第十章:僕の服
「よし! そろそろ行こうか?」
僕が持ってきたジュースを飲みほしてから、シュバーレさんが言った。
みんなは、『え?どこに?』って顔をして、シュバーレさんを見ている。
「えーと…そうだな…はじめちゃん! みんなに説明してあげて!」
「何をですか?」
「今から行くとこについて」
何を言ってるんだシュバーレさんは…今から行くとこって天界のことだよね?
僕、天界のこと何て知らないよ…?
「早く! はじめちゃんが知ってることでいいからさ!」
みんなの視線が僕に集まる………僕が知ってることっていったら…
「えっと…今から、天気君の家に行きます。えーと…僕もよく分かんないんだけど…うん。」
あぁー…何て言えばいいか分かんないよ!
「はい! というわけで、オレの家に行きます! なーに気にすることはないさ! すぐ着くから! みんな準備オッケィ?」
うわぁ…なんか適当だなぁ…あれ? そういえばさっきから前田が姿が無いような……
「ねぇ高ちゃん! 前田見なかった?」
「そういえば前田、トイレに行くって言ったっきり帰ってきてないな…」
……まさか!!
タタタタタ!
ガチャッ!
「……………」
僕が僕の部屋を開けると、なんかひらひらした綺麗な服を、クローゼットに収納している前田がいた…
「な…何してるの…」
「いやぁー。ちょっとはじめにプレゼントをね…」
ひらひらした綺麗な服を持って笑顔で答えた前田…コイツはいったい何がしたいんだろう…?
まだ大人になりきれてない僕の幼い脳では想像もつかない。
「そう…プレゼントありがと。でも、僕それいらないよ。売っていい?」
僕は、僕なりに冷たい視線を向けながら前田に言った。
「待て! せめて…せめて写真を! この服を身につけたはじめの姿を写真に納めさせてくれぇぇえ!!」
前田は僕の冷たい視線を嫌がるどころか、全く効果無し、逆に要求をしてきた…いったい前田って何者…?
「うん。無理!」
僕の言葉を聞いて、その場に崩れ落ちた前田…
「くそっ…着てくれたっていいじゃないか…着てくれたって…」
何だってコイツは…
「わかった、わかったから! 僕の服達を離せ!」
前田は手に持っていた服(シュバーレさんが女用に変えてしまった)とひらひらした綺麗な服を素早くおくと呟いた。
「……嘘ついたら…俺の言うことを聞いてもらおう…」
「あ、ごめんそれは死んでも嫌!」
「そうかそうか! 聞いてくれるか! はじめ! 今回は素直だな!」
ゴスッ!!
「ばべら!!」
僕はなんのためらいもなく、前田にドロップキックをした…それにしても奇妙な叫び声だなぁ…
僕は倒れた前田をひっぱって、シュバーレさん達のいる部屋に戻った。