第十七章:プレイボ〜ル!
シュッ!ギュルルルルー…ズバーン!!
グランドに着くと、高ちゃんがピッチャー、亮平がキャッチャーで、キャッチボールをしていた。
「よし!結構肩暖まってきたな。」
満足そうに肩をくるくる回している高ちゃん。
なんか機嫌よさそう。
「高ちゃーん!亮平ー!」
「あ?」
僕の呼び掛けを『あ?』で答えた高ちゃん。
『あ?』ってちょっと…もうちょっといい返事返そうよ…
「お!春崎か!ちょうどよかった。みんなちょっとこっち集合〜!」
僕の声に気づいた亮平が手招きをしながら僕達を呼んでいる。
「よーし!これでみんなそろったな。んじゃあポジション決めようぜ!」
亮平もテンション高めみたいだ。
「とりあえず自分がどこしたいか言って。」
「僕はどこでもいいよ。」
「私はできれば簡単なところがいいです。」
「私もー!」
「私はどこでも良いぞ。」
「オレはサードで!」
「俺は外野で!」
「じゃあ俺はピッチャーで」
「よーし。じゃあ希望がない人は俺が決めるけど、それでいいか?」
「「オッケー!」」
「じゃあ、【ピッチャー】高広。【キャッチャー】俺。【セカンド】春崎。【ショート】谷本。【サード】シュバーレ。【レフト】宇佐美。【センター】前田。【ライト】高橋。って感じでいいか?」
「えぇ。私はそれでいいです。」
「私もー!」
「「「俺も」」」
えっ?ちょっとまって…ピッチャー、キャッチャー、セカンド、ショート、サード、ライト、センター、レフト…あれ?ファーストがいない!?
「ふぁ、ファーストは?」
僕が恐る恐る亮平に聞いた。
「ファーストは、敵のチームから借りよう。」
借りようって…物じゃないんだから…
「あの〜。すみません、ファーストを貸していただけないッスか?」
本当に敵チームに言っちゃったし!
「いいよ!」
えっ!…チームのファースト貸していいの…?
「あざぁッス!助かりやす!!」
やっぱ亮平テンションおかしい。うん。
「おい、ショウゴー!」
チームの監督らしき人が、ファーストの人の名前を呼ぶ。
「お呼びですか親方様!?」
ベンチから全力疾走で来た『僕は痩せてますよ!痩せましたよ!ふっくらしてた昔の僕じゃないよ!』的なオーラを加持出している男が言った。
「お前解雇。」
解雇って…ファーストの人、可哀想に…
「ははぁ〜!!有り難き幸せでございます親方様!」
解雇されたのに喜んでるよこの人…
「よし!では行けぇい!!」
「御意!」
タタタタタ!
親方様(?)の最後の命令を受けたファーストの人は、笑顔で僕達の方へ走ってきた。
「新しい親方様は何処?!」
「…………」
いきなりの理解不能の言葉に沈黙の僕達。
なに?新しい親方様って…
「親方様は…」
「…………」
「親方様…俺の親方様は…」
「こ、この人だよ。ショウゴさん!」
この空気に耐えきれなくなった僕は、シュバーレさんを示しながら言った。
「おぉ!あなた様が、俺の新しい親方様でありますか!?よろしくお願いしますだ親方様!」
ガシッ!
歓喜した(?)ショウゴさんが、シュバーレさんに抱きついた。
「親方様ぁ!!自分!ショウゴは、全身全霊を尽して、親方様のチームの勝利に貢献しますだ!」
「うおぇ!な、なんだテメェキモいぞ!離れ!早くオレから離れぃ!」
キモいって、ちょっとシュバーレさん言い過ぎだよ…ショウゴさん可哀想…
「シュバーレさん!それは言い過ぎだよ!ショウゴさんが可哀想だよ!」
「いいんだお嬢さん!悪いのは俺なんだから!」
「でも…」
ショウゴさんって心が広い人なんだなぁ
僕も見習わなきゃ!
「親方様ぁ!俺は何をすればよろしいでごさいますか!」
「そりゃあファーストに決まってんだろ!人数足んないんだから。あと、オレは親方様じゃないぞ!」
えっ!?ここにきて親方様の座をカミングアウト?!
シュバーレさん以外にこのチームの親方様は考えられないけど…
「親方様はね。あの、肩間である綺麗な黒髪の、」
「うんうん。」
「ちょっと背が小さめの、」
「うんうん。」
「スタイルがよくて可愛いい」
「うんうん。」
「はじめちゃんって娘だよ!」
「へぇー。僕が親…って、ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」
「わかりましただ!はじめちゃんが新しい親方様なのですな!」
「わかるなぁぁああぁぁあぁ!!」
あぁ…頭痛くなってきた…よりによってなんで僕が…?
「改めて、新しい親方様!よろしくお願いしますだ!自分は親方様の為に頑張りますだ!」
ショウゴさんなんか言ってるし…
「いや、ちょっと…親方様って…」
「親方様は親方様と呼ばれるのがお嫌いですか!?…ならば、はじめ姐さんばどうさね?」
あぁ〜…どうして僕の知り合いは、こうもキャラがおかしい人が多いの…?
「ごめん。それは、絶っっ対嫌!!」
「わかりましただ!はじめ姐さんと呼びますだ!」
「……………」
あぁ〜…この人どうしてくれよう?
僕の中では地味で痛々しい攻撃方法が、パラパラ漫画の用に次々と浮かんでくる…………僕…こんなキャラじゃないのに…
「はじめ姐さん!試合始まりますだ!俺達も並びますだ!」
僕が攻撃方法を考えている間に、敵チームの準備ができたみたいだ……呼び方は結局『姐さん』ですか…
「…うん。じゃあ、僕達も行こうか…」
僕は泣きそうになりながらも、ショウゴさんに返事をして、シュバーレさん達のところへ行った。
「整列!礼!」
「「お願いします!」」
両チームが向かい合って並んで、挨拶をする。
「ちなみに、こちら側の都合で、3回までしかできなくなりました。誠に申し訳ない。」
敵チームの監督(?)っぽい人が言った。
ちょっと残念だけど、3回あればいちおう野球らしい野球もできるだろうし、別にいいか。
そして両チームベンチに入った。
「はい。はじめちゃんのグローブ!オレ達後攻だから、守備に行くよ!準備オッケ?」
いつの間にか僕の隣にいたシュバーレさんが言った。僕はシュバーレさんがもっていたグローブを受けとると、急いで自分の持ち場、セカンドに向かった。
「プレイボ〜ル!」