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第8話 初めての依頼

 今日は冒険者になってから初めての依頼の日だ。

 受付嬢曰く、今俺が受注できる依頼の中では外壁工事が一番報酬が高い。

 依頼の集合場所は門の近くなんだが……人が沢山居過ぎる。

 誰に話しかければいいんだ?


 ちなみに今日俺を担当してくれた受付嬢はユフィではなかったが可愛かった。

 っていうか、ギルドの職員は美男美女ばかりだ。

 街の中を見ても、整った顔立ちの人が多いが、ギルド職員はレベルが違う。

 なんか、こう……輝いているんだ。


「あんた、もしかして初めて外壁工事の仕事をする冒険者か?」


 周りを見渡しながら歩いていると、男が話しかけてきた。

 すぐそばに女もいるな。


「そうだが……あんたたちは?」

「俺達も冒険者だ。

 少し前から外壁工事をやっているから俺達の方が少し先輩だな」


 は?

 なんだこいつ、いきなり先輩マウント?


「俺はレオンだ。よろしくな」

「私はセレナ。よろしくね」

「コーマだ。

 ……この依頼は生成魔法と消滅魔法の習得が必須と聞いたが、二人は習得までにどれくらい時間がかかったんだ?」

「依頼……って外壁工事のことか?」

「ああ」


 なんでかこの世界の人間は全員が依頼のことを仕事って言うんだよなあ。


「生成魔法は一日で習得できたが、消滅魔法は他の仕事をこなしながら練習してようやくってところだったな」

「私もレオンと一緒よ」

「ふっ、俺は全て半日で習得した」

「半日で!?すげえ!!」

「すごっ!天才なんだね」


 ああ、気持ちいい……。

 これだよ、これ。

 この瞬間が最高なんだよ。

 2度と俺につまらないマウント取ってくるなよ。


「まあ、二人ともよろしくな」

「ああ!」

「ええ!」

「今日の外壁工事の仕事を受けた冒険者は3人なんだが、レオンとセレナに、それと兄ちゃんか?」


 髭を生やしたガタイの良いオッサンが話しかけてきた。

 ザ職人って感じだ。


「はい!こちらのコーマは今日が初めてです」

「そうか、俺はブルクだ。よろしくな。

 軽く仕事の説明をしておくか。

 今は安全な土地を広げるために新しい外壁を作っている最中だ。

 外に畑が広がっているが、野菜が夜の間にゴブリンの盗まれたりしている。

 外壁があれば盗まれたりしないし、農作業中にゴブリンを警戒しなくて済むようになる。

 野菜が盗まれなくなれば、農家だけじゃなくその野菜を手に入れるはずだったこの街の人も喜ぶ。

 多くの人の役に立つ仕事だ」


 人の役に立つ、ねえ。

 どうせどんなに頑張っても、感謝なんてされねえよ。

 頑張って作っても、他の奴らは出来上がったのを見て、「おっ、できてんじゃん」って言って我が物顔で使い始めるんだ。

 今までそんな奴らばっかだった。


「じゃあ、そこにある荷車を引いてきてくれ」


 そう言ってブルクは門の横にある沢山の荷物が載っていそうな、布が覆いかぶさっている荷車を指差した。

 めちゃくちゃ重そうなんだが。

 あんなのを運ばないといけないのかよ。


「今日は3人だからまだ楽だな!セレナと二人のときは本当にキツイから」

「何よ、それじゃあ私が役立たずみたいじゃない」

「そりゃ、腕がこんなにプニプニだからな」

「ちょっと!」


 レオンがセレナの腕を掴んで柔らかさを確かめている。

 セレナは怒っているが、嫌がっているという感じではない。


「二人は、その……付き合っているのか?」

「ああ、そうだ。よく分かったな」


 そんなあからさまにイチャつかれたら分かるっての。

 っていうか、こいつらリア充だったのかよ。

 爆発しろ。


「じゃあ、とっとと運ぼうぜ」


 そういえば、さっきレオンは3人って言った?

 ブルクは?あいつは運ばないのか?

 辺りを見回してみると、ブルクは手ぶらで門の外へと歩いていた。

 辛いことは人に押し付けて自分は楽をするのかよ……。

 いっつもそうだ。

 俺ばっかり辛い役目を押し付けられる。

 お前たちも少しは俺の辛さを知れ。




 リア充二人と荷車を押して壁の建設予定地についた。

 壁は街の4分の1ほどを囲っているだけてあり、完成まではまだまだ時間がかかりそうだ。

 壁の大きさは高さ10m、厚さは4mくらい。

 建設予定地の近くには、これから壁として積み上げられるであろう、大量の大きな石が置いてあり、ブルク以外にも何人か職人がいる。

 ブルクもそうだが、職人はみんなガタイが良い。

 ……まさか、この大きな石を人力で持ち上げるのか?


「まずはモルタルを作る。

 俺が混ぜるからお前たちはそこの材料を降ろして俺の近くに置いてくれ」


 ブルクが俺達の持ってきた荷車を指差しながら指示を出す。

 材料って、俺達は何を持ってきていたんだ?

 荷車に覆いかぶさっていた布を取ると、そこには大量の砂と……セメント?あとは水が入った桶があった。

 こんなのが載せてあったのかよ。

 そりゃ重いわけだ。


 ブルクの指示通り、麻袋に入った砂とセメント、そして桶をブルクのそばに置く。

 そうするとブルクが何人も人が入れるほどの大きな箱の中に材料を入れながらかき混ぜ始めた。

 モルタルってこうやって作るのか。


 砂とセメント、そして水を全て入れ終えると、レオンが空になった桶に生成魔法で水を満たし始めた。


「ブルクさんが水を入れ終わったら、空いた桶に水を入れるんだ。

 水を入れる回数は全部で3回。

 ちょうど3人いるから1人1回にしよう」


 レオンが水を入れ終えると、またブルクが水を少しずつ箱に入れ始めた。

 ……なんで最初の水は生成魔法で作らなかったんだ?

 そしたら荷車が少しは軽くなっただろ。


 そんなことを考えていると、桶の中の水が空になった。

 それじゃあ、俺の実力を見せるとするかー。

 って言っても、桶に水を入れるだけか。

 溢れさせたり、急激に入れて桶を壊すわけにもいかないし。


 普通に桶に水を入れて、普通に終わった。

 もちろん歓声も無し。

 最初なんだから何かしら反応してくれよ。


「よし!モルタルができたぞ!」


 ブルクがそう声を上げると、ブルクより先に来ていた職人達が集まり、モルタルを取って壁へと塗り始めた。


「お前たちは3日前に作った壁に消滅魔法を当ててきてくれ」


 そう言って、ブルクはまたモルタルをかき混ぜ始めた。


「じゃあ、コーマ。案内するから付いてきて。

 壁は一日で大体10mくらい作れるんだ。

 その日の作業が終了した場所には目印を付けているから、今日消滅魔法を当てるのは……ここからだね」


 レオンに付いていくと、赤く塗られた小さな石が置いてあるところで止まった。


「壁は厚くて仲間で消滅魔法が届きにくいから、じっくり当てていくよ。

 俺が消滅魔法を当てた場所と同じ場所にコーマも同じように消滅魔法を当てながら付いてきて」


 そう言って、レオンとセレナは壁に消滅魔法を当てながら移動を始めた。

 傍から見ると石壁の継ぎ目に手を当てているだけだ。

 なかなかシュール。

 って、俺もこれからこの二人と同じことをするのか。


 ◇◆◇◆◇


 下側には消滅魔法を当て終え、今は足場に乗りながら壁の上側に消滅魔法を当てている。

 今は最上段の石の継ぎ目に消滅魔法を当てているところ。

 つまり、今俺がいる場所は壁の高さと同じくらいのところ。

 下から見たとき、この壁まあまあ高いなあ、なんて甘く見てたけど、実際に登って下を見るとめっちゃ怖い。

 洒落にならない高さだって、これ。

 あるのは足場だけで、手すりも無ければ柵も無い。

 少しバランスを崩したらそのまま下まで落ちて、多分死ぬ。

 どうか何も起きませんように……。


「ゴブリンが来たぞーー!」


 職人の方からそんな声が聞こえた。

 えっ……ゴブリンって、どうすればいいの?


「コーマ何をしているんだ!早く逃げるぞ!」


 そう言ってレオンとセレナは足場を降りて街の方へ逃げていった。

 いや、なんでそんな速く降りられるの。

 っていうか俺を待ってくれないのかよ。

 セレナは地面に着いたら一目散に逃げていったし、レオンもセレナが降りたのを確認したら逃げやがった。


 慎重に足場から降り、ようやく地面に着いたと思うと、ちょうど目の前にゴブリンが居た。


『うわああああ、ちょっ、ちょっと待って殺さないで!』


 ゴブリンは石の斧を手に持って振りかぶっていた。

 俺は今剣なんて持ってないし、盾もない。

 このままじゃ何もできずに殺される。


『ん?俺達の言葉?なんて人間が同じ言葉を喋れるんだ?』


 あれ、俺ってゴブリンの言葉が分かるだけじゃなくて、喋れもするの?


『お前、本当に人間なのか?』

『ああ、人間だ。でも殺さないでくれ』

『分かった、殺さない。でもなんでお前は俺達の言葉を喋れるんだ?』

『それが俺にもよく分からないんだ。俺も喋れるってことを今知ったばかりで……』

『そうなのか、お前は人間だが、言葉が話せるお前は俺達の仲間だ』


 仲間……?

 俺が、仲間なのか?

 そんなことを言ってくれたのは今まで一人も……。


『おい、どうした?なぜそいつを殺さない?』


 他にもゴブリンがいたのか!

 ゴブリンは全部で……5匹だ。


『こいつは俺達の仲間なんだ』

『こいつが?……ってなんでお前泣いているんだ?』

『えっ?』


 目の辺りに触れると水が流れていた。


『本当だ。なんで……』

『確かに俺達の言葉だ』


 ゴブリン達が集まってヒソヒソと相談を始めた。

 仲間……そうか、このゴブリンは俺のことを仲間だと言ってくれたのか。


『なあ、お前。お前は俺達の仲間だ。だから一緒に来ないか?』

『一緒に……?』


 ゴブリン達と一緒に?

 今日はユフィと話せなかったし、逃げるときには置いていかれた。

 だがこのゴブリンは俺と一緒に、と言ってくれた。


 ゴブリンの手を取ろうとしたそのとき、横から矢が飛んできて1匹のゴブリンに命中した。


『なんだ!?』

『人間だ!人間が襲ってきたぞ!』


 矢が飛んできた方向を見ると、冒険者が2人、1人はロングソードを抜いて走ってきており、もう一人は弓矢を構えている。

 ゴブリンたちも弓矢で応戦するが、近づいてくる冒険者はそれを防ぎ、みるみるうちに近づいてくる。

 もう一人の冒険者の弓矢がまたしてもゴブリンに命中し、ゴブリンは残り3匹になった。


『お前は隠れていろ』


 俺とずっと話していたゴブリンがそう言って、斧を構えた。


『し、死なないでくれ!』

『…………』


 返答はしてくれなかった。

 頼む、神様。

 このゴブリンを死なせないでくれ!


 だが、そんな願いとは裏腹に、目の前のゴブリンの身体は冒険者のロングソードによって吹き飛ばされた。

 目で追うが、もう、ゴブリンが起き上がる様子はない。

 残りのゴブリンも倒され、ゴブリンたちは全滅してしまった。


 なんで、なんで死んじゃうんだよ。

 せっかく、せっかく……。


「よう、大丈夫か?」


 目の前には見知らぬ冒険者。

 ゴブリンたちを、コイツが……!

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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