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3.鳥の背の上

 改めて狩り祭りの概要をご説明しようと、鳥の背の上。

 マリエッタちゃんじゃありませんよ?

 魔族の方々が空を長距離移動の際に用いる、魔境の魔物鳥です。

 大きさはロック怪鳥よりは小ぶりだけど、頑丈で飛行速度も速い。

 どことなく猛禽に似ていて、もっふり可愛い鳥さんです。

 普通の鳥さんは背中は2~3人しか乗れない大きさ。

 だけど、魔王専用(まぁちゃんの)鳥は規格外の大きさなので私達は悠々と居心地良く。


 私やまぁちゃんと相乗りの勇者様は、すっかり空の旅にも慣れたご様子。

 空の上という高所に恐れもせず、今回の道行きの説明を求めています。

 それに答えるまぁちゃんも、どう説明した物かと思案顔。

「今回、狩り祭りって言ったよな?」

「ああ、それは聞いたんだが…狩猟祭か何かなのか?」

「んー…まあ、祭りと言いつつ本当に祭りな訳じゃねえな。なんてーのかな」

「魔族さん達の一大ストレス発散(うさばらし)行事の一つだよ」

「そう、まさにそれだ!」

「なんだか一気にろくでもないものの様な気がしてきたな」

 何故かいきなり聞く気を失ったようで、勇者様が遠い目になってしまいました。

 私達から目をそらし、一心に遠くの連なる山脈を目で追っています。

 わあ、新手の現実逃避ですね!


 勇者様は聞く気を無くしてしまったみたいですが、ご説明しましょう。

 魔境に生きるまぁちゃん達、魔族。

 その中には多様な特質を代々伝える色んな一族がいます。

 そんな一族の中には希少だったり、貴重だったりと特殊な一族もいる訳で。

 そういう人達って、得てして他の人達から特別視されちゃいますよね?

 それが過剰になると崇拝されたり、欲望の対象として狙われたり。

 魔族も色々大変ってことです。

 勿論魔境は貴重な動植物の宝庫なので、狙われるのは魔族に限った話じゃないんだけど。

 この間も、北方で獣人の希少種が人身売買組織に狙われて大変なことになったそうだし。

 人身売買組織が。

 その始末に負われて、魔族の軍人さん達が北方へ応援に行っていたそうです。

 魔族は魔境の支配種族なので、魔族以外の住人達へのフォローも義務の一環だそうで。

 今も後処理だの追跡調査だの売買された人達の救出だの、色々な人達が北方に出張中。

 あっちはあっちで大変なことになっているみたいです。

 だから今回の狩り祭りは、魔王城に残されていた人達だけのお楽しみ。

 その中でも、特に憂さ晴らしに餓えていた人達が参加しています。

 まあ、元々小規模なお祭りなので、あまり参加できる人数は多くないそうだったし。

 ちなみに狩り祭りは、伝統的に自由参加の先着順優先です。

 魔王(まぁちゃん)だけは、いざという時の引き締めというか…

 魔族さん達が暴走した時のストッパー役として、毎回強制参加らしいけど。

 でもまぁちゃんが参加したらパワーバランスが大変なことになって大惨事が起きるから。

 毎度毎度監督役として行き過ぎた魔族をタコにするのがまぁちゃんのお役目。

 日頃自由に振る舞っている分、こういう時は世話役に回されるって前に愚痴ってました。

 なんでも傍目には、参加している人達がとっても楽しそうに見えるんだって。

 羨ましいんだね、まぁちゃん。


 さてさて、話が脱線しました。

 魔族には希少・貴重な一族もいるってお話だったよね。

 そして今回の、狩り祭り。

 ぶっちゃけ狩る対象は人間です。

 それも民間の犯罪組織とか破落戸(ごろつき)とか、『素人』さん達じゃありません。

 公の戦闘職、国家機関としての戦士。

 ずばり、一国家の騎士だの軍人さんだのがお相手です。

 え? 戦争?

 違います。狩り祭りです。

 更に厳密に言うなら、『狩りごっこ』祭りです。

 そう、人間の軍人を獲物に見立てての。

 うん、ズバリ言っちゃって悪趣味ですね、魔族の伝統。


 希少、貴重な魔族。

 それを欲するのが誰だって話です。

 膨大な力を持つ魔性を飼い慣らし、所有して自由にしたい。

 そんな欲望を夢見るのは、どう考えたって身の程知らずの富裕層。

 その中でも特に大望を持ってしまうのは、王族…国王という人種です。

 同じ王族でも、勇者様のような清廉な人種とは違いますよ?

 例としてあげるのなら、ぶくぶくと肥え太った豚のような因業親父みたいな奴です。

 そうして折良く、魔境の周辺には人間の小国家群が乱立しています。

 まあ、魔境の勢力が強すぎて大きな国に育つことができないだけですが。

 色々な人間がいて、色々な規律があって、色々な人が納める国々。

 その中には、当然ながら欲深い身の程知らずの納める国もありまして。

 大きな力も持てそうになく、脅威にさらされつつの環境で、その立場を逆に利用して旨味を吸いたいというお馬鹿さんが何人かいるそうです。

 アレとかソレとか、伝統的にお馬鹿さんが治める国だぞー、と。

 絶対に1人で近寄るなよ? と念押しつつ、まぁちゃんが説明してくれた記憶があります。

 魔族をカモにしたいそんなお馬鹿さん達。

 本人達は知らないんでしょう。

 自分達が魔族の暇つぶし兼憂さ晴らしのネタとして利用され、遊ばれていることに。

 心を入れ替えて真面目にやれば、魔族に狙われることも無いのにね。

 何しろ狩り祭りの概要は、希少・貴重な同胞を(エサ)にしてどっかの王様が食いつくのを待ち、派遣されてきた人間の軍人さん達を蹴散らすという楽しい遊びなんですから。

 最初から(エサ)に食いつかなければ、遊ばれることもない訳です。

 迎撃する魔族さん達が、敵兵を1人たりとも殺さないあたり、完全に遊ばれています。

 それに気づかないから、そんな馬鹿な王様は何度だって遊ばれてしまうんでしょう。

 何しろ経済的被害は出ているけれど、人的被害は全く出ていないから。

 そのことに「うちの兵士って結構強いんじゃね?」という希望を見出し、諦めることなく何度だってトライしてしまうんです。

 再チャレンジするにも、限度があると思うんだけどな…


 まあ、そんな人間を馬鹿に仕切ったお祭り騒ぎが公的行事としてありまして。

 開催のタイミングは(エサ)を買って出ているノリの良い希少種さん達からの開催通知を待つことになりますが。

 それなりに楽しいし、戦って憂さは晴らせるし。

 魔族の若者達には結構人気の行事らしいです。

 そして今回の、狩り祭り。

 今回の開催は、紅玉の一族カーバンクルからの通知によるもので。

 相手は、カーバンクルの釣り上げた国軍。

 さあ、お気の毒な時間が始まりますよ!




「勇者様、カーバンクルってご存じですか?」

「カーバンクル…? それってあの(・・)カーバンクルか?」


 あれ? 知ってるんですか?

 珍しい一族だから、殆ど知らないと思っていたのに…。


 勇者様はカーバンクルという単語に目を見開きました。

 村で話を聞いた時は、どうやら無意識に流してたみたいですね。

 まあ、勇者様は出血多量の貧血気味で、ちょっと大変だったしね。

「勇者様、知ってるんですか?」

「物知りだな。勇者、西の大国出身だろ? あっちじゃ知名度ほぼマイナスだろーに」

「ああ。といっても、書物で読んだ程度だが…」

「ふぅん? 丁度良いから諳んじてみろよ。カーバンクルってどんな生き物か」

 興味深げなまぁちゃんの要求に、勇者様は何かを思い出すように空を見上げて…

「カーバンクル:奇跡や幸運を招くと言われる、伝説の希少動物。一説では幻獣とも。目撃例の少ない動物で、その姿は判然としない。ただ額に赤く光る宝石を有しており、それは紅玉(ルビー)とも石榴石(ガーネット)とも言われている。実在するかは眉唾物だと言われているが、その額の宝石を、あるいは獣自体を手に入れようと欲する人間が消えることはないと言われている。手に入れれば、大いなる幸運を手に入れることができるとかなんとか」

 勇者様は途切れることなくすらすらと説明文を口にした。

 あまりにもすらすら出てくるそれに、まぁちゃんが呆れ眼だ。

「お前、それ丸暗記?」

「丸暗記とは違う。ただ、子供心に興味を引かれて覚えていただけだ」

「ふぅん? 幸運が欲しかったのか?」

「………言わずもがなだと、思うんだが」

「お前、女運悪いしな」

「言わないでくれ…」

「でも、やっぱり魔境とは認識が違うんだね。大体は同じだけど」

「ん? 俺の知ってる内容は、実際とは違うのか? いや、それ以前に実在するのか…?」

「魔境にいますよー。カーバンクル」

「……………いるのか」

「ええ、魔族の一部族に」


「……………」


 あまりにもあっさりと言ったせいでしょうか。

 勇者様が頭を抱えて苦悩タイムに突入してしまいました。

 毎度のことですが、どうやら今回もご自身の常識崩壊に悶えている様子。

 しかしこれだけ色々沢山、今までにも常識が破壊されてきたはずなのに。

 いつまで経っても破壊される常識の尽きない勇者様。

 ちょっとだけ、凄いなと思った。


 額に赤い石を持つ、カーバンクル。

 獣の姿とヒトの姿、2つの形態を持つ魔族の一種。

 獣の姿にもなる為、獣人によく間違われる。


「2つの姿…? 変型、す…するのか?」

「せめて変身って言えねーのか?」

「不思議だけど、魔族には2つ3つの段階で変型できる人達がいるらしいですよ。先代魔王さんは6段変型できるそうだし」

「6段変型…!?」

「いや、だから変身って言えよ。それから勇者、そこで意味ありげに俺を見て戦くな」

「先代魔王、は…その、まぁ殿の」

「親子だが、どーした」

「まぁ殿…も、へ、変身するのか? 6段階」

「しねーよっ!!」

 怖々とまぁちゃんを見る勇者様の目には、未知の珍獣を前にして怯えているような気配が………相手まぁちゃんだし、魔王だし、今更じゃない?

「そんな化け物見る目で見んな!」

「まぁちゃん、まぁちゃん、似たようなものじゃん」

「全然違うから。どう見たって俺の外見・体質は人間寄りだろーが!」

「そこから、6段階で化けていくのか…」

「俺は化けれねえから!」

 魔王だけど変型ナシの魔王様。それがまぁちゃん。

 うん、でも…。

 先代魔王さんの変身ぶりは「なんでそうなるの?!」ってくらいにショッキングだから、まぁちゃんはそれで良いと思う。

 あんなに脈絡のない変身機能は、ちょっといらないんじゃないかな…。


 ぎゃいぎゃい狭い鳥の背中でもめにもめた青年2人。

 変身するかしないかで、そんなに口論しなくても…。

 最後はまぁちゃんが勇者様の頭を殴って終結した。

「ぴよぴよ…」

 勇者様の目が、完全に回っている。

 一応手加減はしたって、まぁちゃん…。

 自分が規格外だって、忘れちゃ駄目だよ。

 頭蓋骨陥没もせずに目を回しただけの勇者様も中々に人外っぽいとは思ったけれど。


 それから時間をおいて、勇者様は復活。

 なんだか段々、回復に要する時間が短くなってきているみたい。

 もうちょっと打たれ強くなったら、きっと魔境の住人仲間入りだね。

 そう言ったら、さっきよりも尚深く落ち込まれてしまった。

 うぅん。勇者様って難しいなー…。

 頭を抱える勇者様と、頭をひねる私。

 まぁちゃん1人が大爆笑で、とっても明るかった。


「そんじゃ、改めて軽く説明しとくか」 

 笑いの発作が治まってようやく、まぁちゃんは目尻の涙を拭いながら言った。

 どうやら予備知識はあっても基礎知識のない勇者様。

 そんな勇者様の為、カーバンクルの説明をしてあげるつもりのようです。

 それはとっても親切だと思うんだけどね。

 思うさま大笑いした後だったから、勇者様の目が凄く白々しいモノを見る目だった。

 でも、まぁちゃんは気にしない。

 超絶美形に白眼視されても、まぁちゃんはダメージ0。

 勇者様の視線など流して、説明を始めた。

「まず、勇者の知識では獣ってことになってるけどな。先にも言ったが確かに獣の姿になれんこともない。…が、彼奴ら基本はヒトの姿で生活してるから実際に見て驚くなよ」

「獣でヒトって…本当に獣人じゃないのか?」

「違う。が、カーバンクルと遭遇したことのある大概の人間は亜人の変種か獣人の一種だと思うだろ。人型の姿は額の宝石さえ見なきゃパッと見てエルフに見えんこともない」

「魔境にはエルフまでいるのか…」

「気になるとこ、そこか?」

「カーバンクルも気になるが、エルフだって不思議だ。名前は聞いても、会った事があると言う人にすら会ったことがない。彼らの里は此処よりも遙か南西、太古の森じゃなかったか?」

「エルフなら、うちの村までたまにお野菜売りに来るよ」

「な、なんだって…!?」

 2~3ヶ月に1回くらい目撃する、エルフの行商。

 そのことを教えてあげたら、勇者様が今日一番の驚きを見せてくれました。

 え、そんなに驚くようなこと?

「じ、実在が確認されているだけで、エルフだって充分に幻の生き物だと思っていたんだが…」

「あれ? 前言わなかったっけ。人間に迫害されたことのある種族なら、魔境に大体いるよって。ほぼコンプリートの勢いで」

「…そう言えば、そう言っていたな。でも相手はエルフだぞ? 彼らは何よりも故郷を大事にする種族だと聞いていたんだが…」

 それが、太古の森を遙かに離れた魔境にいるとは。

 どんな事情があるのかは知らないけれど、と勇者様が仰います。

 故郷から引き離されたとしても、エルフは故郷を望むのではないか…と。

 まあ、そのお言葉は尤もなんですが。

「勇者様、彼らは彼らでのんびりスローに魔境ライフを楽しんでるんですよー」

 何しろ、太古の森のエルフ達が選ぶ新婚旅行先に年間ベスト入りしたって話だし。

「…何が?」

「魔境が」

 あ、勇者様がまた微妙な顔になっちゃった。


 魔法に長けて、長命なエルフのみなさん。

 彼らが魔境に隠れ里を作ったのは、今から何百年と前のこと。

 詳しくは知りませんが、当時の世界では獣人や亜人といった純粋な人とは呼べない種族の皆さんが大々的に迫害されていたそうで。

 魔境に隠れ里を作ったエルフも、元々は人間に捕まって虐げられていた方達だそうです。

 そうなると人間への憎悪は高く、嫌悪してそうですよね?

 でもそうとは言えないのが魔境のエルフさん達です。

 なんでも彼らを人間から救い出し、魔境へと誘ったのは当時の『勇者様』だそうで。

 当時の勇者様は、魔王城へ向かう旅の最中。

 その旅について来て、魔境まで辿り着いたのだそうです。


 人間に虐げられたけど、助けたのも人間の『勇者様』。

 人間色々、そう悟った彼らは現在、特段人間に対して侮蔑の意などありません。

 それどころか自分達を救い出してくれたかつての勇者様に心酔しています。

 お陰で彼らは『勇者』にはちょっと(?)辛口。

 何しろ自分達にとっての恩人を基準に持ってくる上に、どうやらその恩人が桁違いレベルの凄腕勇者だったようで。

 基準に満たないと判断された『勇者』は鼻で笑われるという。

 それでもある程度の実力を認めたら、下にも置かず丁重に接するそうですよ。

 まあ、私も勇者様は1人しか知らないので、本当はどうかわかりませんけどね。

 ただ、『勇者』という人種に対して並々ならぬ関心を示すというのは本当です。

 これは、今度勇者様をお連れするべきでしょーか。

 たぶんきっと、エルフの人たち盛り上がるから。


「あ、そうだ」


 エルフのこと、勇者様のこと。

 つらつら考えていたら、ちょっと思い出したことが。

 まぁちゃんが未だ勇者様への説明途中だったけど。

 私は気にせず思い立ったが吉日、勇者様の袖を引きました。

「勇者様、今度エルフの里まで一緒に行ってくれませんか?」

「え? また随分といきなりだな」

「はい。エルフの里まで用事を思い出したんですけど、ちょっと護衛してもらいたくて」

「…護衛? リアンカが、今更?」

 え、何が今更?

 今ものすごく、勇者様から疑惑の眼差しで見られてる気がします。

「この魔境をひょいひょい気軽に行き来してる、リアンカが?」

「勇者様? 確かに私は気軽に出歩いてるけど、戦闘能力はがくんと低めですからねー?」

「それでも、危険回避の手腕に長けているから平然と魔境を渡り歩くと耳にしたんだが…」

「え、だれから」

 本当に、誰ですかね? そんなことを勇者様に吹き込んだのは…

「誰って村長さん、お前の父上だが」

 身内の犯行だった。

 愕然とする私。

 そんな私の頭の上に顎をのせて、くつくつと笑うまぁちゃん。

 …って、重い!

 私がまぁちゃんを頭の上から振るい落とすと、まぁちゃんは私の肩をぽんぽんと叩いた。

 それから苦笑混じりに、私の両頬を引っ張る…って、何がしたいの?

「護衛ってリアンカ、俺じゃ駄目なのか?」

「駄目だよ。だってまぁちゃん、彼処の迷宮タイトル保持者じゃない」

「………迷宮?」

 その単語に、勇者様が凄く怪訝な顔をした。

「エルフの人達、侵入者妨害用に迷宮を作ってぐるりと里を囲ってるんです」

「そうか、自衛対策か。そうだよな、エルフは多種族を嫌う排他的な一族だと聞くし」

「いえ、勇者様」

「ん?」

「納得しているところ申し訳ないんだけど…」

「まあ、最初は確かに自衛の為だったんじゃねーか? 今は違うけど」

「違うのか? 俺なりに納得できる理由だと思ったんだが…いや、今は(・・)と言ったか?」

「おー言った」

「…その、今では侵入を阻む為じゃなくてですね? 趣味の娯楽として迷宮を…」

「!?」

 ああ、やっぱり驚きますよねー。

 エルフさん達、最初は外界を拒絶して迷宮を作ったらしいんです。

 そこは確かなんですよ?

 でも今じゃ、タイムトライアル的なゲームとして発展させているという不思議。

 彼らの意識を改革するような、一体何があったのでしょう。

 今じゃ挑戦者のクリア時間を競って、景品まで出しているんだから本末転倒だよ…?

 種族や能力地に合わせて、それぞれでクリア時間の基準値が設定されています。

 どんどん面白くなったらしくて、情熱をたぎらせて迷宮を充実させていくエルフ達。

 何この迷宮職人。

 また、娯楽として面白がって挑戦しまくる魔境の住人達。

 外界を拒絶していた過去なんて信じられないくらい魔境に住まう多種族と馴染んでいるエルフさん達ですが、こんな馴染み方で良いんでしょうかと聞いてみたくなります。

 クリアしないと里に入れてもちゃんと相手してくれないエルフさん達。

 ですが、迷宮をクリアさえすれば健闘を讃えて優しくしてれるという親しみやすさ。

 それで良いんでしょうか、エルフさん。

「リアンカも、毎回律儀に迷宮に挑戦しているのか?」

「それが前、空から行ったら盛大にブーイング食らっちゃいまして。迷宮改良して挑戦者を待ってたのにって皆さん拗ねちゃって」

「…エルフに会ったことはないが、ちょっと頭がおかしくないか?」

「全否定か」

「あ、本家本元の太古の森に棲むエルフさん達は違うらしいですよ。あくまで魔境のエルフさん達の特性です」

「いっそ滅べ、魔境」

「勇者、やさぐれんなよ」

「まぁ殿はなんとも思わないのか?」

「いや、それを魔王(オレ)に尋ねちゃお終いだろう。それ以前に俺、魔境育ちだぜ? 今更なんか思うかって言ってもなー…」

「くっ…魔境(ここ)にはこの微妙な気持ちを分かち合ってくれる相手がいない!」

「そらだって、殆ど魔境育ちしかいねーし」

 勇者様は今日も孤立無援でした。




 エルフの里に頻繁に行く人は迷宮慣れしちゃってクリアタイムがどんどん短くなるけれど、初見の人は必ず迷うという結構難易度の高い迷宮らしいです。

 そしてエルフの人達が『勇者』の資質を見極める基準にするのも、迷宮の踏破タイム。

 かつてこの迷宮をクリアするのに1週間かかった『勇者様』がいたらしいですが…

 その勇者様はエルフの人達に鼻で笑われ、完全に舐められて、まともに相手もしてもらえなかったとか。

 そんなマイナスダメージくらいそうな情報、勇者様には言わない方が良いよね?

 うん、内緒にしとこ。





元奴隷のエルフ達を魔境に導いた、過去の勇者。

 →実はハテノ村初代村長フラン・アルディークのこと。

だけど実の子孫のリアンカ達は気付いていない。

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