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22 完全に向こう岸にイッてる輩をまともに相手するのは厳禁


「……はぁっ」



 苛立ちの原因だった小悪魔達を殺して、少しは溜飲が下がる。

 だが、まだやらなきゃいけない事がある。終わっちゃいない。



「……よし。少し待ってろよ」



 刀を鞘に収め、子竜の傷だらけの身体に触れる。

 子竜の傷を治さないといけないのだから、もう少しだけ無茶をさせて貰おう。

 ……といっても、さっきみたいに『無理に無茶を重ねて無謀な事をしでかす』つもりは無い。既に使える魔法を元に『無理をする程度を落とす』だけだ。



「――『エクストラヒール』」



 子竜の身体が淡く優しい光に包まれる。

 見る間に全身に出来ていた傷口が塞がり、汚れてしまっていた群青の鱗も元の色を取り戻していく。



「……?」



 活力が戻ってきた事を不思議に思ったのか、子竜は目をぱちくりとさせながら全身を見始める。

 傷が消え、外側からでは分からなかったであろう怪我もあったのか、ゆっくりと翼をはためかせて確認をしているようだ。


 回復魔術の中でも本来は『使えない』高ランクの魔術を使ったんだ。治っていてくれないと無理した俺が困る。



「これでよし。後は……」


「ヘーイ! そこな冒険者っ! ちょぉぉぉぉぉぉっと待つのであぁぁるっっ!!」



 立ち上がろうとした瞬間、この場の雰囲気には全く合っていないハイテンションな声が届く。



「せっかくのチャンスを台無しにする訳にも行かぬ故に、きっと我輩は自由に空も飛べるはず。ということで我輩、颯爽と登っ場っ! てやぁぁぁぁぁ!」



 ――上か!


 見上げて身構えると、白衣をはためかせて飛び降りてくる人影が。

 軽く10mはあるであろう落差をものともせずに飛び降りてきた謎の人物は、さっきまで小悪魔達がいた辺りに――




「うわらばっ!?」




 ――見事、顔面から着地していた。



「……お、おい、大丈夫か?」


「な、なぁんのこれしきぃ……」



 突然現れて自分で自爆した謎の人物に声をかけるが、そいつはゆっくりと体勢を整えて自分で起き上がる。


 なんだこいつ、あの高さから落ちて無事だっていうのか!?



「ほんのちょ~っぴり強風に煽られて着地の計算を間違えただけであり、実際には空も飛べない、そんな事も考えるのも忘れていたドジっ娘加減も我輩の萌えるポイントであったりして。だけども努力家で、辛さなんて見せないところに心ときめく乙女がいたりいなかったり。ふふふ、これが若さなのか」



(……あ、ヤバいわコイツ)



 起き上がるなり、口からポロポロ出てきたのは「お前は何を言っているんだ」を地で行くようなクレイジーでハイテンションな言動。しかも、表情から見るに、素で。


 無意識で一歩引いていた事から、本能で察する。


 ――こいつは関わっちゃいけない部類のヤバい奴だ、と。

 どこぞのエレキギターを持って、神の運命すら我が物顔でひっくり返す変態科学者と同じ臭いがするのだ。



「さぁーて、話の腰の骨? 何処の骨? まぁそんなものはどうでもいいのである。とりあえずその竜を我輩に寄越すのであるっ! さもなくば我輩謹製の『夕日に向かって走れ! 青春の淡い思いを届けておくれ汗と涙と恋の爆弾』の名誉ある初めての被験体にしてやるのであるが、いかにいかにぃぃぃぃ!」



 ……うん。間違いない。

 コイツもキチ○イだ。


 ひくひくと引きつった笑いが出そうになるのを我慢して、俺は治療したばかりの子竜を守るために身構える。



「……つーか。あんたは誰だよ」



 その言葉を言った瞬間。

 ピタリ、と目の前のキ○ガイの動きが止まった。


 そして、信じられないものでも見たかのようにその顔をギャグレベルで崩して驚く。



「な……なななななななな、なぁぁぁぁぁぁんとぉぉっっ!? なんと、超・有名人である我輩を知らないというのであるかぁっ!?」


「あぁ、知らないな」


「そぉこまで言い切る!? なぁらばこれも何かの縁っ、その節穴な目と貧相な耳をかっぽじってよぉぉぉぉぉく聞くのであぁぁるっ!」



 ばさり、と白衣を翻してキチ○イが吼える。



「我輩はっ、一億と二千年に一度の大天才と呼ばれた魔族の天才科学者、ドクター・シュトラであーる!」


「ま、魔族だとッ!?」



 出てくるとは思いもしなかった単語に、俺は思わず叫んでいた。


 確かに魔族だったら、さっきの丈夫さは納得だ。丈夫さに極振りしすぎて頭がおかしい事になってるようだが。

 あと、天才の字は「天災」の間違いなんじゃないのか、と思う。



「そーうである、我輩は魔族なのであーる! 驚いたか、驚いたようであるな、その様子では! よもや、我輩の姿が人間と変わらぬ事に恐怖と怖れを振り撒いて正気度を1D100でチェックするがよいのである」


「直葬じゃねーか!」



 ――どぐしゃあっ!


 色々言いたい事はあったが、反射的にツッコミ(物理)を入れてしまった。

 遠慮なくグーで顔をぶん殴ってしまったが、この変態の事だ。多分でも何でもなく、大丈夫だと思われる。



「な……なぁぁぁぁにをいきなりしやがってくれたのであるか、このおしめも取れていないようなガキンチョはぁぁぁっ!? 初対面の名乗った相手にグーで殴りかかれとでも躾けられたのであるか!?」



 ……ほら。

 少しはぶっ飛んで離れた所に倒れたけど、何事もなかったかのように顔を抑えてすぐに立ち上がったし。



「いやだって、アンタ人間じゃないし」


「む、言われてみればそうであったか」



 そして納得したのか、ぽむと手を叩く変態白衣。

 ……なんだコイツは。本当に調子が狂う。



「まぁ、そんなもんは横に置いておくのであるが、後ろの竜を我輩に譲ってくれる訳にはいかんのであろうか。生物の強さの研究のため、どうしてもサンプルが必要なのである」


「サンプル? こいつを殺す気なのか?」


「まぁさか、そんな物騒な事をする訳がないのである。ただでさえその竜の親が怒り狂って天候を荒れさせているのに更に怒らせて面倒な事にさせる理由なんぞあろうか、いやない。少々、爪を削ったり血を採取させて貰ったりする程度なのである」



 ……ちょっと待て。

 この天候の異常性の原因は分かったが、どうにも話が噛み合わない。


 だからと言って、こいつが嘘をついている様子はない。言動はアレだが。



「さっき、子竜を殺す勢いで痛めつけていた小悪魔を見たんだが……それは、お前の仕業じゃないのか?」


「そんな奴らがいたのであるか? 少なくとも我輩は知らないのであるし、そもそも我輩はフィールドワークも兼ねて一人で来ているのであって、そんな聞き分けのない部下なんぞ持った覚えも連れて来た記憶もない……はっ、もしや我輩は記憶喪失!? ここはどこ!? 私はそう、ドクタァァァァァァァァァァ――ッ・シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥトラバッ!?」


「うるせぇ黙れッ! こいつがドン引いてるじゃねぇかっ!!」



 勝手に盛り上がって勝手に騒ぐ変態をぶん殴って黙らせる。

 俺の後ろで震えている子竜のためだ、そのまま黙って口を閉ざしててくれ。マジで。


 しかし……そうなるとあいつらは『誰の指示で』ここにいたんだ?

 既に殺してしまった今となっては、それを知る術はない。


 少なくとも、魔族は一枚岩の存在ではない、という事か。目の前のコイツの例もあるし。



「な、殴った? 二度も殴ったのであるかッ!? 我輩に親父なんていないけどッ!?」


「……おし、もう一発殴らせろ。二発も三発も変わらんだろ」


「ノォォォ……NOォォォォォ!? この天才たる我輩の顔を何度殴れば気が済むのであるかぁ!?」


「知らん。とりあえずやればわかる」


「ぼっ、暴力反対ッ! ヘルプミーなのであるッ!」


「……チッ」


「あからさまに残念そうな舌打ちッ!?」



 サッと距離を取られたので追撃を断念する。

 ギャグ補正か何かは分からんが、殴り飛ばしても殆どダメージがなさそうだとか、ずるいにもほどがあるだろ、全く。



「それよりもそちらの疑問が解決した所で返事はいかにっ!? 我輩とて無視され続けるのはちょぉぉぉぉぉっぴり、ガラスのハートがブレイクで困るのであるがぁっ!?」


「あぁ、すまん。さっきの戦いでこぼれていたコイツの血だったらそこにあるが」


「我輩に地べたに這いずれと!?」


「フィールドワークだったら植物採取もしたりするだろうがっ! 採集したらさっさと帰りやがれぇ、このキチ○イがっ!!」



 再びツッコミ(物理)。

 血溜まりの中へ文字通りに地べたに這いずらせたところで、周囲が暗くなる。



「あれ。夜か?」



 そう思いもしたが、日が沈むにもまだ早い。

 だとしたらなんだ、と視線を上げる。


 そこには――暗闇の中でも僅かな光に反射して輝く群青色の壁が。



「……まさか」



 さっきの変態白衣――いつの間にか、サーチマップの反応からも消えていた。逃げ足だけは速いな、アイツ――が言っていた事を思い出す。


 ……竜の親が怒り狂って天候を荒れさせている。


 だとしたら、目の前にある「群青色の壁」は、なんなのだろうか?



 ゆっくりと、視線を更に上へと上げる。


 そこには……こちらを無機質な瞳で見下ろす、巨大な竜の顔があったのだった。





モチーフというか元となったキャラそのままというか。

書いてて楽しかったのは本当。

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