~Interlude 4~
その男は、書斎で書き物をしていた。
そのそばに、人影が微動だにせず立っている。
タブレットとブルートゥース方式のキーボードを用いて書き物をしているその男は、50代前後ぐらいに見える。指の動きはかなり速い。彼の場合、たぶん、AIアシスタントに口述筆記させるよりも速いだろう。
豊かな黒い頭髪。同じく豊かな黒髭。鼻は頑固さを思わせる鷲鼻。
その濃い灰色の双眸は穏やかさと抜け目無さを湛えている。
全体的に厳つさを感じさせる顔だが、威圧的ではない。何となく人に安心感を与える顔である。
顔と同じく、体も厳つい。身に着けている紫のガウン越しに、肉体の屈強さを窺える。
その男のそばに微動だにせず立つ人影は、黒い頭巾付きの外套を纏い、全身を板金鎧で固めているように見えた。
その人影の装備品でひときわ異様な物は、髑髏を思わせる鉄仮面と思しきものと、大鎌と思しきもの。
鉄仮面と思しきものの双眸は赤く光り、大鎌と思しきものの柄は真っ直ぐで頑強に見え、銀色の光沢を帯びている。
大鎌と思しきものの柄は、むしろ『両手棍』に見える。
その上端の側面には窪みが有り、窪みからは大きな黒い刃が付き出ている。
それは、あらゆる波長の光を吸収するかのような、黒だった。
書斎の壁は、概ね、本棚で埋め尽くされていた。
どの本棚にも、本がぎっしり詰まっている。
中でも、数学・物理学・化学・生物学、そして神学・比較宗教学・歴史学・民俗学・文化人類学などの本の多さが目立つ。
不意に、その人影が紫のガウンの男の耳元に顔を近づけ、何かを囁いたかのように見えた。
紫のガウンの男は動じる事もなく聴いているかのように見えたが、不意に、キーボードを打つ手を止めた。
紫のガウンの男は腕組みをし、天井に視線を向け、呟いた。
「ふむ……どうしたものかのう……」




