思い
右から社長・私・未來さん・社長さんの順番で座った
その瞬間、記者の方々が一斉に喋り始めた
言い方はそれぞれ違っていたけど、簡単に言うとみんな同じことを言っていた
“ ニセモノが何でホンモノになりすましたのか ”
記者の方々の質問を受けて、顔色が悪かった未來さんはもっと悪くなった
記者の方々はそんなのお構い無しと言った感じでどんどん攻めていった
別に相手側に色々聞くために攻めていくのは私には関係ないからどうでもいい
でも記者の方の中にこういう質問をした人がいた
“ 本当に未來さんがニセモノで美結さんがホンモノなんですか?”
“ どちらにせよ、いっそのこと未來さんがホンモノとして活動すればいいんじゃないですか? ”
こう言った記者がいた
この言葉を聞いた瞬間私はイラッとした
でも隣にいるニセモノはこの言葉を聞いて少し希望を持ったようだ
...私が譲る?
ニセモノに?
私は歌がとっても上手いとは自分では思ってない
私より上手い人はこの世に何人もいると思う
けど私はニセモノの歌を聞いて絶望した
私は本当は少し期待していたのだ
自分より上手い人の生歌を聴けるって...
でも全然上手くなかった
こんな子に私の今までの努力を無駄にされたくないって…
このまま悪い方向に向かって行くのなら言いたいことを言ってやろうと_
「...すいませんがひとついいですか?」
私が喋ったことでさっきまでギャーギャー馬鹿みたいに喋っていた記者の方々は黙った
「今から大変失礼なことを言いますけどいいですか?...いいですよね。」
会場には私が喋っている声とカメラの音、そして隣ではニセモノが固唾を呑んでいる音が響き渡った
誰一人言葉を発さない
私が言う言葉を一文字も聞き逃さないように耳を澄ましているのがわかる
「COCONAって私の存在意義なんですよ
…私はこれまで努力をして来たつもりです。ボイスレッスンをしたり、肺活量を鍛えるために時間が開けば走り込んだり...毎日欠かさず絶対にやります。私も一応年頃の女の子なんで他の子みたいに遊んだり、恋愛したり、オシャレしたり...そういう事ももちろんしたい気持ちもあります。
でもやっぱり私は歌を歌うことが大好きだし、聞いている人に少しでも幸せになって欲しい...私は私に出来る最低限のことは絶対にやろう...そう思っています。
だから何って思う人もいるかもしれませんが私は私なりに頑張ってきたつもりです。なのに急に現れたどこの誰かもわからない人に私の頑張りを横取りされる筋合いはないと思うんです。
だから私はニセモノなんかにCOCONAという私の存在意義を簡単に譲るつもりなんかありません。
もし譲るとなったら全力でCOCONAという存在を潰しにかかるつもりです。」
私が言った言葉に社長を始め、記者の方々は驚きを隠せないのか口をポカーンと開けていた
「つ、潰しにかかるとは...」
さっき私にニセモノに譲るつもりはないかと言ってきた記者がオドオドしながら聞いてきた
「...COCONAって今まで顔出しなんてしなかったじゃないですか。それでファンの方が出来たってことは歌を聞いてくださってファンになってくれた筈なんですよ。だからCOCONAっていう存在は歌うのが専門なはずです。まぁ歌手としてデビューしているんですから当たり前ですけど...
別にCOCONAって名前じゃなくて違う名前でも私が歌っているってわかってくれる人はわかってくれると思います。
だからもし譲るとしたら...まぁ譲りませんけど...その場合は芸名を変えて再デビューして、また1からやり直してCOCONAという存在をどんどん薄くさせていきます。」
この騒動でテレビに出ていたCOCONAはニセモノだったって全国の皆さんは知っているはずだからファンはどんどん減る一方だと思うしね
私が喋ってから沈黙が続いていた
すると突然ガタッとした音が聞こえてびっくりして隣を見た




