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第33話 無双

 フェリシアを連れて村に戻る頃には、もう日が暮れ始めていた。

 もうすぐ夜。

 夜になればフェリシアと……。


「ねえコーマ。これからは私はコーマとこの村に住むんだしさ、この村のこと案内してよ」


 フェリシアと住む!?

 そうだ、そうなんだ。

 フェリシアはレベカと違って捕らえているわけじゃないし、エリーとも違って金を払っているわけでもない。

 フェリシアは自分から俺のハーレム入りを希望して今ここにいるんだ。

 それなら村の案内くらいはしないとな!


「良いだろう。俺について来い」


 この村にあるものと言えば……まずは畑だな。


 畑へ移動し、休耕地をフェリシアに見せる。


「以前までは全ての畑で小麦を育てていたんだが、連作障害を避けるために3分の1は休耕地にしたんだ」

「コーマが休耕地を作るように言ったの?」

「そうだ。これは俺の提案だ」

「ふーん、そっか」


 素っ気ない反応だが、もしかして俺のことを見直したか?

 俺を追いかけてここまで来るくらいだ。

 全く俺に気がないわけじゃないだろう?


「ところで家畜はいないの?

 休耕地では家畜を育てるものなんだけど……」


 家畜……?

 そういえば、学校の先生がそんなこと言っていたような。

 でもゴブリンの村に来てから豚とか牛とか見たことないな。


「それに、ここの畑の土は踏み固めたみたいに少し固くなってるよね?」

「そういえばゴブリンの子供がここに入って遊んでたな」


 空き地になったからと鬼ごっこしたりしていた。

 あれって止めた方が良かったのか?


「止めなきゃ駄目だよ!

 じゃないとせっかくの畑が道になっちゃうよ!」

「そうか……。明日注意しとくよ」

「もう固くなっちゃってるけど、まだ耕せば元に戻ると思う……。

 肥料はある?」

「ああ、こっちだ」


 家から見て畑を挟んだ反対側にある、トイレや肥溜めがあるところに移動した。

 以前は肥溜めが一つの山になって積んであったが、今はいくつかに分けてある。


「結構匂いがきついね。まだ作ったばかりなの?」

「山を分けたのは最近だが、肥溜め自体は昔からあるらしい」

「本当だ。ところどころ肥料になってるのがあるね。

 かき混ぜたりしてる?」

「えっ、肥溜めってかき混ぜるの?」

「そうだよ!じゃないといつまで経っても肥料にならないよ!」

「そうだったのか……」


 明日ゴブリンたちにかきまぜさせるか。

 俺はまだ左腕が本調子じゃないからできないし。


「それにしても、フェリシアは随分と詳しいな」

「私は農家の生まれだからね!一通りの作物は育てたし、ある程度は詳しいよ!」


 農業に関しては学校で習った程度の知識しか無かったからありがたい。

 これからは農業に関してはフェリシアに頼ろう。


「あれは……弓?」


 フェリシアが指差す先を見ると、弓矢の練習をしているダミアンとエラがいた。


「ああ、この前俺が弓矢の使い方を教えて、それからあの2匹が練習しているんだ。

 ダミアンのおかげでレアンドロを倒せたし、鹿も捕れるようになった」

「そっか、それで……。練習を見学してもいい?」

「ああ、もちろんだ」


 弓矢の練習場へ移動し、ダミアンとエラに声を掛ける。


『調子はどうだ?』

『コーマ。うまく命中するときはあるんだが、たまに矢が変な方向にいっちゃうんだ』

『そうか……』


 ダミアンが弓を射っているところを見てみるが……何をアドバイスすればいいのか分からない。


「コーマ、なんて言ってたの?」

「ああ、命中率が上がらないことが悩みらしい」

「そういうことなんだね!

 矢を離すとき指に力が入っているから、力を抜いて、自然に矢が離れていくようにすると改善すると思うよ!」

「そうなのか?」

『ダミアン、ちょっといいか?』


 ◇◆◇◆◇


 フェリシアのアドバイスをいくつか聞いてそれをそのまま伝えると、二匹とも命中率がみるみる上がっていった。


『ありがとな!おかげでどんどん上達したぞ!

 フェリシアにも伝えてくれ!』

「フェリシア、二匹がありがとうだって」

「そうなの!?どういたしましてってなんて言うの?」

「えーっと……」


 俺自身なんで言葉が伝わっているのか分からないし、どう言えばいいかなんて分からないんだが。

 普通にゴブリンにどういたしましてって言えばいいのか?


『どういたしまして』


 今言えたか?

 人間とゴブリンどっちに伝わったんだ?


『どういたしまして』

『おお!フェリシアが俺達の言葉を喋った!

 フェリシア、これからもよろしくな!』


 フェリシアの言葉がゴブリンに伝わったみたいだ。

 俺以外の人間でもゴブリンの言葉を喋れるんだ。


「どう?コーマ、伝わったかな!?」

「ああ、これからもよろしくだって」

「本当!?良かったー」


 フェリシアが笑顔で満足げな表情をしている。


「フェリシアは弓矢も扱えるんだな」

「うん、農作業中にゴブリンに襲われたら逃げるか自分たちで身を守らなきゃいけないからね」


 農作業中に襲われることもあるのか。

 農家って言っても農業やるだけじゃないんだな。


「それなら弓矢を作ることもできるか?

 今は弓が1つしかないから、2匹しか練習させられなくて困ってるんだ」

「……コーマは何か知ってるの?」

「いや、それが全く知らなくてな。

 でもフェリシアなら何か知ってるんじゃないか?」

「実は私も他の人に作ってもらったのを使ってただけだからよく分からないんだ。

 ごめんね、力になれなくて」

「そうか……。仕方ないな」


 弓を増産できれば、と思ったがそう上手くいかないか。

 気がつくと辺りが暗くなり、もう矢も的も見えなくなっていた。


『もう見えないし練習を切り上げるか。飯にしよう』

『そうだな!』


 ダミアンとエラに声を掛け練習を切り上げさせた。

 星の光があるとはいえ、矢が他のゴブリンに当たったら危険だ。


「フェリシア、俺達も家に戻ろう」

「うん!あっ……」

「どうした?」

「ううん、なんでもない!」


 なんか、緊張してる?

 あっ、そうか、夜だ。

 フェリシアがなんでもするって言ったんだから、つまりはそういうことだ。

 これから飯で、その後は……。

 ああ、楽しみになってきた。


 ◇◆◇◆◇


 食事を終えると、木の食器を片付けたやつからおっ始めた。


「えっ、ちょっとコーマ!あれは何をやってるの?」

「ここじゃ皆オープンで、ああやって目の前でヤるんだ」

「そっ、そうなの?」

「この家には仕切りなんて無いだろ?」

「それはそうだけど……」


 この家は竪穴住居であり、部屋とか仕切りなんてものは一切ない。

 だから隠れてヤるなんてできないんだ。

 人間の街ではありえない光景だからかフェリシアは戸惑っている。


「ヤっていればそのうち気にならなくなる」

「そうなのかもだけど……」


 俺もフェリシアも食事を食べ終わっており、フェリシアさえ良ければ俺達も始めたいんだが……。


 でも、流石に最初くらい2人きりの方がいいか。

 どこかいい場所……食料庫があったな。


「フェリシア、外に来い」

「えっ、うん……」


 フェリシアの手を引いて外へと出る。

 少し寒くなってきたが、2人なら火を焚いていない倉庫でもそこまで寒くないだろ。


「コーマ、待って。その……」

「どうした?」


 まさか、ここまで来てやっぱり無理とか言わないよな?


「その、コーマは私のこと、好き?」


 フェリシアのことを好きかどうか?

 確かに前はフェリシアのことを好きだったかもしれない。

 でも今は?

 フェリシアとは今まで色々あった。

 それで幻滅していないかと言われれば嘘になる。

 だけど、フェリシアはこんなところまで俺を追いかけてきてくれた。


「私はコーマのこと好きだよ」


 好き?

 フェリシアが?

 俺を?


 えっ、本当?

 嘘の告白とかじゃないよね?

 ここで「俺も」とか言ったらクラスの連中が出てきたり……。

 いや、クラスの連中なんていないし、こんなゴブリンの村の中に俺達以外の人間がいるわけがない。

 じゃあこれは本当の告白?

 本当の告白って……え?人生初?


「ねえ、コーマはどうなの?」


 どうって、そんなの……。

 そんなの……!


「俺も好きだ!フェリシア!」


 勢いよくフェリシアを抱きしめる。

 ああ……。

 華奢で柔らかい、きつく抱きしめたらすぐにでも壊れてしまいそうな身体だ。


「嬉しい……!コーマ、私のこと、大切にしてね」

「ああ、もちろんだ」


 絶対にフェリシアを幸せにしよう。

 何が障害として立ちはだかったとしても。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


感想や評価、リアクションをいただけると、とても励みになります!


次回の更新は2026年3月13日の予定です。

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