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第27話 仲間

 左腕が痛ええ。

 何度も包帯を取り替えているが、全然痛みが収まらない。

 この世界には痛み止めとかないのかよ。

 それか回復魔法。

 大体、魔法は生成、消滅、遷移の3種類ってなんだよ。

 回復魔法くらいあるだろ。

 くそっ、痛え……。


 特に行き先なんて無いが、俺はもうお尋ね者だと思った方がいい。

 防衛設備のない場所にずっと留まり続けてはいけない。

 どこか安全なところ。

 ……盗賊団の根城とかか?

 トラメリアの周りには盗賊がいたが……規模が分からないし、もう何人か殺しているからな……。

 あそこもゴブリンの村と同様受け入れてはくれないだろう。

 どこか、俺を受け入れてくれて、安全なところ……。

 怪我のこともあるし、ゆっくり眠りたい。



 しばらく進んでいると、目の前に大規模な森が見えた。

 ベルハイム近くのゴブリンが大勢いた森と大差ないほどの森だ。

 この森なら大規模なゴブリンの集落があってもおかしくない。

 もしゴブリンがいたとして、俺はまだこの森のゴブリンは殺していないんだから俺を受け入れてくれるはずだ。

 手土産としての食料が大量にあるし。


 森のゴブリンから見たら俺は大量の食料を持ってきたカモ。

 いきなり襲ってきたっておかしくはない。

 そしてどれだけ苛烈に襲われたとしても俺は絶対に反撃してはいけない。

 もし反撃してしまったらここのゴブリンも受け入れてくれなくなる。

 つまり、ずっと攻撃を受け続けなければいけないってことだ。


 ……厳しくね?

 魔素の盾(ウィンドウォール)はそんなにずっと出し続けるものじゃないんだけど。

 いや、それでもやるしかないのか。

 これも練習だ。

 魔臓はもう全回復している。

 俺の魔臓だって成長しているんだ。

 前よりは持つはずだ。

 っていうか、魔臓に経験10倍の効果適用されてる?

 まさか臓器は対象外とか?

 もしそうだったら、本当にあのクソ女神のこと恨むぞ。


 森の近くに着き、首から魔素を出して魔素の盾(ウィンドウォール)を全面に展開する。

 魔臓への負担は大きいが、以前ほどじゃないな。

 うん、少しくらいの間なら問題なく展開し続けられそうだ。


 牛車を止め、森の木へとロープをくくりつける。

 牛はともかく、荷車は森の中には入っていけない。

 ゴブリンがいたら大勢で荷を運ばせよう。


 ゆっくりと森の中へと入る。

 これから進むのは真東。

 帰るときは真西に行けばいい。

 人間は真っ直ぐ歩けないらしいし、ここは森の中だ。

 頻繁にコンパスを確認しながら真東へ進もう。



 もう30分くらい歩いたが、中々ゴブリンに巡り合わない。

 本当にここにゴブリンはいるのか?

 もうすぐ森を出ちゃうんじゃないか?

 そろそろ魔臓がしんどくなってきたし安全なところで休みたいな。


 周囲を障害物で囲まれた安全なところを探していると、急にガキンッという音が鳴った。

 これは……魔素の盾(ウィンドウォール)で何かを弾いた音?

 まさかゴブリンか?

 音のした方を振り向くが、ゴブリンが見つからない。

 気のせい?

 いや、そんなはずはない。

 あの音は弓矢みたいな高速で動く物体とぶつかったときに出るような音だった。


『誰だ!どこにいる!』


 ……返事を待ってみるが、何も返ってこない。

 近くにいるはずなんだ。

 絶対に俺の声を聞いているはずなんだ。


『俺は危害を加えない!

 俺はお前たちの仲間だ!

 出てきてくれないか!』


 ……どうだ?出てきてくれるか?


 また少しだけ待ってみると、目の前から草をかき分けて一匹のゴブリンが姿を表した。


『なぜ人間のくせに俺達と同じ言葉を喋れるんだ?』

『それはお前たちの仲間だからだ』

『……お前は人間だろ?』

『見た目はそうかもしれない。

 だが、言葉が通じる。

 それだけで十分だろ?』

『……そうだな。この森にはなんの用で来た?』

『俺を村に迎えてくれないか?

 食料は沢山持ってきたし、もし他の人間に襲われたら俺が守ってやる』

『食料はどこにある?』

『森の入口にある。

 大量過ぎてここに持ってこれなかったんだ』


 ゴブリンは何かを考え、少ししてから口を開いた。


『分かった。とりあえず村まで案内する』

『本当か!?食料も一緒に運ぶか!?』

『それは後でいい。先に村長に会わせる』


 村長って、ベルハイムの村にもいたな。

 どこにでもいるもんなのか?




 ゴブリンの案内に従って付いていくと、開けた場所に出た。

 大小差がある建物が全部で6軒。

 規模は小さいが、それなりの数のゴブリンがいそうだ。

 その建物の中でも一番大きな建物に案内された。

 ここがゴブリン達が寝る場所か。


『村長、俺達の言葉を話せる人間を連れれてきました』


 村長と呼ばれたゴブリンを見ると、裸で椅子に座っていた。

 ……村長は家の中じゃずっと裸なのか?

 周りにも何匹か裸のゴブリンがいるし。

 また事後にここに来ちまったのか。


『本当か?』

『ああ、本当だ。俺はお前たちの仲間だ』

『ほう……』

『それに、他の人間が襲ってきたときにはこの人間が代わりに戦うと言っています』

『何!?……お前、人間を殺したことは?』

『ここに来るまでの間には4人殺した』

『4人も……。

 左手はそのそのときに出来た傷か?』

『ああ、弓矢で少しな』

『なっ!?それは駄目だ!早く切り落とさないと!』

『いや、待て待て!それはもう大丈夫なんだ!

 完璧に処置したからそんな必要はない!』

『切り落としたくないのは分かる!

 だが、切り落とさないと死ぬんだ!』

『それは何も処置しなかった場合だ!

 俺は処置をしたから死なないんだ!』

『……確かに、人間は俺達とは違うか。

 人間達ならばあるいは……』

『今度負傷した仲間がいたら教えてくれ。

 俺が処置すれば切り落とさなくて済む。

 根拠は、これからの俺を見れば分かるだろ』

『そうだな……』


 村長ゴブリンは少し考えてから再び口を開いた。


『ゴブリンを殺したことはあるか?』

『……この近くではない』


 うん、嘘は吐いてない。


『あと、大量の食料を持ってきたんだ。役に立つはずだ』

『食料か……。確かに、今後は必要になるかもな……』


 今後は……?

 ゴブリンって沢山いて常に食料が足りてないんじゃないのか?


『取り敢えず、今日一日はこの家で眠ると良い。

 明日の祈りの儀の際に各村長と話し合い、そこで決定する。

 あと、そうだな……、ここにいるときはずっとこれを身に着けていろ』


 そう言って、村長はゴブリンが身につけている藁の腰巻きを渡してきた。


『これは?』

『目印だ。

 俺達には人間の違いなんて分からねえが、それを身に着けていれば攻撃しないように全員に伝えておく』


 人間の違いが分からないって……。

 でも、そうか。

 俺もゴブリンの違いなんて分からないし。

 ちょっと身長が大きめなゴブリンが村長ってことくらいで、他は全員同じに見える。

 男女の違いすら分からない。


『あとは食料か。大量なら数が必要だろ。

 何匹か適当に連れて行くと良い』

『ああ、分かった。助かる』


 取り敢えずは受け入れてもらえそうだ。

 良かった、これで少しは安心して眠れる。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新はの2026年2月20日の予定です。

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