第10話 冒険者試験
強くなるには、まずはパーティの仲間集めだ。
奴隷商で安い子供の女奴隷を買って、そいつに魔法を教えつつ育てる。
急成長してくれたら良いんだが、この世界には獣人とか居なさそうだし期待は出来ない。
まあ、俺は守備範囲が広いから、子供でも手を出すがな。
とはいえ、俺は無理やりなんてことはしない。
相手が俺に惚れて、抱いてほしいとせがまれるまでは待つつもりだ。
ということで奴隷商を探すべく街を歩いているんだが……どこにあるんだ?
そもそも奴隷商ってあるの?
みずぼらしい格好をしている人はよく見るが、大抵は門の近くに住んでいる人だったり、門の外で畑仕事をしている人だけだ。
重いものを運んでいたり、誰かに鎖で繋がれているような人は見たことがない。
……誰かに聞いてみるか。
「なあ、あんた。奴隷商ってどこにあるんだ?」
「はあ?知らねえよ」
……は?
なんだこいつ。
失礼過ぎるだろ。
いや、男に聞いたのが駄目だったな。
女ならそんなことはないはずだ。
イケメンに話しかけられて喜ばない女はいないからな。
「なあ、奴隷商ってどこにあるか知っているか?」
「奴隷商……って何?」
奴隷商を知らない……?
いや、無いのか?
「奴隷っていうのは知っているよな?」
「……ええ、知っているけど」
「それを取り扱っている商人はどこにいる?」
「商人が奴隷を取り扱っているなんて聞いたことないわよ」
「じゃあ、奴隷が欲しいときどこで買うんだ?」
「欲しいなんて思わないわよ!」
話していた女は怒ってどこかへ行ってしまった。
奴隷はいるが、奴隷商はいない?
じゃあ奴隷は誰に買われるんだ?
……仕方ない、奴隷は諦めるか。
うん、売ってるところが無いんじゃ仕方ない。
王都とかに行けばあるかもしれないが、王都がどこかも分からない。
次のプランだ。
まずはベテラン冒険者のパーティに入り、雑用をこなす。
そして追放される。
追放されたときはまだ俺に経験がなかったが、追放された瞬間俺の経験10倍スキルが覚醒し、一気にベテラン冒険者たちを追い抜く。
これだ!
いつも俺が泊まっている宿に来た。
ベテラン冒険者は皆この宿の一階で酒盛りしている。
目ぼしいやつらは……あれかな。
「なあ、あんたら。俺をパーティに加えてみないか?」
毎日この酒場にいる4人組だ。
全員が毎日娼婦を買っているから儲かっているんだろ。
「はあ?……お前、冒険者ランクは?」
「星2だ」
「はっ、それじゃあ外の仕事ができないだろ」
「違えねえ!」
ガハハと全員に笑われた。
なんだこいつら。
この街はこういう失礼なやつばっかりなのか。
もっとマシなやつら……、そういえばフェリシアがいたな。
フェリシアは俺に惚れてるだろうし、断られることはないだろう。
◇◆◇◆◇
翌朝、外壁工事の集合場所で待っていると、レオンとセレナが先に来た。
フェリシアと二人で話したかったんだが、まあ二人がいてもいいか。
「おはよう、コーマ。今日も早いな」
「おはよー」
「ああ、おはよう」
この二人は一緒に暮らしているらしく、来るときも帰るときも一緒だ。
「みんなおはよー」
フェリシアも来た。
「コーマ、昨日はごめんね」
「ん、二人は昨日何かあったのか?」
「うん、大したことじゃないんだけどね」
「ああ。そんなことより、一緒に星3の昇格試験を受けないか?」
「昇格試験!?なんで急に……。もしかして昨日のこと気にしてるの?」
「……この仕事に飽きただけだ。
毎日生成魔法で水を出したり、消滅魔法を当てるだけ。
こんなことをやっていたって強くはなれないし、これ以上生活は良くならない」
「私は昨日この仕事を始めたばかりだから全然飽きてないんだけど……」
「ああ、だがいずれは飽きるだろ?それに外壁工事だっていつかは終わる。
だったら今昇格試験を受けても同じじゃないか?」
「えぇ……。二人はどう思う?」
「星3になるっていうことは、外の仕事をするってことだろ?
この仕事は退屈だけど、外の仕事よりかは安全だし、それなりに貰えているから俺達はいいかな」
「ええ、私もそう思うわ」
いや、そもそもレオンとセレナは誘ってないんだが。
俺のパーティに男と中古女はいらない。
「二人がこう言ってるし、私も止めとくよ。昨日のことならあんまり気にしちゃ駄目だよ!」
くそっ、二人のせいでフェリシアまで意思を固めた。
フェリシアなら付いてきてくれるって思ってたのに。
「……せめて昇格試験だけでも受けてみないか?
外の仕事は受けなくてもいいから。
それなら良いだろ?」
「うん……、まあそれなら」
よし!
昇格試験を受けたらこっちのもんだ。
せっかく昇格したんだから、みたいなことを言って外の仕事に連れ出せば良いんだ。
◇◆◇◆◇
翌日、昇格試験の受験中だ。
口頭試験の内容はコンパスの見方とか周辺地理の把握、ゴブリンに会ったときの対処法を答えるだけだから簡単だ。
レオンとセレナは外壁工事のときに覚えたらしく余裕で通過。
フェリシアもなんとか通過できたらしい。
あとは実技試験だが……剣なんて握るのはゴルドとゴブリン退治に出たとき以来だ。
「あれ、コーマさんは剣を使うんですか?」
ユフィに質問された。
剣を使わないでどうするんだよ……。
「ああ、当然だ」
「そう、なんですね……」
なんでユフィはこんな当たり前のことを聞いてきたんだ。
ギルドの貸し出し用武器が入った樽の中から直剣を一本抜く。
やっぱり剣と言ったら直剣だよな。
ゴルドに教わった通り剣を抜こうとするが……あれ、抜けない。
「それはシミターみたいな刀身が湾曲している剣の抜き方ですね。
直剣の場合は途中まで抜いたあと、刀身を持って残りの分を引き抜きます」
抜き方が違うのかよ……。
そんなの初めて知ったわ。
直剣を初めて構えてみたが、結構重いな。
アニメで直剣を片手で持ってるキャラがいたが、こんな重いのをどうやって片手で持ってるんだよ。
「武器を変えるなら今のうちだ」
「変えねえよ」
支部長が俺の正面で剣を構えて待っている。
「えーっと、では受験者には支部長と戦ってもらいます。
剣の刃は潰してありますので、支部長のことは気にせず斬り掛かってください。
支部長がゴブリンを倒せると判断したら合格になります」
合格かどうかは支部長の匙加減かよ。
こりゃ支部長を倒すしか無いな。
「では、始めてください!」
ユフィの開始の合図で支部長へ向かって走る。
まずは袈裟斬りだ。
俺の剣を支部長が剣で弾き、ギィンという大きな音が鳴り響く。
まあ、一発目が防がれるのは想定内だ。
大きく弾かれた反動を活かして、二発目思いっきり打ち込んでやる!
「そこまで!」
顔を下に向けると、支部長の剣が俺の脇腹のところで寸止めされていた。
「口頭試験のときも言ったが、ゴブリンは常に複数体でまとまって行動する。
今の一撃でゴブリンを1匹屠れたかもしれんが、2匹目に殺される」
複数体いたらあんな風に斬り掛かったりしねえよ。
「次」
くそっ、俺はもう不合格ってことかよ。
もうあいつの戦い方は分かったから、次戦えば負けねえのに。
俺のあとにフェリシア、レオン、セレナが挑戦したが、結果は全員不合格だった。
この試験は本当に合格させる気があるのかよ。
「全員剣の訓練をしっかりするように、と言うところだが、レオンとセレナは冒険者になってから時間が経っているな。
フェリシアは職員からの評判が良い。
3人に覚える気があるなら遷移魔法を教えるが、どうする?」
「……コーマは、駄目なんですか?」
「コーマは既に覚えているはず、なんだがな」
遷移魔法って、ウィンドボールだろ?
あんなのがなんだってんだ。
「遷移魔法があれば外壁工事中にゴブリンが襲ってきたとしても簡単に撃退できるようになる」
「それって、もう急いで逃げなくていいってことか……。
セレナ、良いんじゃないか?」
「うん、私もそう思う。フェリシアはどうする?」
「私も教えてもらおうかな」
「じゃあ、3人とも私の部屋に来い。
ユフィは……すまんがコーマに遷移魔法を一から教えてやってくれないか?」
「はい、かしこまりました」
ウィンドボールでゴブリンを撃退?
冗談だろ。
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