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 輸送車列は順調に目的地へと向かっていた。景色は何も無い場所から廃れた街並みへと変わって行く。


「ゴーストタウンか。ハッ、非正規市民(ゴースト)の街とは皮肉が効き過ぎてるぜ。全く」


 俺は既にバレットネイターのコクピット内に待機していた。この場所なら敵が襲って来るなら絶好のポイントだろう。車列も簡単に止めれる事も出来る。然も自分達の手でやる必要は無い程に。

 つまり、何が言いたいのかと言うとだ。


「警告、前方より所属不明MW、及び車両の多数接近を確認」

「早速お客さんのお出ましか。やっぱり報酬の良さに釣られると変なのも釣れるんだよな。ヴィラン1、出るぞ」


 待機モードから戦闘モードに切り替える。そして前方から次々と敵MWが地面を滑走しながら迫り来る。

 因みに現在の武装は60ミリショットアサルト、ビームガン付き小型シールド。両肩には八連装垂直ミサイルを装備。更に両肩側面部にも六連装ミサイルポッドを装備していた。

 今回はミサイルパーティが出来そうだなと思うと頬が自然と緩むのは仕方無い事だ。


【ヒャッハー!()()()()()!間違いねぇ、あの車列には大量の金と武器が有るぜ!】

【運がねぇ連中だな。たった四機でのAWでの護衛とはご苦労さんよ!だが、その役目はもう必要ねぇんだよ!】

【男は皆殺しで決まりだ!女は俺達が玩具にしてから殺してやるよ!各機先ずは護衛のAWから片付けろ!】


 敵MWはロケットを滅茶苦茶に撃ちながら接近して来る。そしてMWと同時に車両が左右から襲い掛かる。


「まぁ、どう足掻いた所で俺には勝てないんだけどな」

「マルチロック完了。何時でもどうぞ」

「何事も最初は挨拶が肝心だ。てな訳でだ……ミサイルパーティにご招待ってな!」


 八連装垂直ミサイルから合計十六発のミサイルが一斉に放たれる。そして前方の敵MWへとミサイルは向かって行く。


【嘘だろ⁉︎こんなの避けられる訳が⁉︎】


 その言葉を最後に敵MWは轟音と共に瞬く間に爆発と爆炎の中へと包まれる。


「へへへ、垂直ミサイルにはまだ十六発残ってる。出来る事なら三段式にしたかったが、重量オーバーになるのは避けたいからな」

『おいヴィラン1。あんまり無駄弾を使うな。この先何が起こるか分からんからな』

「その為にお前達を誘ったんだよ。期待してるぜ」

『全く、調子良いんだから』


 要となっていたMW部隊が数秒で消えた事に焦る車両部隊。そんな連中の前に一機のサラガンが立ち塞がる。


【ま、待ってくれ!降参だ!降参する!だからッ!】


 しかし彼等の言葉は45ミリサブマシンガンと胸部対人用12.5ミリマシンガンにより掻き消される。最後の足掻きと言わんばかりにRPGの弾頭が発射されるが軽く回避される。

 淡々とした作業の様に敵車両部隊を殲滅した後に味方のサラガンは再び合流を果たす。


「ダンス1、折角のフォーナイトだ。空から敵の索敵をしてくれ。こう市街地が広がってるとイマイチ敵の位置が分からん」

『しょうがないわね。仮に私が敵を見つけて処理しても文句は言わないでよ』


 そしてダンス1のフォーナイトが空を高く舞いながら索敵を開始する。しかし高度を上げた瞬間、ミサイルロックによるアラートが鳴り響く。


『くっ、回避!』


 チャフを巻きながら地上に向けて回避。そのまま着地しながら移動し続ける。


『対空ミサイル?こんな連中がどうしてッ!嘘、何であんな数の戦車が!』


 街の遠くの地平線から戦車の大群が迫り来る。その戦車はどれも旧式ではあるが、しっかりとした軍用物だったのだ。


『此方ダンス1、郊外十時方向より戦車多数接近。中には対空仕様のMWも居るみたい』

『嵌められたな。どうするヴィラン1』

「決まってんだろ。出し惜しみは無しだ。ミサイルで戦車を叩き潰す。その後はMWを蹴散らす。あ、それから捕虜は要らねぇから」

『何故?私達を嵌めた連中が分かるかも知れないじゃない』

「知った所で意味は無いからな。それに余計な事を考えてる暇はねぇぞ!砲撃が来るぞ!」


 注意を呼び掛けた三秒後に戦車による砲撃が始まる。そしてゴーストタウンに向けて次々と砲弾が墜ちて行く。


【行け行けー!砲撃で仕留めろ!】

【おいおい、撃ち過ぎて輸送物資に当てんなよ】

【当たり前だ。無理してコレだけの戦力を集めたんだ。それに敵の戦力も()()()()。エース機に金と兵器がたんまり詰め込まれた車列】

【これから先は早い者勝ちだ。野郎共!一気に車列を奪え!捕虜なんて要らねぇからな!】


 何も考えずに乱雑に撃ちまくる敵戦車部隊。一時的に建物に隠れていると足元に何かが転がっていた。

 何かと思えばボロ布を身に纏っている子供達だ。誰からの救いも無い子供達。仮に生き残れたとしも飢え死にするか捨て駒にされるかのどちらかだろう。


「ふん。死んだ目ェしやがって。まるで……」


 その先の言葉をグッと飲み込む。今は過去に感傷を浸ってる場合では無い。敵戦車部隊がいる場所に視線を向ける。


「まぁ良いさ。弾切れするまで我慢する予定だったが止めだ。今回はサービスだ」


 そしてバレットネイターを広い場所に移動させてから一気にブースターを吹かす。


「ダンス1、2。俺が突破口を作る!其処から叩き潰すぞ!」

『おいおい、本気か?まだ敵には弾がたんまり残ってるぜ?』

「弾が残ってる方が戦車破壊した時にデカい花火が上がるからな!季節外れの花火大会の始まりだ!」

『うわぁ……本当に行っちゃった。頭可笑しいんじゃない?でも、そう言うの嫌いじゃ無いけどさ!』

『ヴィラン1に感化されるな。彼奴は、一応認められたエースだからな』


 バレットネイターで街中を駆け抜ける。廃墟と化しているビルへと向かい屋上へと跳んで行く。

 高い場所から敵の居る方へと視線を向けると、それなりの数が揃っている。しかし身勝手な機動をしている輩を見るに、統率が取れてる訳でも無さそうだ。


「ネロ、今から敵に向けて接近する。その間にマルチロックしてミサイル全弾発射。空になった武装は即時パージしろ」

「了解しました。マルチロック開始」


 そしてバレットネイターの背中のメインブースターを一気に吹かし加速させる。地上でもバレットネイターの機動力は健在で、並大抵の相手なら直ぐに対処出来る自信がある。


「警告、敵部隊の中にECM車両を確認」

「え?マジで?」


 敵部隊を射程に捉えたのと同時に、敵のECM車両の操縦者は勝ちを確信する。


【獲物が掛かった!然も相手は特上物だ!】


 ECM車両から強力なECMが発動。その結果、レーダー、ロック機能、ロックオン警戒が無効化される。


「警告。戦闘システムに異常発生。対ECM解析を開始します」

「頼むぜネロ。だが、何であんな物がこんな所に。然も何台かあるみたいだし」

【どうだ!驚いたか!だが一番驚いたのは俺達だ!】

「何だと?どう言う事だ」


 敵がオープン通信で話し掛けて来たので此方も繋げる事にした。


【気になるか?気になるよなぁ!】

「いや別に。どうせ闇市で偶々転がってたんだろ?」

【ちげぇよ!馬鹿野郎!これはな、全部置いてあったんだ!】

「お、置いてあっただと?」

【その通りだ!然も鍵は付きっぱなしで詳細の説明書付き。これは間違い無い……誰かの落とし物だ!】


 ドヤ顔で言い放つゴロツキ野郎。そんなゴロツキ野郎を見て一瞬頭の中が真っ白になった。そして次の瞬間には苛立ちが一瞬で湧き出て来たのだが。


「ピュアかテメェは!何が落とし物だ!季節外れのサンタでも信じてる口かよ!」

【いいや!絶対に落とし物だね!然も相当なおっちょこちょいさんに違いねぇよ!】

「本気で信じてる口かよ。何でこんな奴がこんな悪党に成り下がってるんだか」


 いや、純粋故に食い物にされて来たのか。どちらにせよ既に郊外に出て敵戦車の射線に入っている。此処で止まって反転すれば良い的になる。


 なら、やる事は一つのみ。


「戦車で近接戦闘はキツいよな。尤も、俺は大した問題にはならんがな!」


 敵戦車部隊に向けて空から一気に接近する。対空砲や対空ミサイルが迫る。シールドを構えながら回避機動を取りながら60ミリショットガンの射程内へと入り込む。


「先ずは鬱陶しいECM車両から潰す!」


 このままだと味方との通信が出来ない。ならば障害となっているECM車両を破壊する。


(しかし、完全に分断されたな。だが向こうは問題無いだろう。腐ってもベテランだ。簡単にはやられたりはしない)


 ならばと思い一気に接近し乱戦に持ち込ませる。


【死にに来たか!戦車!しっかり狙えよ!】


 しかし、敵も馬鹿では無い。簡単には近寄らせない為に多数の戦車から断続的に砲撃が来る。それを左右に回避しながら避けて行く。


【近寄らせるかよ。弾幕!派手に撃ちまくれ!】

【穴だらけにしてやるよ!】


 敵MWから対空砲による弾幕が形成される。なので一度地面に着地しながらスラスターを使い滑走して行く。


【撃て撃てー!奴はこっちには近寄れてねぇぞ!】

【おい!前の奴邪魔だ!射線に入ってる!】

【邪魔すんな!撃ち殺すぞ!】

【ふざけんな!この下手糞が!味方に当ててんじゃねえぞ!】


 流石にゴロツキとは言え味方を簡単には撃てない。その為、僅かだが対空砲による弾幕が薄れる。その一瞬の隙が俺にとって何よりも大事な瞬間になる。

 僅かに弾幕が薄れた瞬間を狙って一気に近付く。そして左腕に搭載されているビームガン付きシールドを構えながら撃つ。

 ビームは敵MWに直撃して爆散。そのままビームガンの射程内の敵MWを狙って行く。


【押し込め!このまま数に物言わせて行けば勝てるんだよ!】

【兎に角撃ちまくれ!そうだ、出し惜しみは無しだ!】

【き、来てる!こっちに来てギャッ⁉︎】

【戦車は敵の足を止めろ!】


 景気良く対空砲を撃ちまくる敵MW。ゴロツキの割に資金は潤沢なのかも知れない。


 だがそんなに撃ちまくっても大丈夫なのかな?


「そろそろリロードが必要なんじゃない?」

【え?あ、やべ】

【あ、こっちもそろそろだ。誰か援護しろ】

【いや、お前は俺の援護しろよ。リーダーだぞ俺は】


 そして次の瞬間、弾幕が一気に薄れる。


「ECMの逆探知完了しました。敵ECM車両の位置をレーダーに表示します」

「ナイスタイミングだ!」


 操縦レバーを前に出しバレットネイターを加速させる。そして目の前の敵MWに対しビームガンと60ミリショットガンを同時に撃つ。

 敵MWは穴だらけになりながらバランスを崩し爆散する。そして爆煙を突き抜けながら目視でECM車両を確認。


「よくもまあ、梃摺らせてくれてくれちゃって」


 射程に捉えたECM車両を60ミリショットガンで吹き飛ばして行く。二台、三台と破壊して行くと徐々にレーダーやロックオン機能が戻り始める。


「残り二台」

「対ECM解析完了しました。戦闘システムを正常稼働します」

「じゃあECM車両は無視して行けるな!」


 戦車を蹴飛ばしながら敵MWを破壊。そのまま一気に距離を取りながら反転。ミサイルロックを開始する。

 そしてネロの能力により一瞬で敵集団のマルチロックが開始。


「目標、マルチロック完了しました。いつでもどうぞ」

「八連装ミサイル全弾発射!精々俺を嵌めた事を後悔しながら死んで行け!」


 八連装ミサイルのミサイルを全弾発射。そのままミサイル群は次々と敵集団に向けて突撃する。

 ミサイルに対し迎撃をする敵MW。その隙にビームガンを撃ちながら邪魔ついでに破壊してやる。


【何でECMが効かないんだ‼︎うわああああ⁉︎⁉︎】

【に、逃げろ!もうMWが全部やられちまった!】

【退け退けー!こんな事で死んだら洒落にならねえ!】


 要となってたECM車両の効果は無くなり、MWが全て撃破された。そうなると敵戦車は一斉に後退を開始する。

 そして俺は空になったミサイルポッドをパージしながら取り残されたECM車両の前まで来る。


【ま、待ってくれ!降参だ!降参する!】

「降参ね。お前は嫌いじゃないから生かしてやるよ。だが、もう一台はダメだがな」


 そう言ったら二台のECM車両から人が出て悲鳴を上げながら逃げ去って行く。どうやら俺の言葉はイマイチ信用が無いらしい。


「ま、良いか。別に敵から信用とか要らないし」


 そのままECM車両を60ミリショットガンで吹き飛ばす。そして味方との通信を繋げる。


「よう。そっちの調子はどうだ?こっちは敵が尻尾を巻いて逃げてる所だけどな」

『やっと繋がった。まさか敵がECMを使ってくるなんて』

『そっちは無事な様だな。全く、こっちはこっちで市街地でゲリラ戦されてたんだぞ』

「ゲリラか。なら俺のショットガンの出番だな。今からそっちと合流する。ダンス1はもう一度索敵してくれ」

『なぁ、そっちは味方のサラガンと通信は繋がらないのか?一応敵を倒してはいるんだが』

「知るかよ。俺は孤高を気取ってるナルシストの相手なんざ御免だからな」


 既に残党処理に入っている。一時はどうなるかと思ったが、所詮はゴロツキ相手だ。装備も質も俺達に勝てる筈もない。


(なら何でECM車両を連中に渡した?それなら自分達で使った方が良かった筈。本当に墜とし物だったとか?いやいや、そんな馬鹿な奴は居ない)


 なら一体何故と考えた瞬間だった。一筋の高出力ビームが空を駆け抜ける。そのビームの狙いはダンス1。

 つまりチュリー少尉のフォーナイトが狙われたのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こちらの手の内を知っているであろう相手の罠。手ぐすね引いて待ち構えるも兵士が寄せ集めだからやりようはある。ただしまだ第一陣。きっと罠は何重にも。 チュリーちゃん大丈夫か!? [一言] 通常…
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