優雅なお茶会 1
従者になってひと月ほどのこと。
おだやかな陽が庭の緑に降り注ぎ、色とりどりの薔薇はしとやかに咲いています。あたたかな、秋です。
あまり目を向けられない花々を遠目に見つつ、いつもより豪勢なドレス──この世界でも子ども用ドレスが生まれていてよかった──を着て、並べられたケーキのひとつを皿に盛りました。本日は園遊会にお招きいただいております、セリーです。
この園遊会はお父さまの仕事仲間からのご招待だそうですが、十から十五の成人前の子どもの社交練習を推奨しているそうで、男性は男性、女性は女性、そして子どもは子どもで集まってお話ししています。ですので、お父さまは見えますが、声をかけるには遠すぎる距離があいています。
また、なんと運悪く、わたしがよくお話する女の子たちは招待されていなかったり予定が入っていたりと軒並み不参加。
そしてひと月ほど前に従者となったネヴィルといえば、今日は側におりません。他家の主催ですから連れて来られる従者は大人一人に付き一名のみと決まっています。この国では、余計な従者を引き連れてくるのは、主催のお家を信用していないということになるらしいです。ですから、一緒に来たのはお父さま付きの方。
まだたったひと月のことなのですが、ネヴィルはほとんど朝から晩まで絶妙な存在感を保ちつつ、「気づいたらそこにいる!」というプロ技術を会得しているので、何か頼もうと思ったときに居ないとびっくりしてしまいます。予想以上に生活に密着しています。
ネヴィルはまだ十一歳で、わたしより年下で仕えられる立場に育ったはずなのに、あの完成された従者っぷりはなんなんでしょう。わたしの転生が無意味に思えてしばしば悔しくなります。彼も転生チートなら話は早いのですが、紅茶を淹れたり着替えを用意するような目に見えるところと違って、使用人の方々が裏でやっている料理や掃除などはできなかったので、ただただ見たことを完璧に再現できる才能があるみたいです。
さて、側に居ないネヴィルがうちの屋敷でじっと帰りを待っているのかというと、そんなことはありません。ネヴィルは昨日の夕方から明日まで休みを取っています。
休みを取って、一度実家に帰り、
今日は男爵家令息としてこのお茶会に参加しています。
プロローグ。以降は二千~二千五百字程度を目安に区切るつもりです。
感想欄返信で「次は三年後くらいの話」と言いましたが嘘になりましたテヘ