第三十一章:アタシはタコさんウインナー
シュバーレさんの部屋の前に来たぼくたちは、心の準備のため、少し休憩をしていた。
「よし。行くぞはじめくん。」
「…はい。」
そう言うと美佐さんは指でカウントダウンを始めた。
3…2…1…って早いよ!!普通10からでしょ?!
「美佐さん?ちょっと早いで…」
「くぅおら!シュバーレぇぇ!!」
ガッチャーン!!!
ぼくを無視してシュバーレさんの部屋のドアを蹴り飛ばし、部屋に入る美佐さん。
しかも、なぜか満面の笑みで手の骨をコキコキペキパキと鳴らしている。うわ〜…楽しそう。
「ひんっ!!……あっ!ペサ子さん!?」
ドアを蹴り飛ばした音と美佐さんの声に怯えながらも、ぼくの顔を見て言うエルちゃんと言う娘。
「あ、あはは…ぼくははじめです。ペサ子じゃありません。ペサ子は過去へ帰りました。」
そう、ペサ子は過去に
「そうなの?まぁいいや。はじめちゃん!これ、シュバーレに渡しとけって言われたから」
よかった!まるで眼中に無いって感じだ!やったー!
…うぅ…でも、なぜ悲しいの?なんかすごく悲しい…
そんなことはお構いなしに、サッと部屋に置いてあったピンク色のかわいらしい鞄から、なにかを取り出すエルちゃん。
えっ…これって…ぼくの日記?
「なんでエルちゃんがぼくの日記を?」
「そりゃあアタシは」
「あんたってばエル!!ひっさすぶりねぇ〜!お元気〜?おっきくなったねー!私、分からなかったわさ!」
うわっ!びっくりした!
ちょっと…いや、かなり美佐さんテンション高くない?
キャラなんか完璧に違うし!
「うわっ!美佐さん!?なにしてんのこんなところで!?」
そっち!?突っ込むとこそっち!?キャラじゃないの!?
……もしかして美佐さん。前はこんなキャラだったのか…
「見ての通り居候よ♪」
いや、見ただけじゃ分かんないし…
「そうなんですか!?いいなー!アタシも居候したいなー!ホームステイ!ホームステイ!」
いや、居候とホームステイはちょっと違う気が…
「はじめちゃん!アタシも居候してい?」
「ダメです。それよりまず、エルちゃん。君って何者なの?あと、シュバーレさんは?」
「居候は?居候は?居候は?居候は?居候は?」
「もうっ!わかったよ!いいから!してもいいから!」
「サンキュ!えっと、シュバーレは天界に行ってるの。あと、アタシは…」
「アタシは?」
「天使です!」
「なにぃぃぃぃぃぃ!!」
て、天使ってこの娘バカ?……いや、神様いるなら天使もいて普通か!むしろいないとおかしいよね!天使。
「でね、エルって名前はエンジェルを略してエルになったのよ!はい!これで少し賢くなった」
うわっ…この娘テンション高すぎだよ…
「その天使さんがなぜ、ぼくの日記を?」
「あ〜…返しに来たの。昨日の報告が終わったから」
昨日の報告?…あ、日記を見せたってこと?
……いったい誰に…
「で、シュバーレがちょっと用があるって言ったから、代わりに渡しに来たわけ」
「へー…事情はだいたい把握したけどさ、報告っていったい誰にするの?」
「シュバーレのパパ。つまり、神様です。はじめちゃんは女の子の体の男の子と言う特別な存在ですから、いちおうどんな精神状態かとか、どんな生活かとかの調査だと思うよ。」
うわっ…聞かないほうがよかった…これじゃあまるで、保護されてる動物だよ。
「そ、そうなんだ…もしかして、まだなんかする気なの…?」
「…だ、大丈夫だよはじめちゃん!あいては神様なんだから!悪いようにはされないよ!だから気にしないで」
「う、うん。」
でも、神様ってシュバーレさんのお父さんなんだよね…なんか心配…
「そうだエル!朝ご飯食べてく?てゆーか、ピクニック行く?」
「行食う!」
あ、美佐さん。キャラ戻んないんだ
「オッケ!なに食いたい?なに食いたい?」
「アタシはタコさんウインナー!!」
タコさん!?タコさんにする意味はあるの!?
「オッケー!お弁当のおかずにあったはずよ!私についてきなさい!」
「りょーかい!」
そして、タコさんと連呼しながら部屋を出て行く2人。
…あぁ…いったいどうなるの…ピクニック…と、お弁当…