表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/52

~Interlude 1~

 闇の中、俺は、沼をさまよっていた。


 膝のすぐ下の辺りまで、液体に浸かっている。


 泥濘(ぬかるみ)に脚を取られているせいで、足取りがひどく重い。


 もの凄い疲労感を感じる。


 どれくらい歩いたろうか。1時間ぐらいかもしれないし、丸1日かもしれない。

 時間の感覚が狂っている。


 唐突に、紫色の稲光が、俺を一瞬照らし出した。


 ズドゥーーゥゥンッッッ!!!


 稲光のすぐ後に、大砲の様な轟音。

 俺は轟音にひるみ、ぶざまに尻もちをつく。

 

 俺を直撃こそしなかったが、落雷は俺から50歩ほど先にある前方の枯れ木を襲っていた。


 枯れ木はたちまち燃え上がり、その枯れ木の周囲にある別の枯れ木達も、ほどなく炎の洗礼を受ける。


 俺がいる沼の周囲は、枯れ木の森だった。いや、今や炎の森だった。


 炎に照らされ、辺りが見える様になり――


「うわぁぁっ!!」


 俺は情けない叫び声を上げ、尻もちをついたまま後ずさった。


 俺の右斜め前には、ローブに身を包んだ若い女性が横たわっていた。

 そのさらに右側には、板金鎧で全身の護りを固めた(いか)つい初老の男性が倒れていた。

 俺の左斜め前には、武闘着を(まと)った長身の若い女性武闘家が横たわっていた。

 そのさらに左側には、牧童カウボーイ風のいでたちの青年男性が倒れていた。


 全員、血みどろ。到底、生きている様には見えなかった。


 辺りには、大きな杖、長大な両手棍、手甲鉤(てっこうかぎ)、短剣などの装備品が散乱し、半ば沼に埋まっている。


 赤い沼。それは、血の沼だった。


 唐突に、むせ返る様な血の匂いが鼻腔に充満する。


 ――おかしい! なぜ、今まで血の匂いに気付かなかった!?


 良く見ると、俺がいる所は、厳密には沼ですらない。


 何か巨大な生き物――おそらくは巨大な鳥――の背中だ。


 無残に切り裂かれた体から、溢れだす(おびただ)しい血液。それが、血の沼の様になっていたのだ。


 再び、紫電の稲光と雷鳴。


 俺が思わず顔を上げると、俺の目の前には、巨大なものが立ちはだかっていた。


 2本の腕と4本の脚、一対の巨大な翼と太く長い尻尾。

 そして、2本の拗じくれた巨大な角と、人間の様にも爬虫類の様にも見える顔。


 そいつの体は闇そのもので出来ているかのようであったが、燃え盛る炎の森がそいつを照らしだしていたので、俺はそいつの輪郭を捉える事ができた。


 そいつは邪悪な笑みを浮かべ、俺に向かって両腕を伸ばす。

 ――かなりの距離があったはずなのに、俺はいつの間にかそいつの両手に捕えられていた。


 そしてそいつは俺を丸齧りにしようとして、大きく口を開け――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ