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51 二人の正体は

更新が少し遅れましたが、最新話をお届けします。



「ところで……1つ、お聞きしてもいいですか?」



 ホッと安堵していると、金髪の方のエルフが俺を見て尋ねてくる。



「私達を助けてくれたあなたは一体、何者なんでしょうか? この方が創造神だと分かっていても、平然としておられるようですけど……」


「しかも馴れ親しく話しているなんて、考えられないです」



 もう一人のエルフも「気になる」といった風に口を開く。


 ……まぁ、それもそうだよなぁ。


 第三者から見れば、俺の立ち位置って「神様に馴れ馴れしく話しかけている、空気の読めていない人間」って感じだものなぁ。

 否定は出来ないけど。



「二人とも、言葉を慎んでいただけますか?」



 そこに、エルクゥが慈愛に満ちた笑みでもって答える。



「彼は、私が人間として身分を隠して数年間を生きた異世界での友人にして、私が異世界から招いた英雄なのです。無礼は許しませんよ?」


「えっ――」


「異世界の――」



 エルクゥがそう言った瞬間に、二人の目が驚きで見開かれた。

 そして二人が顔を見合わせた次の瞬間、姿勢を正すと顔を青ざめさせてガタガタと震えながら床に頭をぶつけるぐらいの勢いで頭を下げる。


 その形は――まさしく、DOGEZA。



『いっ、今までの無礼をお許しくださいっ、流れ人様っ!』


「えー……」



 見事に綺麗な形の土下座を見せられ、思わず口から言葉が漏れる。

 異世界まで来て、エルフの土下座とか俺は見たくなかったぞ。本当に。


 というか、どれだけ日本文化が浸透してるんだよ、ここ。

 この世界の場合、ホウライなのか?

 よく分からんけど。


 あと、俺としては別にそんなの気にしてないし、逆にそこまで畏まられるとこっちが困るんだが。



「えーと、二人とも顔を上げてくれる?」


「そんな、流れ人様に恐れ多い事を!」


「加えて、異世界の英雄だと知らず、数々の無礼を……一体、どうすればいいのでしょうか……」



 ……なんだろうなぁ。

 こっちの言い分も聞いて欲しいのに、勝手に話を向こうだけで進められるのは困るというかなんというか……少しだけ、イラッとする。


 だからちょっと――強めに「いっても」いいよね?



「よいしょっと」


「……?」



 ベッドに腰掛けていた俺が「床に」座り直すのを、リーディアは首を傾げて見ている。

 エルクゥは……多分、分かっているんだろうなぁ。声を殺すように口元を押さえて笑っているし。


 ミネルバとアルカナの二人は……ごめん。説明も面倒だ。このまま行こう。


 深く、1つ、深呼吸。

 胸一杯に息を吸って、身体に溜まった澱みと一緒に息を吐きだして――バチン、と意識を切り替える。




「……俺が顔上げろっつってんだから顔上げろよ、お前ら」




『――ッ!?』



 ミネルバとアルカナは突然の豹変に驚いて。

 リーディアは表情こそそのままだけど、驚きに目を丸くして。

 目の前の二人のエルフは、言葉に含まれてる冷淡さに気付いてか、ビクリと身体と一緒に頭を跳ね上げた。


 ……ただ一人、俺の事をこの中で一番に知ってるエルクゥだけが「あーあ、私しーらない」とクスクス笑っている。

 直接の原因はお前なんだからちょっとは黙ってろ駄女神。



「え、と……その」


「何か、私達が不快にさせてしまったんでしょうか……?」



 頭を上げて尋ねる二人のエルフの目には、あぐら座りで片肘で頬杖を付く、不機嫌オーラ全開な俺の姿が映ってるんだろう。

 どこのヤンキーだって話だが。


 まぁ実際、その通りなんだけどさ?



「……あぁん?」


「申し訳ありません、流れ人様ッ!」


「それだよ、それ。さっきから聞いてればなんだよ、流れ人だの異世界の英雄だのと。そんなもんで相手を判断するのかよ、この世界は」


「……あぁ。ナナキさんは「流れ人」についてはよく知らないんでしたね」



 笑っていたエルクゥが、二人に助け舟を出すようにウインドウを開く。

 異世界転移をする前に散々見た、あのウインドウだ。そこに映し出されている文字までは読み取れないが、俺がレベルアップした時に見る表記が並んでいるのは分かる。



「ウィルマキアに訪れる流れ人は、異世界転移や転生で定番となっている「能力強化」をある程度受けているんです。そのため、国を救う英雄として活躍することも少なくないんですよ。イシュマの町でも、吉兆の象徴だと言われていませんでしたか?」


「あー、そういや言われてたな。歴史的にも、名を残してる流れ人だっているんだろ?」


「はい。全員が全員ではないですけど、それぞれが何らかの形でこの世界に痕跡を残しています」


「なるほどねぇ……」



 俺もその一人だし、最初に会ったあの衛兵達の反応からも、ある程度の予測は出来たことだった。

 その後に会ったカタリナ達の反応も似た感じだったわけだし。


 ただ、今回に関してはエルクゥの「神の威光」に加えて、俺が「エルクゥに選ばれた」ってことが大きく関係してるんじゃないかと思うのだ、この二人の動揺の仕方は。



「……で、お前ら二人に色々と聞きてぇんだが」


「はひっ!」


「な、なんでもお聞きくださいっ!」


「……なんでも、か。俺はその言葉は大嫌いだ」



 それを耳にするたびに、鬼の首でも取ったかのように得意満面な顔をする奴らが浮かんでくるから、嫌なんだ。

 そんな事をこの二人に言ったところで、理解されるはずもないんだけどな。



「とりあえず、お前らが知ってる範囲で答えろ。いいな?」


「は、はい」


「よし。だったら、最初に……お前らは『何者』なんだ?」


「何者、とは?」


「種族がエルフなのは分かってる。俺が知りたいのは、お前らがどういう立場や職業にいたのか、ってことだ」



 あの魔族が手当たり次第に襲っては集めてた奴隷達の中で、後生大事にするかのように隔離してたんだ。

 何らかの要職にあった可能性はある。



「私達は……巫女をしておりました」


「神託を受け取り、それを国中に伝える役目をしていました」


「神託を伝える巫女……ね」



 それを聞いて、俺は少しだけ態度を軟化させる。

 加えて、エルクゥを覗き見てやれば、今にも笑いを吹き出しそうなくらいに口に手を当てて耐えているわけだが。



「どうせ、異世界から来訪する者が世界を救う救世主になる……とかそんな感じの神託でも届いたんだろ」



 バフゥッ! と笑いを堪えきれなくなったらしいエルクゥには、後で貫手でもぶちかましておく。

 この感じだと、エルクゥが手を回してそういう神託を流してそうだし。前例があるからな、こいつは。



「……まぁ、なんでアイツがあんたら二人を隔離してたのかは知らんが。とりあえず、あんたらが無事で良かった」


「そうだな、エルフの女性は奴隷として高値で取り扱われる。特に二人は双子だろう? 好事家なら大枚叩いても買おうとするはずだからな……」



 言われて、二人は震えを抑えるように自分の身体を抱き締める。

 ミネルバの指摘の通り、俺が来るのが遅ければ、そうなっていた未来もあったのだ。

 そんな結末だけは避けられて良かったが。



「とりあえず、今は安静にして英気を養うと良い。元の地に戻るにしても、別の道を歩むにしても、今の二人は体調が万全ではないからな」


「そう、ですね……」


「戦女神様の推察通り、私達はまだ回復しきれておりませんし……」


「回復、か」



 まだ顔の血色が良くない二人を見て、俺は気になったことを呟く。



「……そういや、あれから何日経ってるんだ?」


「えーっとね、今日で4日目だよ?」


「丸3日も寝てたのか、俺」



 それだけ、身体のダメージがでかかったのか……理由は分からなくもないけど。



 ーーぐぅぅぅ。



 しかも、こういうタイミングで俺の腹の虫が鳴るし……!



「……とりあえず、ごはん食べよう?」


「だな。我らの流れ人様は食事を所望らしい」


「ちょっ、二人もそんなこと言うなよ!?」



 エルフの二人が笑ってるから良いけど、流れ人だからっていうのは理由になってないだろ!?



「良いから病人はベッドで寝てろー!」


「うわぁっ!?」



 エルクゥに軽々と持ち上げられて、ベッドに投げ落とされた俺。

 ちょっとショックだったが、落とされた衝撃で頭がフラフラと。まだ安静が必要なのは俺も同じらしい。



「ご飯食べながらでも、自己紹介は出来るでしょ?」


「……まぁな」



 どうせ、飯が食べたいのはみんなも同じなんだろう。

 エルクゥに振り回されるのはいつもだが、今のこの時だけは素直に応じておく。



 ……どうせ、またとんでもないことに巻き込まれてるんだろうし、英気を養っておくに越したことはないのだから。


次回更新は可能な限り、1週間以内に投下したいと思います。


…しかし、ここ最近の「更新が遅れてるのに増加してるPV数」は自分でも不思議です。告知は話数更新時の時にしかしてないので。

誰かが拡散してくれてるんでしょうか…それだったらありがたいですね。

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