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即席エレメント

 ザードル星系。惑星ダムラカを中心とした一部の場所が大規模に消滅した場所。星系全ては封鎖されてはいないものの、地球連邦統一政府から封鎖命令が下された事により経済的価値が低下。

 更に元々戦争する為に傭兵からガラの悪いゴロツキも集まっていた事もあり治安は一気に悪化。今や一般人と呼べる存在はザードル星系から大半が出て行ってしまい、残ってるのは貧困層や利益の為に活動をしている商人や企業。

 そして帰るべき故郷を失った惑星ダムラカを中心とした私兵共だろう。

 それから約五十年の年月が経ち宙賊からマフィアが居座る危険地帯へと変貌を遂げたのだった。更に貧困層が食い物の為に宙賊やマフィアに入る事で治安の悪化に貢献していた。


「遂に来てしまいましたザードル星系。今の気持ちを一言で言うなら猛烈にドキがムネムネしてきたぜ」


 要はパワフル全開って奴だな。これから激しい戦闘になるのは明白だし。

 エルフ艦隊は戦艦アルビレオを中心として六隻の巡洋艦が周辺を囲みながら艦隊陣を維持しながらハルマ宇宙ステーションに向かっていた。先ずはそこで情報収集を行うとの事だ。

 ちょっとした別の話になるが実は駆逐艦とフリゲート艦と言う艦種は主要三ヶ国の軍にとって表向き戦力としてカウントしていない。何故なら主要三ヶ国は巨大な戦力を保有している。

 つまり巡洋艦や戦艦なんて腐る程ある訳だ。更に超級から弩級に要塞級も保有してる事から駆逐艦の存在は必要としてないのだ。無論対AW用や偵察としても使えるがAWは自軍も保有してるし偵察なら偵察艦が有るから要らない。

 つまりこの二つを戦力として数えることは正直無いのだ。火力も低いしダメコンもイマイチだし。足が有るとは言え巡洋艦も戦艦も充分速い。

 強いて言うならコストが安い事位だろう。それらを考慮すると駆逐艦とフリゲート艦は必要無いと結論が出てしまうのだ。

 だが辺境派遣やザードル星系の様な場所となると話は別だ。態々辺境に正規の戦力を使うのはコストが合わず勿体ない。そもそも正規戦力は対主要国に使うべき戦力だ。

 そこで白羽の矢が立つのが駆逐艦になる。それに軍の駆逐艦なら海賊風情の旧式巡洋艦相手なら充分対応出来る。腐っても銀河の覇権争いをしてる軍だ。駆逐艦、フリゲート艦とて性能は高くなるのは必然だ。


「まあ駆逐艦が居る=辺境もしくは危険地帯なんですけどね」


 たった今窓から宇宙が見える所から地球連邦統一軍の駆逐艦を中心としたパトロール艦隊とすれ違ったのだ。もう此処が戦場に突入した事を意味している。


「さて俺の仕事がやって来るか。報酬分はやらせて貰うけどな」


 今でも見知らぬ場所では誰かが死んでる。ビームで死ぬか弾丸で死ぬか。はたまたベッドの上で腹上死なんてのもあるだろう。下らない事を考えながら飽きもせず宇宙を見続ける。

 それから数時間後に艦内アラームが鳴り響くのだった。





 艦内は戦闘員が慌ただしく各自の持ち場に着いて行く。それは俺達傭兵も変わらない。俺はパイロットスーツを着て格納庫に行き、自機であるサラガンに搭乗していた。


「兵装はD装備で行こうかな。偶には対艦攻撃でもしないと腕が鈍っちまうからな」


 D装備とはAWでの対大型対応装備だ。各勢力によって多少変わるがロマン系が多い。

 そして今回の目玉商品が手持ちの対艦ビームカノンだ。背中に冷却装置と対艦ビームカノン用プラズマジェネレーターを装備。更に追加ブースターを装備して機動力は確保しているが通常機より機動力は落ちている。武装が対艦ビームカノン一門、対人用12.5ミリ、接近用のサーベルのみとなっている。


『了解しました。キサラギ軍曹はD装備で出撃。敵艦隊は民間船を改造した船を中心としている。数は二十と多い。また旗艦と思われる巡洋艦も確認出来た』

「つまりメインディッシュはそちらのお姫様にと言う訳ですね。なら俺は前菜を頂こうかな」

『何方でも構いません。キサラギ軍曹のコールサインはトリガー5です』

「トリガー?引鉄かよ。俺達傭兵に対する当て付けか?」


 機体に各種ブースター、追加装甲、武装が装備されて行く。そしてカタパルトの前に移動する。


『そう言う訳ではありません。ですがこれは決定事項です』

「別に怒ってねえよ。誰が決めた知らねえけど中々センスがあって良いじゃないか」


 カタパルト接続の表示がモニターに出る。そしてハッチが解放され漆黒の宇宙が目の前に広がる。


「シュウ・キサラギ軍曹。トリガー5、サラガン出るぞ」

『御武運を』


 赤いランプが青に変わる。その直後凄まじいGが掛かるが気にしない。寧ろこの感覚は堪らなく好きだ。そして他のエルフの連中と傭兵達が徐々に追い付いて来る。


『トリガー1よりトリガー各機機体状況を知らせろ』


 トリガー1にはどうやらジャンボになった様だ。だがジャンボの搭乗機体が可笑しい。何故か白い軽量機がトリガー1の表示になってるのだ。


「ジャンボ、お前何で軽量機なんだよ。ジャンボの体格なら重量機か大型機だろうが!イメージが合わねえじゃねえか!後コクピットに入るのか?」

『喧しいわ!つうか、いつまでジャンボと言ってるんだクソガキ!俺はアーロン・ラスカル大尉だ!それからコクピットは特注だ!』


 律儀に質問に答えるジャンボ。しかしコクピットの特注か。今まで一度も聞いた事ねえや。


「アーロン大尉ねえ。まあ悪くない名前だな。イメージにはそこそこ合うからな」

『何で俺の名前までイチャモンつけなりゃならんのだ。いい加減にしろよクソガキ』

「ゴメーンね、テヘペロ」


 右手を軽く握りコツーンと頭を叩く。その瞬間四方からロックオン警報が鳴る。


「あらやだ今のダメだった系?マジでごめんなさい」

『下らない事言ってる暇はないわよ。それに時間も無いからチャッチャと終わらせるわ。トリガー3異常なしよ』

『トリガー2異常無しです。自分は狙撃仕様なので後衛に移動します』

『トリガー4。異常無し。配置は中衛希望』

「トリガー5異常は無いよ。俺は対艦攻撃するから暫く慣性航行してるわ。じゃあ前線は宜しく」


 俺はそう言って上に移動する。やっぱり対艦攻撃って言ったら直上からだろ。敵機直上!とか言われたいじゃん。

 因みにバーグス中尉は狙撃仕様のマドック。ミクニ少尉はトリッキー仕様のマドック。チュリー少尉の搭乗がこの辺りでは珍しいガルディア帝国軍の可変機【FA-14フォーナイト】だ。


『勝手な行動はするなトリガー5。まずは陣形を作れ』

「何言ってんだよ。俺達に連携が出来ると期待してるのか?そいつはナンセンスだぜトリガー1。どいつもこいつも我の強い連中だしな」

『あら言うじゃないトリガー5。そう言う貴方も我が強いのかしら?』

「おうよ。そもそも連携取る気ならハナっから対艦仕様で出て来ねえよ」


 それに大半が民間船がベースの奴らばかりだ。獲物は早い者勝ちな展開になるのは必然だ。


「じゃあ俺は先に行くぜ。各機の健闘を祈る」


 そう言ってそのままサラガンを上に加速させ移動させる。後は敵にバレない事を祈りつつ暫く様子見だ。


「冷却装置稼働開始。デブリの中に紛れれば簡単にはバレねえさ」


 そうこうしてる間に戦艦アルビレオと巡洋艦から砲撃が開始される。宙賊艦隊は足の速い船が多いのか機動力を駆使して此方の艦隊との間合いを埋めようと必死だ。

 そして巡洋艦の砲撃を受けてシールドを一気に減らされた宙賊の艦艇は後退してシールド回復をする。更に此処で両陣営のAW隊による戦闘が開始。


【数で押し潰せ!エルフが乗ってるってんなら宝の山だ!命賭ける価値はあるぜ!】

【此処で踏ん張れば増援も来る。その後はお楽しみだぜ】

【向こうにも傭兵が居るみたいだ。けどな数が違うんだよ数がな!】


 宙賊のAW隊は数では此方を上回っている。しかし残念ながら連中のAWは殆どが簡易型の宇宙戦仕様だ。

 確かに宇宙戦でのAWの性能は後付け装備で多少は賄われる。だが簡易型となると高い戦闘機動は無理な話。それなら戦闘機に乗ってた方が幾分かマシだろう。

 結果としてエルフと俺達傭兵のAW隊の方が宙賊のAW隊を圧倒していた。


【帝国軍のフォーナイトだ!畜生、何でこんな機体が居るんだよ】

【つべこべ言う前に撃て!弾幕張れば簡単には近寄れねえよ!】


 宙賊のAWが手持ちのサブマシンガンやアサルトライフルで弾幕を張る。しかしチュリー少尉は巧みにフォーナイトを操作し宙賊を翻弄する。


『チュリー少尉ばかりに負担を掛けるつもりは無い。トリガー1行くぞ』


 するとトリガー1ことジャンボの駆る白い軽量機AWの【XBM-001Aラプトル】が敵に向けて突撃を開始。45ミリサブマシンガンを片手に一気に間合いを詰める。

 トリガー1に気付いた敵は攻撃を開始。だが弾は当たらない。ラプトルは最低限の回避機動であっという間に間合いを詰める。そして近距離から45ミリサブマシンガンが敵に襲い掛かる。


【コイツはエースぎゃ⁉︎】

【距離を取れ!距離を!味方に当たっちまう!】

【あ、あ、あああ!来るな来るな来るなあああ⁉︎】

【あっという間に三機やられた。畜生ふざけガッ⁉︎】


 更にチェリー少尉が飛行形態で敵機に突撃。そのまま流れる様に敵機を撃破。更に人型形態になりプラズマサーベルを展開し敵機を斬り裂く。


『やるじゃないトリガー1』

『そちらもなトリガー3。次狩るぞ』

『りょーかい。トリガー3行くわよ』

『後ろは任せろ。このまま援護する』


 即席の連携を作り宙賊のAWを次々と撃破して行く。

 そして別の戦場ではバーグス中尉とミクニ少尉が宙賊相手に善戦していた。


【狙撃だ。何処にいやがる】

【それよりコイツは何なんだよ。ワイヤーやらネットを使いやがって。テメーは手品師かよ!】

【カスタム機が何だってんだ。くたばりやがれ!】


 既に多数のAWの残骸が浮かんでる中ミクニ少尉は敵機に向かって攻撃を行う。無論敵機は回避して反撃をするが照準がイマイチ定まらないのだ。ロックをしようにも普段より数秒程時間が掛かる。だがその数秒で何機も仲間がやられて行くのだ。


『トリガー2よりトリガー4。次は左の奴から仕留める』

『トリガー4了解。動きを止める』


 ミクニ少尉は敵機に近付く。無論敵も簡単には近寄らせない。だがミクニ少尉ばかりに気を取られると何処からともなく狙撃される。


『ECM装置問題無し。このまま混乱させ続ける』


 ミクニ少尉の機体の背中にはECM装置が付いていた。それは周辺の敵に対し非常に効果がある。

 敵機のシステム関係を遅滞させるだけでなく通信障害により増援を止める事が出来ていた。更にミクニ少尉の機体には様々なギミックがあり敵機を翻弄し続けた。


『流石だね。此方も捉えた』


 更にバーグス中尉による的確な狙撃は敵に対し非常に恐怖を与えていた。特にレーダーが致命的に使えなくなってしまっていた為逆算して狙撃位置を特定出来ないでいたのだ。


【死にたくねえ。死にたくねえよ!俺は逃げるぞ!】

【馬鹿!敵に背中を見せると、案の定無駄に死にやがって。使えねえ野郎が】

【兎に角目の前の奴を倒せ。そうすれば通信も回復する。一気に攻めッ⁉︎】

【また狙撃だ。デブリに隠れろ。隙を見て敵を倒すしかねえ】


 宙賊はたった二機によりジリ貧の戦闘を行うしか無かった。優れた兵器と数だけで普通以下の兵器との差が如実に現れてしまった戦闘になってしまったのだった。

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