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EP 7

ルナミス帝国城、謁見の間。

シャンデリアの輝きが、冷ややかな大理石の床を照らす。

そこには、戦勝ムードとは裏腹に、ピリついた緊張感が漂っていた。

「何と? ……申してみよ、ゼルガル」

玉座に座るアウラ皇帝が、不機嫌そうに頬杖をつきながら、眼下の騎士団長を見下ろした。

「ハッ! 申し上げます」

ゼルガル近衛騎士団長は、深々と頭を下げたまま報告した。

「我が軍の猛攻……および、敵軍内で蔓延した謎の疫病による混乱により、ガルーダ獣人国軍は完全に崩壊。現在は国境付近から撤退し、正式に『停戦』を呼びかけてきております」

「……抜かすな」

アウラのこめかみに青筋が浮かんだ。

ダンッ! と玉座の肘掛けを叩く音が、広間に響き渡る。

「我がルナミスに攻め込んで来て、負けそうになったら『許して下さい』だと? ふざけるのも大概にせよ! 獣風情が、人間の帝国を舐めるなよ」

アウラが立ち上がり、壁に掛けられた大陸地図を指差した。

「ならぬ。この機に乗じて、一気にガルーダ本国まで攻め落としてくれる! 根絶やしにして、二度と牙を剥けぬようにしてやるわ!」

激情に駆られる皇帝。

だが、ゼルガルは冷静だった。彼は一歩も退かず、軍人としての、そして為政者の駒としての冷徹な意見を述べた。

「陛下。お気持ちは痛いほど分かりますが……此度は矛を収めるのが上策かと」

「何だと?」

「第一に、奇跡的な短期決戦により、我がルナミス領の被害は極めて軽微で済みました。兵の損耗も最小限です」

ゼルガルは言葉を続ける。

「しかし、これよりガルーダ本国へ侵攻するとなれば、話は別です。広大な荒野、補給線の維持、そして死に物狂いとなった獣人たちの抵抗……。莫大な軍事費と、多くの騎士の血が流れることになります」

「むぅ……」

「今回の戦で、既に国境沿いの資源豊かな街や村をいくつか制圧しております。これ以上の深追いは、得られる利益よりも出費が上回る恐れがございます」

ゼルガルは「損得勘定」を提示した。

アウラはプライドの高い皇帝だが、無能ではない。国庫を傾けてまで、得られぬ荒野を欲する愚は犯さない。

「……ふん! 良かろう」

アウラはドサリと玉座に腰を下ろした。

「ゼルガルよ。手を打とう。……だが、ただで許すわけではないぞ?」

アウラの瞳に、サディスティックな光が宿る。

「戦後賠償は抜かりなく、徹底的に絞り取れ。奴らの国の鉱山、資源、技術……骨の髄までしゃぶり尽くせ。向こう100年、ルナミスに逆らおうなどという気が起きぬほどにな」

「ハハーッ!! 仰せのままに!」

ゼルガルの力強い返事が響く。

こうして、ルナミス帝国とガルーダ獣人国の戦争は、帝国の「圧倒的勝利」という形で幕を閉じることとなった。

その勝利の影に、下剤を撒き散らした5歳児と、焼き払われた小さな村の悲劇があったことなど、歴史の表舞台には記録されることもないままに。

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