第16話 孤独
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
自信過剰……。
自信過剰ってなんだ?
俺には経験10倍のスキルがある。
だからこそ魔法を上手く扱えるし、あいつらも俺に助けられている。
自信を持っていたっておかしくはない。
でも、自信過剰……。
俺はどうしたらいいんだ。
「おい、コーマ。ゴブリンが来る。集中してくれ」
「あっ、ああ……悪い」
レオンたちは森での戦闘に慣れ、俺が魔法を使うことは少なくなったが、今いるのはゴブリンが闊歩している森の中。
集中しないとダメだ。
レオンの横に並び、手をゴブリンが来る方へ向けながらじっと待つ。
「3、2、1、0!」
レオンの合図でレオンたち3人が一斉に魔法を放つ。
初めてこの森に来たときとは違い、3人とも正確に首を射止めている。
「よしっ!俺たちならもうゴブリンは問題なく倒せるな!」
「ええ、そうね。もう危うげはないわ」
「うん!外壁工事のときみたいに正面で戦うのはまだ怖いけど、不意打ちならもう怖くないよ!」
「確かにあれは今でも無理かもな……」
レオンたちが倒したゴブリンは5匹。
少し大きめに穴を掘らないとな。
「俺たちならもう遷移魔法のバリアとか作れるんじゃないか?」
「そうね、やってみましょう」
「……えっと、これは作れてるのかな?」
「分からないわね……」
「なあ、コーマ!俺たちがバリアを貼れているのか見てくれないか?」
今穴を掘っている最中なんだが……。
3人の方を見ると背中合わせに立っており、遷移魔法のバリアで三角形が作られていた。
「バリアがズレているな。セレナとフェリシアの間に隙間がある。
まず、レオンは少し大き過ぎだ」
「そうか……。これくらいか?」
「ああ、いい大きさだ。
フェリシアは少し大きくしてくれ。それだとレオンの背中に矢が刺さるぞ」
「あっ、そっか。ごめんね、大きくするね!」
「セレナは大きさは良いんだが、魔素の濃さにムラがあるな」
「そう、よね……。難しいのよね……」
魔素を操っているのはセレナ自身だ。
ムラがあることはセレナが一番分かっているんだろう。
「コーマも一緒にバリアの練習をしないか?」
「いや、俺は一人で全面にバリアを貼れる」
両手から魔素を出し、自分の周りにバリアを貼る。
……ムラがなく綺麗なひし形のバリアだ。
「そう、か……」
「そんなことより、ゴブリンの血抜きをしなくて良いのか?
また買取価格を下げられるぞ」
「ああ、そうだったな。悪い!」
穴の大きさはこんなもんでいいか。
レオンたちがゴブリンの死体を持ってきて、太ももを切り離し、胴やふくらはぎから下を穴に放り込んでいく。
ゴブリンの死体が全て放り込まれたことを確認し、死体をミンチにする。
強烈な血の匂いが鼻に入り込んでくる。
目の前でゴブリンの顔が崩れ、脳が飛び出し、まだ暖かい血が飛び散る。
最初は気持ち悪くなっていたが、もう慣れた。
死体処理も慣れてしまればただの作業。
ウィンドカッターを何度も放てば、この通り原型が何だったか分からない肉の塊の完成だ。
「いつもこんなことさせて悪いな」
「いや、構わん」
土を戻し、肉の塊を埋葬する。
この後は川に行ってゴブリンのもも肉から血を完全に抜き、その後帰宅。
もう何度も繰り返した、いつものルーチンだ。
◇◆◇◆◇
「今日もお疲れ様でした!」
ユフィから報酬を受け取って解散。
変わらない日常だ。
「明日は休みにしないか?」
休み……?
そう言えば、この前も結局休めなかったんだったな。
最近は毎日肉を食って個室で寝ても金が余るほどだ。
1日くらい収入が無くても問題はない。
「いいんじゃないか?」
「私もいいと思う!」
「そうね、休みにしましょう」
「じゃあ明日は休みで!明後日のいつもの時間に、ここに集まろう」
「ああ。じゃあお疲れ」
明日は休みか。何をするかな……。
◇◆◇◆◇
翌朝、いつもの時間に目が覚める。
今日はギルドに行かないから昼まで寝てても良いんだが、目が覚めてしまった。
いつも休日は何やってたっけ。
地球にいた頃は……FPSをやってたな。
罵詈雑言が飛び交う戦場、懐かしいな。
この世界にゲームなんて無いし、何をすればいいんだ?
……とりあえず朝飯食べて散歩でもするか。
◇◆◇◆◇
どこに行っても良かったんだが、結局ギルドに来てしまった。
いや、だってここの周り以外うんこ臭いし。
あれっ、ギルドの前にフェリシアがいる。
なんだ休日にやることがないのはフェリシアも一緒だったか。
「おー……」
あれはレオンとセレナ!?
なんで3人が休日に集まっているんだ?
もしかして3人で依頼を受けるのか?
いや、3人とも今日の服装はいつもと違い、少しおしゃれしている。
……なんだ、そういうことか。
俺はまたハブられているのか。
物陰に隠れて3人を見送り、ギルドの中へと入る。
どうせ俺にはやることなんて何もない。
それなら少しでも金を稼ぐさ。
◇◆◇◆◇
いつもパーティでやっていることを一人でやり、合計10匹のゴブリンを殺した。
多少無茶をしても止めるやつはいないから、いつもよりも多くのゴブリンを殺せた。
パーティなんて足枷にしかなっていなかったのかもしれない。
……なんで俺はパーティでの依頼にこだわっていたんだっけ。
ゴブリンのもも肉20本を袋に入れて持って受付の待機列に並ぶ。
今の時間では3箇所で受付されており、そのうちの一つの担当はユフィだ。
周期的に……俺の受付はユフィが担当してくれそうだ。
……あれ、ユフィの受付が長いな。
次は俺の番なんだけど。
「次の方どうぞ」
ユフィではなく、男の受付が空いた。
こいつは以前遷移魔法の使い方を教わったやつか。
……まあ、いいか。
ゴブリンのもも肉が入った袋を受付に手渡す。
「おお、大量ですね!これはお一人で?」
「ああ、そうだ」
「すごいですね……。流石です!
どれも状態が良いですね。
合計で4000ゼニー、登録料の分を差し引かせていただきまして、3600ゼニーのお渡しです」
3600ゼニーを受け取り、ギルドを後にする。
これで当分働かなくてもいいな。
……金はあるのに。
金はあるのに、なぜ俺は一人なんだ。
フェリシアは俺と一緒にいてくれないし、ユフィは受付もしてくれない。
俺の異世界生活はこんなはずじゃ……。
宿屋に戻り、いつも通り夕飯を食べる。
豚肉とゴブリン肉、スープにパン。
この味にも飽きてきた。
「お兄さん、毎日よく食べますね」
ウェイトレスが話しかけてきた。
ショートカットで身長は少し低め。
しかし出るところは出ている。
猫耳とか似合いそう。
「金はあるからな。今日は特に」
「へー……」
なんだ?ジロジロと見てくる。
「私、一晩1500ゼニーなんですけど、いかがですか?」
一晩って……ああ、そう言えばこの宿はウェイトレスを指名できるんだったな。
ユフィもフェリシアも俺の女にはならなさそうだし義理立てする必要もない。
「ああ、頼もう」
◇◆◇◆◇
……はあ、何やってるんだろ。
部屋に入るなりすぐに行為が始まり、終わったらウェイトレスはすぐに部屋を出ていった。
部屋に残ったのは俺一人。
確かに快感はあった。
一人でしたって得られない快感だ。
だが、俺はこんなことがしたかったのか?
前世も含めてこれが俺の初めてだった。
脱童貞ではあるが、素人童貞でもある。
転生した当初、信頼できる仲間を見つけて恋仲になり、そこで脱童貞するんだと思っていた。
だが現実は金で買った女で脱童貞。
こんなはずじゃなかった。
俺はどこで間違えたんだ。
眠ったら、また朝が来る。
何の変化もない、いつもと同じ朝だ。
自殺したら、また異世界に転生できるかな。
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次回の更新はの2026年1月9日の予定です。




