第四十三章:7月7日は何の日?
キッチンで会ったシュバーレさんのお父さん…神様に連れられて、ぼくたちは今、神殿住宅の奥の和室に来ています。
まさに『和の空間』といったこの部屋。
なんか日本刀まで飾ってあるし…。
そんな和室の青々しい畳に敷かれている座布団の上に正座しているぼく。
その隣りに座っているシュバーレさん。
ぼくたちの前に、いまだシャツとトランクスの状態で座っている神様。
なんなんだこの空気…。
いや、なんなんだ神様…なぜにまだトランクスなのですか…?
いや、違う!いったいぼくになんの用なのでしょう?
そんなぼくの気持ちを察したのか、それとも読んだのか分からないけど、徐に口を開く神様。
「え〜っと…君が春崎一ちゃんかな?」
「あ、はい。そうですけど…」
「あれ?元気ないなぁ〜。せっかく呼んだのにー」
ぷくーっと頬を膨らませて、ご機嫌ななめですよ!といった感じな神様。
よく考えてみよう。40代後半のおじさんが、ぷくーっと頬を膨らませてふてている姿を。無理だ。なんか悲しくなってくる。
「えっ…いや、元気ですよ!…いや違う。あのですね神様…」
「いやぁ〜!声は聞いたことあったんだけど…かわいいねー!予想以上だよ!…そうだ!夏休み一緒に海にでも行かない?パパの力で沖縄でもハワイでもタダで連れてったげるよ!あ、ちなみに、シュバーレのパパだからパパとでも呼んでねー」
えっ?声は聞いたことある?どうして?ぼく、神様に会うの今日が初めてなのに…。
「あはは!それはねー。前にパパがはじめちゃんに話しかけたからだよ」
「あ…」
「ごめんね!今、心読んだよ」
「ですよね…で、それっていつですか?」
「確か…あれ!ツチノコ探しの時だね。ちょっと面白そうだったから行け行けって言ったんだけど」
あ〜確かにあの日の朝、声が聞こえてきたけど…夢じゃなかったんだ…。
「あ、それよりも神様…」
「パパだよ」
「パ、パパ。ぼくになにか用があるんじゃないんですか?」
もし無かったらあれだけど、無いならわざわざ天界まで呼ばないと思うし。
「そうそう、ちょっと話があってね…」
「話し…ですか?」
「そう。お〜い!エルちゃん!」
「はぁ〜い」
かわいらしい返事とともに、現れたエルちゃん。
「説明したげて」
「はい。わかりましたー」
和室のタンスから座布団を一枚取り出して、ぼくの前に正座するエルちゃん。
「あのですねはじめちゃん。7月7日はなんの日か知ってますか?」
7月7日…?7月7日っていったら…。
「七夕だよね?」
「はい。その通り。そして、美佐さんの誕生日でもありまーす」
「あ〜そうだった!美佐さんの誕生日だ!」
「で、7月7日にですね。美佐さんのお誕生会を開こうと思いまして」
「うん。いいんじゃないかな。美佐さんもきっと喜ぶよ!」
「会場をはじめちゃん家にしたいな〜とパパさんが言っておりまして…」
えっ?ぼくん家?
「えっ?…なんで天界じゃないの?こっちのほうが広くていいのに…」
「7月7日はパパさん忙しいらしいんですよ七夕だから」
あ〜!願いを叶えたりしなきゃいけないもんね。神様だから。
「ダメかな?パパからのお願い…」
目をうるうるとさせ、上目遣いでぼくを見てくる神様。
これ、拒否権はないでしょ。
「いいですよ。どうせ暇ですし、ぼくん家でよければ」
「ありがとうはじめちゃん!さすが、シュバーレが気にいるだけのことはあるな!」
「えへへ、どうもです」
美佐さんのお誕生会かぁ…プレゼント何あげよう?あ、ケーキも作らなきゃ!なにケーキにしようかな…まぁ麗香さんや高橋さんと一緒に決めればいいやー。
「あ、おいエル。そういえば、お前もしかしてもう美佐に誕生日のこと言ったか?」
突然思い出したようにして聞くシュバーレさん。
「え?なにも言ってないよ?」
「あ、ならよし!はじめちゃんも美佐には誕生日のこと言わないでね。ドッキリって感じにしたいからさ」
「あ、はい。わかりました」
ドッキリかぁ…美佐さんどんな顔するかな?まぁ、どうであれ、喜んでくれることは確かだと思うけど。
「うわぁぁああぁあぁぁあ!!9時過ぎてるぅぅぅうぅう!!」
うわっ!びっくりした!
なぜか突然叫びだす神様。
なに?いったいなんなの!?
「ハ○ルの動く城がぁぁあぁぁあ…いや、まだ間に合う!待っててくれ!日本天界放送局ぅうぅぅうぅ…」
目にも止まらぬ速さで部屋から出ていく神様。
あ、今日ハウ○の動く城やるんだ。へぇ〜…。
「パ、パパ待って!ぼくもハウル見たいですぅぅぅぅ!!」
どうも、リリィです!
あぁ!やばい!時間が!
ハウル見なきゃ!
て、ことで、今回も本編、後書きともに読んで下さってありがとうございました!
ジブリ大好きっ子のリリィでしたー