表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白兎の涙  作者: 佐倉ゆき
8/12

望まぬ再会

 お気に入り登録件数100件突破しました。ありがとうございます。これからも精進していきますので、よろしくお願いします。

 さて、今回は刹那が華夜に対して少しひどいかもです。ご注意ください。

 華夜は開いた障子の奥から入ってきた人を見て目を見張った。それはつい一か月ほど前に友人の付き添いで行った場所にいた高崎刹那であった。速水家の息子である速水明には会うことにあるかもしれないと覚悟していた華夜だったが、一か月学校で避けていた刹那にここで会うとは思ってもいなかった。驚きと困惑で呆然とする華夜を刹那は面白そうに見ていた。そして視線を速水の当主であるに向けた。


 「お話し中に失礼します。こんにちは。直政おじさん」


 「いらっしゃい。半月ぶりくらいかな。元気だったかい?」


 「はい。お邪魔してます」


 「いや、構わないよ。今日はどうしたんだい?また、何か悪巧みかい?」 


 「ひどいな、父さん。俺たちがいつも何か企んでるみたいじゃないか!」


 突然、別の声が聞こえてきたことに驚いて華夜が視線を彷徨わすと、刹那の友人である明と康之もいた。刹那と一緒に部屋に入ってきていたのだろうが、刹那の登場に意識を向けすぎていたために彼らの存在が目に入っていなかったようだ。


 「本当のことだろう。なんだ、明と康之君もいたのか。康之君、久しぶりだね。元気だったかい?」


 「はい、変わりありません」


 「そうか、それは良かった。丁度いいところに来た。明は知っていると思うが、こちらは速水家の分家の仙堂家の皆さんで、仙堂光春さん、奥さんの花苗さん、息子の陽斗くんと婚約者の木村紗枝さん、娘の華夜さんだ。皆さんご紹介します。光晴さんや花苗さんは明にあったことがありますよね。陽斗君はまだだったかな。それと後の二人は息子の友人の高崎刹那くんと荻野康之君です。どこかのパーティーで見かけたことはあるかもしれませんが。君たち、皆さんにご挨拶していきなさい」


 「お久しぶりです。次男の明です」

 

 「申し遅れました。高崎刹那です」


 「荻野康之と言います」


 刹那たちが挨拶すると光晴がにこやかに話しかけた。華夜たち4人は黙って頭を下げていた。


 「仙堂光晴です。大きくなったね、明くん」


 「ご無沙汰してました、光晴おじさん」


 「高崎財閥や荻野一族のご子息もお噂は伺っていますよ」


 「いえ、まだまだ若輩者です。それより、お話の最中だったのにすみませんでした」


 「いや構わないよ。直政さんに話が合ったのだろう?」


 「そういえば、何か急用なのかい?」


 「いえ、急用というわけではありませんが、学校の後輩が来ていると聞いたので少し話がありまして、失礼を承知できてしまいました」


 「明や刹那君達は華夜さんと知り合いなのかい?」


 「はい、親しくさせてもらっています」


 その言葉で仙堂家の者たちは戸惑った反応をした。華夜も家族に高校で会ったことは家族には内緒にしていたのだが、刹那の思わぬ言葉に固まっていた。直政が一瞬華夜に視線を向けたが、すぐに刹那に視線を戻すと何か含みのある顔で尋ねた。


 「それでしばらく彼女と話がしたいと?」


 「はい、ここ最近学業の方が忙しくて彼女と中々、話せていなかったものですから」


 「分かった。だが、夕刻までには解放してあげなさい」


 「分かりました。では、彼女を少しお借りします」


 華夜の意見は聞かず、話は直政と刹那の間で纏まった。刹那は彼女に歩み寄ると、手を取って引っ張っていった。そんな様子に戸惑ったように自分を呼ぶ兄の声に心配ないと言うように、華夜はにっこりと笑って部屋を出て行った。

 刹那は勝手知ってる家なのか誰にも案内されず、廊下を突き進んである部屋の前で止まり、部屋の襖を開け、華夜と共に部屋に入り、後ろ手に襖をスッと閉めた。それを見ていた華夜は鍵を掛けられたわけでもないのに閉じ込められたような気がした。そんなはずないと不安な気持ちを切り替えるために華夜の方から話を切り出した。


 「あの、高崎先輩…ですよね?前に荻野先輩や速水先輩と一緒にお会いした」


 「あぁ。覚えていたか」


 「はい、お久しぶりです。あの、今日はどうしてこちらに?」


 「お前に会うため」


 「…はい?えっと、今何て?」


 「だから、お前に会うため。わざわざ明に頼んでセッティングしてもらった。こうでもしないと逃げられただろうからな」


 (…つまり他の方法だと逃げられる可能性が高いから、逃げられないように速水家からの呼び出しで私が断れないように仕向けたってこと?)


 「まぁ、この方法で正解だな。この一か月ほど学校じゃ避けられてたようだからな」


 「避けてたなんて…、考えすぎですよ。先輩とは学年も違いますし、私も入学したてで忙しかっただけです」


 「ものは言いようだな。まぁ、そういうことにしておいてやろう」


 「先輩こそどうして、こんな回りくどいことをしてまで私に会おうとしたんですか?」


 「お前を気に入ったから」


 「…冗談はやめてください」


 「冗談じゃない。お前を気に入って欲しくなった」


 「欲しくなったって、私は物じゃありません。それに先輩、婚約者の方がいらっしゃったはずなんじゃ…」


 「婚約は解消した。元々、向こうの中条家が強引に進めてた話だからな、高崎家は特に困らない」


 「困らないって、でも、速水家と縁続きになるための婚約でもあったはずですよね?」


 「詳しいな。だが速水家としても中条家に力を持たれるのは本意ではないようだからな、そちらも問題ない。それに中条家と同じ速水の分家の娘と婚約すればいいだけの話だ」


 「それなら、こんなところで私を相手に時間を潰してないで、早く新しい婚約者の方と親交を深めに行ってきてください」


 「だから、ここにいるんだろうが」


 「…はっ?!」


 「お前が俺の新しい婚約者だ」


 刹那の言葉を聞いた華夜は一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。


 「う、うそっ?!」


 「嘘じゃない」


 「じゃ、じゃあ冗談?」


 「冗談でもない」


 「で、でも、私、何も聞かされてない!」


 「お前の両親には今、直政おじさんが話している頃だろう」


 「両親がこんな話承諾するわけがないっ!」


 「お前自身が承諾すれば、お前の両親の承諾ももらえるだろう」


 「わ、私はあなたとの婚約なんて認めない!父達にもそう伝えます!」


 「いいのか?お前たち家族が路頭に迷うことになるぞ?」


 華夜は刹那の言ったことに怪訝そうに尋ねた。


 「どういうこと?」


 「考えてもみろ。お前の父親は速水家の顧問弁護士なんだろう?この婚約を断れば父親の仕事にどう影響するかわかるだろう?それに中条家のように高崎家から断ることはない。俺がお前を気に入ってるからな。仙堂家が本家の意向に逆らえば、お前の家族はどうなる?」


 刹那の言葉に怒りで頭が沸騰するかと思った。そして、次の瞬間には刹那の頬を叩こうと手を振り上げたが、難なく刹那に腕を掴まれてしまった。


 「っ、卑怯者!」


 「どうとでも。これでお前が手に入るんだ手を回した甲斐がある」


 そう言うと刹那はまるで断られることなどありえないと言うように不敵に笑った。


 「それでどうするんだ?お前が決めろ」


 華夜は下唇をかんで悔しそうな表情をした。そして、躊躇いながらも言葉を紡いだ。


 「……本当に私があなたと婚約したら、家族は今までと同じように暮らせるんですよね?」


 「あぁ、お前がこの婚約を承諾すればな」


 華夜は目を閉じて、家族の姿を思い浮かべた。すると、色んな感情ごちゃ混ぜとなり、波となって押し寄せてくる。それを何とか溢れ出てくるのを抑えて、刹那に答えた。


 「…っ、よ、ろしく、おね、がいします」


 「それは了承と取っていいんだな?」


 華夜はこくんと力なく頷いた。その瞬間に華夜の視界は反転して、気が付くと畳の上に押し倒されていた。

  

 ここまでご覧いただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか?今回長くなりそうだったので切らせていただきました。あの場面で切ってすみません。ですが、次回も乞うご期待ということで!(……頑張ります)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ