一の四 報
なかなか話が進まなくてすみません。結構長編になってしまうかも。話のテンポを上げた方がいい、このままでいい、もっと描写が細かい方がいい、などのアドバイスやご意見もお待ちしています。是非一言でもご感想をお願いします。
電車が小高い丘の陰から出ると、大石には見慣れた町が現れた。多少時間の差はあっても、ほぼ同じ景色を同じ条件で毎日眺めている。
しかし今日はいつもと違うことが二つあった。一つは隣にヒロミがいること。大石の住む町を食い入るように見ている。その視線の先は大石のアパートがある場所に向けられている。
もう一つはアパートのある所に高さが50メートルはゆうにあろうかという真っ黒な塔が建っていることだ。
「すっごい! 50メートルはあるんじゃない?」
ヒロミは顔を窓にくっつくほど近づけて見ている。
「約65メートル」
「計ったの? どうやって?」
ヒロミは今度は大石の顔をまじまじと見た。
慣れないことに多少もたつきながらも、大石は説明を始めた。
「てっぺんを見上げた角度が45°になる位置を探して、そこと塔までの距離を地図で調べる。塔は垂直だから塔までの距離と塔の高さは同じ。それで出た数字が約65メートル」
ヒロミが目を輝かせて大石を見る。
「すっごい! 私数学とか超苦手なの。成る程、直角二等辺三角形を作ってかたっぽを計るのか」
その反応に、大石の方も驚いた。文系の学部でもあり、どうせ理系的な話はわからないだろうと思ったのだ。それが、予想に反して理解が早かった。
「お前、本当に数学苦手だったのか?」
「だって中高の数学って紙の上の数字なんだもん。文章問題も、太郎君が時速5キロで歩きましたとか、30分休憩しましたとか、つまんないんだもん」
「まあ、わからなくもないか」
そんな話をしているうちに電車は減速を始め、いつもと雰囲気が違う駅に着いた。人々の様子が落ち着きなく、何となく祭や遊園地、都市部の繁華街のそれに近い。
改札を出ると、違いは一目瞭然となった。
「あ! テレビが来てる!」
駅のロータリーにあるモニュメントの正面でロケをやっている。
「あれキャスターのムッティーじゃない? って、あの時計塔!」
カメラに向かって話しているのは、最近人気急上昇中の男性ニュースキャスター、愛称ムッティーだ。芸能人やテレビ有名人関係に弱い大石でもその顔とあだ名は知っている。
「えー、ご覧下さい! この時計塔! あの黒い塔、オベリスクとそっくりです」
大石もそれを今それを見るまで忘れていた。そうだ。駐車場の塔はこの時計塔にそっくりなんだ。朝も見たはずだが、スケールの差からか、まったく気付かなかった。
「あの塔の名前はオベリスクに決まったのか……」
大石は口の中でつぶやいた。
「えー、おまけにこの時計塔、形状が完璧にあのオベリスクと一緒なんです! しかも縮尺が綺麗にオベリスクの十分の一なんです!」
二階建ての駅舎と同じくらいの高さの時計塔は、色といい質感といい底面に対する高さといい、まさにあの塔とそっくりだ。
ムッティーは時計塔に更に近づき、根元で屈み込んだ。
「えー、この時計塔、底が正確な正方形で、面積も正確に1平方メートルなんです! つまり! オベリスクがすきまなく建っている駐車場、あそこも正確に正方形で、面積はジャスト100平方メートル! そんな不自然な駐車場があるでしょうか?」
ムッティーと、ついでにヒロミの興奮がどんどん上がって行くのがわかる。ヒロミの目は、瞬きをほとんどしないにも関わらず輝いている。
「不自然な駐車場! この時計塔! そしてあのオベリスクの関係とは一体なんなのでしょうか? そして一番気になるのは、あの塔が誰によって、どうやって、何のために建てられたのか? 謎の解明はCMの後で!」




