攻略対象者を調教したら逆ハーヒロインに呼び出された件について。
筆者が書くと“乙女ゲームネタ”も下ネタ・下品になる典型的な短編です。
少女は、怒りに身体が震えていた。
それもそのはず。
目の前の女子生徒によって先日、やっとの思いで達成した“逆ハーレム”を、無茶苦茶にされたからだ。
「どういう事なのよ!!」
女子生徒はちょうど一か月前に転校をしてきた。
この時期に転校生? ということで、当初は警戒をしていたのだが、女子生徒の容姿を見て少女は安堵していのだ。
それなのに……。
「もしかして、あなたも“転生者”? 悪いけど、この世界は私がヒロインの世界なの! モブ…いえ、モブ以下なあなたが居ていい世界じゃない!! さっさと出て行ってよ!!」
誰もいない教室。
少女の怒鳴り声が響く。
見た目が平凡以下の女子高生は、そんな少女の様子に盛大に息を吐いた。
「はぁーーーーー。黙れ、くそブス」
「!! ブスって、梨々花の事? ちょっと、あなた自分で自分の顔を鏡で見たことあるの?」
「だから、黙れよ。くぅーそぉーブゥーースゥーー」
「!!」
カッとなって、右手が女子生徒の頬を狙うが、簡単に避けられる。意地になって、何度も何度も振りかぶるが、見下した目をされながら、全部避けられ、最後には足がもつれて一人転んだ。
ガシャン!!
「っ痛い」
「……どんくさ」
涙目になりながら、悔しくて下から女子生徒を睨みつけた。
「5人を返してよ」
「5人?」
「とぼけないで! 私の逆ハーレムの攻略対象者達の事よ!!」
「ああ、やたら顔だけが良いあの連中の事か……」
生徒会長・副会長・幼馴染・美術部の後輩・担任は、ヒロインの梨々花が苦労してやっと攻略した5人である。
それを、転校してわずか一か月で、目の前の女子生徒に奪われたのだ。
「顔だけって!! 彼らのトラウマも全部、梨々花が取り払ったんだもん! 苦労したんだからね! それを横からかっさらうなんて、梨々花の知らない裏ワザとかチートを神様に付けてもらったっていうの?!」
「裏ワザとかチートって、よくわかんないけど……片っ端から、寝ただけだよ」
「……はぁ?」
「副会長と先生以外、童貞君ばっかりでウンザリしたけどね」
心底ウンザリしているであろう、目の前の女子生徒をじっくり見る。
平均以下の容姿。
小学生以下のプロポーション。
そんな、彼女と……彼らが?
(嘘に決まっているんだもん!!)
怒りでプルプルと震える。
(私でさえ、まだ手を繋いだ事しかないのに。 紳士的な彼らがそういう事をするわけがないんだから!)
ギッと睨みつける少女に対して、女子生徒は少女と同じ目線になるようにしゃがみ込み、頬づえを付く。
「人を見下した目で見ていた眼鏡の生徒会長は、ちゃんと自分がミジンコ以下な人間である事を再教育してやったわ。足を出すとすぐに舐めるから、やってみたら?」
「え?」
「副会長も、あれだけの自信家なんだから、相当なものかと思ったのに。…事の最中に鼻で嗤ってやったら……お気の毒に、最終的にはEDになっちゃって……超ウケるんですけど」
「イーディー?」
「あんたの幼馴染はダメだよねー。純情? とは聞こえはいいけど。ガツガツして面倒臭そうだったから、逆に開発してやったわ。今では男子生徒に尻を狙われてるんじゃないかな。本人も満更じゃなさそうだし」
「か、開発?」
「美術部の僕は、一番変態だよね。『先輩、筆でお願い』だなんて。おねだり上手。でも、パレットナイフを、あんな風に使うなんて……ある意味勉強になった」
「ふで……」
「担任の先生は、天性のロリコンだわ。私の胸であれだけハシャイだ人は初めて見たし。なければない程いいんだって。あれには、こっちもドン引き」
「ろりこん?」
そして、女子生徒はため息をひとつ付き、何かを呟いたが少女には聞こえなかった。
少女は何とか立ち上がり、女子生徒に詰め寄る。
「嘘よ! この世界はCERO-A(全年齢対象)なんだよ?! 卒業式で、やっと頬にキスして終わるのが精一杯の世界なのに!」
パッ、パッ、とスカートの埃を払って立ち上がった女子生徒は、少女に対して心底呆れきった顔を向けた。
「何、言ってんの? 男子高生だよ? 餓えた野獣でしょ? 頭よりも下半身でモノを考える年頃だよ? ヤレない女よりもヤレる女でしょ?……ぷっ。それに、今時、卒業式でキス…しかも頬にして終わりって、幼児でもあるまいし。カマトト振るのも大概にしろっつーの。毎回、色々な男とデートして、貢がせて、チヤホヤされてんだから、さっさと股の一つでも開いてご奉仕でもしてやるべきなんじゃないの?」
「酷い!!」
「酷いのは、あんたの方でしょ? 人を5人もキープ呼ばわりして。ヒロインだから何をしてもいいと思っているんでしょ? それに、自分の事をこの世で一番可愛いとか勘違いしているみたいだけど、あんた“井の中の蛙大海を知らず”って言葉を知ってる? この学園を出たら、平均だから。普通。“目くそ鼻くそ”だから」
「そんなわけない! みんな梨々花が一番って言ってくれたもん!」
「……これ、私の一番大事な人の写真」
見せられたのは、少女が足元も及ばない程の美少女の写真。
「…なによ! 梨々花だって、容姿のパロメーターだけじゃなくって、勉強、運動、流行って、全部上げたんだから! 逆ハーレムの為に頑張ったんだよ!」
「私の大事な人…勉強と容姿は日本一は当たり前。運動も音楽も何をやってもグランプリとっちゃうような人なの。世界的モデルにもスカウトされているから」
「………」
「でも、もういいわ。 あんたの言う通りにあの5人は返してあげるつもりだったし」
「え?」
「顔だけはいいから、お姉ちゃんにって思ったけど……全然ダメ。あんなテクじゃ、調教しても無駄だってわかったからね。これでも…数週間…頑張って調教したんだけど……」
哀愁を背中に漂わせ、沈む夕日が映る窓を見ている女子生徒。
「神とやらにも、期間は一か月って約束したし。もうタイムリミット。あーあ。“乙女ゲーム”の世界ならお姉ちゃんにピッタリの彼氏がいるとおもったのに、期待外れ。……これは、宇宙にも目を向けた方がいいのかな」
「お姉ちゃんって……?」
「私の大事な人!」
そう言って、初めて少女に笑顔を見せた目の前の女子生徒は、夕日の光と共に消えた。
――夢?
~♪゜♬.o.+゜♪゜♬.o.+゜~
次の瞬間に鳴ったメールの着信音で我に返る。
(生徒会長だ。あれ? 他のみんなからもメールがきている)
久しぶりの彼らからの、“メール”
「ウフ。やっぱり、私がこの世界のヒロインなのよ」
少女は弾むようにして、彼らが待っている視聴覚室へ急いだ。
*・*
「あ、そういえば、あの子に言うの忘れていたな。 あの5人全員に、私が居なくなった後のお相手に指名しておいたから安心していいよ。って……まぁ、いいか。えへへ。一か月ぶりにお姉ちゃんに会える!」
女子生徒も、少女に負けないくらいの弾むリズムで家路に急いだのだった。
*ヒロイン(少女)が、一番まともな件。
ムカつくヒロインを書こうとしたのに、どうしてこうなった。
*女子生徒は「妹に彼氏をNTRれたので仕返しがしたい件について。」の妹。
最後まで名前が出なかったが、名前は「鈴」
*ヒロインはこの後、視聴覚室(防音•暗室完備)でいったい……→R18!? To be continued!(ありません)