坂口美奈
(あっ、笑った。何話してるんだろ…。やっぱかっこいい❤)
「美奈っ!みなっ?!」
美奈の幸せな時間に急に話しかけてきたのは、美奈の3つ年上の真未だ。仲が良く、美奈はいつもいじられている。
「…っ!何?」
ぼーっとしていたため、とてもまぬけな声を出してしまった。
「もー!なにボーっとしてんのぉ?次100m20本だってよ!!」
「えーっ!ウソ!!もうヤダー…」
今日練習来なきゃ良かったぁ、と美奈は本気で後悔する。これは毎日思っている。でもなんで毎日来てるのか、自分でもよく分からない。
「おい美奈っ、先行けよ。」
先頭がスタートした時、前にいた飯島勇人が急に言ってきた。隼人は美奈の一つ年上だけれど、普通に仲が良い。
「はぁ?!ヤダよ!!」
速さはどっこいどっこいだけど、いつもは年上の隼人が先に行っている。だから先に行くのは気がひける。
「俺今日調子悪いんだよ。速く行けよっ。」
調子が悪い、なんてただの言い訳だとは分かっていたが、前がみんなスタートしてしまったため、美奈はしょうがなく隼人の前を行く。
(一番後ろでゆっくり行きたかったのにぃ!)
♦♦♦♦♦
「ハァハァ…。もう疲れたーぁ」
美奈はやっとの思いで100m20本を泳ぎ終え、すごくホッとしていた。
「美奈本気でとばした?!」
近くにいた隼人が話しかけてきた。
「なわけっ!20本本気でとばす人いないでしょ」
ハッキリ言ってそうなのだ。練習でいくら本気でとばせと言われても、20本と言われたら本気で泳ぐ人などいないだろう。
「そうだよな。まっ、俺は20本じゃなくても練習で本気で泳いだことなんてないけどなっ」
美奈が鼻で笑ってやると、天才だから!と返してきた。
「ムカつくーー!」
美奈が少し可愛く言い返してやると
「ホントムカつくー!何ソレ!」
急によく知ってる可愛い声が入ってきた。
佳菜子だ。美奈の一つ年下で、美奈より速くて、美奈より可愛くて、隼人のことが好きな佳菜子。
すると隼人は、これ以上速くなったら困るからさー、なんて言いながら男子の方へ行ってしまった。