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EP 15

雪崩による衝撃のドロー決着から数分後。

両者の機体が雪の中から回収された控室裏の通路で、第二の戦い(リアルファイト)が勃発していた。

「ふざけるなよ! 貴様! リアン!!」

いつも冷静沈着なクラウスが、顔を真っ赤にしてリアンの胸ぐらを掴み上げた。

貴族としての品位も、エリートとしての余裕もかなぐり捨てた、年相応の子供の癇癪だった。

「何がだよ! 放せよ!」

リアンも負けじと睨み返す。

「何が、だと!? なんだあの戦いは!? 最後は雪崩を巻き込んでの心中だと!? あれが誇りある決闘の結末か!」

クラウスにとって、自身の勝利確信からのドロー、それも相打ち覚悟の自爆戦術など、騎士道への冒涜以外の何物でもなかった。

「ハッ! 油断したお前が悪いね!」

リアンは鼻で笑った。

「勝負は下駄を履くまで分からない。武器がなくなったと勝手に思い込み、トドメを刺すのに時間をかけた……その『驕り』が敗因だろ?」

「……ふざけるなッ!!」

図星を突かれたクラウスの理性が切れた。

ポカッ!

クラウスの右拳が、リアンの頬を捉えた。

武術の型も何もない、ただの悔しさが乗った子供のパンチ。

「ってぇな……! 文句は俺に勝ってから言いな!」

ボカッ!

「ぐっ!」

リアンも即座に殴り返す。

そこからは、もう泥仕合だった。

「この! 卑怯者!」「石頭! ボンボン!」「ええい! 放せ!」

ポカポカ! ベシベシ!

天才操縦士と神童剣士の戦いは、互いに髪を掴み、足をバタつかせ合う、ただの4歳児の喧嘩へと退化した。

「ぼ、坊ちゃま!! 何をなさっているんですか!!」

「やめんか! リアン! 相手は侯爵家のご子息だぞ!!」

真っ青になったアインシュと、半分呆れつつも慌てたアークスが二人の間に割って入り、無理やり引き剥がした。

「放せアインシュ! 僕はコイツを認めないぞ!」

「離せ父さん! 50発殴らないと気が済まない!」

二人の少年は、宙に浮きながらも互いに威嚇し合っていた。

数時間後。表彰式会場。

厳かなファンファーレが鳴り響く中、包帯を巻いた二人の少年が並んで立っていた。

頬には絆創膏、服は少しヨレているが、その瞳だけはギラギラと燃えている。

玉座に座るのは、ルナミス帝国皇帝、アウラ・ルナミス。

彼は二人の少年を見下ろし、満足げに髭を撫でた。

「見事な戦いぶりであった」

皇帝の重厚な声が響く。

「正攻法の極みを見せたクラウス。そして、奇策と智謀でそれを覆したリアン。剛と柔、光と影……どちらもが、我が帝国の強さの縮図よ。ルナミス帝国の未来は明るいな」

「「はっ! 有難き幸せ!」」

二人は同時に膝をつき、頭を垂れた。

示し合わせたわけではない。完璧な礼儀作法。

(おのれ! リアンめ! ……貴様の名は一生忘れん!)

クラウスは床を見つめながら、拳を握りしめていた。

今日の屈辱、引き分けという汚点。そして何より、自分をここまで熱くさせた敵。

(次こそは……次こそは必ず、僕の全てを懸けて、正々堂々と貴様を叩き潰す! 首を洗って待っていろ!)

それは、生涯のライバル認定の瞬間だった。

一方、その隣で頭を下げているリアン。

(はぁぁ……。優勝なら金貨100枚だったのに、ドロー判定だから折半かよ)

リアンの脳内には、そろばんの弾く音が響いていた。

(賞金は金貨50枚。日本円にして約50万円……。まぁ、必要経費(プロテイン代とマグナギアの修理費)を引いても十分黒字だ。50万なら、良いか)

リアンはチラリと横目でクラウスを見た。

面倒なライバルに目をつけられたが、金は手に入った。

この大会は「成功」と言えるだろう。

こうして、第一回全帝国マグナギア大会・ジュニア部門は、伝説となる「雪崩ドロー」と、二人の少年の因縁の始まりとして幕を閉じた。

「(……次は負けないからな、クラウス)」

「(……次は覚悟しておけ、リアン)」

二人の視線がバチリと交差する。

最強の4歳児たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。


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