって来た。


「俺は第605歩兵小隊のタケル伍長だ。見た限り随分と装備が整ってるな。誰かに買って貰ったのか?」


 俺より二つ程年上だろうか?少年としては分不相応に疲れた雰囲気を醸し出していた。肩まで掛かった長髪で頬は少し窶れていたが、鋭い視線を此方に向けていた。

 どいつもこいつも似た様な事を言うので、遂に笑いが込み上げて来てしまった。


「フフフ、アッハッハッハッ!馬鹿かお前は?ゴーストに施しを与える偽善者が何処に居る?何処にも居ないから、こんな場所に来てんだよ。無い知恵振り絞って少しは考えな」


 俺の言葉に一瞬呆けた表情をするタケル伍長とボブカット少女。そっちの表情の方が少年少女らしくて好感が持てるぞ?


「ッ!俺に対する侮辱か!」


 拳を振り上げるタケル伍長。しかし俺はギフトを使い振り下ろされた拳を簡単に受け止める。


「は、離せ!今直ぐ手を離せ!」

「勝ち目の無い勝負を仕掛けるのは感心しないな。軍用パワーアシスト持ち相手に勝てる腕力を持ってる訳じゃ無いだろ?」


 そして多目的フェイスガードを取り付けてシステムを起動させる。四つのセンサーが光り、タケル伍長を僅かに照らす。

 両者が黙って睨み合ってると、タケル伍長の後ろに隠れていたボブカット少女が拳銃を此方に向けて小さい声で言う。


「……タケルを、放して」

「拳銃向けられたら仕方ないね。大人しく降参と行こうか」


 俺は大人しく少女の言う事を聞いて手を放す。タケル伍長は此方を睨みながら少女を庇う様に立ち塞がる。


「おいおい、そんなに警戒するなよ。俺達はこれから同じ部隊になるんだ。考え方を変えて見ろ。少しは真面な装備を持った奴が来たんだ。どうだ?良い感じになるだろ?」

「…………」

「……タケル、もう行こう」


 警戒心の強いガキだなと心の中で愚痴る。仕方ないので惑星ミョーギで買った金銀銅三色クッキーをリュックから取り出してみる。するとクッキーに気付いた少女の目が止まる。


「食べかけだけどやるよ。見た目の割に普通のクッキーだったけどな」


 俺がクッキーの袋を渡すと、ゆっくりと手を伸ばして袋を取って行く。そして走ってテントの中に入って行った。


「改めて宜しくお願いしますよ。クッキーに振られたタケル伍長殿」

「お前は絶対に許さない!」


 捕まる前に回れ右をして走り出す。無論タケル伍長も走って追い掛けて来る。


 これがタケルとレイナとの初めての出会いだった。決して良い出会いでは無かったが、在り来たりな出会いよりは遥かに良いだろう。






 外人部隊第605歩兵小隊。あの後、他のメンバーとも挨拶をしながら部隊に入って行った。

 隊員数は十二名。全員少年少女だが、獣人や肌の色が違うなど殆どの種族がバラバラだった。また男子八人、女子四人と言った具合で分かれており、女子は大体テントの中で過ごしていた。

 俺は他のメンバーと交流を行いながら基地内を案内して貰ったり、食事を共に取ったりしていた。


「どうだシュウ二等兵。部隊には慣れたか?」


 基本的に食事は全員と一緒に取る。これは部隊内のコミュニケーションを高める為でもあり、要らない不穏分子を取り除く為に決められた事だ。

 そして今声を掛けて来たのは第605歩兵小隊の隊長、ハラダ・サラス曹長。コールサインは60501。しかし実際は01と呼ばれる。

 ハラダ曹長は灰色の肌が特徴の人で穏やか表情で部隊内を切り盛りしている。


「大丈夫よハラダ曹長。シュウ二等兵は見掛に似合わず大人みたいだから」


 ミャオ曹長は部隊の副隊長を兼任している。コールサインは02。犬系の女獣人なのだが、片耳を戦場で傷付けてしまっている。しかし部隊の副隊長としてか世話焼きしたがる傾向がある。

 部隊ポジションは偵察のポイントマンだ。


「そうだな。思った以上に溶け込んでるのは間違いないな」


 ロイ軍曹、コールサインは03。此方は犬系の男獣人だ。よくミャオ曹長と一緒に居るので付き合ってるのでは?と言われている。

 また部隊ポジションもミャオ曹長と同じポイントマンになっている。犬系の獣人として鼻が良く効く為だ。


「シュウ二等兵、ワルイヤツジャナイ。時々オカズ、クレル」


 アラン軍曹、コールサインは04。二メートルを超える身長を持ち、部隊内一番の力持ちでもある。

 所謂巨人族のハーフと言われるが、大分巨人族としての血筋は薄くなっている。しかし、それでも力が強いのは間違いない。

 ポジションは機関銃手として味方の援護を行う。因みに重機関銃を愛用しているので少し羨ましいと思っている。


「まぁ、ヒューマンの子供にしては礼儀正しいのは間違いない。だが、それが違和感を感じる時は有るけどな」


 エドガー伍長、コールサインは05。グレイ系の人で明るい人である。部隊内でも空気を明るくするのに一役買っている人だ。また気配には非常に敏感で警告を出したりもする。

 ポジションは通信兵。小さい身体だが重たい通信機材を平然と背負いながら戦場を駆ける。偶に俺の軍用パワーアシストを物欲しそうに見て来たりもしている。

 因みにグレイ系なのでレーザー銃を持たせて宇宙服を着せた状態でツーショットの写真を撮りたいと密かに思っている。


「でも私としては評価は悪くないかなぁ。将来優良物件候補になるかも知れないし」

「そうそう。賢く無いと最初の所で装備とか揃えられないからネ」


 ケイト伍長とサーシャ上等兵は良く二人でいる事が多い。

 ケイト伍長は三つ目の種族で目が非常に良く、サーシャ上等兵は見た目蜥蜴に近い種族で気配をほぼ消せる特技を持っている。

 二人のポジションはマークスマン。コンビとしても相性が良く、後方から的確に援護をしてくれる。そしてコールサインは07、08になる。


「…………」


 この非常に無口な奴はザニー上等兵。コールサインは09。手足が六本有り、見た目完全に昆虫だ。然も等身大なので初見でビビってしまった。

 ポジションは衛生兵。手先が非常に器用で、大抵の壁も簡単に登って行く事が出来る。

 後、甘い物が好きで飴を与えると「有難う」と流暢な言葉を話す。いや、話せるなら普通に話しても良いんだよ?


「そうなの?じゃあ、僕立候補しちゃおっかなぁ〜?」


 リロイ上等兵、コールサインは10。くりっとした目に整った小鼻。瑞々しい唇に白い肌。そして艶やかな薄い紫の長髪をポニーテールにしている美少女。

 何処からどう見ても美少女なのだが、此奴は男だ。俗に言う男の娘と言う奴だ。

 初めてシャワー室でバッタリ出会った時は思考が完全に停止したのは良い思い出だ。そして人の下半身を見て。


「将来とっても有望だね!」


 グッドサインを出しながら変な事を言い出すクソ野郎でもある。何処見て判断してんだよコノヤロー。

 ポジションは対戦車、対空特技兵。戦車や攻撃ヘリ相手にはリロイ上等兵が確実に必要になる。また完全に女に成り切ってるが、分別は付いてるので女性陣と良く一緒に居る。

 因みにリロイ上等兵を男扱いすると夜に襲われると言う噂がある。怖い物見たさで弄ってみたいが、犠牲になるのは勘弁願いたいのも事実だ。


「まだ実戦も経験して無いのだから評価のしようが無い。精々足を引っ張らない事だ」


 この面倒臭そうな奴はタケル伍長。コールサインは06。第一印象が互いに悪くなってるので良く睨み合う深い仲だ。そのお陰かタケル伍長は俺の指導係に任命されている。

 ポジションはライフルマン。特技が腰に差している軍刀を使った弾丸切りらしい。何でも自分の方に飛んで来る弾丸なら斬り落とせると豪語している。

 本当かどうかは知らないけどな!


「タケル、悪口は駄目だよ」


 レイナ上等兵、コールサインは11。気弱で幸が薄い印象の強い美少女であり、何処か儚い雰囲気を醸し出していた。少し赤みが掛かったボブカットの髪型に真紅の瞳が特徴的な日系ヒューマンでもある。

 俺自身も日系ヒューマンなのでレイナ上等兵には少なからず勝手に親近感を持っている。その為、良く声を掛けて話しを振るので少しは仲良くなってる……筈だ。

 しかし反応は常に怯えている感じになっているので、何とも言えないのが実情だ。


「不安が無い訳では有りませんよ。近い内に実戦は起こるだろうし。はぁ、早く正規市民になってボンボン気分に浸りたい」

「シュウ二等兵は正規市民に成りたいのか?」

「そりゃそうさ。正規市民になれば最低限の権利を手に入れる事が出来るし、出来る事が一気に増える。それに傭兵なんて不安定な職に就き続けるつもりも無いですし」

「傭兵ヤメタラ、メシクエナクナル」

「……オカズやるよ。それに傭兵以外でもAWは動かせる。そして、俺はエースパイロットになって周りからチヤホヤされるんだ!」

「何それ?」


 レイナ上等兵の問い掛けに俺は、AWやMWが如何に浪漫と実用性を両立する事が出来た究極の人型兵器なのかを説明する。

 この時の俺は今迄手に入れて来たAW、MWの知識を滅茶苦茶早口で喋っていた。それこそ周りの連中がドン引きするくらいだ。

 そして俺の説明&解説は警報が鳴り響く十五分前までずっと続いていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >翌日。レイナお姉さんと子供達を火葬した後、穴を埋めていたら朝日が登り始めていた。 いきなりレイナが死んだことになっていてびっくり。 [一言] 更新お疲れ様です。 ノリが好きで毎回楽…
[一言] あれは………噛ませ犬!? 久々にワロタ こういう噛ませ犬が沢山居たのが昔の作品なんだよな(AA略 それはそれとして成り上がりストーリーイイゾ^~
[一言] あいつAWの話になるとすっげえ早口になるよな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ