第11話 遷移魔法
ユフィに遷移魔法を教えてもらった。
誰だよ遷移魔法をウィンドボールって言ったやつ。
これがあれば、ゴブリンだろうが人間だろうが簡単に殺せるじゃねえか。
今まで生成魔法でどうやって戦うか考えていたが、そんな必要はない。
これからは遷移魔法だ!
「もうマスターできましたね!流石です!
これならゴブリンは倒せそうです!」
実技試験で遷移魔法を使う場合に使用された、剣の試し切り用の巻藁に切り込みを入れることができた。
「今再試験を受ければ合格になるか?」
「はい、切り込みを入れられることが合格ラインです!」
こんな簡単ならさっき合格にしても良かっただろ。
これから再試験を受けるとか面倒くさいんだが。
「では、私は受付の仕事がありますので、もう行きますね。
コーマさんはここで練習を続けていただいても構いません。
分からないことがあれば、あちらの魔法講習の講師にお尋ねください」
そう言って、ユフィはギルドへと戻っていった。
ギルドの職員の業務内容はローテーションであり、今日のユフィの担当は魔法講習の講師ではなく受付だ。
ユフィがいたから良かったが、一人で練習って退屈なんだよな。
俺には経験10倍があるんだから、他の人の練習量の10分の1で良いわけだし。
もうすぐフェリシアたちが帰ってくるだろうし、それまで休憩しているか。
◇◆◇◆◇
ギルドの建物に寄りかかって休んでいると、支部長がフェリシアたちを引き連れて帰ってきた。
「ユフィはどうした?」
「受付の仕事があるってギルドに戻っていった」
「……遷移魔法を使えるようになったということか?」
「ああ、試験に合格できるレベルだって言っていたな」
「ほう。見せてみろ」
まあ、こいつが侮った俺の実力っていうものを見せてやるか。
巻藁から3mほど離れたところに立ち、巻藁へ向けて遷移魔法……いや、ウィンドカッターを放つ。
俺のウィンドカッターは見事命中し、巻藁にまたしても切り込みを入れた。
「確かに、合格ラインには届いているな。
それでお前は何をしていたんだ?」
「もう習得したんで休憩していたところだ」
「そうか。なら手本を見せてやろう。
3人もよく見ていろ。
遷移魔法は鍛えればここまでできるようになる」
そう言って支部長は巻藁へ手を向けると、巻藁は4箇所が切断され、5つに分かれた巻藁が地面に横たわった。
「コーマ、お前は確かに習得スピードは速い。
だが、練習しなければお前はずっとそのままだ」
巻藁を切断できたからって偉そうに。
少し休んでただけだろ。
今から練習してお前なんてすぐに追い抜いてやる。
お前は5個にするのが限度なんだろ?
じゃあ俺はその倍の10個に切断してやるよ。
「職員を連れてくる。お前たちはここで待っていろ」
そう言って支部長はギルドへ入っていった。
あいつの遷移魔法を見たおかげで目標が明確になった。
今まではあいつを超えるだとか目標が曖昧だったから駄目だったんだ。
藁を10個に分割するっていう目標ができた俺はこれから沢山練習するぞ。
◇◆◇◆◇
駄目だ。
巻藁を一回で切断できねえ。
時間をかければ切断できるが、あいつは時間がかかっていなかった。
どうやったらあいつみたいに一回で切断できるようになるんだ。
「お困り事ですか?」
支部長に連れてこられた男の職員が話しかけてきた。
フェリシアたちはこの男の職員に遷移魔法を教わっている。
なんで支部長はユフィを連れてこなかったんだよ。
「ウィンドカッターの威力が上がらないんだ」
「ウィンドカッター……?ああ、遷移魔法のことですね。一度見せていただけますか?」
職員に促されるままウィンドカッターを巻藁へ放つ。
「遷移魔法に込める魔素が少ないようですね」
職員は俺の身体を見たまま言い放った。
なんで巻藁の方を見ないんだよ。
「まずは体内に魔素を貯めてから遷移魔法を使ってみてください」
魔素を貯めるって最初に魔法を発動するときにやるやつだろ。
俺はもう魔素の吸収効率を上げられるから、そんなことしなくても魔法を発動できるんだが。
まあ、一度くらいやってやるか。
少し魔素を貯めてウィンドカッターを発動する。
……やっぱり切断できないじゃねえか。
「えっと……、もうちょっと魔素を貯めてから魔法を使ってみましょう」
もうちょっとってどれくらいだよ。
仕方ない、限界まで貯めてやるか。
しばらく魔素を貯め続け、魔素が漏れ始めてからウィンドカッターを放つ。
ゴウッと大きな音を立てながらウィンドカッターが進み、巻藁を真っ二つに切断する。
すげえ!!
なんだ今の!
あれだけの威力があるなら、巻藁が何個も重なってたとしても切断できそうだ。
やっぱり俺ってすごかったんだ!
「おめでとうございます!巻藁を切断できましたね!」
「コーマ、今すごい音がしたけど、どうしたの!?」
「ああ、フェリシア。どうやら俺の実力が開花してしまったらしい」
「へー、コーマはやっぱりすごいね!」
ああ、俺はすごいんだ。
そうだ、今の魔法に名前を付けよう。
ウィンドカッターの上位魔法だから、ウィンドエッジ……いや、今のは刃どころじゃなかった。
もっと上位の……、そう、鎌のような感じ。
よし、名前はウィンドシックルだ!
このウィンドシックルさえあれば、支部長だって倒せるかもしれない。
「では引き続き頑張ってください」
そう言って職員はフェリシアと一緒にレオンたちのところへ戻っていった。
あいつらは未だにウィンドカッターを発動できていないのか。
まあ、俺のペースに合わせる方が無理か。
ゆっくり練習しているといい。
俺はその間にさらに先へと進んでいるさ。
そうだな、とりあえずもう一回ウィンドシックルを発動してみるか。
今度はさっきよりも大きなウィンドシックルを発動しようかな。
ああ……飽きた。
ウィンドシックルを何回か発動したが、最初の一回目の威力は超えられないし、段々と魔素を貯めるまでの時間が長くなっている。
フェリシアたちは……ようやくウィンドボールを発動できたくらいか?
ウィンドカッターすら発動できないならまだまだ先は長いな。
さっき俺が昇格試験で不合格になった理由は攻撃力が無かったからだ。
ウィンドシックルを習得した今、もう不合格の理由はない。
ユフィに昇格するよう言ってみるか。
ギルドの建物に入ると、受付に立っているユフィを見つけた。
「ユフィ、俺を星3に昇格させてくれ」
「私の一存では決められないので、支部長を呼んできますね」
そう言ってユフィは階段を駆け上がっていった。
そんな急がなくても良いんだが。
さっき二人きりで魔法の練習をした仲だろ。
少し待っていると、支部長とユフィが階段から降りてきた。
「コーマは星3に昇格していいぞ」
支部長が階段から降りてくるなりそう言い放った。
「当然だな」
これで俺も星3冒険者。
つまり、街の外の色々な依頼を受けれるようになる。
「早速だが、今から受けられる依頼はあるか?」
「今からですか!?えっと……」
「今は止めておけ。魔臓が消耗しきっている。
それにもうすぐ日も沈む」
窓から外を見てみると、綺麗な夕焼け空が見えた。
魔臓が消耗しているって、そのせいで魔素を貯める時間が長くなっていたのか?
こいつはなんでそれが分かったんだ?
「じゃあ明日からでいい。明日はどんな依頼を受けられるんだ?」
「星3に昇格して最初の仕事はゴブリンがいる森の偵察がおすすめです。
森のどこに集落があるか、集落の規模はどのくらいかを偵察していただく仕事です。
森の手前側は偵察が完了していますが、森の奥の方はまだ偵察ができていません。
報酬はその偵察で手に入った情報を基に計算します」
そう言って森の地図と思われる羊皮紙を見せてくれた。
その羊皮紙にはゴブリンの集落の範囲や規模が細やかに書かれている。
良い情報を持ち帰れば、その分高い報酬が貰えるっていうことだろう。
「分かった。明日はその依頼を受けよう」
「かしこまりました。お待ちしております」
この街に来てから一週間。
ずっと外壁工事の依頼をこなしてきて飽きていたが、ようやく新しい依頼だ。
良い情報を持ち帰れば外壁工事よりは高い報酬が貰えるだろうし、その報酬で一日休みを取ろう。
いつもの宿で女を買ってみるのも良いな!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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