27.グリーンアスパラマンの復讐4.5
2.5と同じく、戦っているだけの内容です。
戦闘描写はあまりしたことが無く、分かりにくかったりするかもしれません。
ずっと戦っているだけなので、興味ないという方は容赦なく飛ばして下さい。
おっとりのんびり悠長に、試合の観戦と決め込みたかったんですけどねー…
そうも言っていられなくなるのは、割とすぐでした。
原因:アスパラ皇帝の範囲攻撃の射程が、思った以上に広かったから。
炎上アスパラを振り上げ、振り回す。
あの巨体を揺さぶって跳躍し、震動で地震みたいな作用を及ぼす。
巨体を敢えて転がし、踊り狂う様に転がって巨体を武器にする。
地団駄踏んで、断続的に岩を蹴り飛ばしてくる。
それら全て、こっちにまで被害が及んできます。
偶に何故か忘れられているけれど。
私はこれでもれっきとした人間なので。
そんな問答無用の無茶苦茶な攻撃食らっちゃ、一溜まりも無い訳で。
私なんて一撃ですよ、一撃。きっと。
同じ人間であるところの勇者様が何発か食らってもピンピンしているのは…
うん。見なかったことにしましょう。
彼は私とは体のつくりが違うんですよ、絶対に。
むぅちゃんは半分魔族なので私達よりも頑丈でも納得です。
だけど勇者様が同程度以上の耐久度を見せるのは…なんででしょうね。
相変わらず、無駄にスペックの高い肉体をお持ちのようです。
そんな勇者様も、まともに食らったら吹っ飛ぶくらいなので。
私は絶対に攻撃に当たらない様、細心の注意を払う必要があるでしょう。
現在、迷宮に入ってから一番必死です。
わたわた、攻撃回避に追われています。
本気で危ない時は勇者様も駆けつけて補助してくれるけど。
頻繁に手伝って貰っていたら、いつまで経っても闘いは終わらない。
なので、自力で回避すべく本気を出しています。
意外に反射神経と身体能力と体力あるんです、私。
食らったら一撃でぺしゃんになりそうな気がしましたが、結構余裕で避けています。
まあ、それもこれも危ない時は勇者様が助けてくれるからこその余裕なんですけど。
今、生と死の瀬戸際にいる気がします。
切羽詰まった状況の筈。
なのにそこまで危機感を得ることができないのは、私の感覚が麻痺しているんでしょうか。
全身全霊の体力を使って回避しても、何故か巨大遊具で遊んでいる様な気がしています。
--という様な内容を口にしたら、勇者様に盛大に嘆かれました。
「危機に瀕しているのに、余裕だなおい!?」
「自分で言うのも何ですけど、やっぱり生育環境に問題があったと思います」
「生育環境というか、どう考えても元凶は陛下でしょう」
「昔から連れ回されていましたからねー…いや、ついていったのは私なんですけど」
「魔境中駆け回って遊んでいたら、誰だってそうなるよ」
「………もうやだ、この魔境。どいつもこいつも規格外すぎる」
「勇者様ファイト!」
「元気出してよ、勇者様」
「誰が落ち込ませているんだ!」
「私、かなあ…?」
「リアンカだよ」
「…自覚があるのは結構なことだな」
散々自由に振る舞ったら、勇者様がいじけてしまいました。
反省反省、失敗失敗。
やりすぎはよくありません。
最近、私も調子に乗っているのかも知れません。
今一度自分を見つめ直し、自重した方が良いかなあ…と。
なんとなく、自粛の念を得ました。
多分、反省しても長続きはしそうにないけど。
「それで、あの巨体と範囲攻撃をどう封じる?」
「こっちの有効射程範囲に対して、向こうの射程距離が長すぎる」
「あの巨体ですからねえ…」
でも、勇者様。
「勇者様、最近おっきい敵に何度もぶち当たってるし、慣れてきたんじゃない?」
「あんな手の付けられない駄々っ子みたいな攻撃してくる敵は初めてだ」
「ああ、手が付けられないってヤツですね。わかります」
むしろ、見て解るでしょう。誰だって。
おっきい駄々っ子が、あそこにいます。
そのビッグサイズ故に、誰も近寄りようがありません。
「やっぱりここは遠距離攻撃。僕の出番かな」
「でもムー、あの巨体に大打撃を与えられる様な大きな魔法が使えるのか?」
「生半な攻撃だと焼け石に水って言うか、下手すれば五月蠅いヤブ蚊くらいにしか思って貰えないんじゃ…」
「嫌な例え、しないでくれない…?」
「え、何か嫌だった?」
「ヤブ蚊はないと思う」
「良い例えだと思ったんだけどなー…」
「どうでも良いが、やっぱり悠長だな。お前達」
「付き合いの良い勇者様だって同類ですよ」
「僕達に付き合っている時点で、差はないも同然だと思う」
「……………さて、そろそろあの無駄に巨大なアスパラに挑むか」
「策もないのに突っ走るのはらしくないですよ、勇者様!?」
「無謀は良くないと思う」
「いや、きっと成せば成る。きっと成る。だから俺は行く」
「駄目だ! 自棄になってるよ、この人!」
「仕方ない。リアンカ、何か良い奥の手は?」
「ムー…初っ端から何かする前に奥の手を求めるのはどうなんだ?」
「何か手があるのなら、聞いておくのも有りでしょう。それでリアンカ?」
「痛いのと辛いの、それから愉快なのと気持ち悪いのと洒落にならないののどれが良い?」
「って、またそれか! その選択肢なのか!」
「いやですね、勇者様。ちゃんと選択肢から「苦しいの」が消えているじゃないですか」
「--それじゃあリアンカ、お勧めは?」
「私としては、辛いの、かなあ…?」
「じゃあそれで」
「あいさー」
むぅちゃんの求めに快く応じて、私は鞄を漁り始めました。
そんな私達を目の前に、勇者様はがっくりと
「………またお前達は、あっさりと…」
今回も頭を抱え、それでもなお回避行動は完璧にこなす、勇者様。
見なくても避けられるなんてさり気なく凄いと、本気で感心してしまいました。
「…と、言う訳で、『辛いの』です」
そう言って、私はお馴染みの形をした薬瓶を2人に託しました。
「「……………」」
今回もまた、沈黙という反応を見せる2人。
なんですか、その反応。
言いたいことがあったら忌憚なくどーぞー?
「………なあ、この瓶に書いてある文字は俺の目の錯覚か?」
「僕の見ている物と違う文字でも見えているの?」
「…なんて書いてある?」
「 『毒』 」
「やっぱりか! やっぱりなのか! 滅茶苦茶簡潔にダイレクトすぎるだろうがっ!!」
わーお。そのまんまダイレクトなラベルの文字に、勇者様が凄い反応くれたよ。
何の納得がいかないのか、勇者様がわざわざ部屋の端まで走って壁に寄りかかりました。
そのままもたれかかる様に壁をガンガン殴っています。
「もう嫌だ…っ」
…どうやら、大分ストレスが溜まっているみたい。
今回の一連の騒動が片づいたら、その時は温泉にでも連れて行ってあげようと思いました。
私がこっそり慰安旅行のプランを練っている横で、むぅちゃんが瓶の蓋を開けます。
そのまま、中身を確認しているようです。
「…リアンカ、これってオリジナルブレンド?」
「はいそーですよ。この前、閃いた新調合です。試しにどうぞ」
「そんなお茶か何かみたいな表現止めないか!?」
あ、勇者様が復活した。
やっぱり勇者様はメンタル面が弱いけど、復活も早い。
どんどん復活する時間も早くなっているし、これは慣れたのか回復力が上がったのか。
その両方かな。
嘆きながらも私達の遣り取りを気にしていたらしい勇者様。
むぅちゃんの反応が気になったのか、遠い部屋の隅っこから戻ってきました。
「毒云々は、もういい。毎度のことだと諦めよう」
「流石に毒物を出してきたのは私も初めてなんですけど、いつものことと一括りですか」
「…手段が違っても、やってることは毎回似たようなものじゃないか」
否定はできませんでした。
いや、するつもりもありませんけどね?
私はこういう性格なので、行動パターンが似通っても当然で。
「でもワンパターンなら、そろそろ自分を見つめ直そうかな」
「是非そうしてくれと言いたくなったが、俺の思う方向とは真逆に突っ走りそうだからやっぱり止めてくれ。絶対に俺の望む方向に進まないことだけがはっきりしている気がする」
「勇者様は勘が良いので、多分当たってますよ、それ」
「頼むから、否定してくれ!」
勇者様は今日も絶好調でした。
絶好調で、ツッコミでした。
大ボス戦は、大ボスと言うだけあってダイナミックに展開しつつあります。
毒を使うにも、あの巨体じゃ致死量に足りないんじゃないかとのご指摘もありまして。
大丈夫じゃないかなーとは思うんだけど。
これ、まぁちゃんを3時間麻痺させられるくらいの威力だし。
生半可な生き物には、大分苦しいと思う。
イチコロとは言わないけれど、アスパラ如きが耐えられるとも思えない。
取り敢えず、奥の手は奥の手として取っておくとして。
やれる限り自力で弱らせてみると勇者様が決意なさった。
それから勇者様は、剣を片手に全長10mのアスパラに挑みかかっている訳ですが。
その小回り、素早い身のこなしを活かしてアスパラを翻弄する勇者様。
炎上アスパラを振り回すアスパラ皇帝。
でも攻撃が大振りすぎて、勇者様をピンポイントで捉えることは難しいみたい。
善戦奮闘を続ける勇者様を、私は離れたところから応援しています。
相変わらず範囲攻撃は射程広すぎだけど。
私の方も避けるのに慣れてきたので、余裕が顔を出しました。
え、さっきから余裕だっただろ?
何のことですか? 聞こえない、聞こえなーい。
私が余裕かましている間に、勇者様はアスパラに急接近!
叩き潰そう、踏み潰そうとするアスパラ。
勇者様はその巨体を器用に避けて、逆に近づいたアスパラの腕に飛び移りました。
曲芸じみた動きに、展開に、思わず拍手をしてしまう。
アスパラは巨大すぎて、その両脇の腕は不器用です。
いや、器用だったらこんな駄々っ子みたいな闘いはしてないか。
特に指は角度的に反対の手に触れることもできないようです。
お陰で勇者様を払い落とそうと思ったら壁に自分の体を擦りつけるか、炎上アスパラで自分の体を擦る必要が出てきます。
壁はともかく、燃え盛ってるアスパラで自分の体は払えまい。
勇者様は身悶えるアスパラの腕を、木登りの要領でするすると駆け上がる。
途中途中に跳躍も交え、あっという間に肩の上まで行ってしまった。
………あそこから落ちたら、一溜まりもなさそう。高さ的に。
遠くへ行ってしまった(物理的に)勇者様を眺め上げ、ぽかんとするむぅちゃん。
勇者様が強いと言っても、人間の範疇内にしてはだと思っていたみたいです。
違いますよね、あれ。人間捨てかけてますよね。
言ってみれば脱皮前みたいなものですよね。
え? それは違う? そうですか?
「リアンカ、僕はどうしようか」
「落ちた時に備えてみるとか。あんな高さから落ちられたら、ちょっと人力じゃどうしようもないし」
「わかった。水の魔法と風の魔法で受け止め準備しておく。他には?」
「あ、それじゃアスパラに攻撃してみるとか」
「でも僕の魔法、あの巨体を吹っ飛ばせるほどじゃ…」
「吹っ飛ばすこと前提なの? そうじゃなくて、気を逸らすとか。ほら今、勇者様にアスパラ集中してるし」
「ああ、成る程。それか一気に力をつぎ込んで大技出すのも良いかもしれない」
今度、上級攻撃魔法も試してみよう。
その言葉を最後に、むぅちゃんも対アスパラ戦に参戦です。
うっかり私と一緒に観戦してたけど、むぅちゃんだって立派な戦闘員だよね。
私は非戦闘員だけど。
「それじゃあ、僕。これからできる限り最大の大技に挑戦するから。無防備になるけど悪戯しないでくれないか。あと、危険があったら適当に守ってくれると有難いんだけど」
「やだなあ、むぅちゃん。悪戯はともかく危険回避に関しては私を当てにしちゃ駄目だよー。私、弱いんだから」
「…時として、僕はその認識が正しいのか偶にわからなくなるんだけど、一応で良いから」
「うん、それじゃあ一応ね? 一応、庇うくらいはしてあげる」
「頼んだよ」
そう言って、むぅちゃんは魔法の準備に移った。
むぅちゃんは自力で空は飛べない。
なので私と同じく大地に縛られたまま。
それでもあの巨大な敵に対して打つ手を持てる分、むぅちゃんは凄い。
魔法が使えるって凄い。
魔法が使えるって良いな。
幼い頃から幾度となく思ってきた憧憬と妬みが、私の胸を焦がすけど。
それも幼い頃の一時の夢。
私は私にしかできないことをするのみ。
という訳で、当座必要になりそうな薬を数えていると。
むぅちゃんが、動きを見せました。
むぅちゃんは、意識をアスパラに集中させている。
…今なら背後から襲撃すれば、顔面にだって落書きできそう。
くだらない悪戯を実行に移さないだけの分別は、幸い私にもありました。
むぅちゃんの両手に、異様な空気の高まりを感じます。
魔境で暮らしていれば頻繁に感じ取る空気、魔力。
私自身は持っていないそれが、むぅちゃんの体の中で湧き上がる。
膨れ上がったそれは、やがて清涼な水の匂いと、荒々しい風の気配に変わっていく。
水と風の、複合魔法。
2種以上の魔法を複合させるなんて、高度な技を何時の間に身につけたんだろう。
知らぬ間の成長を見せる同僚に、目が丸くなる。
ぎらりと、普段は人間の物にしか見えないむぅちゃんの瞳が、魔族の物に変じた。
あ、本気だ。
そう思った次の瞬間、高まった魔力が一気に開放された。
意表を突く為か、むぅちゃんは何も言わない。
魔力の動き以外の何の前触れもなく。
だけど魔力によって生きる魔物に取って、異様な魔力の高まりは無視できない事象だった。
寸でのところで此方の動きに気づいたアスパラが、身を翻す。
あの巨体で突然動かれると、周囲への影響が大きい。
だけどアスパラの動きなど気にも留めず。
むぅちゃんの魔力は、アスパラに襲いかかった。
それは、避けようもない勢いと、暴力を纏っていた。
水と、風。
混じり合ったそれは、一見して風の刃に見えた。
それも、超特大の。
だけどただの風の刃じゃない。
私には明確に何と言い切れる程、魔法に関する知識も勘もないけれど。
水と風の魔法だったはずなのに。
切り裂かれたアスパラの傷口から、炎が吹き上がった。
後でむぅちゃんに解説を求めた時、1番聞きたかったのはなんで炎が出たのかということ。
風の刃で炎が上がるはずもないのに。
だけどむぅちゃんの解説は魔力を扱う感覚とか、魔法知識とか、私とは畑違いな分野、事象に絡んでいるからよくわからない。
辛うじてわかったのは、1つ。
摩擦熱、という言葉だった。
風で切り裂いた鋭利な傷口。
熱風を孕む風で傷口を炙り、そしてアスパラの傷口から内部の水分に干渉し…
そして、一気に蒸発させたのだと。
それだけで炎が上がるのか、本当にそうなるのか。
私にわからなくても、効果は目にしています。
意味不明な不思議なことは、結局全て「魔法」の一言で片づけられました。
むぅちゃん、途中で説明、面倒になったね?
「………よくわかんないんだけど、燃やしたかったんなら炎と風の合わせ技で良かったんじゃないの?」
「リアンカ、それ洒落にならない。相乗効果が高すぎて僕にはまだ制御できないから」
「暴走しちゃう?」
「暴走したらどうにもできないよ。それに、最初から炎を纏ってたら、アスパラが警戒するし」
私にはわからない諸々の事情で、むぅちゃんは自分にできる最良の選択をしたようです。
そのむぅちゃんの魔法の威力は…
巨大アスパラの右腕が、爆砕しました。
「ベジタ・ブーッッッッ」
あ、アスパラ皇帝が初めて鳴いた。
苦悶の声は、雑魚アスパラとそっくり同じでした。
声の音階が、雑魚アスパラよりも重低音に響いたけれど。
片腕を奪われ、痛みと衝撃で激しく体勢を崩したアスパラ。
その隙を見逃す、勇者様ではありませんでした。
猛々しい気迫と、威嚇するような気合いの声。
今なら、痛みに苦しむアスパラの動きも勇者様を阻むには至らない。
まるでどこぞの熱血物語の主人公の如き雄叫びを上げながら、勇者様が一気にアスパラの表面を駆け上がる。
「おおっ 凄い凄い、凄いよ! 勇者様、垂直に走ってる…!!」
「…壁走りなんて、するような人に見えなかったんだけど」
「あれ、絶対に本能で眠れる潜在能力全開にしてるよ」
私達外野の声など、耳にも届かないのでしょう。
勇者様御1人がどこかの英雄のように、違う空気で生きている。
彼はアスパラの表面を駆けながら、全身のバネを使って勢いを溜め、更に上方へと跳躍した。
その跳躍力は、相変わらず人間離れしていました。
「アス、パラ、は、 土 に 還 れ!!」
そのお言葉、ごもっとも。
あんな育ちすぎた巨大で不気味なアスパラ、誰も食べる気など起こりません。絶対に食べたら体壊す。絶対に不味い。
勇者様が頭上に翳した剣が、物理的な質量を持ち、重々しくも鋭い光を放つ。
勇者様が眩すぎて、目が潰れそう。
光の神の加護を持つ勇者様の本領、絶賛発揮中だね。
あの剣、きっと勇者様とすっごく相性良いよ。
極光の様な光の中、巨大で緻密な魔術文字を用いた魔法陣が、剣を中心に展開した。
…まだ、あんな仕掛けがあるんだ。
どうやらあの聖剣は、思った以上に凄いらしい。
あんな剣を持っていて、どうして本来の持ち主たる数百年前の『勇者様』は当時の魔王に負けちゃったんだろう?純粋に、それが気になった。
しかし勇者様、いくら大きいとは言っても、アスパラを相手に本気出し過ぎじゃなかろうか。
圧倒的な光の高まりが、魔法陣へと収束していく。
おやおや、あんなの食らったらアスパラがどうなるか…
アスパラなんて目じゃありませんよ、あの剣。
大きく輝く魔法陣が全ての光を集めると、魔法陣は剣へと吸い込まれるように戻っていった。
次の瞬間。
剣が、 巨 大 化 した。
………うん。アスパラ相手に、ちょっと壮大すぎやしないかな。
ずばーって。
ずばあーーーっって。
縦真っ二つに、アスパラが泣き別れしちゃったんだけど…。
どう…っと重量感溢れる音を立てて左右に分かれ、倒れたアスパラ(1/2)。
緑の汁を溢れさせながら暫く手足をばたつかせて…
やがて沈黙でもする様に、静かになった。
え、剣がどのくらい大きくなったのかって?
そうね、分かりやすく言うと、アスパラ皇帝を一刀両断できるくらいかな(笑)
しかも魔法陣の効果か、その刃に燃え盛る紅蓮を纏って。
あまりの巨大さ、強力さに、剣を握っているはずの勇者様の御身が案じられた。
だって勇者様、生身の筈だもん。
今なら、自分の持っているはずの剣にプチってやられるんじゃないか。
本気で案じる私がいました。
野 菜の皇帝は滅び、土に還った。
きっと良い養分となることでしょう。




