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千鳥鉄の女  作者: カキヒト・シラズ
弐 日光社参の惨劇
7/11

七の巻

「その男は」十兵衛が言う。「藤島松五郎という女形の歌舞伎役者でした」

 柳生下屋敷の座敷には、宗矩と向かい合い、十兵衛と友矩が座している。

「歌舞伎役者が能面を被り、能面党?」宗矩が言う。「面白い」

 十兵衛の話はこうだった。

 家光を斬った忍者――藤島松五郎を生け捕りにして、吊り責めで拷問したところ、自分の素性と能面党について洗いざらい暴露した。

 能面党は一番上に三人の頭取がいる。その下に町火消のように「い」組から「ん」組まで四十八の組があり、それぞれの組に三名から八名の党員がいて、組は組頭が仕切っている。

 松五郎は「ま」組に所属しているが、「ま」組の組頭の正体は知らない。いつも能面をかぶっていて素顔を見たことがない。

「嘘でしょう」友矩が言う。「自分の組の組頭が誰か知らないなんて。そんな話、信じられません」

「嘘の可能性もあるじゃろう」宗矩が言う。「能面党を裏切れば、必ず仲間が殺しに来る・・・・」

 十兵衛は続ける。

 松五郎は、歌舞伎公演の初日に何としても戻りたい、もし初日だけ出演できれば、十兵衛の言うことは何でも訊くと語った。

「それで?」と宗矩。

「松五郎は解放しました」と十兵衛。

「それはまずいですよ」友矩が言う。「逃げるかもしれませんよ」

「お蘭に見張らせてある」

「・・・・」

「友矩、まだこの前のこと怒ってるのか?」

「えっ?」

 日光社参の大名行列で、宗矩が影武者になって駕籠に乗っていたことを知らされていなかったのは、柳生家では友矩だけだった。

「まあ、事前にあれを知っていたのは、大名行列の中でも近習と数人の茶坊主だけだった。許せ」

「許すも何も・・・・別に最初から怒ってないですよ」

 友矩が不服そうに口をすぼめるのを見て、宗矩が高笑いする。

「それに」十兵衛がやや小声で言う。「松五郎は利用価値があります。化粧をすると・・・・瓜二つなんです」

 まだ幕府は家光が死んだことを世に公表していなかった。


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