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EP 21

魔の森と特別ルール

「……おいおい、マジかよ」

帝都ルナミスから馬車で数時間。

文明の光が届かない、鬱蒼とした原生林の入り口に、S組の生徒たちは立っていた。

空は厚い雲に覆われ、昼間だというのに薄暗い。

森の奥からは、得体の知れない獣の咆哮と、湿った腐葉土の匂いが漂ってくる。

『嘆きの森』。

帝国でも屈指の危険地帯であり、危険度ランクは堂々の『A』。

熟練の冒険者パーティーでも、油断すれば全滅すると言われる魔境だ。

「ここが……今日の教室だ」

先頭に立つボブ教師が、大きなあくびをしながら言った。

「先生! 正気ですか!? 我々はまだ入学して数週間の学生ですよ!?」

「こんな場所に連れてくるなんて、安全管理はどうなってるんだ!」

貴族の生徒たちが悲鳴を上げる。

だが、ボブは耳をほじりながら聞き流した。

「うるせぇな。……安心しろ、結界セーフティエリアは張ってある。死にかけたら俺が回収してやるよ。……多分な」

「た、多分!?」

生徒たちが青ざめる中、ボブは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。

「さて、今日の授業は『狩猟演習』だ。……ルールは簡単。この森に入って、魔物を狩ってこい」

ボブが指を鳴らすと、空中に光の文字で『ポイント表』が浮かび上がった。

ゴブリン(雑魚):1ポイント

ホブゴブリン(中級):5ポイント

オーク(上級):10ポイント

オーガ(ボス級):50ポイント

???(レア):100ポイント

「制限時間は日没まで。獲得したポイントで、今学期の成績をつける。……下位の奴は、来週から俺の靴磨きな」

「くっ……! やるしかないのか!」

「ゴブリンくらいなら、僕の魔法で……!」

生徒たちが覚悟を決め始める。

だが、ボブはニヤリと笑い、爆弾発言を投下した。

「あぁ、そうだ。一つ言い忘れてた」

ボブの目が、鋭く生徒たちを見渡した。

「今回の演習……『手段は問わない』」

「……え?」

「剣でも魔法でも、罠でも毒でも……あるいは『金』や『コネ』を使っても構わん。パーティーを組むもよし、足を引っ張り合うもよし。……結果ポイントを出した奴が勝者だ」

ざわっ……。

その言葉に、生徒たちの目の色が変わった。

「手段を問わない……?」

ランドルフら、数人の貴族生徒たちが顔を見合わせ、卑しい笑みを浮かべた。

彼らは懐から通信用の魔道具を取り出し、何かを連絡し始めている。

(……なるほど。「家来に狩らせて持ってくる」のもアリってことか)

一方、クラウスは剣の柄を強く握りしめた。

「ふん。手段を問わない、か。……ならば僕は、己の剣技のみで頂点を目指すまで! 騎士たるもの、姑息な真似はせん!」

彼は誰とも組まず、単独で挑む気満々だ。

そして、リアンは――。

(……「手段は問わない」。つまり、これは純粋な戦闘力のテストじゃない。「生存能力」と「課題解決能力」を見るテストか)

リアンは冷静に分析していた。

森の中でのルール無用。それは、他の生徒からの妨害や、手柄の横取りも発生し得ることを意味している。

(面倒くさい。……適当にゴブリン数匹狩って、中間順位で茶を濁すか)

そう決めて、こっそりと列から離れようとした時だった。

「リアーン! 行くよー! お肉狩りだよー!★」

「リアン、お腹すいた。オーガ食べたい」

両脇を、ルナとキャルルにガシッと掴まれた。

「……お前ら、まさか俺と組む気か?」

「当たり前でしょ! 私たち『第零班』だもん!★」

「リアンは餌付け係。キャルルは食べる係」

「……はぁ」

リアンは天を仰いだ。

この災害級の二人と組めば、「目立たず終わる」なんて不可能だ。

森中の魔物を根こそぎ狩り尽くすか、あるいは森そのものを消滅させるか。

「おい、そこの問題児ども。さっさと行け」

ボブに背中を蹴飛ばされた。

「いてっ! ……わかったよ、行けばいいんだろ!」

リアンは覚悟を決めた。

「いいか、お前ら。……俺の指示に従えよ。無駄な殺生はするな。それと、森を燃やすな。いいな?」

「はーい!★」

「ん(人参を齧りながら)」

「……前途多難だ」

リアンたち3人は、暗い森の奥へと足を踏み入れた。

その背後で、ランドルフたちがニヤニヤと笑いながら、別のルートへ消えていくのを、リアンは見逃さなかった。

(……あいつら、何か企んでるな。ま、俺に害がなけりゃどうでもいいが)

しかし、リアンはまだ知らない。

この森で起きる事件が、彼の評価を決定的に変えてしまうことを。

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