第18話 報告
「皆さんお疲れ様でした!無事に帰って来れて何よりです!」
「ああ……ありがとう」
うわ〜空気重え〜。
なんでこんなに空気重いんだよ。
道中も誰も話さなかったし。
「えっと……、ゴブリンの村はいかがでしたか?」
「半壊はしたと思うが……コーマ今日の報告は頼む」
「分かった。
まず、レオンたちがゴブリンを1匹倒し、ゴブリンは逃げたりレオンたちを攻撃したりした。
レオン達は40匹くらいのゴブリンに囲まれていたが、そこに俺が駆けつけてそのゴブリンを全滅させた。
だがその死体処理をしている間に別のゴブリンから奇襲を受けた。
俺はそのままそいつらも殲滅しても良かったんだが、レオン達のために撤退を開始。
しかし、そこで俺たちの目の前にゴブリンが10匹ほど立ちはだかる。
そこで俺のウィンドシックルが発動!
ゴブリンは真っ二つになり、追っても来なくなった、というわけだ」
うん、やはり俺の功績は大きいな。
むしろ俺のおかげで成功したと言ってもいいくらいだ。
「……最初にゴブリンを攻撃したとき、なぜコーマさんは一緒にいなかったんでしょうか?」
「ごめんなさい、やっぱり私が説明するわ。
ただ、少し長くなりそうなのよ」
まあ、面倒臭い説明を変わってもらえるなら助かるが……俺の説明は間違ってなかっただろ。
「かしこまりました。では上の部屋に行きましょう」
◇◆◇◆◇
ユフィと共に魔法講習の座学を行なった部屋に来た。
5人で円形に並べた椅子に座っている。
「作戦の内容は理解できました」
セレナが作戦の内容を説明し終えた。
俺の説明とあんまり変わらなかっただろ。
「レオンさんがゴブリンを攻撃した後、コーマさんは何匹の逃げたゴブリンを確認し、そのうちの何匹を倒したのでしょうか?」
「それは重要か?俺がどれだけのゴブリンを倒したかの方が重要じゃないのか?」
「いいえ、これが一番重要です」
「ちっ……村から逃げ出したゴブリンは20匹くらいはいたんじゃないか?」
「20匹……?それだけですか?」
「もっといたかもな。あんな大軍の数なんて一々数えてらんねえよ」
「50から60はいたのではないかと思います」
「ああ、まあ、それくらいかもな」
「それで、コーマさんはそのうちの何匹を倒せたのでしょうか?」
「なんでそんなこと聞くんだよ。重要じゃねえだろ!」
「セレナさんから聞いた作戦では、コーマさんが逃げたうちのほとんどのゴブリンを倒す予定でした。
作戦が遂行されたのかどうか、ここが重要になります」
「何体か倒した。数は覚えていない」
「では正確な数でなくて結構です。どの程度のゴブリンに逃げられましたか?」
「たくさん逃げたんじゃないか?」
「たくさん……?
コーマ、あんた私たちが攻撃してからかなり時間が経ってから私たちのところに来たわよね?
その間何してたのよ!?」
「みんな散り散りに逃げていくからどれを倒せばいいのか分からなかったんだよ!」
そうだよ、あんな色んな方向に逃げているゴブリンの中から救援を呼びに行くゴブリンを探し出す方が無理だったんだよ。
「セレナさん落ち着いてください。私が聞きますから」
「ええ、そうね。ごめんなさい」
ふっ、セレナめ。ユフィに怒られてやがる。
「それで、コーマさん。ゴブリンに逃げられた後、時間が経ってから皆さんと合流したようですが、その間は何をされていたのでしょうか?」
「隠れているゴブリンがいないか村を探してたんだよ」
「なっ……!?いえ、ごめんなさい……」
またセレナが俺とユフィの会話に入り込もうとしてきた。
黙ってろよ。
「なぜ、すぐに合流しなかったのでしょうか?」
「たくさんゴブリンを倒した方が報酬が増えるだろ」
「そうですか……。
コーマさんがゴブリンを探している間、セレナさん達はゴブリンの攻撃を受け続けていたのですが、それについてはいかが思われますか?」
「たかがゴブリンの攻撃だろ?それに実際無事だったんだし良いだろ」
「俺たちがコーマと同じくらい魔法をうまく扱えていたら、そうだったんだろうな。
だが、俺たちはコーマほど上手く扱えない。
そんなこと分かってるだろ!?」
「そんなのお前達の努力不足だろ!俺には関係ない!」
「……ああ、そうだな。俺たちが弱いのが悪いんだな」
そうさ、弱者は強者に大人しく従っていれば良いんだ。
「私、コーマに救援を呼ばれていないか確認したよね?
あのとき自分でなんて言ったか覚えてる?」
そういえばそんなこと聞かれたな……。
確か……。
「いや、覚えてないな」
「救援は呼ばれてないって答えたのよ。
でも実際には救援は来たのよ!
しかもコーマは逃げていくゴブリンの少ししか倒せてなかったんでしょう!?」
「そんなこと言われたって、あの逃げた奴らが救援を呼ぶなんて思わなかったんだよ!」
「村が攻撃されたんだから救援を呼ぶに決まっているでしょう!?」
「そうなんだろうけど、俺はそうは思わなかったんだよ!」
「はあ……。もういいわ」
「は?なんだそれ。
魔素のバリアを一番最初に張れなくなったのはセレナだろ?」
「ええ、そうね」
「そんな奴が俺に文句言ってんじゃねえ!」
「ええ、悪かったわよ……」
「コーマさん、落ち着いてください。
それで、ゴブリンが救援に来た後は撤退し、前に回り込まれたゴブリンもコーマさんが倒した、それでよろしいですか?」
「ああ、そうだ。俺のウィンドシックルで前のゴブリンを殲滅し、後ろのゴブリンの戦意も喪失させた」
「かしこまりました。報告については以上でよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「それでは、次に……」
「ちょっと待って」
「フェリシア?」
ずっと黙っていたが、いきなりどうしたんだ?
「ねえ、レオン。どうしてあのとき私のことも守ってくれなかったの?」
「どうしてって、俺はセレナを守るのでいっぱいで……」
「私も守って!私、レオンのためだったらなんだってするよ?」
「迷惑だ……。やめてくれ……」
「どうして!?どうしてなの……。私も、二人の中に入れてよ……」
「俺は、セレナしか守れない……。二人もなんて、俺には無理だ」
「私が入る隙なんて、無いの……?」
「すまん……」
「そう……。分かった。
……私今日の報酬はいらない。コーマに渡しといて」
「……はい、かしこまりました」
フェリシアは席を立ち、そのまま部屋の外へと走っていった。
「……フェリシアって、レオンのこと好きだったの?」
「ええ、そうよ」
「そうなのか……」
そうか……。
いや、うん。薄々そんな気はしてたし?
別にショックじゃないっていうか……。
はあ……。
「それで、報酬についてですが……」
「俺の分も、コーマに渡してくれるか?」
「私もそうしてちょうだい」
「かしこまりました」
「あと冒険者ランクなんだが、俺たちのランクを星2に戻してくれるか?」
「えっ、それってどういう……」
「俺たちには星4の実力なんて無かったんだ。
コーマのおかげでここまで来れただけ」
「そんなことは……」
ない……よな?多分。
まあ、俺のおかげかもしれんが。
「そんなことはございません。
レオンさんとセレナさんには星4の実力があります」
「……そうか。でも、もうそんな自信は無くなったよ。
それに、俺たちは元々自分を守るための力が欲しかっただけなんだ。
もうゴブリンとの戦闘経験は十分積んだし、元の外壁工事の仕事に戻るよ」
「じゃあ、パーティは……」
「コーマとフェリシアの二人で頑張ってくれ」
「そんな……」
せっかく俺のパーティがこれからだっていうときに、解散……!?
「……冒険者様のご都合で冒険者ランクを戻すとなると、冒険者章の再発行料がかかってしまいますが、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「私もそれでいいわ」
「かしこまりました。後ほど手続き致します」
「いや、待ってくれ。俺はまだ認めてないぞ」
「コーマと俺たちとじゃ実力に差があり過ぎる。
コーマは実力が近いやつと組むべきだ」
「だが、実力の差なんて努力すればすぐに埋まるだろ!」
「いや、今日のコーマの魔法を見て確信した。
俺たちじゃいくら時間をかけてもあの領域には辿り着けない」
何か……何か引き止める方法は無いのか?
「もう良いだろ?
……ランクを下げる手続きをするのは誰でも構わないか?」
「はい、一階の職員にお申し付けいただければ手続きは可能です」
「そうか。じゃあな、コーマ。今までありがとう」
「ありがとう、コーマ。元気でね」
そう言って、レオンとセレナの二人を部屋から出て行った。
「コーマさんはランクの査定があります。
支部長と話をしてきますので、少々こちらでお待ちください」
「ああ……」
ユフィが部屋から出ていき、部屋に一人取り残された。
パーティが解散……。
なんでこんなことになったんだ。
俺が何をしたって言うんだよ。
なんで俺ばっかりこんなに上手くいかないんだ。
部屋でしばらく待っていると、ユフィが入ってきた。
「コーマさん、おめでとうございます。冒険者ランクが星5に昇格しました。
明日以降は護衛等のお仕事の紹介が可能になります」
「そうか……」
俺だけ星5に昇格してもな……。
「また本日の報酬についてですが、討伐の数が確認できず少なく見積もることになります。
報酬額はゴブリン40体分の討伐報酬の8000ゼニーとなります」
8000って、昨日の倍じゃねえか。
そんな金額、何に使うんだよ。
「本日はお疲れ様でした。ゆっくりお休みください」
「ああ……」
ユフィから報酬を受け取り部屋を後にする。
◇◆◇◆◇
いつもの宿屋に行き、いつもと同じ夕食を頼む。
「お待たせしました。今日も沢山食べますね」
昨日のウェイトレスか。
この子は俺に笑いかけてくれるんだな。
「なあ、今日もいいか?」
「はい!もちろんです!」
「……今夜はずっと一緒にいてくれないか?」
「ごめんなさい、私借金額が多くて……一晩で何人かをお相手しないといけないんです」
「5000ゼニー払う。どうだ?」
そう言って5000ゼニー硬貨を一枚テーブルの上に出す。
「そういうことでしたら朝までお相手いたしますにゃん♡」
「……にゃん?」
「ええ、昨日お客様が猫の真似が似合いそうとおっしゃっていたので」
そういえばそんなこと言ったな。
「俺の名前はコーマだ。覚えておいてくれ」
「かしこまりましたにゃ、コーマ様♡」
今日は朝まで寝られなさそうだ。
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次回の更新はの2026年1月16日の予定です。




