第三十三章:説明講演?
「はい、ちゅうも〜く!」
「いや…注目って言われてもですね…この部屋には、ぼくとシュバーレさんしか居ませんよ?」
いきなり、ぼくの机の上に置いてあった30cmものさしで、机をパシーンと叩き、叫ぶシュバーレさん。
叩いた音が、虚しく響く。
「…よし!只今より、第一回説明講演を始める!」
なんだ!第一回説明講演って!第一回ってことは二、三とかもあるってこと?
そんな疑問形のぼくをよそに、再び喋り出すシュバーレさん。
「では始めに、今日オレが天界へ行っていた理由から説明しよう!」
「いや、ぼくは先に声の正体のほうが…」
「シャラップ!…では、始めようか」
「…お願いします」
「うむ。まぁ、いつもどおりはじめちゃんの日記を見て、オレは親父に報告をしに行ったんだ。」
「そのことならエルちゃんから聞きました。女の子の体の男の子のぼくが、どんな生活してるか、とか、どんな精神状態か、とかを調べてるんですよね?」
「あぁ。そんなことろだ。…で、ちょっと親父から気になる話を聞いてな…」
「き、気になる話ってなんですか?」
「それは…」
静まり返るぼくの部屋。
そして、真剣な顔のシュバーレさん。
こんなシュバーレさんを見るのは、初めてかもしれない。
「美佐のことなんだが…エルがこの家に来たときに変わったところはなかったか?ほら、キャラとか…」
「えっ?あ、はい。テンションが異常なまでに高くなりましたけど…」
確かに美佐さんのテンションがおかしかったのは事実だけど…それがなにか関係あるのかな?
久しぶりに友達に会って嬉しかっただけだと思うけど…
「やっぱりな…」
少し困った顔をして、頭を抱えるシュバーレさん。
そして、なにか考えたのか、少し間をあけて口を開く。
「…まぁ、なんとかなっか…」
「えっ?なにがですか?」
「…はい!次、声の説明な」
「ねぇってばぁ…」
ぼくを無視して話を進めるシュバーレさん。
なに!?いったい美佐さんがどうしたの!?
「ねぇ?シュバーレさん?聞いてます?美佐さんがどうしたんですか?」
「…ごめん。はじめちゃん。そのうち話す。悪いけど、それまでは待っててくれないか?」
いつもとは正反対というか、とても怖い顔をしているシュバーレさん。
…もしかして…怒ってるの…?
「は、はい。…わかりました。無理言ってごめんなさい…」
「いや、別に。…じゃあ、改めて声の説明いこっか!」
再びいつもどおりのテンションで話し出すシュバーレさん。
顔は笑顔なんだけど、目は笑ってないように見える。
「え〜っと…まず、どうやって声を伝えたかだけど…オレが心を読む力持ってるのは知ってるよね。その力で、逆にオレの心の声をはじめちゃんに送ったみたいな感じ…簡単言うと、心を読む力で、心を読ませたってこと」
「う〜ん…なんとなく分かりました。」
…いや、ちょっと待てよ…なら、前に聞こえた声は誰なの?
あきらかにシュバーレさんの声じゃなかったけど…
「あの、その力ってシュバーレさん以外にも使える人いますか?」
「あぁ…この力は神族なら誰でも使えるよ。」
さらっと答えるシュバーレさん。
え〜っと…神族って、神様のことだよね?
もし、神様がぼくに言ったんなら、神様の目的はなんなの?
ぼくはシュバーレさん以外の神様には会ったことないのに…
「…あ、そういえば、親父がはじめちゃんに会いたいって言ってたんだけど…どうする?」
「えっ!?」
シュバーレさんのお父さんがなんでぼくに?
「まぁ、嫌ならいいって言ってたけどさ」
「い、嫌だなんてそんな!」
「そう?じゃあ、今夜、日記が書けたらオレの部屋に来てちょーだい。天界に連れてったげるからさ」
「わかりました。………ってぇぇ!?」
机に置いてある時計の長い針が10。短い針が9を示している。
もう9時50分?!集合まであと10分しかないじゃん!
「しゅ、シュバーレさん!早くピクニックの準備を」
「あ!忘れてた!」
マジですか!?