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第32話 再会

 爽やかな朝だ。

 レアンドロが森に来た日からしばらく時間が経った。

 あの日からは人間が来なくなり、平和で充実した日々を過ごせている。

 左腕の傷は塞がり始め、順調に回復している。

 全てが上手く行き始めた。


 この前のレアンドロとの戦いで負けた原因は魔臓の消耗と魔臓の魔素吸収量不足だ。

 ベルハイムに攻め込むとき、確実に支部長を殺すためにはこれらを改善しなければいけない。

 そう思って周りに誰もいないときは魔臓が回復次第ずっと濃密なバリアを張っている。

 段々と回復までのスパンが長くなってきたような気はするが……。


 バリアを張りながら村の畑を回っていると、一匹のゴブリンが慌てながら村に入ってきた。

 あれは……狩猟組のマルテだ。


『コーマ!人間が来た!多分女で1人だけだ!』


 久しぶりだな。

 しかも女が1人だけか。

 女はまだレベカしかいなかったからハーレムとは言えなかったが、新しい女を加えたら2人。

 それでもまだ数は少ないが、ハーレムと言えるんじゃないか!?


『よし、捕まえに行く。案内してくれ』


 ◇◆◇◆◇


 マルテの案内に従って森を進んでいくと、魔素が吸収と放出を繰り返されている場所を見付けた。

 これは……魔臓か?

 自分の魔臓にも意識を向けてみると、同じ用に魔素の吸収と放出を繰り返している。

 だがマルテからは何も感じない。

 ゴブリンには魔臓が無いとは聞いていたが、本当に無いんだな。


『マルテ、人間を見付けた』

『えっ、どこ?』

『こっちだ、付いてこい』


 マルテの前に出て感じ取った魔臓の下へ向かう。

 だが、そこにいたのは……。


「フェリシア!?」

「コーマ!」


 なんでフェリシアがこんなところに?

 フェリシアはベルハイムの冒険者ギルドで働いていたはずだ。

 ベルハイムから歩いて何日もかかるここにいるはずがない。


「まだここに留まってくれてたんだね、会えて良かったー」

「いや、フェリシアこそ、なんでこんなところにいるんだ?」

「コーマを探してたんだよ!

 コーマがしちゃったことは分かってる。

 今ベルハイムでもエストーラでも大変なことになっててね。

 コーマもエストーラに入れなくて大変だよね。

 でもコーマがエストーラに来て何もしてませんって言ってくれたら全て解決するんだ。

 だから一緒にエストーラに行こう?」

「待て待て、待ってくれ。

 俺がしたことが分かってるって、どのくらい分かってるんだ?」

「……冒険者8名とエストーラ冒険者ギルド支部長、そしてギルド職員の殺害、だよね」


 ギルド職員ってレベカのことか?


「ギルド職員はまだ殺してない」

「えっ、そうなの?

 でもエストーラに帰ってきてないって……」

「村で生きている」

「村?まさか、コーマは今ゴブリンの村にいるの?」


 フェリシアが俺の横にいるマルテを見ながら聞いてくる。


「そうだ」

「……そう。コーマは、もう人間の街で暮らす気は無いの?」

「ああ」


 今更人間の街に無事に入れるとは思えないし、ゴブリンが俺を必要としてくれているのにわざわざ人間の街に行くわけないだろ。


「もしコーマが自分がしてしまったことを気にして人間の街に入れないと思っているなら、それは気にしないで。

 コーマが誰も殺害していないって証言してくれたなら全部無かったことになるから」


 なんだそれ。

 そんな都合の良いことがあるのか?

 いや、今までのことを考えろ。

 全部俺に都合の悪いようにしか動いていなかった。

 だから、フェリシアのこれだって罠に決まっている。

 ゴブリンから引き離された俺を集団で囲んで殺す気なんだろ。

 そんな手には乗らない。


「そんなこと信じられるわけないだろ」

「うん、そうだよね。

 でも本当なんだよ。

 すぐには信じられないかもしれない。

 だからコーマに信じてもらえるようになんでもするよ」


 なんでも!?

 なんでもってなんでもだよな?

 っていうことは本人が俺のハーレム入りを希望しているってことでいいよな?


「とりあえず、俺の村に来るか?」

「良いの!?ありがとう!」


 来た道を帰ろうとすると、マルテが話しかけてきた。


『コーマ、どうなったんだ?』

『フェリシア……この人間の女が自分から村に来るって言い出したんだ』

『なんだ、戦わなくて良くなったのか』


 そう言ってマルテは手に持っていた石をそこら辺に捨てた。

 戦うことになっていたらその石をフェリシアに投げつける気だったのかよ。


 フェリシアを連れて村に戻ると、カミル達が村で石を積み上げて待機していた。

 ……ここでも石か。


『カミル、戦う必要はない。こいつは敵じゃない』

『そうか、なら良かった。片付けるぞ』


 弓の作り方さえ分かれば石なんかに頼らないで済むんだがなあ。

 弓幹といい弦といい、どうやってあんなもん作るんだよ。


「ねえ、コーマ。レベカさんはどこにいるの?」


 村についてからフェリシアがなんかきょろきょろしていると思ったらレベカを探していたのか。


「こっちだ」


 フェリシアを連れて大人たちの家に入る。

 レベカは……少しは飯を食ったか。


「レベカさん!?」


 フェリシアがレベカの下へと駆け寄る。


「……誰?」

「ベルハイム支部職員のフェリシアです。大丈夫ですか?」

「ベルハイム……?あそこはもっと小さい子しかいないはず」

「最近冒険者から職員になったばかりです。

 レベカさんはご飯を食べれていますか?」

「いいえ……」

「少しでも食べれそうなら食べてください」


 フェリシアがレベカのすぐ近くのスープが入っている器を手に取り、それをスプーンですくってレベカの口元へと運ぶ。


「いっ、嫌!近づけないで!」


 レベカが近づけられたスプーンを拒絶しスプーンから顔を離した。


「ねえ、コーマ。なんでレベカさんはこんなに怯えてるの?」

「最初の頃、ゴブリンたちがレアンドロの死体を使ってスープを作った。

 それと勘違いしているんだろ。

 俺は食ってないし、それをレベカに食わせようとも思っていない。

 そのスープに入っているのは鹿肉だ」

「レアンドロさんを……?」


 フェリシアがレベカをジッと見て何かを考え始めた。


「レベカさんをエストーラに返そう」

「……なんでそんなこと」

「レベカさんがずっとこのままここにいたら死んじゃう。

 コーマはレベカさんを殺したいわけじゃないでしょ?」

「そりゃそうだが……」


 だからと言ってせっかく手に入れた女を手放すのは……。


「これからは私がいる!

 だからレベカさんを解放してあげて!」


 確かにこのままじゃレベカはやつれていくだけ。

 どうせ死ぬなら返しても同じか。

 ハーレムは……別の女を捕まえればいいか。


「分かった。返そう」

「ありがとう。

 レベカさん、立てますか?エストーラに帰れますよ」


 フェリシアがレベカを支えながら立ち上がる。

 レベカの足元はふらついており、レベカはしっかりと立てなさそうだ。


「足元のパンを持っていけ。

 それならレベカは食えるらしい」


 レベカの足元にある少しだけ食べられたパンを指差す。


「レベカさん、少しだけでも食べたほうがいいです」


 フェリシアがパンを拾ってレベカの口元へと運び、レベカは少しずつ食べ始めた。


「食べながらでいいです。早くここから離れましょう」


 フェリシアがレベカを支えながら、少しずつ家の外へと歩いていく。

 それに付いて家の外へと出ると、石の片付けをしているカミルと目が合った。


『コーマ、どうしたんだ?』

『レベカを街に返してくる』

『返しちまうのか?

 そうするくらいなら食いたいんだが』


 こいつらは人間のことを食料としてしか見てないのかよ。


『すまんがこいつは諦めてくれ』

『ああ……』


 ◇◆◇◆◇


 フェリシア、レベカと共に森の出口へと辿り着いた。


「レベカさん、ここからは1人で歩けますか?」

「あなたは?」

「私はまだやることがありますから。

 でも必ず行きます。

 だから先に行って待っていてください」

「……分かったわ。

 必ず帰ってきてね。

 待っているから」

「はい!」

「ありがとう。それじゃ……」


 レベカがゆっくりとエストーラへと向かって歩いていく。


 レベカの姿が畑の向こう側に隠れた頃、フェリシアが口を開いた。


「ねえ、コーマ。私たちもこのままエストーラに行かない?」


 今レベカを見送ったばかりなんだが。


「俺の居場所はあの村だ。

 エストーラにはない」

「エストーラなら美味しいご飯が沢山あるよ?ベッドもあるし」


 それは確かに……。

 ゴブリンの村のご飯はお世辞にも美味しいとは言えないし、ベッドなんてものはなく全員で雑魚寝だ。

 日本のマットレスに慣れた人間からすればこの世界のベッドには不満しか無いが、それでも無いよりかはマシだ。


「それに、宿屋で色んな女の人を買えるよ」

「そんなもの、欲しいわけじゃない!」


 俺が欲しいのは金さえ払われれば誰にでも身体を許すような女じゃない。

 俺が欲しいのは……。


「……ごめん」

「いや、いい」


 余計なことを考えた。

 これからはフェリシアがいる。

 それだけでいい。


「コーマがこれからもゴブリン達と一緒に暮らすつもりだっていうことは分かった。

 でも、お願い。

 一度だけでいい。

 エストーラに行って誰も殺してないって証言してほしい。

 このままだとアインさん……ベルハイムの支部長が処刑されちゃうの!」


 そう言えば支部長ってアインって名前だったな。

 それにしても……処刑?


「なんでアインが処刑されるんだ?」

「魔法を教えてもらうとき、もし魔法で犯罪したら本人とその人に教えた人が処刑されるって言われなかった?」


 ……そういえばそんなことを教会で誓った気がする。

 すっかり忘れていたが。

 そうか、アインは処刑されるのか。

 俺の手で殺してやりたかったが、まだ殺すための準備が整っていないし、仕方ない。


「ますますエストーラに行く理由が無くなった。

 さっさと村に帰るぞ」

「待って!アインさんが処刑されるんだよ!?」

「願ったり叶ったりだな」

「コーマがアインさんを恨んでいるのは知っているけど……。

 でも、エストーラに行って証言するだけで死ななくていい人が死なずに済むんだよ?」

「アインは死ななくていい人間じゃない」


 そう吐き捨てて村に向かって歩き出す。

 しかしフェリシアが付いてこない。


「どうした?村に戻らないのか?」

「ううん、今行く」

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新は2026年3月9日の予定です。

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