表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/69

第31話 支部長

「これをやるのも久しぶりだな」


 レアンドロがそう呟きながら上着を脱ぎ捨て、剣を持っていない左腕が、そこから出てきた岩石に覆われた。

 なんだあれ、生成魔法か?

 以前に生成魔法で剣を作ろうとしたことはあるが、鉄粉が生成されるだけで塊なんて作れなかった。

 岩石なんて生成魔法じゃ作れないはずだ。

 なんなんだあれは。


「さて、行くぞ」


 レアンドロの魔素が顔に集まり、そこから大量のウィンドカッターが飛んできた。


「なんだ、その程度」


 魔素のバリアを展開し、全てのウィンドカッターを弾く。

 支部長って言っても使ってくるのは謎の岩石魔法とウィンドカッターのみ。

 この程度なら問題なく防げる。




 ……このウィンドカッターはいつまで続くんだ?

 もうかれこれ5分くらいはずっとウィンドカッターが撃ち続けられているんだが。

 そろそろ魔臓の限界が近付いてきてバリアを維持するのが辛くなってきた。

 このままじゃジリ貧だ。

 突っ込むしかない。


「ようやくか」


 バリアを展開しながらレアンドロへ向けて駆け出す。

 レアンドロは腰を下ろし、右手の剣を下段に構えた。

 マジックブレードを再び右手から出し、レアンドロの剣の間合いの外側から突き刺す。

 狙いはさっきからずっとウィンドカッターを出し続けている顔だ!


「良い狙いだ」


 マジックブレードがあと少しでレアンドロに触れそうなとき、レアンドロの左腕で遮られた。


「最初に見たときよりも濃度が落ちているな。

 そんなものじゃ何百回と打ち込んできてもこの岩は貫通できない」


 魔臓が消耗してなけりゃもっと濃いマジックブレードが出せたのに!


 レアンドロが一歩踏み込み、剣を振りかぶった。

 今の状態で剣を受け止められるか?

 もし受け止められなかったら。

 胴体への直撃は避けられたとしても、少しでも掠ったら左腕みたいに……。

 レアンドロへ向かって走っていた足でブレーキをし、無理矢理上半身を後ろに逸らし、その刹那、自分の上半身があった場所に剣が走る。


 剣は避けられた。

 だけど無理な体勢で避けたせいで尻もちをついてしまった。


「勝負ありだ」


 レアンドロが振り抜いた剣を再び俺へと振り下ろしてくる。


 俺はこのまま死ぬのか?

 異世界無双どころか復讐も果たせず、ハーレムも築けないまま?


 嫌だ。

 まだ死にたくない。

 もっと多くの人に認められて、もっと多くの女を抱きたい。

 こんなところで殺されたくない。


 気付いたらレアンドロへ背を向けて走り出していた。


「武人としては下の下だな。

 見逃してやりたいが、お前の首を取らないと私たちが終わるんだ」


 レアンドロが後ろから追いかけてくる。

 誰か、誰か助けてくれ!

 そうだ、ダミアンとエラ。

 あいつらにはここに隠れていろって言ってあったんだ。

 こいつらがいれば……!


 ダミアンとエラがいるはずの場所に着いたが誰もいない。

 なんで?

 ここにいろって言ったのに。

 なんでいないんだ?

 これじゃあどうしようも……。


 呆然としそうになったが、視界の端にレアンドロが映る。

 持っていた剣を振り上げた。

 このままじゃ殺される。


「くそっ!」


 レアンドロと反対方向へ再び走り出す。

 なんでこうも上手くいかないんだ。

 ダミアンとエラがいれば勝機があったかもしれないのに!


『ダミアン!エラ!どこだ!どこにいる!』


 森に向かって叫ぶが、何も返答は返ってこない。

 あいつら自分だけ逃げやがったのか!


 このまま逃げ続けても、最近食べてる飯の量が減り、しかも左腕に傷のある俺が体力の差で負けて追いつかれる。

 なんとなく付いてきただけだから村の場所も分からない。

 だけどここは森。

 ゴブリンが踏みならしたおかげで道が出来上がっているが、ここから外れれば方角の分からない深い森だ。

 この深い森でレアンドロを撒くんだ。


 茂みへと飛び込み、我武者羅に森の中を走り回る。


 レアンドロが追いかけてくるスピードがそこまで速くないおかげでまだ追いつかれていないが、どんなに離せても必ず迷いなく追いかけてくる。

 なんなんだあいつ。

 なんで俺の居場所が分かるんだよ。


 森の中を彷徨っていると、突然開けた場所に出た。

 ここは、村か?

 戻ってこれたのか?


『コーマ!よく戻ってきたな!

 あとは俺達に任せろ!』


 声のした方を見ると、カミルと大勢のゴブリンが大きく積み上げられた石の山を作って待機していた。


「ゴブリンの村か!

 ……厄介なところに逃げ込んでくれたもんだ」


 レアンドロも流石にこのゴブリンの大群には怯むようだな。

 カミルの隣に並び、呼吸を整える。


『あとは頼む』

『ああ、任せろ。

 総員、投擲開始!』


 カミルのその掛け声でゴブリン全員がレアンドロへ向けて石を投げ始める。


「おい、待てゴブリン共!

 すぐ隣に人間がいるぞ!

 なぜそちらには攻撃しない!?」


 レアンドロは魔素でバリアを張り、石の攻撃を凌いでいる。


「残念だったな。俺はこいつらの仲間なんだよ」

「なっ……!?

 まさか、お前は転生者なのか!?」


 なんでこいつがそのことを……。


「ああ、そうだ」

「そうか。

 ならお前が、二人目の転生者か。

 ……ますますお前を今殺さなきゃいけない理由が増えた」


 レアンドロがバリアを前面に濃く展開し、突っ込んできた。

 このバリアの濃さは……。

 まずい、このままじゃバリアでゴブリンごと押し潰される!

 早く逃げないと!


 振り返り、走り出そうとした瞬間、後ろから叫び声が聞こえた。


「ぐっ、これは……矢?」


 レアンドロを見ると、その腹には矢が貫通していた。


『ダミアン……!』


 レアンドロの背後を見ると弓を構えたダミアンとエラがいた。


『くそっ……。せめてあいつだけでも……!』


 レアンドロが魔素を溜め始めた。

 あれは、まさかウィンドシックル!?


『ダミアン!早く2射目を!お前らももっと石を投げ続けろ!』

『あっ、ああ!』


 カミルたちがダミアンの矢が当たって石を投げるのを休めていた手を再び動かし始めた。

 レアンドロは多くの石が当たるのにも構わず、バリアを張らずに魔素を溜め続けている。


 こんなところで死ぬわけにはいかない。

 俺だけでも逃げないと!

 カミルたちが石を投げ続けているのを尻目にレアンドロから距離を取る。


 レアンドロの方を見ると俺に向かって真っ直ぐ手が伸びている。

 そして、そこから濃密な魔素が放たれた。


 その魔素は俺の横を通り過ぎ、俺の背後の家に命中し、大きな風穴を空けた。

 もしあれが当たっていたら……。


「くそっ……。すまん、ルシア」


 レアンドロがそう呟いた後、ダミアンの2射目が命中し、レアンドロが倒れた。


 ……助かった、のか?


『やった……。やったぞ。

 遂に俺達の力で人間を倒したぞ!』


 カミルたちが大いに盛り上がっている。


 本当に、レアンドロを殺せたのか?

 俺は殺されないのか?


 ゆっくりとレアンドロの下へと歩み寄る。

 レアンドロはまだ息があるようで、微かに息遣いが聞こえる。


「じゃあな、レアンドロ」


 ウィンドエッジでレアンドロの首を切断し、それを手にとって掲げる。


『お前たち、よくやった!

 これはお前たちの勝利だ!』


 俺がそう叫ぶとゴブリンたちはまた大きく盛り上がった。


「嘘っ……レアンドロさん……?」


 人間の女の声?

 声のした方を見ると、ギルドの制服を身に纏った女がこちらを見て立ち尽くしていた。

 あれは、レアンドロと一緒に来たギルド職員。

 名前は、確かレベカだったか。


『お前ら、あいつを捕まえろ!殺すなよ!』


 ゴブリン達がレベカの方へと駆け出し、レベカも逃げようとするが、ショックで禄に抵抗できなかったのか成すすべ無く捕まった。


 ああ、ここからだ。

 ここから俺の本当の異世界ライフが始まる!

最後まで読んでいただきありがとうございます!


感想や評価、リアクションをいただけると、とても励みになります!


次回の更新はの2026年3月6日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ