第三十六章:サタデイわくわくピクニックプロジェクトin流水山!後編
結構歩きやすく整えられている道。辺り一面に生い茂る木々は太陽の光を遮り、環境問題のひとつ、地球温暖化などまったく感じさせないほど涼しくなっている。
高ちゃんを追いかけて歩くこと約30分。
結構歩いた筈なのに、一向に高ちゃんたちの気配が感じられないのはなぜだろう?
ぼくたちが歩くの遅いのかな?それとも、高ちゃんたちが速すぎるのか?
そろそろ追いついてもいい筈なのに…
「なぁ春崎。」
「ん?どうしたの亮平?」
ぼくの横に並んで歩いていた亮平が言う。
それにしても、亮平の横顔、かっこいいなぁ…って言うか、背ぇ高いなぁ。絶対180cm以上あるよ…ぼくも亮平くらいまで背ぇ高くなりたかったな〜。亮平、バスケでシュート決めたら女の子にきゃ〜きゃ〜言われるんだろうなぁ…ぼくも活躍したかったな…まぁそれは今となっては無理な相談で。
いくら頑張ってもきゃ〜きゃ〜言うか、女の子としてしか活躍できないんですよね。今は。はぁ…
「あのさ、早く高広に追いつくために、もうちょい速く歩こうぜ。いや、むしろ走ろうぜ!」
サワヤカな笑顔で言う亮平。いや、実にサワヤカサワヤカしてます。サワヤカ3組よりサワヤカしてるかもしれないです。
「そうだね。うん。走ろっか!ね、みんな」
そう言ってぼくは、亮平とともに後ろを歩いている四人にサワヤカな笑顔を送る。
亮平なんてたぶん、今世紀一番のサワヤカさじゃないかな?
「う……うぉぉ!うぉぉぉぉぉ!!萌える!サワヤカな笑顔の美少女萌える!真っ白なワンピースをヒラヒラはためかせて歩くその姿は、一見、上品なお嬢様を思わせる。が!しかし、振り返るや刹那!その姿なのにも関わらず、服を気にして歩くとか、汚れるから嫌。とか全くそんなくだらない感情が無く。仕草、笑顔はもちろん。歩くその姿さえも愛らしく、気品漂う〜などといったお嬢様など微塵も感じさせない。まさに健康美溢れるサワヤカ美少…ぐふぉ!!」
「バカぁぁぁ!!!」
本日二度目のボディー。
どう?普段から腹筋も走り込みも縄跳びも…以下省略。
その、本日二度目のボディーを受けた前田は苦しそうに……
パシャッ!パシャッ!パシャッ!
写真を撮っていた。…って、なぜ?なぜそうまでして撮りたいの?もしかして、ぼく、悪いことした?世間一般の常識が分からなくなってきたよぉ……
「は、はじめ…もうちょっと脚を開いて…」
「あ、うん。…って、アホかぁぁぁぁ!なに言ってるの!?大丈夫なら早く立ってよ!こんなことしてるから高ちゃんに追いつけないんだよ!ほら、早く!」
「それは…無理だ…」
「なんで?!」
残念そうに言う前田。
なに?なんで無理なの?
「腹をヤっちまった。もう先には進めねぇ」
「…どおゆうこと?」
相変わらず苦しそうにしている前田。
なんかかなり汗をかいているみたい。大丈夫かな?
「さっきのはじめのボディーが効いたのか、昨日食べた朝ご飯達が、こんにちはしてるんだ…だが、ここで俺がこんにちはをして、さようならをするわけにはいかない…俺にもプライドがある。こんなところでさようならをするわけにはいかないんだ…まだ朝ご飯達にはいてもらわないと困るんだ…」
前田…お前、漢だよ。
女の子がいるから気を使ってるんだね…
要するに、今前田を激しい便意が襲ってるみたいです。
「ごめん前田…ぼくがお腹殴ったりしたから…本当にごめんね…」
「ふっ…気にするなはじめ…そのかわりに…ぐはっ」
「な、ななな、何してるんですかシュバーレさん!?」
「いやぁ〜…こういうの見ると押したくなるんだよね〜グイグイって」
前田に謝るぼくをよそに、グイグイと前田のお腹を抑えるシュバーレさん。
うわぁ…これはキツい!絶っっ対キツい!
さよなら前田…さよなら前田の昨日の朝ご飯…
「…まだキツいか?」
シュバーレさんが前田のお腹を抑えながら言った。
まだキツいってどういうこと?…もしかして、出しちゃったの…?
「ちょっとキツいな…でも、さっきより楽になった。これなら動けるぞ」
「そうだろ?」
そう言って立ち上がる前田。えっ?一体なにが起きたって言うの?前田の精神力が便意を押さえ込んだって言うの?!そうだったらすごいよ前田!
「おいおい、あまりはしゃぐなよ前田。オレの力で便意をちょっと抑えただけだから、動き回ると元に戻るぞ」
「うっ…そんなこともっと早く言えよな…」
カメラを構えてエルちゃんの方を向いたその瞬間、再び便意がきたのか、お腹を抑えてしゃがみ込む前田。
ドンマイとしか言い様が無い。…あ、そういえば!
「ねぇ、前田…」
「な、なんだ…はじめ…」
「えっと…その…ティッシュあるけど?」
「………あぁ。助かる。後から追いかけるから先に行っててくれ…」
「…わかった。行こうみんな。…あ、前田。ちゃんと手ぇ洗うんだよ。」
そしてぼくたちは再び歩き出した。後ろを振り向かないようにして。
※※※※※
適度に歩きやすく整えられた道を歩くこと約50分。
最初は緩やかな坂だったのが、階段へと変わっている。
さっきからずっと高広君のペースで歩いているからか、私や紗香の歩く速さが落ちてきている気がする。だが、さすが男の子。さすが野球部と言ったところか、高広君はなにくわぬ顔でスタスタと私達の前を歩いている。
高広君が野球部と言えど、男と女にこれほども体力の差があるとはな…。高広君には悪いが、私と紗香はそろそろ休憩をとった方がいいかもしれない。
「ちょっと、高広君。」
私は前を歩く高広君に声をかけた。
「…なんだ?」
歩く速さを落として、振り返らずに返事をする高広君。…なんだ?照れ屋なのか?
そのまま歩きながら私は話を続ける。
「頼みがあるだ。私自身、まだ行けるとは思うのだが、どうも身体が疲れてきているみたいなのだよ。歩く速さも落ちてきているみたいだ。紗香も疲れているようだし、はじめくん達を待つついでに休憩をしたいのだが…いいかな?」
私は立ち止まり、高広君の返事を待つ。
まぁ…彼のことだ。答えは決まっているだろうが。
「…わかった。じゃあこの辺で休憩しよう。ちょうど座る場所もあるみたいだからな。」
階段を20段ほど上がったところにある少し広い場所で、私達は休憩する事にした。
そこには、この山。流水山のマップや、休憩するために作られたであろうベンチがあった。
「はふぅ〜…疲れたぁ…」
ベンチに座り、紗香が言った。なんだか大きな荷物を持っているようだ。
よくここまで頑張れたものだな。これは疲れて当然だ。
「ねぇ、高広君。水飲み場ってまだまだかかるの?私もう疲れちゃったよ〜」
大きな荷物を置いて、高広君に聞く紗香。
なんだか不安そうだ。
「いや、この階段を上がったところにある。…って書いてあるぞ。」
流水山のマップを見ながら言う高広君。
この階段を上がったところなら、あと1分もあれば行ける距離だな。見たところ階段はあと10段ほどだろう。
「それより、ふたりとも汗かいただろ?ちゃんと水分補給しとけよ。」
高広君が某スポーツ飲料水を飲みながら言う。
準備がいいな。さすがは高広君だ。
「あれ?谷本さんは飲まないんですか?」
そう言いながら、大きな荷物の中からペットボトルに入ったお茶を出し、美味しそうにグビグビと飲む紗香。
…うむぅ…私としたことが、飲み物を忘れてしまったとは情けない…
「なんだ、持って来てないのか?」
呆れたように聞く高広君。
「うむ…どうやら鞄に入れ忘れたらしい。今頃は、はじめくんの家の冷蔵庫の中で存分に冷えているだろうな。私のポ○リ。」
「…そうか…じゃあしかたない。俺、3本持って来てるから1本やるよ。」
そう言って、リュックサックから某スポーツ飲料水…改め、アク○リアスを出し、私に渡す高広君。…優しいな…頼れる兄貴といったところか。
「すまない。助かるよ。」
「…いや。」
私はアク○リアスのフタを開けた。パキッ、と新品のフタを開けたときの音がする。
そしてそのまま、飲み口を口へと運ぶ。
ゴクゴク。
汗をかいた私の中に染み込んでいくアク○リアス。
いや、まさに生き返るようだ。
「あの、高広君。」
「なんだ?」
「いや、その…あ、ありがとう…な。」
「………」
…口をパクパクさせている高広君。なんで?とてもいいリアクションなんだが…なんで?…あ、顔が赤くなってる…。珍しく私がありがとうを言っただけなのに…やはり照れ屋なのか?
「おいおいおい!熱いねぇおふたりさん!太陽も真っ青だぜ?」
「バカ、そんなのではない!アク○リアスをもらったお礼を言っていただけだ!」
「照れるな照れるな〜。」
突如現れたシュバーレ。
もう来たのか。予想より速かったな。
「あ〜…疲れたぁ〜…やっと追いつきましたよぉ。」
「本当。疲れましたわ…。」
「アタシお腹空いた〜!」
はじめくんに麗香にエル…ん?前田がいないような…
「そういえばシュバーレ。前田の姿が見当たらないが…。」
「なに、じきに来るさ。それより、水は?」
「この階段を上がったところだ。」
「オッケ!行くぞみんなー!」
ふっ…このメンバーでいると何をしても楽しいな。
「美佐さ〜ん。早く早く〜!」
「あぁ。今行くよ。」
どうも、リリィです!
今回も最後まで読んで下さってありがとうございます!
え〜っと…終わり方がなんか微妙な気もしますが、そこんとこは、うん。まぁ…はい。すみません…。
いちおう次回ははじめちゃんの日記の予定ですので、『流水山な天然水』はどうだった?とか、お弁当はどうだった?とか、書きたいとと思います。
それでは、今回も本編、後書きを読んで下さってありがとうございました。
次回も読んで下さると光栄です。
リリィでしたー