第6話 魔法講習
魔法講習の座学が終わった。
なんていうか……えっ?魔法ってそういう感じなの?
魔法陣とか詠唱とか魔力とか、そういうのが一切出てこなかったんだけど。
魔素とか魔臓とかはたまに扱っているのも作品もあったけどさ。
俺が出そうとしたファイアボールとかは何だったんだ。
あれじゃあ意味不明なことを叫んでいたイタイやつじゃねえか。
しかも魔法が3種類しかないって何?
普通、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法の基本4属性に聖魔法と闇魔法の特殊2属性を加えた6属性の魔法は最低限あるものじゃないの?
何?生成魔法と消滅魔法に遷移魔法って。
消滅魔法はちょっとカッコいいけど。
これもあの女神のせいなのか?
どうせあの女神がこの世界を作ったとかそういう神話があるんだろ。
「皆さん付いてきていますか?」
これから魔法講習の実習を始めるため、ギルドの建物のすぐ外にある広場に移動した。
講習の先生をしているのは、先程受付した受付嬢だ。
受付をした人がそのまま講師をするっていうシステムなんだろうな。
「まずは先程説明した魔素を身体の中に貯める練習をします!
魔素は身体の中に入ってきたり出ていったりしています。
魔臓に蓋をして出ていくのを止められたら身体の中に魔素が貯まっていきます」
ようは体内に魔力を集めろってことね。
お腹に意識を集中して……、ん?なにかが動いてる。
心臓みたいに何かが吸い込まれて、吐き出されている感じ。
この中心にあるのが魔臓で、動いているのが魔素っていうことね。
それで、魔臓に蓋をするようにして、この吐き出されている魔素を止める、と。
……うん、止められた。
でも魔臓からは360度全方向から魔素が出ていっているから、蓋だとあまり効率がよくないな。
調理器具のボウルみたいなのをイメージして二方向から挟めば……。
よし、いい感じに貯められてる。
「お客さん早いですね!もう魔素を貯められるようになったんですか?」
「うわっ!」
集中しているときにいきなり横から声掛けないでよ、びっくりするじゃん。
声掛けられたせいでせっかく貯めてた魔素がどっかに行っちゃったし。
「あっ、驚かせてごめんなさい。
こんなに早く魔素を貯められた人は初めてですよ!」
ついに俺の実力が発覚してしまうときが来たか。
「早い人でも20分くらいはかかるんですけど、お客さんは5分でできてしまいました!」
あれ、4倍?
俺は経験値10倍……いや、敵を倒したときだけじゃなくて全部10倍になるんだから、経験10倍か。
経験10倍のスキルを持っているんだから10倍速いはず……。
いや、考えないでおこう。
「ふっ、これが俺の実力だ」
「……すごいですね!
では、次は水が出るのをイメージしながら魔素を身体の外に移動させてみてください!」
魔素を止められたなら、移動もできるはずっていうことか。
挟んだボウルに穴を空けると……そこから漏れ広がるだけだな。
じゃあ発想を変えて、丸底フラスコの中に魔臓が入っていて、そのフラスコの口を手のひらまで伸ばすと……。
何も出ないな。
「魔素を身体の外に出すときは水が出ることをイメージしなきゃ駄目ですよ」
受付嬢の顔を見ると、さっきまでは満面の笑みだったのに、今は笑っているのは口だけだ。
えっ、怖っ。
気を取り直して、丸底フラスコをキープしたまま、目を閉じながら手のひらから水が出ることをイメージしてみる。
本当にこれで水が出てくるのか?
「すごいです!水の生成魔法に成功したのは歴代最速です!」
受付嬢のそんな声が聞こえ、恐る恐る目を開けてみると、蛇口から水が出るのと同じように手から水がでてきていた。
本当にイメージそのまんまだ!
「ふっ、当然だ……」
ああ、俺カッコいいーーー!!
歴代最速なのに喜んだ表情を見せないでサラッと一言!
これがずっとやりたかったんだ!
「実は誰かから魔法を教えてもらってたりしますか?」
「いや、今日初めて教えてもらった」
「すごいです!こんな人初めてです!」
この受付嬢が俺のハーレムに加わるのはまだ後とはいえ、いずれは加わる女。
ここらで一度俺の名前を名乗っておくか。
「俺はコーマだ。受付嬢さんは?」
「コーマさん!
私はユフィです」
「ユフィか、良い名前だな」
「ありがとうございます!
ぜひ冒険者登録をご検討くださいね!」
「ああ、登録しよう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
ユフィ……良い子だな。
ハーレムを形成したらすぐ迎えに行くからな。
待っていてくれ。
「では、次は消滅魔法を覚えましょう!
この魔法を覚えていただければ外壁工事のお仕事を紹介できるんです!」
外壁工事と言えば薬草採取と並ぶ駆け出し冒険者の定番依頼の一つ!
トラメリアではいきなりゴブリンとの戦闘をさせられたが、やっぱりいきなり戦闘は無いよなあ。
最初はこういう安全な依頼からなんだよ。
「消滅魔法を教えてくれ」
「はい!
消滅魔法は少し難しくて手から魔素を振動させながら出すんです!」
「振動?」
「はい!こう、ブブブブッって前後に震えさせる感じです!
あっでも、魔素を管の中を通すようにするんじゃなくて、魔素を操れるように練習した方がいいかもしれません!」
魔素って直接操れるのか。
体内の魔素に動けって命令すれば良いのか?
「では頑張ってくださいね!」
ユフィは他の人のところへ行ってしまった。
ずっと俺のところに居ないのかよ。
そんなんじゃ俺のハーレムに入れてやらないぞ?
まあ、いい。
今は魔法に集中しよう。
◇◆◇◆◇
あれからどれだけ時間が経ったか分からないが、ようやく魔素を振動させながら放出することに成功した。
太陽がちょうど真上くらいにあるから、お昼くらい?
っていうことは、魔法の実習が始まってからまだ3時間しか経ってないのか。
経験10倍のスキルは時間の感覚が狂う。
この世界に転生してから数日経つがまだ慣れない。
消滅魔法を試すために、まずは手のひらに生成魔法で水を出す。
丸底フラスコをイメージしなくても魔素を移動できるようになったおかげで、出したいと思ったときにすぐに出せるようになった。
今までは管を魔素が伝っていくのを待つことしか出来なかったからな。
手で皿を作り、そこに生成魔法で作った水を貯める。
ここで手のひらから振動させながら魔素を放出すると……。
おおっ!水が消えていった!
瞬間的に蒸発したみたいだ!
「コーマさん!もしかして消滅魔法が成功しましたか!?」
「ああ、成功した」
俺、クーーーーーーール!!
消滅魔法にこんな短時間で成功したって凄いことなのに、それを当然かのように反応するなんて!
カッコ良すぎて、ユフィは俺に惚れちゃったか?
「本当に凄いですね!
消滅魔法のマスターも歴代最速です!」
「そうか」
ユフィは平静を装っているが、内心はドキドキしているんだろう?
ユフィがどうしてもって言うなら、最初にハーレムに加えてやってもいいぞ。
「少し早いですが、コーマさんにこの講習でお教えできる内容は無くなってしまいました。
残り時間はここで練習していても、退出してもお好きになさってください」
まあ、まだハーレムに加わるには早いか。
ユフィならいつでも歓迎するぞ。
退出して街を散歩してもいいが、ギルドの周り以外、この街は臭いんだよなあ。
だからギルドと宿屋以外行きたくないと言うか……。
そういえばお腹空いたな。
「昼食を取ったらまた練習しに戻ってくる」
「あっ、そういえばもう昼食の時間ですね!
ではここでお待ちしていますね」
ユフィに背を向け、昨夜泊まった宿屋に向かう。
背中からはユフィが他の受講者に声を掛けているのが聞こえる。
◇◆◇◆◇
昼食を食べ、少し休憩してから広場に戻ってきた。
俺と同じように宿屋で昼食を取っていた受講者がいたが、全員ご飯を食べたあとすぐにこの広場に向かっていた。
これがまだ生成魔法を発動できていない者と、早々に消滅魔法まで発動できた者の余裕の違いか。
外からこの広場を見てみたが、100人くらいが魔法を練習しているようだった。
一人200ゼニー払っているから、今日だけで2万ゼニーもギルドは儲けたのか。
安いパン一個が10ゼニーで、これを日本で買うとしたら多分100円くらいだから、このレートで今日のギルドの儲けを円に換算すると……20万円!?
ギルドって儲かるんだなあ。
俺も教える側になれば一日でそれくらい稼げるのか?
冒険者を引退した後は教える側に回るのもありかもな。
俺が元々居た場所に戻ると、フェリシアが魔法の練習をしていた。
「よう、フェリシア。調子はどうだ?」
「ああ、コーマ。魔法って難しいね。
魔素の感覚は分かったんだけど、これを動かすっていうのが難しくて……。
コーマはもう全部習得できたんだよね?
すごいなあ……」
「ふっ、まあな」
魔素を直接動かすのに苦戦しているのか。
確かに、そこは俺も少し時間がかかった。
「そうだな、一つアドバイスをするならば、こう……手を動かすように魔素に動けって命令するんだ」
「手を動かすように……?」
「ああ、フェリシアならできる。頑張れ」
「うん、ありがとうね……」
フェリシアの好感度も一応稼いでおいた。
まあ、フェリシアは素材は悪くないからな。
ただちょっと……、なんか魅力的に感じないんだよなあ。
さて、俺も自分の魔法の練習を再開するか。
消滅魔法はもう練習しなくていいとして、水以外にも火とか出せるようになりたいよなあ。
やっぱり初級魔法って言えばファイアボールだし。
そういえば、何もイメージしないで魔素を身体の外に出すとどうなるんだ?
右手から魔素の塊を放出して左手に当てて見ると……左手が弾かれた?
これは……まさかウィンドボール?
「コーマさん、すみませんが、私に付いてきていただけますか?」
ユフィに真剣な表情で話しかけられた。
あれ、もしかして俺、なにかやっちゃいました?
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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