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ここは人類最前線4 ~カーバンクルの狩り祭~  作者: 小林晴幸
エルフの迷宮(またの名をアスパラ地獄)
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24.グリーンアスパラマンの復讐2.5

中ボス戦の内容になりますが、お話の進行にはさほど関係ありません。

ただ中ボスとどう戦ったかというだけの話なので、読み飛ばしOKです。

 グリーンアスパラな中ボスは、思ったほど強くもなかった。

 だからといって、すぐさま倒せた訳でもなく。

 いや、勇者様達の方が全然強いんだけどね?

 何と言いましょう。

 多分、勇者様達の攻撃が1度でも当たれば、それで倒せる。

 だけどアスパラ達は、思った以上にしぶとかったのです。

 言い換えてみれば、避けるのが上手。

 なんだかモグラ叩きよりもイラッとくる勝負展開です。


「ッくそぅ…根菜でもない癖に土中に潜るな! また地下に逃げられた!」


 勇者様のフルスイングをするっとかわし、縦に長い体で器用に避けるアスパラ(ロバート)。

 先程から攻撃がヒットしそうになる度、慎重どころか臆病な程の回避ぶり。

 ひょこ! ひょこ! と土の下に逃げるのは確かに反則ですよね…。

 緑黄色野菜の分際で、土の下でも平気とはこれ如何に。

 勇者様もぐわわぐわわと怒りを高めている様子。

 アスパラが慎重すぎて擦りもしない状況に、苛々は高まるばかり。


「アスパラが! 植物の癖に! 火精霊を使役するなぁぁあああっ!!」


 此方は此方で、むぅちゃんが炎の様に怒りを立ち上らせています。

 彼の対峙する相手は、此方も矢張りアスパラ(シャーマン)。

 精神攻撃の甲斐がないと悟ったからか、このアスパラめは意外に頭がある様で。

 先程からずっと、下級ながらも精霊を召喚し、その使役に努めています。

 これがまた、何故か野菜の癖に火・水・土という3種の精霊を使役するとか。

 3人でその状況を前に目を見張り、愕然としたのはつい先刻のこと。

 ちょっとちょっと、精霊3種って…。

 エルフとかなら珍しくもないし、アスパラの制作者はエルフなのでアレですが…。

 これが人間だったら、精霊使いでも3種もの精霊使役は中々ないですよー。

 なのに目の前のアスパラが、いくらシャーマンでも精霊使役。

 その中に火の精霊が混じっていることが、むぅちゃんは納得いかないらしい。

 普段の彼からするとらしくない激昂ぶりを見せています。

 不条理すぎて苛々するって言ってた。その気持ちは分からないでもない。

 おまけにアスパラの使役する精霊によって阻まれ、先程からむぅちゃんの魔法攻撃は威力削減、下手すれば無効化されていますからね。

 下級とはいえ、やっぱり精霊は油断のならない相手のようで。

 そんな大層な生命体が、アスパラに使役されているとか。

 これは精霊にツッコミを入れるべきか、アスパラにツッコミを入れるべきか。

 両方だろうと、勇者様が頭を抱えていました。

 野菜如きに使役される精霊などたかが知れていると憤慨していたむぅちゃん。

 でもその精霊に攻撃の悉くを邪魔され、かつて無く怒っています。その怒りも尤もだよね。

 火の攻撃は火と水の精霊に防がれ、風は土の防壁で阻まれ、水はまた水と火で相殺される。

 土の攻撃は野菜の活力に返還されるらしく、逆に回復された。

「むぅちゃん、無属性の魔法は習得していないの?」

「無属性の攻撃魔法は初級しか覚えてない…。覚えているのは全部属性攻撃ばかりだよ」

 下唇を噛み締め、むぅちゃんはアスパラを親の仇の如く睨み付けています。

 いや、むぅちゃんのご両親は健在だけど。


 危なくなったら地中に逃げる!

 魔法攻撃は精霊で相殺!

 徹底したその抗戦ぶりに、中々致命傷を与えることができません。

 いつしか苛立ち最高潮に達したむぅちゃんが、むすっとした顔で私に手を突き出しました。

「リアンカ、奥の手!」

「なあに、むぅちゃん。その奥の手あって当然って感じ…うん、あるけど」

「って、あるのか!」

 鞄を漁り始めた私に、勇者様がついツッコミを。

 それでも私の有する「奥の手」が気になったのか、アスパラを警戒しつつも寄ってきます。

「それじゃ、むぅちゃん」

「うん」

「痛いのと辛いのと苦しいの、それから気持ち悪いのと洒落にならないの、どれが良い?」

「リアンカ、お前…いくつ奥の手持ってるんだ!?」

 驚きの勇者様の横で、仏頂面のむぅちゃんが更にずいっと手を伸ばし。

「苦しいので」

「あいさー」

「そこで迷わず、その選択なのか…」

 遠い目をする勇者様と、不機嫌なむぅちゃん。

 その2人の手に、ぽんと。

 私は鞄から取り出した乳白色の瓶を、それぞれ1つずつ乗っけました。

「公平に勇者様とむぅちゃんに1個ずつどーぞ☆」

「……………」

「……………」

 …あれ、なんでか2人とも押し黙っちゃった?

 異様な空気に、遠くのアスパラも気まずそうにまごまごしている。

 凄い、あの野菜、空気を読んでる…!?

 侮れないと、1人野菜に気を反らしていると…

 押し黙っていた勇者様が、重そうに口を開きました。

「リアンカ…気のせいじゃなければ、この瓶、『濃硫酸』って書かれているんだが…」

「読んで字の如くの物が入っていますが」

「入っているのか…!?」

 ギョッとした顔で、勇者様が仰け反りました。

 でもいつもよりもっと物静かなむぅちゃんは違います。

 その顔に、うっすらと酷薄な笑みが浮かび…


 少年は、迷わず瓶の蓋を開けてアスパラに中身をぶちまけた。


 おやおや…アスパラも警戒したのか、土の下に逃げたけれど…

 土中に逃げても、液体だから染み込むよ?



 腹をくくった勇者様も、私の渡した奥の手(アイテム)の使用に踏み切りました。

 アスパラの泣き声が、中ボス部屋に響きわたります。


 中ボスを倒さない限り、脱出できない中ボスの部屋。

 私達が其処から次の順路へと進める様になったのは、10分後の事でした。





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