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34 闇市場への潜入


「……失礼。奴隷をお探しですか?」



 奴隷市場に繋がっていた店を離れ、宿を探そうとマップを広げていると……隣に立っていた商人風の男がそっと尋ねてきた。

 近付き過ぎてはいないが、それほど離れている訳でもない。

 お互いの声が届く距離、というものを熟知している。


 この手の商売に手馴れている感じがするのだ。



「……まぁ、探してはいるけど」


「でも、良い奴隷は見つからなかった……そうでしょう?」



 そもそも「探そうともしていなかった」のだから見つからないのは当然なのだけど……この商人風の男を食いつかせるために頷いておく。

 すると、横目で見える範囲ではあるが、にやり、と男の口元が動いたのが見えた。



「でしたら、私が『良い場所』にご案内しましょう」


「良い場所?」


「えぇ。あの奴隷市場よりももっと上質な奴隷が集まる場所です」



 ……なるほど。

 こうやって、ギルド管轄の奴隷市場では物足りない客を闇市場に案内をしている、という事か。


 思いがけずに事が上手く進んでいる事に、今度は俺が心の中で微笑む。


 俺がカタリナから受けた依頼は『闇市場の実態を調べ上げると共に、可能ならばその裏で暗躍している魔族がいるなら討伐をする』というもの。


 闇市場が何処で行われているかが分かれば、魔族の討伐は出来ないでも闇市場の解体は行える。

 時間を置けば復活するであろうイタチごっこでも、時間を稼げるのであればギルドとしては充分なはずだ。



「案内を頼めるか?」


「えぇ、もちろん。私の後を、何食わぬ顔で付いてきてください。偶然、通る道が一緒だ、というように」



 そう言うと、商人風の男はこそこそとした動きをせず、むしろ堂々とした動きで通りを歩いていく。


 ……あぁやって歩けば、他の人間からは「怪しい」とは思われない。

 人の心理の裏を付いた、巧妙な手段だと言えるだろう。


 俺もマップをしまうとタイミングをずらして歩き始め、男の後ろを少し離れた距離で付いていく。


 もちろん、視界の中心にサーチマップを展開させて【敵性情報解析】を最大限に稼動させる。

 ある意味、敵の本拠地の中に入るようなものだ。警戒をしておく事に越した事はない。



(しかし……この先には何があるんだ?)



 マップを見ていた限りでは、この先には商用の施設は全くない。

 商店街や武具商店の横を抜け、どんどん進んでいく。この先は住宅地だぞ?

 だからこその闇市場なのだろうが……一体、どこに行こうとしているのか。


 通りを歩く人達の姿もまばらになり、それでも後を付いていくと――



「……領主館?」



 ルコミスの街並みを見下ろす高台に建てられた、地方領主が住むために作られたであろう館が見えてきた。

 その館の門を押し開き、男は中へと入っていく。

 チラリと見えた門の中には、衛兵と思われる兵士が何人も立ち並んでいる。


 ……ここまで付いて来て、中を確認もせずに帰るには圧倒的に証拠と情報が足りない。

 証拠となる何かを外で確保出来ればいいのだが、そんな都合の良い話はないのも事実。


 だからといって、中に入った事で命の保障もされる訳ではないのだが。



「……入るか」



 覚悟を決め、いざとなればチートをフル活用して逃げる準備を整えておく。

 そして門を押し開いて中に入ってみれば、先に入っていた商人風の男がこちらを向いて待っていた。



「お待たせしました。どうぞ、こちらです」



 先導する男の後ろに付いて、館に入る。


 絢爛豪華、という程ではないが飾り付けられた内装。

 今の俺では買う事も出来ないであろう金額だと分かる装飾品や展示物の数々。


 サーチマップに表示されている現在地情報は『ルコミス領公爵邸』となっている。


 この町は国境に程近い事もあって、貴族が管理をしているんだったな。

 ……その貴族が闇市場の支援をしている、という事なのだろうか?



(……まだ、そうだと判断するのは早いよな)



 敵性反応は出ていないが、何かあれば一斉にサーチマップが真っ赤に染まるであろう状況に、俺は意識を研ぎ澄まさせる。


 俺という異物を飲み込んでいる以上、何かあればすぐに手を返すのが敵地だ。

 打ち直しをして貰っている打刀の代わりに腰に下げているグラディウスの位置をさりげなく確認しつつ、俺は前を進む男に尋ねてみる。



「ここには、どんな奴隷が売っているんだ?」


「何でも取り揃えていますね。年頃の女の性奴隷もおりますし、魔術の標的用に子供の奴隷もいます。値は多少張りますが、他の大陸や秘境でしか見かけないような珍しい種族の奴隷もおりますが」


「……ッ、へぇ」



 下品た笑いと共に、奴隷について説明する男。

 その笑いと説明の内容に嫌悪感を覚えたが、それを口から出る前に飲み込んで、何とか話を合わせる。


 ……何も証拠を掴めていないのに暴れても意味がないし、相手の思う壺だ。

 腹立たしさはあっても、今は耐えなくては。



「ちなみに、相場は?」


「それこそピンキリですね。最も安い奴隷は1万ゼニーからですが、希少価値の高い種族の奴隷ともなれば1億以上の価値も付きますからな」


「1億……」



 それだけの価値が付く奴隷というのは、どんなものなのだろうか。

 買う事は無理でも、ギルド側に情報を届ける意味でも見る事は出来ないだろうか。



「買う前に、奴隷を見る事は出来るのか?」


「もちろん。ご覧になられますか?」


「あぁ。今は手持ちがないが、準備して後日に取引をしに来たい」


「分かりました。ご案内致しましょう」



 購入の意思がある、と相手に受け取らせておけば、ここに出入りがしやすい。


 あくまで、今は潜入調査だ。

 依頼の内容を履行するには……まだ、調べ上げなきゃいけない事が多すぎる。



(そのためにも、まずは『奴隷の状況を確認』しないとな……)



 裏市場と言われているんだ。

 まともな奴隷の仕入れ方はしていなさそうなもんだが……果たして。



少しずつではありますが、もうすぐで一つめの山場に辿り着きます。

まぁ実際、予想がつく展開かもしれませんが。えぇ。

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