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第1話の6『乗り遅れたんじゃない、居残ったんだ』

はい、どうぞ!

 教室を怒号が覆う。


「ざけんじゃねーぞ、このやろうー!」

「テメーがざけんな。こん畜生!」


 顔面を殴り合い、腹を蹴り合い、投げ飛ばしたり、椅子で殴打したりの大乱闘だ。

 田舎者呼ばわりの毛皮を着た妖怪が殴られた。髪がモジャモジャしている奴だ。

「田鷲!やりやがぁったな」

 自称都会派妖怪の一人、Bと呼ばれた男はボクサーのような動きをする。「シッ!シッ!シッ!」と発音しながら軽いシャドーまで見せた。

「きやがれ」

 小猿扱いの男が誘うようにクイクイと手招きをする。

 その軽い挑発に苛立ったのかBは素早いステップで射程内に入りこみ、左フックを当てようと目論んだ。

「は」

 なんと小猿はそれを避けてしまった。

 Bは少なからず動揺したが、まぐれだと思い、今度は右ストレートを見せる。

「へ」

 小猿はまたしても、それを避ける。

 何かの違和感を感じ取ったBは、コンビネーションの使用を企んだ。

 同じ箇所、同じ攻撃の右ストレートで相手に安心感と慣れを与える。しかるのち、ジャブ3発(1発はボディーに)で相手を固め、とどめは右フックと見せかけておいて、ボクサーに見せかけておいての、まさかのローリングソバット。決まったはずだった。

「ほ、ほ、ほ」

 それを全部避ける小猿。なんという事だろうか。

「当たんねえよ。お前の考えている事は全て分かる」

「分かるだと?毛皮で猿……、てめえサトリか!」

「サトリ一族の覚悟だ。4649!」


 小猿の隣で、入間と呼ばれた妖怪が豪快に敵を蹴散らす。

「撲」

 気のせいか?いや気のせいじゃない。”でかくなっている”。

「一つ目入道だぁー!」

「でけえー」

「つえー」

 だが、入間の四肢に黒い粒のようなノイズのようなものが絡み付く。

 ネットだ。電子妖怪だ。

「チョウシニノルンジャネエ。デクノボウ」

「惑」

「シンショクシテヤル」


 一人始めれば、また一人。次から次にと連鎖的に喧嘩が始まる。段々と止めようがなくなってきた。

「……みんな頑張れー」

 非常にやる気のない発言をしたのは、花子。トイレの花子さん。適当に携帯をいじっていた。


「なんと由々しき事態か!地球防衛妖怪隊。全隊員集合!」

 そして、不良の喧嘩に全く関係のない馬鹿達も加わってきた。

「隊員番号1番コトダマ到着です!」

「隊員番号2番アカナメ到着です!」

「隊員番号3番カラカサ到着です!」

「よし!全隊員突撃!争いを止めるのだ」

「「「ワーー!」」」


 教室の端っこで事態を静観していた……、いやビビって動けなかった狐が一歩前に出る。

「おお!姫様。なんとこの場を治めるつもりか」

「なんとも流石。お父上も誉れに思いますよのう」

「次期盟主の御力。拝見させてもらいますぞ」

 お付きの期待はプレッシャーとなり、姫様狐の足をがたがた奮わせた。

「ボ、ボクだって出来るんだよ」

 姫様狐は、狐火を発した。狐火は瞬く間に大きく展開され……

「えーい!」その掛け声は火と共に教室の全員を振り向かせた。


 プスン……!


 が、情けなく消え去り、全員は再び騒動を始めた。


「なんともはや駄目であったか」

「やはり、モコモコではのう」

「フサフサでないとのう」

「尻尾がモコモコでは、この程度か」

 お付きの者はそう言った。




「がーはっはっは!面白いわい!」

「がーはっはっは!面白いどん!」

「がーはっはっは!面白いべさ!」


 教壇に腰掛けるツルツル頭に髭モジャの3人組は笑っている。ただ、笑っている。参加するわけでもなく、ただ笑っていた。


「「「がーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」」」


 一方、そこから少し離れたところでは、女の子二人が様子を伺っていた。お互い手を握り合い、仲睦まじそうにしながら。人が見たら、やや百合百合しく感じる事だろう。

三明黒みあこちゃん。どうしよう、みんな争ってる」

「うん、どうにかしなきゃ、白穂しらほちゃん。争いを止めよう」

「どうすればいいのかな?三明黒ちゃん?」

「正直に話し合ってみようよ、白穂ちゃん」

「うん、一生懸命話し掛ければ、みんな聞いてくれるよね」

「うん、ちゃんと話せば聞いてくれるよ」

 二人は意を決し、手を握りしめ、お互いを確認した後、一歩一歩前に出始めた。それは、彼女らの信頼感を確かめる行動でもあった。

「行くよ、三明黒ちゃん」

「頑張ろう、白穂ちゃん」

 目を一瞬閉じて、ギュッと二人は抱きしめ合い、絆を確かめてから声を出した。

「「あの、あの、私達の話を聞いて下さい……」」


 ノーコメント。

 誰の返事も返ってこなかった。


 「こらー!」

 どたどたと、廊下を走る音が聞こえる。隣のクラスからだ。何か起きたのか?


「何騒いでんのよ、あんた達!」

 そう言って、扉を開けたのは金髪女子。気の強そうな娘。


「他のクラスにまで聞こえているのよ。少しは静かにしなさいよ!」


 が、この訴えにも止まる様子はなく、騒動は続いたまんま。金髪女子はワナワナと体を奮わせた。


「言う事聞けえぇー!!」


 大音声が鳴り響く。


 この声に、誰もが耳を傾けた。


「あいつ、セイレーン?」

「人魚だ、人魚」

「このうるさい歌は人魚だ」


 やや鎮静化したところに、舌をだらしなく伸ばした餓鬼がクラスに入っていった。

「パンツ、パンツ」

 次の瞬間、その場にいた女子のパンツがねこそぎ、そいつに取られる。

「パンツ、パンツ」

 そのまま、逃走した。


 静寂の後に、女子は

「男子ーー!」

 全員で、そいつを追っ掛けてった。




 そして、後に残される主人公。


「あれ?乗り遅れた?」


 がいた。

次回、原作主人公登場!

ハハハ……

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