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ザ・サプリーム・ファシスト ~傍迷惑な召喚の儀式  作者: 鶴鴇屋徳明
第3章 初邂逅(ファーストコンタクト)
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彼の原則

「君が駅のホームで消滅させた幻影の話に戻ろう。

 あの幻影は君曰く「雑兵」との事だが、あれも、敵の首領の分身のうち1体なのか?」


〈その可能性は極めて高いです〉


 おや? 断言するかと思ったんだが。


〈月軌道からの遠距離観察にとどめていた期間が長かったので、私も最近気付いたのですが、地球には、超対称粒子で構成された地球由来生命体の生態系が存在しています。

 しかもそれは、私の敵の首領が地球に逃げ込む以前から存在していたようです〉


 ……え、何だって!?


〈もっとも、先程も話した通り、地球を構成する物質のうち超対称粒子は通常粒子に比べて10分の1に満たないため、複雑な生態系にまで発展できず、私や私の敵の首領と同等の段階にまで進化した知的生命体は存在しなかった様ですが〉


「……ある程度の知能を持つ、超対称粒子で構成された生命体――言わば、地球由来の『超対称生命体』――が存在してきた可能性は否定できないわけだな?」


〈はい。あの「雑兵」は、地球由来の超対称生命体が、首領によって操られていたものか、『品種改良』されたものである可能性も有ります〉


 それは……この地球とその周囲の状況が、メルリンにとっても思いのほかやりづらい状況だという事だ。主に、彼の『原則』的な意味で。


「メルリン、君は、少しばかり前に『原則として、私の敵を滅ぼす事によって地球由来の生命体に多大な被害が及ぶ事を、私は好みません』と言ったな?」


〈はい〉


「君が教えてくれた知識に基づいて考えると、通常粒子から成る通常物質で構成された生命体と、超対称粒子から成る超対称物質で構成された超対称生命体は、極端な高エネルギーか、俺達人間にとって未知の量子重力効果を意図的に利用しない限り、互いに影響を及ぼせない。


 だから、もしも地球に土着の超対称生命体がいなければ、君は敵の生存徴候を確認した時点で、遠慮無く力をふるって敵を滅ぼし、さっさと故郷にでも帰れば良かったわけだ」


〈その通りです〉


「ところが、いざ敵を滅ぼそうとすると、地球に土着の超対称生命体に多大な被害が及びかねない事に気付いた。

 そればかりか、敵が地球由来の超対称生命体を操って通常物質側の地球由来生命体に干渉する事により、通常物質側の生命体まで巻き込みかねない事に気付いた」


〈はい。この様な状況で敵「だけ」をピンポイントに滅ぼすのは、私にとっても難しい事です。……何度か失敗もしました〉


「君は人間を遥かに超える力を持つが、決して全知全能の存在ではないし、無謬(むびゅう)でもないという事だな」


〈はい。ただ、今日の駅のホームの件では、放っておけば直ちに通常物質側の生命体――この場合は人間――に危害が及ぶ事が明らかだったので、あの雑兵について詳しく分析する余裕は無く、やむなく雑兵を丸ごと消滅させました〉


 なるほどね。では、次に尋ねるべき事は、これだ。


「メルリン、この一連の大がかりな話の中で、俺の存在が重要な意味を持つ局面をどうしても想像できないんだが、君は俺に何を期待している?」

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