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ボーナスタイム

 同じ戦闘宙域ではエルフ艦隊と宙賊艦隊が激しい砲撃の応酬を繰り広げていた。宙賊の船は殆どが民間船故に軍艦より脆い。巡洋艦のビームが数発当たっただけで簡単にシールドが切れてしまう。

 しかし艦船のシールドは時間が経てば再び回復する。その為シールドが剥げた宙賊の船は味方の後ろに退避したりAW部隊を盾にしたりしていた。それでも戦いが始まって十分もしない内に五隻が既に沈んでいた。


【各艦、 先頭にいる敵巡洋艦に集中砲撃だ。一隻でも墜とせば金は入る】

【巡洋艦のシールドが固えんだよな。もう五隻が沈んでるぞ】

【構わねえよ。取り分が増えてラッキーだぜ。ほらさっさと前に出て稼いで来い!】

【だったらテメェが行けよ。口先マダオが吠えんじゃねえ】

【んだとぉ!うお⁉︎直撃か!後退しろ!シールドを持たせろ。意地でもな】


 戦況は宙賊の終始劣勢だ。エルフ艦隊と傭兵部隊は宙賊を次々と撃破し続けた。エルフ艦隊が前進し宙賊を追い詰める。だがそれは突然起きた。


「艦長、後方よりワープ反応複数。このままでは挟撃されます」

「防衛に回しているAW部隊を後方へ回せ。正面の敵にはローニン、ユージア、ユイリンで対応。残りは後方を対応しろ」

「接敵まで三十秒。各ユニットへ配置急げ」


 挟撃されると分かってもセシリア大佐は冷静だ。そもそもの戦力の質が違うのだ。恐れる必要は無いと言う訳だ。

 通信から挟撃される内容を聞いた俺はそろそろかなと考える。そして敵艦隊がエルフ艦隊の後方からワープ反応と共に出現。だがその戦力が少々問題だった。

 数は十隻だが巡洋艦二隻と駆逐艦八隻と軍艦が揃っている。更に敵艦隊の識別マークが全てセクタルの物だったのだ。


【後ろを取れたな。我々セクタルの仇となる存在を浄化するのだ。砲撃始め!】

【人類こそが至高な存在なのだ。禍の源となるエルフは浄化してやらねばならん】

【母星ダムラカの仇討ちのチャンスだ。貴様らさえ居なければダムラカは……】


 挟撃される形となるエルフ艦隊。例え技術差があろうとも数で勝るセクタル艦隊。旧式とは言え軍艦十隻。だがエルフの技術が頭一つ二つ飛び抜けてるのは事実。故にセクタル艦隊は油断はしていなかった。

 一方、宙賊艦隊は三隻の巡洋艦を包囲しつつあった。エルフ艦隊の火力が半減以下になった事からシールド回復に幾分の余裕が出来ると判断。つまり自分達の立場が優勢になったと考えた。


【よーし。全ての艦載機を連中の懐に飛び込ませろ。敵AW部隊は無視しろ。母艦さえ無くなれば連中は唯の的さ】

【俺達も行くぞ。たかが巡洋艦三隻だ。文字通り袋叩きにしてやれ!】


 宙賊艦隊と艦載機が前進し巡洋艦三隻に近付く。無論エルフ側のAW部隊と傭兵部隊が足止めに入るが数が多い。


「じゃあ、行きますか。先ずは敵の旗艦から狩るか。花持たせるのは次の機会で我慢してくれや」


 俺はデブリを踏み台にしてサラガンを一気に宙賊艦隊に突っ込ませる。更にリミッターを外し通常より速い速度を出す。計器が一気にレッドゾーン付近になる。それと同時に凄まじいGが身体に襲い掛かる。


「赤いエースが言ってたぜ。当たらなければ問題無いってなあ!」


 狙いを敵巡洋艦の艦橋に絞る。敵はまだ気付いて無いのか迎撃ミサイルなどは飛んで来ない。


「這い蹲り許しを乞え。そして神に祈れ!それが貴様等に出来る最後の行いだあああ‼︎」


 モニター越しに映る巡洋艦。既に対艦ビームカノンの射程内。だが確実にシールドを貫く為に更に近付く。


【ッ⁉︎て、敵一機本艦直上!】

【対空監視何していた!迎撃急げ!】

【ダメだ。間に合わない!】


 苦し紛れの対空砲と回避機動。だが全てが遅かった。対艦ビームカノンから放たれたビームがシールドを貫き艦橋を直撃。艦橋に居た宙賊は全て蒸発し消えて行く。更に続けてVLSミサイル発射管にもビームを撃ち込む。内部でミサイルが誘爆し爆発が大きくなる。

 そのまま巡洋艦に着地し爆風を受けつつ次の宙賊の船に向けて一気に加速。要は赤いエースさんと同じ戦法と言う奴だ。


「ボーナスは頂きだあああ‼︎」


 まあ言ってる事は俗物的だけどね。こんな事言ってたら俗物が!て軽蔑されちゃいそう。


「奴は一般人以上の俗物だな」

「そのようですな」


 この時戦艦アルビレオのセシリア大佐と副長がこんなやりとりをしていたとか。

 更に加速するサラガン。その勢いのまま宙賊船の横っ腹にビームを撃ち込む。対艦ビームカノンは高い貫通力と威力に優れる。反面、対機動兵器相手には不向きだ。故に足を止める事無く突き進むしか無いのだ。

 ビームが宙賊船に着弾。一瞬シールドで防いだが瞬く間に貫通。そのまま宙賊船の内部をズタズタにしてしまう。そして弾薬か機関に直撃したのか宙賊船は真ん中辺りから爆散してしまう。


【旗艦バルバロイ、カカロイ共に轟沈。敵は一機のサラガンです】

【何やってんだよ。貴重な巡洋艦を簡単に沈めやがって』

【おい!次の指揮は誰が取るんだ!敵がこっちに来てうわあああ⁉︎】

【タムロイが食われたぜ。AW隊は何遊んでやがる!さっさとあのサラガンを墜とせよ】

【そいつは無理だ。AWと艦載機は殆どが敵に向かっちまってる。こっちで対応するしか】

【だったら呼び戻せ!今すぐにな!】


 宙賊が慌てて此方に対応しようとする。しかしその隙を見逃す程エルフ艦隊とAW部隊は甘くは無い。そもそも宙賊側から此方に近づいてくれたのだ。それならとクリスティーナ大尉は仲間と共に撃破して行けば良いと考えた。


「ファングリーダーより各機。前方の宙賊は私だけで大丈夫です。他は後方へ対応して下さい」

『しかし、お嬢様それでは』

「問題有りません。この程度の艦艇なら私と【デルタセイバー】だけでも平気ですから」


 そのまま部下を置いて宙賊艦隊に突撃する。元々デルタセイバーは単機での戦闘の方が動かし易い。いや、正確に言うなら単機でないと性能を発揮出来ないのだ。

 つまりそれだけデルタセイバーにはエルフの最先端技術が詰め込まれてると言っても過言ではない。

 武装はシンプルにビームライフルとビームサーベルのみ。後はチャフやデコイが予備で機体内に取り付けてある。更に軽量機や可変機を超える機動性。傾斜装甲による被弾時の高い防御力。宙賊のAW隊を片っ端から撃破し続けても尚戦闘可能な継戦能力。そしてデルタセイバーの能力を引き出せるクリスティーナ大尉の存在。

 正にワンマンアーミーが其処に居たのだ。


「先ずは貴方達から。此処から先に行ける訳無いじゃない。身の程知らず」


 そう言って三隻の宙賊船に接近する。無論宙賊も死にたくない為使える武装は全て使い迎撃する。ビームやミサイルがデルタセイバーに迫る。そして一発のミサイルが当たる寸前、デルタセイバーの周辺にエネルギーシールドが展開される。結果デルタセイバーは無傷のまま宙賊船に突撃する。


【来てる来てる来てる!はよ迎撃せんか!】

【たった一機のAWに何故こうも簡単に翻弄される。対空砲!迎え撃て!】

【さっきミサイルが防がれたぞ!どうなってやがる!シールドでも積んでんのかよ⁉︎】

【見間違いだ。そんな訳がねえ。もしそうならAWの革命が起きるぜ】


 そしてクリスティーナ大尉が敵艦を射程内に捉えようとした時だった。宙賊船の対空砲が突如上に向く。

 だが次の瞬間ビームが真上から宙賊船を襲う。一発目はシールドで防がれたが続けて二発目がシールドを貫通。そのまま宙賊船は内部で爆散してしまう。


【上だ⁉︎畜生!バルバロイを殺った奴だ!】

【どうすんだよどうすんだよ!死にたくねえ。俺はもう逃げるぞ。艦を反転させろ!この宙域から離脱だ!】

【テメェ逃げる気か!巫山戯んなよ!】

【五月蝿え!死にたけりゃテメェだけが死うわあああ⁉︎何でこっち狙って】


 その通信を最後に機関部から誘爆し宇宙のデブリに早変わりする宙賊船。そんな彼等に言い放つ奴が居た。


『一人足りとも逃がしゃしねえよ。どうせ逃げても同じ事するんだろ?だったら此処で処理した方が世の為全宇宙の為ってな』


 未だにスピードが乗った状態のサラガンが立て続けに宙賊船を撃沈して行く。クリスティーナ大尉が識別を確認するとトリガー5と出る。


「あの傭兵、量産機で船を墜としてるの?」


 クリスティーナ大尉は信じられないと感じる。普通の量産機なら普通の戦いをする。だがトリガー5の戦い方はまるで自分が搭乗しているデルタセイバー並の戦果を出している。


「まさかギフト持ち?」


 疑問系だが確信していた。凡人にあの戦い方は出来ない。敵集団に突っ込む度胸と生きて帰って来る技量。そして確実に戦果を出すギフト。

 クリスティーナ大尉も敵艦を墜としながらトリガー5をモニターで追う。すると此方に進路を変えて急速に接近して来る。

 クリスティーナ大尉は少しだけ身構える。だがそんなのは知らんと言わんばかりに近距離まで近付いて来る。

 そして目が合った。いや、正確に言うならサラガンの単眼センサーとデルタセイバーのツインアイが一瞬だけ合っただけだ。だがクリスティーナ大尉は確かに目が合ったと感じたのだ。

 トリガー5はそのまま無視して戦艦アルビレオに向かう。宙賊を見れば他の巡洋艦、傭兵、仲間達、そして自分自身が殆ど墜としていた。


「トリガー5……シュウ・キサラギ軍曹」


 仲間となっている今は使えるだろう。だが所詮は傭兵だ。自由にしたら明日には敵になる可能性だってあるだろう。

 クリスティーナ大尉は自機のエネルギー残量をチェックする。殆ど減ってはいないのでこのまま戦闘続行可能だろう。よって残った宙賊の残敵は巡洋艦に任せて自分も後方の敵艦隊に向かうのだった。

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おまえもワンマンアーミーなんかい
[気になる点] クリスティーナ大尉がアリス大尉ってなってませんか?
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