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異世界にてぶん回す!  作者: 窟古ロゼ
プロローグ
1/9

廃課金王に俺はなる

初投稿です。

気になる部分や不満な点などありましたら、お気軽に感想欄へ書きこんで下さい。必ず全てに目を通し今後に生かしたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。


 高校1年の春、俺はバイトを始めた。


 人生初のバイト先に選んだのは学校の近くにあるラーメン屋。入学早々に店へ電話し、すぐに働き出した。

 平日は夕方5時~夜8時まで。土日は昼12時~夜8時まで。

 結構な人気店で客足は絶えず、時給は良いんだがそのぶん忙しい。

 店長は40歳前後のおっさんで、頑固一徹を絵に描いた様な堅物だ。堅物というか、もう鬼だ。

 馬鹿だの阿呆だの鈍間だの、客の前でもお構い無しに罵倒される。

 学校から近いという理由だけでこの店を選んでしまったことを心底後悔したが、どうやら「口の悪い店長」というのがこの店の名物になっているらしく、店長も半ば無理矢理怒鳴っている節がある。

 従業員の俺からすると迷惑この上無い話ではあるんだが、「楽な仕事なんて無い」と自分自身を説得しつつ、今日も店長の罵声を浴びているのだった。


 さて、どうして俺がこんな理不尽を許容しながらもバイトをしているのか。

 高校1年の春といえば、まさに青春真っ盛り。周りのクラスメイトたちを見ても、友達づくりや部活選びに忙しそうにしている。

 勿論、女子生徒のチェックにも余念は無さそうだ。

 やれB組の女子のレベルが高いだの、陸上部に可愛い先輩が多いだの、そんな話があちこちから聞こえてくる。

 まあ高校生活が始まってからまだ1ヶ月も経っていないのだからこれぐらいが普通というか、むしろ新しいクラスメイトとの交流もそこそこにバイトに明け暮れている俺の方が珍しいんじゃないかと思う。

 きっと連中はこれからやってくる甘酸っぱくてわくドキな青春の1ページに胸を踊らせていることだろう。

 が、俺はそんなものにはこれっぽっちも興味はない。


 嘘です。めっちゃ興味あります。

 彼女欲しいです。

 放課後、二人並んで下校したいです。

 夕暮れの公園でキスしたいです。

 「今日、ウチ親いないから…」とか誘われてみたいです。

 そしてそのまま童貞を卒業したいです。


 だがしかし、俺はバイトをする。


 別に家が貧乏だからというわけじゃない。両親は共働きでマンション住まいではあるが、特に大きな借金を抱えているというわけでもなく、いたって普通の家庭だ。

 クラス内では、家に金を入れるために青春を犠牲にして働く健気で可哀想なヤツ、的な目で見られてたりもするようだが決してそうじゃない。

 そうじゃないが、この高校3年間はひたすらバイトに明け暮れると硬く心に決めている。

 なぜならば、


 ガチャをぶん回したいからだ!!!!!


 そう、ガチャだ。

 もちろん、100円玉を入れてレバーをガチャガチャと回す何故か外国人旅行者に人気のアレじゃあない。

 スマホゲームの方のガチャだ。



 思えば、この3年間は辛かった。

 

 中学の入学祝いに買って貰ったスマホで早速ゲームを始めたんだが、無料と謳っているくせに実質金をかけなければ楽しめない様な仕様のゲームが大半だったのだ。

 だけどそれはまだいい。良くはないけど納得はしてる。ゲーム会社だってボランティアじゃないからね。どこかで金を稼がないと会社としてやっていけない。中学生にもなれば、それぐらいは理解できる。

 だけど、俺が本当に絶望したのはそのあとだ。


 世の中、スマホゲーム如きに大金を投じる馬鹿野郎が多すぎる!!!!!!


 いったい何十万使ってんだよ!?ひょっとして何百万か!?そんなに金と時間をもて余してるのか?金で買った勝利がそんなに嬉しいのか!!?

 そしてある時、俺は気づいた。

 

 無料ゲームを本当に無料で楽しんでいる俺こそが真の勝ち組なんじゃね………?


 はい、言い訳です。

 負け惜しみです。

 金があれば課金してました。


 屁理屈で自分を慰め、ランキングなんぞ関係のない世界だと目を反らし、こつこつログインボーナスをためる日々。

 

 それが俺の中学3年間だった。



 おっといけない。ついつい思い出に浸ってしまっていた。


「ルンラッルン、ルンラッリン♪」


 スキップ&鼻歌オリジナルソングまじりに夜の町を駆ける。

 バイト終わり、9時を回っているとはいえ、まだまだ人通りは多い。小さな子供ならまだしも高校1年の男子がそんな姿を晒せば、当然周りからの視線は痛いモノになる。そんな事は分かってる。だけど止められない。溢れる幸せを押さえきれない。

 何故なら今日が給料日だったから!

 人生初給料日!

 理不尽店長の猛攻を堪え忍んでようやく迎えたこの日。俺の右手にはしっかりと茶封筒が握られていた。

 このあとの予定もバッチリ決まっている。


 まず家に直帰します。

 給料の額を確認します。

 スマホを起動します。

 限度いっぱいまで課金します。

 ぶん回します。

 以上。


 まあ馬鹿な奴だと世間は笑うかもしれないが、俺はこのためだけにバイトを始めたのだ。今更迷いは無い。

 例え今回のガチャで爆死しようとも後悔はしない。

 そう、これはほんの序章に過ぎないのだ。

 これからも俺はガチャを回す。回して回して回しまくる。

 いつかランキング上位でふん反り返っている連中を地の底に叩き落とす日まで。

 廃課金王、高山セイジ(俺の名前)の伝説は今日ここから始まるのだ!


 なんつってね♪



 ドグシャッッッ…


 ………


 …


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