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第30話 復讐

 夜が明け、朝食を食べ終えてから外に出ると、もう弓矢の練習をしているやつが1匹いた。

 あいつは確か、ダミアンだったか。

 ゴブリンの村で過ごしたおかげで、段々とゴブリンの違いが分かるようになってきた。


『ダミアン、早いな。いつから練習していたんだ?』

『おう、コーマ。太陽が昇ってからだ』


 太陽が昇ってからって、いくらなんでも早すぎだろ。

 もう既に1匹だけで何時間も練習してんじゃねえか。

 ダミアンの練習を見ていると、5メートル程度離れた木に矢が突き刺さるようになっていた。

 昨日は矢が変な方向に飛んでいったり、木に当たっても突き刺さらなかったりしていたからかなり成長している。


『これなら鹿程度なら仕留められそうだな』

『鹿?……俺は鹿なんて殺す気は無いぞ』


 は?

 じゃあなんでそんなに練習してるんだよ。

 俺はお前らが鹿を獲ってこれるように教えたんだぞ。


『俺はこれで人間を殺す。ヤンやゲルトたちの仇を取るんだ!』


 ヤンとかゲルトって誰だよ。

 ……まあ、いいか。

 目標が人間でも、上達すれば人間のついでに鹿を獲ってくるかもしれないし。


『そうか……』

『コーマは人間だけど、俺達の仲間だから殺さないぞ』

『ああ、そうだな』

『なんだ、自分も殺されるんじゃないかと思ったんじゃないのか?』

『俺はそんな弓矢じゃ殺せねえよ』


 俺はゴブリンと戦うときはバリアを展開するからな。

 ……この前鉄の鏃ならバリアを貫通できるとか言われたけど。

 まあ、ゴブリンの弓矢なら大丈夫だろ。多分。


『人間って弓矢じゃ死なないのか!?』

『いや、普通の人間なら死ぬ。俺が特別なだけだ』

『そっかー。コーマってこの前人間殺してたし、普通の人間より強いのかー』

『ああ、そうだぞ』


 そうだ、俺は普通の人間よりかは強いんだ。

 もうあいつらとは違うんだ。


『人間を殺すならもう少し的から離れた方がいい。

 こんな至近距離じゃ弓矢なんて使う前に殺されるぞ』

『確かにそうだな。ありがとな、コーマ!』

『ああ、頑張れよ』


 ダミアンから離れて魔法の練習をしていると、ゴブリン達が家から出てきた。


『あー!ダミアンいないと思ったら1匹で練習してたのかよ!ずるいぞ!』

『みんなで練習するなんて決めてなかっただろ。俺は早く上手くなりたいんだよ』

『私だって早く上手くなりたいよ!だから代わって!』

『ああ、ほらよ』


 他の狩猟組のゴブリンも混ざり、また昨日と同じように1匹で何発か射ったら交代になった。

 正直、今のところ一番上手いダミアンの練習時間を奪わないでほしいんだが。

 だけど1匹だけじゃ不安か。

 もう1匹……あいつでいいか。


『弓矢の練習はダミアンとエラだけでいい。他は森に入って採取でもしてこい』

『えー、もっと練習したーい』

『流石コーマ!分かってるな!』


 もう練習できないやつからは反対の声が上がったが、ダミアンとエラからは賛成の声が出た。

 やっぱり本人たちも練習できない時間が長過ぎることを気にしてたんだな。


『今は弓が一つしか無いから仕方ない。

 今後ダミアンとエラが冒険者を倒して弓が増えたらお前たちもまた練習できるようになるぞ』

『ダミアン、エラ!早く人間を殺して弓を奪ってきてくれよ!』

『ああ、任せとけ!』


 ダミアンとエラの2匹を残し、他のゴブリンたちは森へと入っていった。


『コーマ、俺達を残してくれてありがとな』

『ただ上手い2匹を残しただけだ。上手くなったのはお前たち自身のおかげだ』

『そうか……。いや、それでもありがとな』

『ああ』


 ◇◆◇◆◇


 ダミアンとエラ以外の狩猟組が森に入ってからしばらくしてから、1匹のゴブリンが村に大慌てで入ってきた。


『村長!コーマ!また人間が来た!』


 またか。

 どうせ俺のマジックブレードで瞬殺だろうが、移動するのが手間なんだよ。

 左腕が治ってない間は安静にさせてくれ。

 治った後ならいくらでも来ていいから。


『コーマ、頼むぞ』

『ああ、任せろ』

『ただ、今回の人間は変なんだ。

 俺が見つかったのに、俺を殺そうとも、追いかけて来ようとすらしなかったんだ』

『気づかなかったとか?』

『いや、しっかり俺と目が合ったんだ』


 気付いたにも関わらず見逃した?

 冒険者ならば見付けたら絶対に殺そうとするはず。

 なんでだ?


『取り敢えず、そいつらを見付けた場所まで案内してくれるか?

 ダミアンとエラも一応来い』


 冒険者じゃなかったとしたら誰が来たんだ?


 ゴブリンに着いていき、人間を見付けたという場所から足跡を追っていくと、男女の2人組の人間を見付けた。


『あれが見付けた人間か?』

『そうだ。コーマなら余裕だよな?』


 なぜ、あいつらがここにいるんだ。

 あの服は、ギルドの職員の制服だろ、

 ギルドの職員はギルドの中にいるもんだろ。

 なんでこんな森の中にいるんだ。


 木の陰に隠れて様子を伺っているが、俺が2人を見付けたときから全く動いていない。

 2人はここまで歩いてきたはず。

 なのに、なんで止まっているんだ。

 ここが目的地だったのか?

 辺り一面、草か木しかないぞ。


「そこに誰か隠れているな。出てこい」


 男が俺の方をしっかりと見て話しかけてきた。

 なんでバレた?

 まだ距離が十分にあるし、遠目で分かるほど身体を出しているわけではない。

 夜の街中みたいな何も動きがない場所ならともかく、ここは森の中だぞ。


『見つかった。お前たちは隠れて機会を伺っていろ』

『分かった』


 2人組の方へ笑いかけながら木の陰から出る。


「すまない、隠れていたわけじゃなかったんだ。

 ただ、こんなところでギルドの職員に会うなんて珍しいと思って驚いていたんだ」


 2人とも俺への警戒を解かず、ただじっとこちらを見ている。


「その左腕の傷、コーマだな?」

「えーっと……」


 なんで左腕の傷のことを知っている!?

 これはこの森に来る途中で負った傷。

 まさか、あのとき見逃した女と商人が報告したのか?

 だとしたら、こいつらは俺を殺すための刺客か?

 まだ隠し通せるか?

 いや無理だろ!?

 腕に傷を負いながら森に入る冒険者なんていない。

 そんなの、護衛中か街に入れない事情があるかのどちらかだろ。

 それで俺の周りに護衛中を装えるものなんてない。


「……そうだ」

「2日前、この辺りで冒険者4人の消息が途絶えたんだが、それもお前の仕業か?」


 そんなことまでバレてんのかよ。

 まあ、隠す必要なんてないか。


「ああ、その通りだ」

「そうか……。

 レベカ、剣を。そして情報共有を頼む」

「はい、お気をつけて」


 レベカと呼ばれた女から剣を受け取って、鞘を返し、レベカはどこかへと走り去っていった。

 なんだ一対一か。

 それならまだマシだ。


「冒険者ギルドエストーラ支部支部長レアンドロ。

 お前の首を取る者の名前だ」


 支部長かよ!!

 まだ人間とのまともな戦闘は二回目なのに支部長って難易度バグってるだろ!

 もう何回か普通の冒険者との戦闘をやらせてくれよ。

 いや、どうせベルハイムの支部長を殺しに行くんだ。

 遅かれ早かれ支部長クラスとは戦うことになっていた。

 少し時期が早まっただけだ。


 左腕は……まだ満足に動かせない。

 右腕一本だけで勝てんのか?

 いや、それでもやるしかない。

 どうせ逃げても追いつかれるんだ。


 右腕からマジックブレードを出し、レアンドロと睨み合う。

 レアンドロはまだ何も魔法を使っていない。

 使えない?

 いや、支部長がそんなはずはない。

 隠しているのか?


「中々の濃度だな。

 とても数ヶ月前に遷移魔法を習得したばかりとは思えない」


 俺のマジックブレードに気付いた。

 魔素過敏症になっているってことはやっぱりこいつは魔法を使える。

 支部長で、しかも魔法使いだなんて、この前の星5冒険者とは比べ物にならない強さだろ。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新はの2026年3月2日の予定です。

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