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EP 8

シンフォニア家の夕食時。

食器の触れ合う音が心地よく響く中、アークスがナプキンで口を拭い、真剣な面持ちで切り出した。

「マーサ。……貴方に相談があるんだ」

「あら、貴方。改まって何?」

マーサがスープスプーンを置く。

アークスは隣で肉を頬張っているリアン(4歳)を見つめ、熱く語り始めた。

「うん。……リアンの『マグナギア』の技術は、この田舎町ルナハンに収まる器じゃないと確信した。そこでだ。来月、帝都ルナミスで開催される『全帝国マグナギア大会』に参加させようと思うんだ」

「まあ。……それは凄いですわね」

給仕をしていたオニヒメが、感心したように声を上げた。

だが、マーサはきょとんとしている。

「リアン? 貴方は参加したいの? ……その、マグ……何とかっていう、『お人形ごっこ』の遊びに」

「……」

リアンの眉がピクリと動いた。

母よ。あれは人形ごっこではない。魔力伝導率と機体バランス、そして操作技術が絡み合う、高度なモータースポーツだ。

「『マグナギア』だよ、母さん。お人形遊びじゃないぞ」

リアンは子供らしく、しかし断固として訂正した。

「ははは! これは凄い事なんだよ? 母さん」

アークスが身を乗り出す。

「ただの子供の遊びじゃない。帝国中から腕利きのファイターが集まるんだ。そして、ジュニア部門で優勝すれば……なんと、金貨100枚(約100万円相当)の賞金が出るんだ!」

「金貨100枚……」

リアンの瞳の奥で、カシャン! とレジスターが開く音がした。

「それに、皇帝陛下も観戦なされる。優勝者は陛下から直接、お褒めのお言葉も受けられるんだぞ! 将来のリアンの出世は間違いなしさ!」

アークスは息子の将来を思い描き、目を輝かせている。

「そうなの? ……私にはよく分からないけど」

マーサは困ったように微笑み、リアンを見た。

「リアンが喜ぶなら、私は応援するわ。……どう? 参加したい?」

リアンの脳内で、高速の損益計算が行われた。

(……皇帝陛下とか、政治的なコネクションはどうでもいい。むしろ目立ちたくないからマイナス要素だ。だが……)

リアンはフォークを握りしめた。

(賞金、金貨100枚。日本円にして約100万円。……これはデカイ! 4歳児の小遣いじゃ買えない『高級食材』や『銃のカスタムパーツ』、それにセンチネルの『強化装甲素材』がネット通販で大量に買える!)

合法的に、誰にも怪しまれずに大金を手に入れるチャンス。

これを逃す手はない。

「ありがとう! 母さん! 僕、出たい!」

リアンは椅子の上で飛び跳ね、満面の笑みを見せた。

その笑顔は、純粋な少年の喜びに見えるが、その腹の底は黒い欲望で満ちていた。

「よし! 決まりだな!」

アークスがパンと手を叩く。

「そうと決まれば特訓だ! 大会に向けて、リアンの機体(弓丸)を最強に仕上げるぞ!」

「うん! (改造費は父さん持ちだな、ラッキー)」

「オニヒメ、遠征の準備を頼む。帝都までは馬車で数日の旅になる」

「畏まりました。リアン様の晴れ舞台、完璧にサポート致します」

こうして、リアン・シンフォニア(4歳)の帝都デビューが決まった。

それは単なる子供の大会への参加ではない。

賞金を狙う「賞金稼ぎ」としての、そして帝都の闇に潜むかもしれない「新たな脅威」との遭遇の始まりでもあった。

(待ってろよ、金貨100枚……。俺と弓丸が、大人の大人気ない戦術で蹂躙してやるからな)

リアンは残りの肉を口に放り込み、不敵に咀嚼した。

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