第15話 討伐
すみません、金曜の8時に間に合いませんでした。
セレナの口調を修正しました。
今更ですが、第一章の内容は後に回した方が良かったなと思い始めました。
「星4に昇格してから初めてのお仕事ですね!」
星3で何回か依頼をこなしてから、つい昨日ようやく昇格できた。
これで戦闘が解禁される。
今までは戦闘しないようにしなきゃいけなくて退屈だったが、今日からは戦って良いんだ。
「今回から戦闘をしても報酬をお渡ししますが、集団からはぐれているゴブリンのみを狙うなどして、大きな戦闘にならないようにしてくださいね」
「村を一つ潰しちゃ駄目なのか?」
「ゴブリンの村となるとそれなりの数のゴブリンがいます。
他の村から救援が来た場合にはさらに大きな戦闘になり、いくつもの矢が飛んできます。
そうなってはどなたかが命を落としてしまうかもしれません」
……そう言えばトラメリアの英雄もゴブリンの弓矢に殺されたとか言ってたな。
「弓矢を防ぐにはどうしたらいいんだ?」
「遷移魔法でバリアを作るんです。
4名いらっしゃるので、一人一方向に壁を作れば4方向に壁を展開できますね」
遷移魔法で壁?なにか覚えがあるような……。
そうだ、ノエルに剣を振ろうとしたときだ!
あのときはなんで剣が弾かれるのか分からなかったが、あれは遷移魔法だったんだ。
っていうか、なんで今まで気が付かなかったんだ。
あのときウィンドウォールって言ってただろ。
ウィンドカッターとかウィンドシックルを使ってたんだから気付けよ。
遷移魔法=風魔法って考えると、遷移魔法って結構応用できそうだな。
「じゃあ、全員が遷移魔法で壁を張れるようになるまでは地道にゴブリンを狩るってことで!
セレナとフェリシアもそれでいいよな?」
「ええ、いいわ」
「そうした方が良いね!」
「よしっ、コーマも良いよな?」
「……ああ、構わない」
大量のゴブリンを殺して俺の力を証明したかったが……3人がこう言うんだ。
仕方ない、後回しだ。
◇◆◇◆◇
「あいつもダメだ。他のと近過ぎる」
森の中に入り、草むらに4人で隠れながら一匹でいるゴブリンを探しているが、どのゴブリンも二匹以上でいたり、他のゴブリンが目に見える範囲にいるとかで中々殺しやすいゴブリンが見つからない。
正直もう飽きた。
ずっと見逃してばかりで退屈だ。
「なあ、もうよくないか?殺しちまおう」
「小声で話せ!見つかるだろ!」
くそっ、そこまで大きな声じゃなかっただろ。
「少し遠くにいるのが厄介なんだ。
何匹か集団でいて、それを全滅させられたとしても、遠くのやつまではすぐには殺せない。
そいつに見つかって援軍を呼ばれたらピンチになる」
少し遠くにいるやつくらい俺のウィンドシックルで一気に殺せるから問題ないのに。
「ねっ、コーマ。もう少しだけ我慢しよ?」
「フェリシア……。ああ、分かったよ」
もう少しだけ……もう少しだけだ。
「やっぱりフェリシアの言うことは一回で素直に聞くわね」
「ああ、俺が言ったら何か言われるのに……」
別にフェリシアだからってことは……いや、あるか?
レオンに言われるとなんかムカつくんだよな。
「今左から来ている三匹、良いんじゃないか?
セレナ、周りはどうだ?」
「見える範囲にはいないわ。木に登って確認してみる?」
「ああ、頼む」
「ようやくゴブリンを殺していいのか?」
「ああ、そうかもしれん」
ようやく、ようやくだ。
このときをどれだけ待ったことか。
久しぶりの戦闘だ。
思う存分魔法をぶっ放してやる。
「……コーマには悪いんだが、あのゴブリン3匹への最初の攻撃は俺達でやってもいいか?」
「は?俺なら一発で3匹とも殺せるぞ」
「コーマがウィンドシックルって呼んでるやつか?
あれだと後ろの木まで倒しちゃうんじゃないか?」
「当然だ。木の一本や二本余裕で倒せる」
「なら駄目だ。木が倒れたらその音でゴブリンが寄ってくる」
「……そうなったら、寄ってきたゴブリンも倒すさ」
「今朝ユフィに言われただろ。大きな戦闘はするなって」
「そう、だったな」
「俺達がもっと遷移魔法の扱いが上手くなるまで待ってくれ。
だから今日は俺達がゴブリンを一発で倒せなかったときのために待機していてくれないか?」
「お前たちで倒せなかったときは俺が倒して良いんだな?」
「ああ、だがウィンドシックルは止めてくれ。
ウィンドカッター……だったか?あれにしてくれ」
命をかけた戦いをするときは全力で、っていうのが俺のモットーなんだが……。
これもパーティのためか。
パーティのリーダーたるもの、常にパーティのことを考えなければいけないからな。
実戦で強くなる、そのためには弱いやつに戦いを譲らなければならない。
これも強者の務めだ。
「お待たせ、周囲にはゴブリンはいなかったわ」
「よし、じゃあ3人であのゴブリンを倒すぞ。
俺が奥のをやるから、フェリシアが真ん中、セレナは手前のを頼む」
「うん、任せて!」
「分かったわ」
3人が左からセレナ、フェリシア、レオンの順にくっつき、草むらのギリギリまで手を伸ばす。
って、レオン。フェリシアに近い。もっと離れろよ。
「コーマもこっちに来い!俺達が外したときはコーマ頼りなんだ」
「いや、俺ならここからでも届くんだが」
「後ろから遷移魔法を使わないでくれ!怖いから!
俺達に絶対に当たらないように、俺達の前に手を出してくれ!」
だから3人ともそんなにくっついてるのか。
「ほら、コーマ。私の横においで」
「ああ、分かった」
フェリシアとレオンの間に入り、一緒に手を伸ばす。
「よし、3カウントで一斉に遷移魔法を放つぞ。準備はいいな?」
「ええ」
「いいよ!」
「よし、3、2、1、0!」
その合図で3つの遷移魔法が飛んでいき、手前のゴブリンの首が落ち、真ん中のゴブリンの胸に傷ができ、奥のゴブリンには何も起こらなかった。
「すまん、コーマ頼む!」
「任せろ!」
手からウィンドカッターを連射し、まだ生きている二匹のゴブリンに何度もウィンドカッターを浴びせる。
声を上げることなく全てのゴブリンはその場に崩れ落ちた。
「助かった。コーマ、ありがとう」
「私も、一発で仕留められなくてごめんね」
「気にするな、これが俺の役割だ」
あああああ気持ち良いいい!
これだよこれ!
俺の力を求められて、感謝されるこの感じ!
これが俺の求めていた異世界転生ライフなんだよ。
やっと俺の物語が動き出したんだ。
「よし、じゃあ早くあの死体をこっちに持ってくるぞ」
草むらから出てゴブリンの死体のところへ行くと、そこには惨たらしい死体が二つ転がっていた。
いくらなんでもやり過ぎたか?
いや、でも確実に仕留めるためには仕方ないか。
「うわぁ、これは凄いね」
「ああ、コーマとは絶対に戦いたくないな」
「戦わないだろ」
ゴブリンならまだしも、人間を殺す気なんてない。
それをやっちゃったら終わりだろ。
「じゃあ俺達は解体するから、コーマは死体を埋めるための穴を掘ってくれるか?」
「ああ、そうだな」
ゴブリンの死体を持って草むらに戻り、穴を掘り始める。
土だから柔らかいとはいえ、あいつらではまだ深くは掘れないだろうから、これが適切な人選だ。
俺がいなかったらスコップを担いで森に入らなきゃいけなかったんだろうな。
荷物が減ったのは俺のおかげ。
もっと俺に感謝してもいいぞ。
ゴブリン3匹分の穴を堀り終え、3人の解体作業を見ているが、遷移魔法の使い方がまだまだ甘いな。
「セレナ、背骨は硬いからもっと魔素を込めないと切断できないぞ」
「えっ……うん、ありがと」
「レオンは魔素を込めすぎだ。そこには内蔵しかないからもっと少なくていい」
「おっおう……」
「フェリシアは丁寧にやりすぎだ。どうせ埋めるんだからそこまで丁寧に解体しなくていい」
「あっそうだよね。あはは……」
「コーマ、俺達が使っている魔素の量が分かるのか?」
「え?ああ、そういえば……」
なんか気付いたら分かるようになっていたな。
これが魔素過敏症ってやつか?
「コーマはすげえな。魔法を使い始めたのは俺達の方が先なのに」
「まあ、これが才能ってやつかな」
「ああ、まあ、そうだな……」
ゴブリンの解体が終わり、もも肉のみを取って他の部位を埋める。
「じゃあ川に行くぞ」
次は血抜きか……。
獲物を狩って終了じゃないのは面倒くさいが、これをやらないとギルドでの買取額が下がるらしいし、仕方ないか。
◇◆◇◆◇
「3匹も狩ってきたんですか!?すごいです!
それに状態も良いですね!」
「解体の仕方はブルクさんに習ったからねー!
ちゃんと川で血抜きと冷却したから調理したら美味しくなると思うよ!」
「はい、これなら満額での買取になります」
「やった!この前安いゴブリン肉を食べたんだけど、すっごく不味くてさー。
私たちが持ってきたゴブリン肉ならみんな喜んでくれるよね?」
「皆さん大喜びで間違いなしです!」
ゴブリンのもも肉を前に和気あいあいと談笑するユフィとフェリシア。
なんか……。いや、これが普通なのか?
「今回の報酬はゴブリンの討伐報酬が3匹分で600ゼニーと、もも肉が6つ満額での買取なので600ゼニー。
合わせて1200ゼニーになります。
今回も等分での配分でよろしいですか?」
「うん!」
俺の取り分は300ゼニー。
そこから登録料の1割が引かれて270ゼニーか。
これなら一日くらいは休んでもいいか?
転生してからずっと働いていたしそろそろ一日くらい休みたい。
「星3に昇格して依頼の大金だし、また酒場で飲まないか?」
「いいね!飲もう!」
「うん、賛成」
あっ、飲むのか……。
じゃあ明日も働かなきゃだ。
「コーマもいいよな?」
「ああ、もちろんだ」
◇◆◇◆◇
「カーッ!やっぱり仕事終わりはこれだよな!」
「レオン、おっさんくさいよ」
「セレナには分からないか。叫ぶのも含めて気持ちいいんだよ。
コーマは分かるよな?」
「いや、俺は叫ばないし……」
このエールっていうのを飲んでいるが、イマイチ美味しさが分からない。
これなら普通にジュースとかの方が美味しいだろ。
「それにしても、フェリシアの肌、すごく綺麗になったよね」
「えっ、そう?ユフィに生成魔法を使ったスキンケアのやり方を教わってから頻繁にやってるんだけど、成果が出てきたかな?」
「うん、すっごく出てるよ。コーマもそう思うでしょ?」
フェリシアの顔をじっくり見ると、出会った頃とは違い赤みがかったところが無くなっていてとても可愛くなってる。
これなら俺のハーレムに相応しい。
「ああ、可愛くなったよ」
「えっ、そう?そっかあ……。
ねえ、レオンはどう思う?」
「ん?あーそうだな、可愛くなったと思うぞ。
一番可愛いのはセレナだがな」
「ちょっと、もう……」
うわあ……。レオン、デリカシー無さすぎだろ。
ここは俺がフォローしておくか。
「俺はフェリシアの方が可愛いと思うぞ」
「あはは、ありがとね……」
「コーマってフェリシアのこと好きでしょ?」
「えっ、そうなの!?」
「おい、セレナ!勝手なこと言ってんじゃねえ」
フェリシアは確かに可愛いが、それとこれとは別だ。
フェリシアを俺のハーレムに加えるつもりだが、あくまでハーレムの一員だ。
そう、フェリシア数いる俺の女の中の一人であって、好きだとかそんなんじゃない。
「だってフェリシアの言うことはよく聞くし、フェリシアのことよく見てるでしょ」
「いや、そんなことは……」
それは、フェリシアは俺のハーレムだから目を掛けているだけで、そんな特別なものじゃない。
そう、だよな?
「でも仕方ないか!私が可愛くなったから惚れられちゃうよね!」
「コーマがフェリシアのことをよく見てたのは最近だけじゃないよ。
フェリシアが最初に外壁工事に来たときからだよ」
「そのときはまだコーマとあんまり話してなかったと思うけど……もしかして一目惚れ?」
「そっ、そんなに見てたわけじゃないだろ!」
「見てたよ?私とかレオンのことはほとんど見てなかったのに、フェリシアのことばっかりずっと。
レオンがフェリシアに仕事のこと教えてるときとか目がやばかったし」
「そうそう!今日も俺が草むらでフェリシアに近付いたとき、後ろからコーマの視線がやばかったんだよ!」
「いや、それは……」
確かにもっと離れろとは思ってたけど……そんなにか?
「それで、フェリシア的にはコーマはどうなの?」
「えーっ、コーマは凄いと思うけど……」
「自信過剰?」
「そう!それ!そうなんだよ!」
「だそうよ?私も少し直したほうが良いと思うわよ?」
「えっ、カッコよくないのか?」
「そういえば、レオンにもそんな時期があったわね……。
カッコよくないから今すぐ止めなさい」
「そんな……」
俺がカッコよくない?
いや、そんなはずは……。
でも女子二人がそう言うんだからそうなのか?
「少なくとも、それを直さない限りフェリシアがあなたに振り向くことはないでしょうね」
「そうなのか……」
フェリシアの攻略は順調だと思っていたが、そんなことはなかったのか?
くそっ、今のフェリシアの好感度ゲージを見せてくれ……!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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次回更新は1月5日の予定です。
良いお年をお迎えください。




